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佐藤クンと芝﨑クン
季節の変わり目、ぐつついた天候のとある日。
『あ。』
偶然にも、芝崎くんに遭遇した。
芝崎くんは、僕の親友である綾ちゃんの彼氏さんで…。彼はひとつ後輩なんだけど。お互い同性の恋人を持つなんていう、ちょっと特別な間柄…だったりする。
「すみません、佐藤先輩…」
「気にしないで。こんな濡れてるのに、放って置けないからさ。あ、上がって?」
おじゃましまーすと、体育会系なノリで家へと上がる芝崎くんは。突然降りだした雨のおかげで、全身ずぶ濡れとなっていて…。
傘もささず走ってるところに、ちょうど僕と出くわしたんだけど。彼の家より僕の家のが近かったものだから。雨宿りも兼ねて、家へと招き入れたというわけだ。で…
「身体冷えてるでしょ?シャワーだけでも浴びてきなよ。」
この時期の雨は冷たいだろうからと、お風呂を勧めたけれど。謙虚な芝崎くんは、申し訳ないとばかりに首を横に振る。それでも僕がしつこく勧めると。
「じゃあ、遠慮なく。」
そう苦笑して。風呂場へと向かってくれた。
「やっぱり、おっきいなぁ~。」
芝崎くんがお風呂に入ってる間に、濡れた制服を乾かしてあげる。
僕の彼氏…である上原君も、長身だし逞しい方なんだけど。元スポーツマンな芝崎くんの制服は、更に一回りは大きくって立派だった。同じ男としては羨ましい限りだよね。
…と、制服をハンガーに掛けているところに。
「ただいま~。」
「あ、お母さん!」
うちのお母さんが仕事から帰ってきたみたい。
「おかえりなさい。今日は早かったんだね?」
「シフトが急に変わってねぇ。したらこの雨でしょ?」
参ったわ~とお母さん。恰幅のいい笑顔を浮かべ、パタパタと雫を散らす。外は未だに土砂降りだった。
「けど久し振りに、保とゆっくりご飯食べようと思ってね。急いで帰ってきたんだけど────」
そう言って、僕の手元を見やるお母さん。
明らかに僕のサイズでは無いソレに気付いたお母さんは、にんまりと顔を緩めて…
「お邪魔だったみたいねぇ?」
「え?」
疑問符を浮かべる僕に、惚けなくてもいいのに~とお母さん。一体何のことを言ってるんだろうか?
「んもうっ。保ったら、ちゃんと紹介しなさいよって言ったじゃないの。」
「んん?」
ひとり盛り上がってるお母さんを余所に、まだ状況が飲み込めない僕。
暫くそんなやり取りをしていたら…
「佐藤先輩~、バスタオル勝手に使っ────」
僕らの前に風呂から上がった芝崎くんが、腰にタオルを巻いた状態でやってきてしまった。
必然的に固まる空気。
僕だけだと思い油断してた芝崎くんは、お母さんに気付いた途端、オロオロと慌てふためいた。
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