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裸になった山吹は膝を擦り合わせる。
「後ろ、キレイにはしました。でも、あまり慣らしてはいなくて。だから、えっと……」
「なんだよ。気になるだろ」
「つまり、ですね。課長に、後ろを、その。……慣らしてほしい、です」
「っ! ……あ、あぁ、そういうことか。分かった、俺がやる」
山吹はローションボトルを用意し、桃枝に手渡す。こういった行為に未だ慣れない桃枝は緊張しつつも、山吹からボトルを受け取った。
はめていた手袋を、桃枝が外す。桃枝の無骨な素手を見るだけで、山吹の胸は高鳴ってしまう。
おそらく山吹は、桃枝の動きを凝視しすぎていたのだろう。桃枝が、眉間の皺をそっと深くした。
「そんなにジロジロ見るな。やりづらい」
「なんだか、エッチに見えて……」
「まぁ、ローションなんて持っていればそう見えるだろうな。それに今から、そういうことをするわけだし」
早く、挿れてほしい。桃枝の返事をほとんど聞き流してしまった山吹は、未だに桃枝の手を凝視している。
「課長、早く……っ」
「少し待て。まだ、ローションが冷たい」
「冷たくてもいいから、早く指……挿れてほしい、です」
「っ。だ、駄目だ。お前を驚かせたくない」
全て、山吹が教えたことだ。覚えていてくれたことに感動すると同時に、桃枝の優しさにも心を震わせてしまう。またしても、胸が高鳴ってしまうほどに。
手のひらに垂らしたローションを眺めていた桃枝が、不意に顔を上げる。
「……よし、もういいだろ。山吹、横になれ」
「は、い」
素直にベッドへ倒れた山吹を見て、桃枝は表情を強張らせた。
「全裸でベッドに横たわっているだけなのに、官能的だな。恐怖すら感じる」
「恥ずかしくなる感想は、やめてくだ──んっ」
つぷ、と。桃枝の指が、山吹の後孔に差し込まれる。待ち望んでいた圧迫感に、山吹は小さく身じろぐ。
「動くな、山吹。うっかり傷をつけたくなんかねぇ」
「課長になら、乱暴にされてもいいです」
「俺はもう二度と山吹を傷つけたくねぇし、大前提に加虐性愛者じゃないんでな。却下だ」
「んっ、ん、っ」
指の先が、奥深いところに触れている。山吹の指ではなかなか届かない部分に難なく届いてしまうなんて、桃枝のポテンシャルは恐ろしい。身を震わせながら、山吹はそんなことを考えた。
これからずっと、この男を山吹だけが独占できる。優越感とは違う感慨が、山吹の胸を締め付けた。
「指、増やすぞ。痛かったら言ってくれ。我慢はナシだ」
「はい、分かりました……」
「お前な、そんな目するなよ。俺の理性をぶち壊す気か?」
いったい、どんな目をしていたのだろう。潤み始めた視界では、桃枝の瞳に映る自分の顔がよく見えない。
「課長の指、気持ちいいです、っ。もっと奥、擦ってください……っ」
ただ分かるのは、猛烈に気持ちがいいということだけ。
「やだ、課長……っ。ボク、イッちゃう……っ」
「早いな──じゃ、なくて。あぁ、いいぞ。お前の好きなところを擦ってやる」
「本音が漏れて──ひっ、ん、ッ! だめっ、や、そこはっ。あっ、んッ!」
ビクリと、山吹の体が大きく震える。呆気なく絶頂を迎えさせられた山吹は、普段なら桃枝を睨むくらいしただろう。
だが、今日はそんな余裕がないらしい。
「か、ちょ……っ。早く、課長のペニス……ボクのナカに、挿れて……っ?」
桃枝が、欲しくて欲しくて堪らない。肉欲ではない欲望に突き動かされた山吹にはもう、理性らしい理性が残っていなかった。
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