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side.Akihito 「ん?てか…お前、学校は…」 「えっ、あ~…えっと────」 たまたま視界に入った時計は、まだ14時を少し過ぎたとこを差していて。 当然学校はまだ終わってねぇハズだよな、と問い質せば。保は悪戯がバレた子どもみたく、目を泳がせ口ごもってしまう。 「サボったのか…?」 聞けばうんと、申し訳なさそうに頷く保。 「たく…無理に来なくてもいいっつったろよ?」 そう口先では突き放すものの… 保がここにいる理由を解ってるもんだから。 自然と顔が、緩んじまうわけで。 しかも… 「だって、さっ…」 心配だったんだもん…と。唇を噛み締め、弱々しく答えた保に。 風邪からくるものとは別モンの…甘っちょろい熱が、一気に込み上げるてくるのを。犇々と、感じずにはいられなかった。 「と、とにかく…!上原君は病人なんだからっ、」 大人しく寝ててよと、誤魔化すよう告げながら。 保はいそいそと、俺から離れちまう。 すると俺の身体は途端に温もりを失い、妙に肌寒くなっちまった。 「そだ…僕ね、薬とりんごを買ってきたんだよ。」 話題を変え、買い物袋を示す保は台所を借りるからと告げ、さっさと部屋を出て行く。 そうして誰もいない事をいいことに、こっそりとニヤける俺。 保の手前、我慢してたけど。 ちょっと感慨に耽ったりもして…。 相変わらず身体は鉛みてぇに重かったし。こんな情けねぇ姿をアイツに晒すには、恋人としての抵抗もあったけど… (悪くねぇな…) アイツを嫁に貰ったら、毎日こんな感じだろうか?とか…つい可笑しなコトを考えちまうから。 どうやら今の俺は思いの外、熱でイカれちまってるみてぇだ。 「お待たせ~。」 暫くして、保がトレイを手に部屋へと戻ってきた。 ガラステーブルに置かれたそれには、水の入ったグラス。隣の皿には、器用に皮を剥いたりんごが盛られていた。 そのうち半分くらいウサギにしてるあたりが、なんだかコイツらしい。

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