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第2話
まず最初は無口無表情な顔の生徒会書記、原田 千景 様…人見知りで気を許した相手以外と話さないらしい。
よく寝ているという情報しか知らない。
そしてそんな原田様が気を許している一人であるもじゃもじゃ頭の少年の名前は進藤 涼志 、去年転校してきた転校生なのに生徒会補佐に任命された。
色仕掛けしたとかいろいろ言われてるが、言われてもしょうがないのかも…実際生徒会二人が転校生に恋してるから…
俺は他人事だが親衛隊としては苦い気持ちなのだろう…仏の親衛隊と言われても恋する男の集団だからな(俺以外)
原田様と楽しげに話す転校生との間を割って入る美人な人がいた。
彼の名前は俺が親衛隊に入ってる生徒会副会長の滝川 清隆 様だ。
美人な容姿とは裏腹に中身が真っ黒な腹黒い性格だと言う。
この二人はお互いライバルのように転校生の取り合いをしているみたいだ。
この学園は男子校だからか異性が居ない反動で同性を恋愛対象にしてる生徒は少なくない。
…俺は小さい頃にした初恋以外恋をした事ないから関係ないけどね、俺みたいな平凡を恋愛対象にする奴もいないだろうし…
そしてそんな二人に全く興味なさげにさっさと先に行くのがチャラい容姿で可愛い生徒が思わず「抱いて」と叫んでしまいそうなほどだが本人は女好きだから男子生徒に興味がない生徒会会計、支倉 統乃
統乃…俺の義理の弟であり、今の支倉家の次期当主だ。
…統乃に迷惑掛けないためにも俺は知られてはならないんだ。
しかし、昔は可愛かったのになんであんなになっちゃったんだ?
入り口でまだ喧嘩する二人を見て呆れた顔をする生徒。
「入り口で突っ立ってたら邪魔だろ、早く行くぞ」
彼は学園で一番人気があり信頼も厚い生徒会長、長嶺 翔 。
黒髪の男らしい整った顔立ちで容姿としても人気が高い。
そして今、統乃の執事をしている。
……元俺の執事だった男だ。
しょうちゃん……
彼は俺がこの学園にいる事を知らない…知らなくていい、今の俺は借金まみれの貧乏人…会わせる顔がない。
そう、思っていた…
「佐助様っ!!」
「…っ!?」
あぁ…最悪だ…こんなドジを踏むなんて…
名前は知ってるが俺の今の容姿は知らないからバレないと思ったのに…
お金がもったいなくて親衛隊の集会が終わり、何も食べずに食堂を出て購買でパンを買った…それまではいい…
いつも通り中庭で食べて教室に戻る前にトイレに行こうと思い校舎に入りすぐのトイレに入った。
用を足し、手を洗おうとしてついでに顔を洗おうと眼鏡を外したのが間抜けだった。
最悪な偶然に、アイツまで同じトイレに入ってくるなんて思わなかった。
このトイレは普段人気がないから油断した。
生徒会長の長嶺翔は驚いた顔をしてこちらを見ていた。
…入り口にいると無視して帰れない。
「…ひ、人違いです」
「俺が佐助様を見間違うわけがありません!」
何処からそんな自信が出てくるんだ?
俺と翔は10歳までしかいなかったから容姿も変わってるだろうに…
…適当に誤魔化してさっさと帰ろう。
眼鏡をかけ直し翔の前に立つ。
「お、俺は佐助という名前じゃありませんから…失礼します」
俯いているから翔の顔は分からない。
無理やりにでもトイレから出ようと翔の横を通ろうとしたら翔が呟いた。
俺は一瞬だけ翔の顔を見た。
「…俺はずっと探していたのに、なんでそんな…嘘を付くのですか?」
また泣きそうな顔…
昔の俺ならきっと頭を撫でて慰めていただろう…年上なのに泣き虫だったから…
でも、今の俺の手は汚すぎる…綺麗な翔には触れないんだ…ごめん。
俺はそのままトイレのドアを開いた。
翔は追いかけてはこない…そりゃあトイレに用事があったんだから当たり前だよな。
下を向いた時、翔の腕に白いものが見えた…あれは包帯だ。
俺が子供の頃に翔に傷を負わせた場所、まさか後遺症が残ってるのか?
…俺を探していたと言ったが…きっと恨んでいたのだろう。
償わなくてはいけない、でも…今の俺が翔の近くにいたら迷惑になる。
どうしようかと悩んでいたらポンといきなり肩を叩かれて翔だと思い顔を隠して叫んだ。
「ちっ、違います!俺は佐助じゃ…」
「いや佐助だろ」
呆れた聞き覚えがある声がして顔を隠していた腕を外し見ると友人の平凡な顔が見えた。
…なんだ、塁か。
俺と同じ貧乏だから親近感が湧き仲良くなった立花 塁 は俺に教材を渡した。
「何言ってるかさっぱり分からないけど次移動だろ?早く行くぞ」
「あ、ありがとう…」
ちょっと翔かと思って期待していた自分が嫌になる。
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