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②
「すまない、邪魔をしてしまって…」
元気なく項垂れ、謝罪を口にする綾兎。
あれから逃げ出したはいいが、何処行く宛てもなくて。
迷った挙げ句辿り着いた場所は…
「そんな…迷惑なんかじゃないよ、綾ちゃん!」
唯一の親友である、佐藤 保がいる屋上…だった。
普段、殆ど生徒が自主的に立ち寄らない屋上。…理由はカンタン。
「たく、あの駄犬は…自覚が足りなさ過ぎだろがよ。」
呆れたように吐き捨てた人物…この学校で最も恐れられる孤高のヤンキー、上原 昭仁の縄張りだから…である。
…と言っても、本人はサボって昼寝に利用するくらい。保と付き合うようになった今では、ふたりでお昼を過ごしたりするだけだったが…。
そんな恋人達の前で、きっちり正座して頭を下げる綾兎と慰める保。突然、綾兎が泣きそうな顔でやって来た時は、何事かと驚いたけれど…
珍しく弱気な親友から、事情を聞いたふたりは。
思わず互いの顔を見合わせた。
「……つまりその1年生の津田君てコが、芝崎君につきまとってるわけだね?」
よしよしと綾兎の背を撫でながら、話を纏めていく保。
対する上原は淡々としていて。
「要はヤキモキだろ?だったらソイツにはっきり言ってやれよ。」
“芝崎の恋人は自分だ”…と。
それがすんなり出来るなら、苦労はしない。
だが綾兎は人一倍不器用で、無口な性格。
加えて芝崎から、あれだけ判り易い好意を寄せられようとも。自信を持って恋人宣言出来るほど、自惚れる事すら出来ないから…
「芝崎のヤロウも、水島にベタ惚れなクセに。そういうトコ気が利かねぇからなぁ…」
「アイツは、優しいから…」
芝崎にはあくまで辛口な上原。
それは最もだと思いつつも。どこまでも弱気な綾兎が、それに頷く事はなく。芝崎を庇護するかのよう、苦笑を浮かべる。
「でもさっ…綾ちゃんは、それでいいの?」
嫌なんでしょ?と問う保は、まるで自分の事のように表情を曇らせており。綾兎もこれには戸惑いながらも、コクリと小さく頷いてみせた。
そんな親友のいたいけな姿に、心打たれた保は。縋るような思いで、隣りの上原を見上げると…
頼もしいかな保の恋人は、任せておけとでも云わんばかりに目配せで返してくれた。
「水島。やっぱソレ、本人に直接言っちまおうぜ。」
そう告げて、ニヤリと笑みを浮かべた上原は。手にしていた携帯電話をチラつかせる。
暫くすると────…
「先輩っ!!」
バンッと勢い良く、屋上のドアが開け放たれ…
息を切らしながら現れたのは、噂の中心人物である芝崎、と…
「待ってよ~、健太郎センパ~イ!」
案の定…ちゃっかりとついて来てしまった、オマケの津田少年。
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