桃枝の手が、山吹の下半身から下着を剥ぎ取る。そしてすぐに、桃枝は下穿きから自らの逸物を取り出した。 「課長の、大きい……っ。ボクでコーフン、してくれたんですね……っ」 「お前だって、大概だろ」 「あ、っ！　い、いきなり強く、握らないでください……っ」 　互いの逸物を擦りつけた状態で、まとめて扱きあげる。桃枝の手に、山吹はあっさりと翻弄された。 「んっ、気持ちぃ……っ。か、ちょう……かちょぉ……っ」 　離れかけた距離を詰めるように、山吹は桃枝の背中にしがみつく。完全に、無意識だろう。『離れたくない』という欲求だけが、山吹を突き動かしていた。 「課長も、気持ちいぃ、ですか……っ？」 「じゃなかったら、とっくに萎えてるだろ。訊くな、馬鹿ガキ」 「んっ、嬉しい、です。課長もボクと、気持ち良くなって──あぁ、んっ！」 　逸物を扱いていない方の手が、山吹の乳首をつねる。弱点を攻められた山吹は、すぐさまあられもない声を上げた。 「ん、あ、あ……っ！　な、んか……いつもと、違う感じで……気持ちいいの、止まらない……っ」 　体は本調子ではなく、気怠さがある。それでも快楽に素直な自分の浅ましさが恥ずかしくて、かえってそれが興奮剤となって……。罪深いことをしている自分に興奮をしている様が、またさらに快感を助長させているようで。 「あっ、イッ、ちゃう……っ。やっ、だめ、課長……っ」 　普段よりも、昂りが早い。山吹は桃枝にしがみつき、必死に限界を訴える。 　山吹の必死な姿が、桃枝としてはかなりグッときているのだろう。逸物を扱く手を止めずに、桃枝は喘ぐ山吹の頬にキスを落とした。 「いいぞ、射精しても」 「っ！　やっ、いやです……っ。一人で射精は、やだぁ……っ。課長も、一緒に……っ」 　素直に山吹から甘えられると、たとえそれが演技だとしても、桃枝は弱い。今の山吹に演技をする余裕がないと分かっていると、余計だ。 　山吹への快感に重点を置いていた手つきを、桃枝は変える。自分の快楽も求め、互いに絶頂を迎えられるような扱き方を選んだのだ。 「山吹……ッ。キス、するぞ」 「して、ください……っ。深いキス、ほしぃ──ん、んっ」 　必死にしがみついている今、山吹に酸欠の意思表示はできない。 　弱いところばかりを攻められ、呼吸が苦しくなるほどのキスを贈られ。山吹はついに、限界を迎えた。 「んっ、ん……ふっ、んん……ッ！」 「……ッ！」 　ビクリと、体が震える。山吹だけではなく、山吹と重ねられている桃枝の体もだ。 　白い飛沫が、互いの体と服を汚す。それでも手を止めない桃枝に素直な反応を示しながら、山吹は絶頂の余韻に浸った。 　やがて、互いが快感を貪り尽くした後。キスを終えた山吹は、必死に酸素を取り込み始めた。 「はぁ、は、っ。……いま、の……っ。ホントに、死んじゃうかと……思い、ました……っ」 「そっ、それは、悪かった。……だがな、山吹。窒息しかけて笑うのはやめろ、趣味が悪いぞ」 「これって……ある意味【腹上死】ってことに、なるんでしょうか……っ？」 「縁起でもないし、本気かどうか分かりづれぇジョークもやめろ、馬鹿ガキ」 　ベッドのそばに置いてあるティッシュを取り、桃枝は難しい顔をして後始末を始める。病人に手を出した罪悪感にでも苛まれているのだろう。難儀な男だ。 　おそらく自責の念に駆られているだろう桃枝を見つめて、山吹は背中に回していた腕を解く。 「課長。……ちゅー、してください」 「お前は本当に、いい性格してるな」 「それでもお顔を近付けてくれるなんて、課長もいい性格ですね」 「驚愕的なことに、同音異義語だな。ありがとよ」 　今のやり取りになら、効果音を『イチャイチャ』にしてもいいかもしれない。触れる程度のキスを受けながら、山吹は口角を上げてしまった。