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12 : 19 微*
──しかし、無意識とは恐ろしいものだ。
おそらく、真夜中。ふと意識を取り戻してしまった桃枝は、腕の中にある温もりに気付いた。どうやら寝ている間に体の向きを反転させ、山吹を抱き締めてしまったらしい。
腕の中に山吹の温もりがあるだけで、心がこんなにも穏やかになるなんて。桃枝は薄い意識の中、ぼんやりと山吹への気持ちを募らせる。
……だが、それにしてはおかしい。なぜだか妙に、体が熱い気がするのだ。
体が、と言うよりは……。
「……やま、ぶき? お前、なにしてるんだ……?」
「っ!」
下半身の、一部。より厳密に言うのなら、逸物の辺りが熱いのだ。
それに、もうひとつおかしな点がある。腕の中にいる山吹が、モゾモゾと落ち着きなく動いているのだ。
名前を呼ぶと、腕の中で山吹がビクリと体を震わせた。まるで、悪いことをしている現場を発見されたような反応だ。
「あ、っ。白菊、さん……っ」
少しずつ、意識を覚醒させていく。自分の身に起こっていることと、山吹がしていることを理解するために、ゆっくりと現状を呑み込んでいき……。
「……っ! 山吹、お前……ッ」
──山吹が、桃枝の下半身に自らの下半身を擦り付けている、と。ようやく桃枝は、ハッキリと理解したのだ。
桃枝を呼んだ山吹の声は、やけに艶めいていた。桃枝は身をよじり、一先ず山吹から距離を取ろうとする。
「オイ、山吹。セックスは俺が誘わないとナシだって──」
「──セックスじゃ、ないです。挿れてないから、セックスじゃないです」
だが、離れようとした分だけ、山吹が距離を詰めてきた。
「ただ、くっついているだけです。だから、セックスじゃないです……っ」
嘘だ。それにしては、山吹の息が荒くなっている。
分かり易すぎる嘘に、いっそ『嘘を吐くな』と糾弾する気すら起きてこない。それほど、一周回って清々しい分かり易さだった。
「は、っ。気持ち、ぃ……っ」
いつの間に桃枝のズボンを脱がしていたのか、山吹は互いの下着越しに、逸物を擦り合わせている。
ぬちぬちと、濡れた音が響く。山吹の声を合わさり、桃枝は堪らず劣情を抱いてしまう。
「山吹……ッ」
「ぁ、んっ。先っぽ、気持ちいいです……っ」
先に約束を破ったのは、桃枝だ。『触れない』と言ったのに、無意識とは言え山吹を抱き締めていたのだから。
「課長は、なにもしなくていいですよ。ボクがただ、くっついているだけですから。……ただ、密着しているだけです、からぁ……っ」
まるで動物のように、本能に従って桃枝を求めている。こんな山吹を責める権利が、桃枝にはなかった。
山吹が、そろ、と動く。桃枝の下半身を、自らの臀部に擦り付けるためだ。
「山吹、そこは……ッ」
「挿れてないです。だから、セックスじゃないです……っ」
布越しに、山吹の尻穴をつついている。その度に、山吹は体を震わせた。
「課長の、熱いの……お尻、グリグリって……っ。はっ、はぁ……っ、気持ち、ぃ……っ」
何度も桃枝の逸物を擦り付けて、山吹は甘い吐息を漏らしている。
このままだと、手を出してしまいそうだ。煽情的な山吹を見せつけられた桃枝は、グルグルと渦巻く煩悩を持て余してしまう。
だが、その直後。
「……っ。……し、ぃ……」
「山吹?」
上に乗った山吹の様子が『おかしい』と、桃枝が気付いた時には……。
「──白菊さんの、ペニス……お腹の奥まで、ほしい……っ。……白菊さんを、独り占めしたいよぉ……っ」
山吹は、泣き出してしまっていた。
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