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桃枝が用意してくれた服を、桃枝自身の手で脱がされる。
以前までの山吹なら『背徳感がいっぱいですね?』くらい言えたのだが、さすがに今の山吹にはそんな余裕がない。
「課長に、胸……見られるの、少し恥ずかしいです」
「お前が嫌がるなら、服を戻す。が、俺はお前の全部が見たい」
「欲望に忠実な課長、いいと思います……っ」
露わになった山吹の上半身を見て、桃枝は静かに訊ねた。
「悪い、山吹。こんな時に訊くのもなんだが、教えてくれ。……お前に残った【目に見える傷】は、ここだけか?」
胸元に触れながら瞳を細める桃枝に対し、山吹は体を震わせてしまった。怯えからではなく、指先で触れられる感覚に悦んで、だ。
「んっ。……はい、そうです。打撲痕とかはもう、残ってませんよ」
「そうか」
空いている方の手で、頭を撫でられる。
「頑張ったな」
添えられた言葉に、山吹はこの状況に似つかわしくない症状を抱える。……鼻の奥が、ツンと痛んでしまったのだ。
「……課長の、バカ。こんな時に、泣かせようとないでください」
「なにを──あっ。わ、悪かった。そんなつもりは、なかったんだが」
「どうせ泣かせるなら【エッチな意味で】にしてくださいよ」
「本当に泣きそうなのか、お前」
下穿きも脱がされながら、山吹は潤んだ瞳を桃枝に向ける。
桃枝は呆れたようにため息を吐きながら、山吹を抱く準備を進めていく。ローションを用意し、手のひらに垂らし、山吹を見つめた。
「指、挿れるぞ」
「はい。……課長はいつも、丁寧にボクを抱いてくれますね」
「当たり前だろ。気遣いナシにしていいような行為じゃねぇんだから」
「課長のそういうところ、ステキです、……んっ」
指が挿入され、体が震える。そして、心が弾んだ。
これから、桃枝に体を丸ごと愛してもらえる。純真な期待感と淫らな期待感に、山吹の体は素直な反応を示す。
「課長の指、気持ちいいです。早く本数、増やしてください……」
「焦らせるなっつの。大事にしたいんだよ、お前のことを」
「……っ」
「なんだよ。顔赤くして、ケツで咥え込んだ指を締め付けて……随分と素直だな、お前は」
以前まで突っぱねていた言葉に、今では素直に喜んでいる。『大事にしたい』と告げられた山吹は桃枝の指摘通り、顔を赤くして体を硬直させてしまった。
ゆっくりと、後ろが解されていく。挿入する指の本数が増え、山吹は堪らず甘い声を漏らした。
「んっ。指、増えた……っ。圧迫感、気持ちいいです」
「そうか。痛くないなら、なによりだ」
「はい、痛くないです。もう一本、指を増やしてほしいくらいですから」
「だから、焦らせようとすんなって。こっちはな、煩悩と理性の戦いで内心いっぱいいっぱいなんだぞ」
確かに、桃枝から向けられている眼差しは熱い。その事実にまたしても、山吹は心を弾ませてしまう。
二本の指が馴染んだ後、ようやく三本目が挿入されて。山吹は嬉しそうに後孔をひくつかせながら、これから始まるさらに刺激的な触れ合いに胸を躍らせた。
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