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②
side.Akihito
「よぉ、保…」
『あ、上原?…声、少し嗄れてるね。やっぱり具合悪くなっちゃったんだね…』
返事した途端、何故かゴメンと元気なく頭を下げた保に。俺は溜め息混じりに苦笑する。
「バカ、んでお前が謝んだよ?」
『だって、昨日僕が買い物につき合わせて、無理させちゃったからっ…』
電話越しでも判るくらいに、落ち込んでしまった保。
きっと眉尻下げて、泣きそうな面してんだろうなって想像したら。今すぐにでも学校まで行って、抱き締めてやりてぇとか思っちまう。
けど…
「お前の所為じゃねぇよ。それこそ風邪なんてヤワなモンに掛かっちまった、俺が悪ィんだし…」
『そんなコト────ああっ…そだ、薬は飲んだ?ご飯とか、ちゃんとあるの?』
「ん~…ま、風邪なんざ寝とけば治んだろ。」
ババアは仕事、家にはひとりきりだし…と軽く流してたら。携帯からいきなり『ダメ!』だなんて、ノイズが走るくらいのデケェ声で一喝されちまった。
保…俺、一応病人なんだけど…?
『僕、後でお見舞いに行くから…』
心配してそう申し出てくれんのは、スゲェ嬉しんだけど…。
「いいって…風邪、移んだろ?」
でもと言い張る保に、俺は誘惑を押し退け。
その言葉を遮る。
「大丈夫だって。大したコトねぇからさ…」
ホントはかなりダりぃけど、弱音なんざ吐きたくねぇし。保には迷惑かけらんねぇからな…。
あんまし長話すっと、このまま流されちまいそうだったから。適当に話つけて、俺は一方的に電話を切った。
そのまま力尽き、勢い良くベッドに身体を沈める。
(あー…やっべぇなぁ────…)
へばってる時ほど、人恋しくなるもんなのか…。
声聞いた途端、会いてぇとか情けない事を考えちまう。
こんな事なら無難にメッセージで返ししとくんだったと、後悔したって後の祭り…
まぁ、アイツと話したかったってのが…本音なんだけどな。
(…保……)
たった一日、会えないってだけで。
こんなにも恋しくなるだなんて。
惚れた弱みっつうか、俺も随分ノロケちまったもんだなと…自嘲しては苦笑う。
『上原君─────…』
熱のおかげなんかな…さっききいた保の声が、リアルに頭ん中で再生される。
そんな願ってもない幻聴に包まれながら。
俺はもう一度、意識を手放した。
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