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用意していたコンドームとローションが、ようやく役立った。ベッドに組み敷かれた山吹は、腕で顔を隠しながら感慨深くなってしまう。
「ク、ソ……ッ。相変わらず、お前のナカはキツイな……ッ」
裸の山吹をベッドに押し倒したまま、桃枝は眉を寄せている。
字面を見るといつも通りの桃枝に見えなくもないが、今の桃枝は違う。表情が歪められている理由は、不機嫌さからでも平常時というわけでもないからだ。
「はぅ、ん、あ……っ」
奥まで、桃枝の逸物が届いている。山吹も山吹で、現状を受け止めるのに必死だ。
顔を腕で隠し続ける山吹に、桃枝はさらに眉を寄せてしまう。
「おい、山吹。顔、隠すなよ。見せろって」
「ムリです、恥ずかしい……っ」
「お前、今までそんなこと言わなかっただろ。どういう心境の変化だ?」
「課長の、バカ。鈍感」
なぜ分からないのだろう。山吹は腕の下から視線だけを送る。
突然責められた桃枝は、一度だけ目を細めた。それからすぐに、山吹の腕に触れていた手を下方へと動かす。
「……そうか。俺は馬鹿で鈍感か」
「えっ、ちょっと──んっ! やっ、課長っ?」
「お前が言うなら、そうなんだろうな。俺は鈍感らしい。だから、明確な言葉にされないと分からない」
山吹の顔から腕を除けようとしていた桃枝の手が、さらに下へと伸びる。その手が触れた部分に驚いた山吹は、慌てて桃枝の手を【ある一点】から離そうとした。
「いっ、いきなりそこは触っちゃ──ぁ、んッ」
「さっき出したから、こんなに濡れてるのか? それとも今、感じすぎて濡らしてるのか? 馬鹿で鈍い俺には分かんねぇなぁ」
「やだ、大人気な──あ、ッ!」
拗ねている。分かり易いが、大人気ない。
桃枝は今、山吹の硬くなった逸物を握っていた。そしてわざと、ゆっくりと扱いているのだ。
なんて子供っぽくて、意地が悪いのだろう。こんなこと、嫌がらせに他ならない。そんなこと、分かり切っていた。
それなのに……。
「ダメ、出ちゃいますっ。手、放して……っ!」
「そうかそうか、出ちゃうのか。……で? いったいなにが出るんだ?」
「あっ、うぅっ」
──こんなふうに辱しめられて、より一層感じてしまっているなんて。山吹が桃枝に『意地悪しないでください』と言い切れないのは、そのせいだ。
チープなAVのように、攻められている。そこに快感を見出してしまっているのだから、山吹は救えない。
「せ、せい、えき……っ。精液、出ちゃいます……っ」
「ただ触ってるだけなのにか? 随分とお前は敏感なんだな?」
「うぅ、う~……っ」
恥ずかしい。もっと。
辱めないで。足りない。
相反する気持ちに挟まれながら、山吹は徐々に呼吸を荒げていく。
「課長の手が、気持ちいいから……精液、出ちゃいます。だから、手を……放して、ください……っ」
すん、と。山吹が一度、鼻をすする。
弱った山吹を見て、桃枝はなにを思ったのだろう。……山吹の逸物を扱く手に、ほんの少しだけ力を増させた。
「気持ちいいなら好都合だ。【お前が満足するまで抱く】っていう約束だったろ。だから、たくさんイかせてやる」
「は、う……っ」
さっきまであんなに子供っぽく拗ねていたくせに、山吹が弱ると大人の余裕を見せてくるなんて。存外単純な山吹は、あっさりとときめいてしまう。
これでは本当に、被虐性愛者じみているではないか。桃枝やセフレ相手に何度も否定してきた嗜好を、うっかり肯定してしまいそうだ。
断じて違う。山吹は、虐められて感じるヘンタイではない。
……ないはず、なのに。
「──手、放さないでっ。もっと、ボクのペニス……課長の手で、虐めてください……っ」
桃枝を止められない。むしろ、強請ってしまうなんて。
「あっ、ん、んん……ッ!」
後孔に突き挿れられた桃枝の逸物を強く締め付けながら、山吹はあっさりと二度目の絶頂を迎えてしまった。
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