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山吹の体を激しく犯しながら、桃枝は縋るような目を向けた。
「なぁ、緋花。念のため訊くが、今の『好き』は【俺の体が】って意味じゃないよな。ちゃんと【俺自身のことが】って意味だよな?」
「えっ、あ、うぅ……っ」
「答えろよ、緋花。……答えて、くれよ」
今までの山吹なら『好き』という言葉の前に、不要な前提を持ってきただろう。桃枝が言っているのは──不安がっているのは、そういう意味だ。
たった二文字を伝えるだけでも緊張した山吹が、桃枝のおかわりに耐えられるわけがない。山吹は真っ赤になり、パクパクと口を開閉する。
しかし、視線の先にいる桃枝があまりにも不安そうだから。山吹は、勇気を振り絞って答えを紡いだ。
「ちゃ、んと。ちゃんと、白菊さんが……す、好き、です……っ」
告げると同時に、口が塞がれる。初めて桃枝と体を重ねた日に贈られたキスを彷彿とさせるような、そんな突進じみた口付けだ。
「先に謝っておく。……今日は、手荒になる」
「白菊さん……っ」
唇が離れると、山吹は至近距離で囁かれた。桃枝の言動全てに胸をときめかせつつ、山吹は頷く。
「大丈夫、です。激しいのも、好きです」
「淫乱なお前も、俺は好きだよ」
「こんなこと言うの、白菊さんにだけです……」
素直に甘える山吹を見て、桃枝は瞳を細めた。どこか嬉しそうなその眼差しに、山吹の胸はまたしても締め付けられる。
すぐにまた、後孔を激しく突かれた。山吹はビクリと体を震わせながら、桃枝のスウェットをつまむ。
「だ、めぇ……っ。お尻、気持ち良すぎて、だめです……っ。お、ねが……顔は、見ないでください……っ」
「なんだよ、ツレねぇな」
山吹が強請るも、桃枝は山吹の顔を見つめている。
「感じてる顔、もっと見せろよ」
「っ!」
「ん? ケツの締め付けが──」
「やだ、言わないで……ばかぁ……っ」
体が、まるで作り変えられていくようで。桃枝の言動ひとつで、山吹の中には次から次へと知らない感情が芽生えていく。
「あっ、あん、ぁ、っ! 奥っ、奥ずっと、気持ちぃ……っ!」
「緋花……ッ!」
「白菊さん、白菊さん……っ! そこっ。そこ、もっと突い──んんッ!」
「ここだろ、お前の好きなところ」
「ぁあっ、あんっ! 好きっ、好きですっ! そこっ、大好き、っ!」
けれどそれは、不快ではない。桃枝への好意を自覚する前から、桃枝によって変わっていく自分に興味深さを抱いてはいたが……今は、心地いい。
「あっ、ぁん、あっ。お尻、気持ちいぃ……っ。もっと、もっと突いてください……っ」
好きな男から求められて、山吹の目がとろんと蕩けている。桃枝を映しているようで、しかしどこも見つめていないようだ。
「白菊さん、白菊、さ……ん、っ」
「緋花? どうした?」
「『好き』って、言ってください……っ」
「なんだ、そんなことか。……好きだぞ、緋花」
「んっ。ボクも、好きぃ……っ」
「あぁ。……俺も、緋花が好きだよ」
ようやく、山吹が桃枝の背に腕を回す。すぐさま応えるように、桃枝も山吹を強く抱き締めた。
その抱擁にすら感じてしまったのか、抱き締められたことでより深い繋がりとなったからか……。山吹は華奢な体を一際大きく震わせた。
「はっ、あ、ぁあ、っ!」
「……ッ」
互いの体を抱き締め合って、互いの熱を感じながら達する。山吹が絶頂を迎えると、腕の中の桃枝も体を震わせてくれた。
こんなことで、ここまで嬉しくなるなんて。山吹は桃枝にしがみついたまま、甘えるように言葉を零す。
「白菊さん、お願い……っ。もっと、好きにして。もっと『好き』って言って、もっともっと……ボクを、愛してください……っ」
抱き締めた桃枝が「可愛すぎなんだよ、お前……ッ」と悪態を吐いていたが、それでも桃枝は山吹を放そうとはしなかった。
たったそれだけのことも、やはり嬉しくて。山吹は父親の教えを考える間もないくらい、桃枝でいっぱいになっていった。
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