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side.Akihito 「よぉ、保…」 『あ、上原?…声、少し嗄れてるね。やっぱり具合悪くなっちゃったんだね…』 返事した途端、何故かゴメンと元気なく頭を下げた保に。俺は溜め息混じりに苦笑する。 「バカ、んでお前が謝んだよ?」 『だって、昨日僕が買い物につき合わせて、無理させちゃったからっ…』 電話越しでも判るくらいに、落ち込んでしまった保。 きっと眉尻下げて、泣きそうな面してんだろうなって想像したら。今すぐにでも学校まで行って、抱き締めてやりてぇとか思っちまう。 けど… 「お前の所為じゃねぇよ。それこそ風邪なんてヤワなモンに掛かっちまった、俺が悪ィんだし…」 『そんなコト────ああっ…そだ、薬は飲んだ?ご飯とか、ちゃんとあるの?』 「ん~…ま、風邪なんざ寝とけば治んだろ。」 ババアは仕事、家にはひとりきりだし…と軽く流してたら。携帯からいきなり『ダメ!』だなんて、ノイズが走るくらいのデケェ声で一喝されちまった。 保…俺、一応病人なんだけど…? 『僕、後でお見舞いに行くから…』 心配してそう申し出てくれんのは、スゲェ嬉しんだけど…。 「いいって…風邪、移んだろ?」 でもと言い張る保に、俺は誘惑を押し退け。 その言葉を遮る。 「大丈夫だって。大したコトねぇからさ…」 ホントはかなりダりぃけど、弱音なんざ吐きたくねぇし。保には迷惑かけらんねぇからな…。 あんまし長話すっと、このまま流されちまいそうだったから。適当に話つけて、俺は一方的に電話を切った。 そのまま力尽き、勢い良くベッドに身体を沈める。 (あー…やっべぇなぁ────…) へばってる時ほど、人恋しくなるもんなのか…。 声聞いた途端、会いてぇとか情けない事を考えちまう。 こんな事なら無難にメッセージで返ししとくんだったと、後悔したって後の祭り… まぁ、アイツと話したかったってのが…本音なんだけどな。 (…保……) たった一日、会えないってだけで。 こんなにも恋しくなるだなんて。 惚れた弱みっつうか、俺も随分ノロケちまったもんだなと…自嘲しては苦笑う。 『上原君─────…』 熱のおかげなんかな…さっききいた保の声が、リアルに頭ん中で再生される。 そんな願ってもない幻聴に包まれながら。 俺はもう一度、意識を手放した。

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