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 淫らに腰を振り、はしたなく快楽を求める。いやらしく乱れる山吹を見上げて、桃枝は眉を寄せた。 「課長、もっと、もっと乳首っ。乳首、いじめてください……っ!」 「……あぁ、分かった」 「ぁあっ! んっ、気持ちいい……っ!」  望み通り、桃枝は乳首をつねってくれる。……先ほどよりも、指先に力が強まっている気がした。  その変化がどういった心理からきているのか、山吹は気付いていない。ただ『痛くしてほしいと望んだからだろう』とぼんやり考えながら、山吹はあられもない声を上げ続ける。 「あっ、だめ、だめだめっ! イく、イきます課長、やっ、あぁ、あッ」 「……ッ」 「ひ、っ、あっ! んぁッ!」  後孔の締め付けが増し、桃枝はさらに眉を寄せた。  思うことがあっても、胸に突っかかりがあっても。急所に刺激を与えられれば、抗えない。絶頂を迎える山吹の内側に、桃枝は精を注ぎ込んだ。 「はぁ、あ……ッ! 熱い、です……っ。課長の、精子……コンドーム越しなのに、こんな……っ。ん、っ!」  山吹はビクビクと震えながら、桃枝の射精を受け止めている。想定していたよりも長い射精に驚きはあるものの、満足そうだ。  荒い呼吸を吐きながら、山吹は桃枝を見下ろす。同じく、桃枝の呼吸も荒くなっていた。  そんな【お揃い】が、不思議と心地いい。山吹は無意識のうちに、どこか嬉しそうな笑みを浮かべてしまった。 「あはっ、ふふふっ。……課長のザーメン、すっごい量ですね? まだまだ出そうなんじゃないですか?」 「さすがに無理だっつの……。お前は淫魔かなにかか……っ」 「それなら期待に応えて、次は悪魔っぽいコスプレをしましょうか?」 「そっ、いや、えっと」  勢いで否定しかけたが、想像をした結果、満更でもない。ゆえの、素直すぎる逡巡。  分かり易い桃枝の狼狽を依然として見下ろしたまま、上機嫌な山吹は桃枝の頬にキスを落とした。 「課長のむっつりさんっ」 「これはむしろ『素直』と形容されたいもんだな……」  楽しそうな山吹を見上げて、桃枝はそっと眉を寄せる。 「なぁ、山吹。お前、さっき……」  訊ねたところで、果たして意味はあるのか。またしても桃枝は、分かり易い逡巡を見せた。  しかし、今回は分からない。山吹は小首を傾げて、桃枝を見つめた。 「『さっき』? ボク、なにかしちゃいましたか?」  あどけなく笑う山吹には、分からない。桃枝の瞳が一瞬、なぜ、悲し気な色を映したのかが。 「……いや、いい。なんでもねぇから、忘れろ」 「んっ」  するりと、頬を撫でられた。その手つきは普段と変わらない、優しいものだ。山吹は咄嗟に、身を引く。  腕を縛り付けていたタオルが、桃枝の手によって解かれる。解放感を手首に感じながら、山吹は後孔から桃枝の逸物をゆっくりと抜いた。 「あっ、ん。ザーメンたっぷりのコンドームが、お尻から抜ける感覚……っ。なんだか産卵プレイみたいで、気持ちいいです……っ」 「……っ」 「あっ、課長の顔が赤くなった。……二回目、シますか?」 「しねぇよ……ッ!」 「あははっ、ザンネンですっ」  まるで本当のナースかのように、山吹は桃枝の世話をする。ティッシュを取り、使用済みのコンドームを処理しつつ桃枝の逸物を拭き……。 「お掃除フェラの方が嬉しいですか?」 「ちょっと黙ろうな、山吹……っ!」 「わわっ! なんで頭を撫でるんですかっ!」  相変わらずムードの欠片もない発言をして、桃枝を無意識に辱めてしまったのだが。頭を撫でられ、すぐに山吹は桃枝から身を引いた。

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