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第4話

考えたのは誰だと思ったら親衛隊の子が「滝川様の素晴らしい案でしょ!」と言うから「そうだねぇ」と心にもない事を言った。 先輩後輩はクジで決まるらしく後輩達は人気者の先輩に当たるように祈っていた。 俺のパートナーになった子はごめんねと心の中で思った。 クジを持つのは生徒会顧問で俺のクラスの担任の伊藤(いとう)有朋(ありとも)先生だった。 この先生は見た目美人なのに怖い先生だと有名だ。 「早く引け」 「…はい」 怒られてしまいクジの紙が入った箱に手を入れた。 そして紙を掴みそそくさと退散した。 だから俺を見つめる翔の視線に気付かなかった。 「えー、僕のパートナー先輩ですか?」 「…うん、ごめんね」 女の子と見間違うほどの可愛い顔をした後輩はこれでもかと顔を歪ませて拒絶した。 …しかし選べないから我慢してほしい…選ぶと絶対人気者達に集まるから… 無意識に目で翔を探してしまう。 翔はもじゃもじゃ頭の生徒会補佐と足を結んでいる。 …あれ?生徒会補佐って俺と同じ二年じゃなかったっけ。 俺が見ている場所が気になったのか後輩も目線を追いため息を吐いた。 「いーなー進藤先輩、人数が合わないからって長嶺様と二人三脚出来るなんて」 「…そうなの?」 「先輩のくせに知らないんですか?」 先輩だって知らない事はあると思うんだけど… そろそろ俺達も結ぼうと足を紐で結ぶ。 周りは後輩と仲良くしてる人が多いな…きっと息が合うようにコミュニケーションをとってるのだろう。 俺もコミュニケーションをとった方がいいかとチラッと後輩を見ると後輩は不満気な顔で仁王立ちしていたからコミュニケーションは無理だなと諦めた。 「それじゃあ制限時間は1時間、鬼は生徒会役員と運動部…そのパートナーとなります…もし逃げ切れたら景品もありますので皆さん頑張って下さい」 長嶺会長が話し終わると笛が吹かれた。 鬼は10分後にスタートだから出来るかぎり影を薄くして逃げよう。 後輩と腕を組み歩き出す。 本当は声を出した方がタイミングが合うけど鬼に居場所を知られるようなものだからな。 「確か校舎の中は入れるんだよね」 「じゃあ早く行きますよ!」 歩くスピードが合ってないから俺が引きずられるようにして進む。 校舎の中なら隠れる場所が多いからやり過ごせるかも… やっぱり皆考える事が一緒なのかぞろぞろと校舎の中に入る。 「もー!これじゃあすぐ見つかっちゃうよ!」 「…そうだね」 何処か隠れる場所を探しているとグラウンドからもう一度笛が吹かれた…鬼がやってくる合図だ。 何処でもいいから隠れる場所をと探していると、後輩が俺の服の袖をちょんちょんと引っ張った。 なんだろうと後輩を見ると顔を赤くして両足を擦り合わせてもじもじしている。 「あー、おしっこ?」 「そんな大声で言わないで下さい!」 後輩は怒りながら足を結ぶ紐を解く。 …俺、普通に言っただけなんだけど…生娘みたいな後輩だなぁー… このまま走ったら失格だけど、トイレまで着いていくのは俺も後輩も嫌だから少しだけなら許されるよね。 近くのトイレに駆け込むのを眺めていた。 …そこまで限界だったのか。 ボーッと立っていたら、向こうの方から誰かの話し声がした。 どうしよう、まだ後輩はトイレにいるし…紐外してたらなにか言われそう。 俺は急いでトイレに入る。 後輩は個室にいるみたいで一つ閉じられた個室を数回叩いた。 「誰か来たみたいだからしばらくそこにいて」 「えっ!?ちょ、ちょっと!!」 慌ててる後輩だが出てくる気配はない。 俺も隠れようとトイレから出る。 紐もそうだし、二人一緒にいたら捕まえて下さいと言ってるようなものだからな。 俺はわりと景品に食いついている。 だって景品はいつも食券とかだから食費が浮くと張り切っていた。 俺が一年の時は借金で頭いっぱいだったから参加はしてない。 今年の景品は詳しく発表されてないが食券だと信じている。 こんなところで捕まるわけにはいかない。 声が近い、俺は何処でもいいから教室に逃げ込むように入った。 そこで気付いた。 ここは教室じゃない…机に紙や本などが積んである。 ソファーにテーブルに一見理事長室のような高級感がある…理事長室に入った事はないが、なんとなく… ここ…もしかして… 声の主達は不幸な事にこの場所に用があるのか近付く足音がして、周りを見渡し隣の部屋らしき扉を開けて隠れた。 この部屋にさっきのより少し大きめのソファーが置いてある…仮眠室か? とりあえずドアの前で腰を下ろし、入ってきた人物達が立ち去るまで静かにしてる事にした。 「何でだよ!」 「…だから無理だと言ってるだろ」 何だか言い争いをしながら入ってきた。 聞き覚えがある二人の声だった。 …やっぱりこの場所はそうなのか。 一人はよく知る翔の声、もう一人は翔と一緒にいるからパートナーの生徒会補佐だろう。 そしてこの場所は生徒会室だ。 …最悪だと思いつつ身動きが取れない。 生徒会補佐が声を荒げて怒ってるようだ。 …聞いていい内容じゃないよな…耳を塞ごうとしたら聞こえた言葉に手が止まる。 「好きなんだよ!翔!」 「………」 ……え?好き?翔を…? 一瞬空耳かと思ったが、黙る翔に生徒会補佐はもう一度言った。

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