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宣言通り、山吹の手が桃枝の脇腹を弄り始めた。
こちょこちょ、さわさわ、こしょこしょ。山吹の指が、桃枝の上半身をくすぐる。
……おそらく、山吹の目には桃枝がくすぐったそうにしているとは見えていないだろう。当然だ。桃枝は全く『くすぐったい』と思っていないのだから。
「や、山吹、その……ッ」
山吹が、抱き着いてくれている。山吹が、自らの意思で桃枝にじゃれついてきてくれているのだ。桃枝にとってむしろ、この状況は【ご褒美】だった。
いけない。鎮まれ、心臓。上がるな、口角。桃枝は必死に、自分が持てる理性を総動員させる。
やがて、山吹は『桃枝をくすぐっても意味がない』と察したのだろう。楽しそうに細められていた瞳はなぜか別の意味で細められ、挙句の果てに憐れみを含み始めた。
「課長って、こっちも鈍いんですね……」
「なんで俺は好きな奴から憐れむような目を向けられてんだ?」
始めたのは山吹のくせに、その反応はあんまりである。悲しい気持ちになった桃枝は、この空しさこそがお仕置きなのかと思い始めた。
山吹は桃枝にくっついたまま、ガッカリした様子でため息を吐く。……その時だ。
「まったく、課長は本当に──……って、あれっ? ごめんなさい、なにかが当たって……」
「──ッ!」
「──あっ」
さて、不必要だとは思うが現状を説明しよう。
桃枝は現在、紆余曲折を経てようやく両想いになれた恋人に密着されている。相手は自分からの接触を苦手とし、なかなか自分からは物理的に甘えてくれない相手だ。
そんな恋人から密着され、体中をまさぐられ、駄目押しに魅力的な匂いまで感じて……。さて、健全且つ他称『むっつりさん』な桃枝はどうなる?
答えは……山吹の、にまぁ~っとした笑顔だ。
「──ボクには敏感ですね、課長?」
「──うるせぇ……ッ」
山吹の下半身を押しのけるかのように、桃枝の体のとある一点が存在を主張し始めた。硬いソレに気付いた山吹は、なぜかくすぐりをしていた時よりも満足そうだ。
「そうですよね、課長はこういうお仕置きの方が堪えますよね? 分かりました、切り替えますね。まったく、課長はむっつりさんなんですからっ」
「頼むから活き活きするんじゃねぇ……ッ」
「それでは期待に応えて、課長の素直なペニスにお仕置きしちゃいますね? あぁでも、それだとご褒美になっちゃうでしょうか? ……まぁ、いっか。失礼しまぁ~す」
「本当に失礼な──く、ッ」
こうなると、山吹のペースだった。当然だ。桃枝とは経験値が違う。
山吹はお仕置きの方向性を切り替えると、それはもう慣れた手つきで桃枝の下半身を攻め始めた。前を寛がせ、隆起した逸物をすぐさま取り出したのだ。
こう言ってはなんだが、いっそ尊敬ものだった。こうもスマートに卑猥な空気を作り、あまつさえ行動に移せるとは……。現実逃避をしようとしているのか、脳内で呑気な桃枝が腕を組み、頷いている。
しかし、前述した通り感心するのは【現実逃避】だ。
「ボクにくっつかれて、体をまさぐられて……コーフン、しちゃいました?」
「やめろ、山吹……っ。先端を、指で撫でるな……ッ」
「先走りの液がボクの指を濡らして、動かすとクチュクチュっていやらしい音が鳴りますね? 課長の、えっち」
「耳元で囁くな、エロガキ……ッ!」
山吹が、桃枝のペニスを扱いている。僅かな現実逃避ではカバーしきれないほど、蠱惑的な状況だ。
桃枝は必死に呼吸を整えようとしながら、無意識のうちに山吹の体を抱き寄せた。
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