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それから日曜日を過ごし、月曜日は初の飲酒をし、そして……。
「──特に大きな作戦も思いつかないまま、気付けばデート当日なんだけど!」
山吹はベッドの上で、盛大に悶絶していた。
おかげさまで、二日酔いというバッドステータスは付与されていない。思いの外すっきりとした寝覚めが、むしろ腹立たしいほどだ。
落ち着かなかった日曜日は、大晦日レベルで掃除をしてしまった。料理の作り置きにも精を出し、気付けば深夜。山吹は寝不足回避のため、早々に就寝した。
そして月曜日は、普段通りに出勤。夜には急遽、管理課の先輩と桃枝と……合計四人で、飲み会に。そこからはご存知の通り、桃枝に醜態を晒しつつも介抱され、ぐっすりと就寝した。ある意味で、充実した一日となっただろう。
だが、違った。山吹はデート当日までの数日を、こんな形で過ごすつもりはなかったのだ。
「課長をボクにもっともっと骨抜きにする作戦を考えるつもりが、なんでボクは家事なんかしちゃったんだよ日曜日っ! あぁもうっ、家庭的なボクのバカ!」
そういう面も桃枝は褒めてくれたが、違う。
「お酒はおいしかったし楽しかったけど、違うじゃん! あぁいう時こそメロメロにさせるものじゃないのっ! 酔ったせいで普段と違う姿にドキドキッ、みたいなっ! あぁもうっ、素直に酔っちゃったボクのバカ!」
酔った山吹を甘やかしてくれたが、それも違うのだ。なにひとつとして、山吹の理想とは違いすぎる。
とは言え、己を責め続けている場合ではない。なぜならどう足掻いても、今日はデート当日だからだ。
山吹はひとしきり後悔した後、すぐにベッドから降りる。そして、急いで身支度を始めた。
「今日は、課長をボクにもっと骨抜きにして、それでもっともっと好きになってもらって、そして、それで……」
身支度を進める中、山吹はブツブツと決意表明を呟く。
着替えを終え、髪形の最終確認も済ませて。山吹は割れた鏡を見ながら、キュッと眉を寄せる。
「それで、今日こそ……課長に、すっ、す……。……き、気持ちを、言いたいな……っ」
気難しい顔をしているくせに、頬が赤い。山吹は腫れない程度に、ペチペチと軽い力で自らの顔を叩いた。
「スタート前から腑抜けるな、ボク。今日は初めてのデートと違って、絶対に絶対に、課長をたっくさん楽しませるんだ」
散々で、駄目な点ばかりだった初デート。その記憶が薄れてしまうくらい、楽しい思い出を桃枝に。気合いを入れ直した山吹は、鏡の前で笑顔を浮かべる。
「うんっ。今日のボクもカワイイ!」
これならきっと、桃枝も開口一番『可愛い』と言ってくれるのでは。そう考え、山吹はまたしても顔を赤らめてしまった。
「うわっ、バカみたい。ボク、浮かれすぎでしょ……」
まさか恋愛のなにもかもを理解できていなかった自分が、相手を想うだけでここまで露骨に浮かれるなんて。赤くなった顔から目を背け、山吹は洗面所から離れた。
絶対に、失態を晒さない。失敗はせず、桃枝に楽しい時間だけを提供する。今までの想いや出来事に報い、今日こそは山吹の気持ちを桃枝に……。
多すぎるタスクで頭をパンパンにしながらも、山吹は楽しそうな足取りでアパートから出た。
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