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3話
本当に玲音というのは、この仕事を楽しみにしているのかノリノリだ。
確かに諒馬だって、この仕事に関しては嫌いではないのだが、玲音のようにそこまでノリノリではないようにも思える。
「ねぇ、ねぇ! 諒馬くーん! ホント、今日はどんなのがいーい?」
玲音の場合には諒馬に対していつもこんな感じだ。 玲音には京平という恋人がいながら諒馬にもこう甘えた感じで、しかもこうも人懐っこい。 だから逆にそこがいい所なのかもしれないのだが。
だって誰もが緊張するようなお仕事の初日に、ああ懐っこく声を掛けられたなら緊張感だって和らぐからであろう。 今だって諒馬に対して懐っこく来るのだから。
「コスプレ? 玩具?」
「それ、さっき聞いてたじゃんかぁー」
「だって、そこは、諒馬君が答えないからでしょー!」
『ま、そうですけどー』と言いたい所なのだが、どうしても玲音の場合には答えられないのは気のせいだろうか。 そこは諒馬は置いておいて。
「とりあえず、コスプレとか玩具とか? って、逆に聞くけど、玲音は何がしたいの?」
二人はスタジオ内に来て、ちょっとした休憩室でソファに座って話し始める。 そして玲音の方は諒馬の質問に視線を天井を向けて考えているようだ。
「そうだなぁー、実際何がいいんだろ? だから、諒馬君に聞いてんだけどー! 言ってくれなきゃ、今日、諒馬君もネコ側にしちゃうぞ!」
そう笑顔で脅して来る玲音。 本当にそういう所は玲音の怖い所だ。
「ん、まぁ……諒馬君がネコっていうのも面白いからいいんだけどねぇー。 で、どうするの?」
そう今度は諒馬の太腿に両手を付き、迫る感じで聞き始める玲音。
「あ、え? そ、そうだなぁー?」
本当に勘違いする程、玲音という人物というのはくっついて来るもんだ。 そう勘違いというのは恋人とか好きな人とか、そんな風にされると誰もが勘違いしそうになるもんだろう。
だが、玲音には京平がいる訳だし、勿論、諒馬にもこの業界に入ってから成都という恋人が出来たのだから。 だからこうやってくっついて来られるのは非常に困るまではいかないまでも勘違いしかねない。 だが、実際、京平は玲音のそんな行動に気にしてないようにも思える。 寧ろ京平はスタッフさんと仕事の打ち合わせみたいなのをしているのだから。
これでは諒馬は京平に助けを求める事さえ出来ない。 いや寧ろ京平はその玲音の行動は気にして無いという事だろう。
「なんだろ? 俺達って、もう既に色々とやって来てるからなぁー。 でも、生配信は初めてなんじゃないかな? そこで、やるものーってなぁ? ま、最後にアレじゃない? さっき、社長が言っていたように『重大発表!』とか言って、『僕達、アイドルもやります!』って宣伝するのもいいんじゃないかな?」
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