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第6話

頭を優しく撫でているような感じがした。 懐かしい夢を見ていたから錯覚したのだろうか。 なんか、手つきがしょうちゃんに似ていた。 そんなわけないのに、だってしょうちゃんは今頃生徒会補佐と… そう考えると胸が締め付けられて涙が流れた。 それを優しく拭う指の感触がした。 違う、これは錯覚じゃない…? ゆっくりと目を開けると、薄暗かった仮眠室が閉められていたカーテンを開けられ、明るくなり目を細める。 だから目が慣れてなくて俺を覗き込む人物が分からなかった。 床に座ってた筈なのにベッドで寝ていた。 「佐助様、気が付かれましたか?」 「…うっ、しょうちゃん?」 翔の声がする、これは幻聴なのか? 涙で醜い顔の俺の頬を撫でて俺の涙を再び拭く優しい手つきにまた涙が流れた。 心配そうに見つめる翔が愛しくて、大好きで幻覚でもいいからと抱きしめた。 翔は驚いていたが、恐る恐る背中に触れ慰めるように撫でていた。 俺は子供に戻ったように昔の呼び名で翔を呼ぶ。 今が謝るチャンスだと思い口を開いた。 「しょうちゃん、ごめんなさい…俺、しょうちゃんに後遺症を負わせて…」 「え?後遺症?…何の話ですか?」 しょうちゃん分かってるくせに、知らないフリをするんだ。 …それがしょうちゃんの優しいところでもあり残酷なところだ。 俺はしょうちゃんから離れて腕に巻かれた包帯に触れるとやっと気付いたのかしょうちゃんは俺を見て… 「……もしかして、ずっとコレを気にしてたんですか?」 「そりゃあ気にするよ、だってしょうちゃんにまだ包帯を巻くほど酷い怪我を…」 俺の言葉を遮るようにしょうちゃんは包帯を解いていく。 …見なくてはいけないのに、見るのが怖い。 包帯全て床に落ちる。 そして俺は何の傷もない綺麗な腕を見て驚いた。 包帯には僅かに血が付いていたのに、どういう事だ? 「しょうちゃん、治ってたの?」 「…傷は一ヶ月で治ったんです」 「じゃあ、どうして包帯を…」 「俺にとって大事なのは傷じゃなくて包帯の方なんですよ」 そう言うしょうちゃんは床に落ちた包帯を大切に抱きしめる。 …よく見ればその包帯はかなり古い包帯だった。 もしかしてその包帯…子供の頃怪我をした時に巻いていた包帯? 「この包帯はもう治って見れない大切な傷を思い出してくれるものなんです」 「………傷」 「俺は佐助様が俺に与えてくれる全てが宝物なんです…傷も触れた体温も」 そう言うしょうちゃんは俺の頬に触れた。 俺は目が慣れてやっと起き上がり座りながらしょうちゃんと向き合う。 しょうちゃんは再び包帯を腕に巻いていた。 「申し訳ございません、これが佐助様の負担になっているなんて」 「…しょうちゃんは…俺の事、恨んでないの?」 「まさか!貴方に何されても恨む事だけは絶対にありません、俺は…ずっと佐助様を…愛しているんですから」 また頬に涙がつたう。 これはどんな涙なのか分からなくなってきた。 とにかく今は頭を撫でてほしかった… しょうちゃんは俺の気持ちが分かるのか撫でてくれた。 俺は…自分の気持ちを全てしょうちゃんにぶつけたい…溢れてとまらない。 「お、俺…貧乏で…借金しかなくて、ほんと…どうしようもない落ちこぼれだけど…でも、しょうちゃんが誰かに取られるのは見たくない!俺だってしょうちゃんを大好きだから!!」 「…佐助様」 しょうちゃんは俺を優しく抱きしめてくれた。 昔と違い、頼りになる胸の中で俺は目が赤くなるまで泣いた。 …もう、泣き虫で弱いしょうちゃんじゃないんだなと立場が逆転した今、そう思っていた。 しょうちゃんと両想いになれたって思っててもいいんだよね。 そういえば何故しょうちゃんは仮眠室に来たんだろう、寝相が悪くて物音で気付いたんだろうか…だったら恥ずかしい。 「しょうちゃん、その…会話してたみたいだけど、いいの?」 「…聞いてたんですか?そういえばなんで仮眠室に?」 仮眠室にいた理由、誰かに見つかりそうだったから隠れただけなんだよな。 それを話すと納得してくれた。 今度はしょうちゃんが話した。 「進藤はうるさいから起こしてしまうと思い、佐助様を見つけてバレないように進藤に帰るように言ったんです」 そうだったんだ、寝てたから知らなかった。 しょうちゃんの温もりが暖かくて瞳を閉じた。

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