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戸惑う山吹の脚を掴み、桃枝はわざと、山吹の内腿にキスをした。
「あっ、そんな……っ。そんなところに、キスマークなんて……っ」
「いいか、山吹。俺が好きなのは、お前だ。男も女も関係ない。【お前だから】惚れたんだよ」
吸い付かれ、赤くなった内腿。その一点に、桃枝は舌を這わせる。
「お前が相手だから、なんだってしてやりたくなる。……こうしてお前が喜ぶなら、してやりてぇんだよ」
「はっ、う……っ」
「なぁ、緋花。……お前の隅々まで、愛してもいい。そんな栄誉を、俺にくれよ」
ボボッと、山吹の顔が真っ赤になった。火が出るのではないかと、あり得もしない心配をしてしまうほどの赤さと勢いだ。
もう一度、内腿にキスをして、痕を残す。山吹は小さな痛みに甘い吐息を漏らした後、桃枝の頭を掴んだ。
「やっ、いやです、課長っ。そんな、ところ……っ。顔を近付けちゃ、ダメです……っ」
「なんでだよ。綺麗にしたんだろ? さっき、シロもそう言ってただろ」
「それは、そうですけど……っ」
意外と、この手のことにも強情らしい。桃枝は山吹の斜め上方向に進む善意に呆れつつ、静止を無視して中心へと顔を近付けた。
「お前のココを、舐めたい。さらに言うなら、舐められて恥ずかしがるお前が見たい」
「か、ちょう……っ」
頭を押す山吹の手に込められた力が、弱まる。僅かな緩みの隙に付け入り、桃枝は山吹の逸物に舌を這わせた。
「んっ、ん、っ」
どうやら、山吹から【抵抗】の二文字が消えたらしい。桃枝の頭を押し返していた山吹の手は、まるで『声を漏らさないように』と言いたげに、口元を覆っていた。
「はぁ、あ……っ」
それでも堪えきれないのか、山吹は体を震わせながら吐息を漏らしている。
今の山吹が、どんな顔をしているのか。気になった桃枝は、すぐに山吹を見上げる。……すると意外にも、すぐさま二人の視線はパチリと重なった。
「課長、どうしましょう……っ。ボク、すごく……気持ち、いぃです……っ」
震えながらも告げられた言葉は、大変好ましい感想だ。気分が良くなった桃枝は、さらに山吹の逸物を可愛がり始める。
根元から、先端まで。ピクピクと反応を示す逸物を、桃枝は舌で必死に可愛がる。
「待って、だめっ。課長、これ以上されたら……ッ」
山吹のペニスが、腰が。ビクビクと、震えている。どうやら、山吹の限界が近いらしい。
「だめ、だめです……っ! ボク、やぁ……ッ」
息も声も、徐々に冷静さを失った色になっていく。山吹は桃枝の頭にそっと手を添えて、甘えるように拒絶の言葉を紡いだ。
だから、桃枝は……。
「──え、っ? ど、どうして……っ?」
──山吹の逸物から、口を離した。
あれだけ『顔を近付けないで』と言っていたくせに、顔を離してそこまで露骨に落ち込まれるとは。桃枝は山吹の下半身から顔を上げて、震える山吹をポンと撫でながら、あやす。
「『どうして』って、お前が『駄目』って言ったんだろ」
「それは、そうですけど……でも、そんなぁ……っ」
桃枝は、山吹の訴え通りに動いただけだ。決して、先ほどの仕返しではない。
断じて、決して、本当に。
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