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 三本の指を難なく咥え込めるようになって、桃枝は空いている方の手を伸ばした。 「そろそろ、挿れてもいいか」 「やっと、ですか? もう、待ちきれないです……っ」 「やめろ指を締め付けるな」  コンドームが入った箱を引っ張り出した桃枝の耳が、薄っすらと赤くなっている。未だにこの行為には慣れておらず、淫らな山吹に対しても耐性が付いていないようだ。  山吹の後孔から指を引き抜き、自らの硬く反り立つ逸物にコンドームを付ける。抱くためだけの準備に、山吹は瞳を潤ませた。 「お前、そんなにジッと見るんじゃねぇよ。色々とやりづらいだろうが」 「だって、嬉しいんです。ボク、今から課長に深いところまで愛してもらえるんだなって。ドキドキしちゃって、だから見つめちゃうんです」 「クソ、叱りづれぇ……」  すぐに、桃枝は山吹の頭を撫でる。 「なら、お望み通り奥まで愛してやる」  そう言い、桃枝は山吹の腰を掴んだ。  少し冷えた桃枝の手を感じ、山吹は思う。本当に自分は桃枝を相手に行為をしているのだ、と。 「ん、んっ。あ、ぁ……ッ」  こんなに気遣われながら、逸物を突っ込まれるなんて。今まで桃枝以外に、山吹をここまで優しく抱いてくれた相手がいただろうか。  ……否、いるわけがない。山吹自身が【酷くされるよう】に、振る舞っていたのだから。  なのに、桃枝だけが違った。どれだけ『酷くして』と口にしても、桃枝は山吹を大切に扱ったのだ。 「根元まで、入ったぞ。……痛くないか、山吹」 「お腹、少し苦しくて……凄く、気持ちいいです……っ」 「お前はまた、そうやって大人を揶揄いやがって」  今の言葉は本心だと告げたら、きっと『そういうところだぞ』と言われるのだろう。快楽に瞳を潤ませながら、山吹は桃枝を見つめた。 「動くぞ」  前置きをして、体を揺さ振ってくれる。言葉にしなくても『身を案じられている』と分かる抽挿に、山吹は甘い声を漏らした。 「はぁ、ん。……んっ、課長、課長……っ」 「そこまで感じてくれてるんなら、シーツじゃなくて俺に縋れよな」 「確かに、そうですね。失礼、します」 「お前がつまんでるのはスウェットの端なんだが……まぁ、いいか」  山吹のことは裸に剥いておきながら、自分は必要最低限しか脱いでいない。山吹を辱めるためにわざとなのか、脱ぐ余裕がないくらい山吹との行為に熱中してくれているのか……。真意は、不明だ。 「課長、もっと突いてくださいっ。んっ、そこ、もっと……ッ」  山吹に分かることなんて、桃枝とのセックスが気持ち良すぎるということだけ。喘ぎながら山吹は指先で、桃枝が着ているスウェットの端を強く握る。  声を漏らす山吹の体を揺さ振りながら、桃枝がジッと見つめてきている気がした。瞳を開くと予想通り、すぐに桃枝と視線が絡まる。  どうして、喘ぐ山吹をジッと見ているのだろう。山吹は吐息を漏らしながら、桃枝に視線で訊ねた。  すると不意に、桃枝が動きを止める。 「……っ。……なぁ、山吹」 「あっ、課長、だめっ。動き、止めないでください……っ。お尻、切なくておかしくなっちゃいます……っ」 「そうか。お前は、そうだよな」  一人で納得したかと思えば、今度は謎の深呼吸を始めた。桃枝の中で、いったいなにが起こっているのだろう。  戸惑う山吹の理解を放置し、桃枝の顔が近付いた。そして桃枝の唇が、山吹の耳に寄せられて──。 「──緋花は、はしたない子だな」 「──ッ!」  初めての、ファーストネーム呼び。オプションに、映画館で強請っても言ってもらえなかった言葉付き。  耳元で甘く囁かれた山吹は、ぶるりと体を震わせて……。 「ん、っあ!」  鼓膜を撫でた桃枝の声だけで、呆気なく射精してしまった。

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