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side.Akihito 「食欲ある?薬飲むなら、少し食べてからの方がいいんだけど…」 「……食う。」 腹減ってるワケじゃなかったが、せっかく保が剥いてくれたんだからと踏ん張って身を起こす。 甲斐甲斐しく支えてくれるとこが、出来た嫁さんみてぇだ。 勿論、俺のになる予定なんだけどな? 「じゃあハイっ、」 「ッ……!」 なんの躊躇いも無く、アーンと自分の口を開けながら。フォークに刺したリンゴを差し出してきた保に、固まる俺。 どうしたもんかと、俺の方が躊躇してたら。 食べないのかと不安にがる保の視線とぶつかり… 根負けした俺は潔く保を真似て、大きく口を開いてやった。 それを認め、ホッとしたよう顔を緩める保。 俺ってホント、コイツにだけはとことん甘ちゃんだよなぁ…。 「おいし?」 「ん?…ああ。」 正直なとこ味覚も麻痺してっから、味なんて一切判んなかったけど。 もそもそリンゴをかじりながら答えりゃ、保がにっこり微笑むもんだから…。 病気なんざ、めったやたらにするもんじゃねぇけど。 今日の保は特別サービス良いから。 これはこれで、案外と…役得だったかもしんねぇ。 「あとコレも飲んでね。」 りんごを食べ終わると、今度は錠剤を寄越してきた保。 病気は基本気合いで乗り切るタイプだから、薬とかに頼りたくはなかったが。そこはお約束、黙って従う事にする。 薬を水で一気に飲み下し、空になったグラスを保に渡すと。俺はハァ…とひと息吐く。 保がいるおかげで、多少気が紛れるが。 これで結構フラフラなんだよなぁ。 恋人としては、なんとも不甲斐ねぇ話だけど…。 「キツいでしょ、上原君は横になって安静にしてて?」 「ああ…。なぁ、保…」 片付けるからと、立ち上がりかけた保の袖を掴み、引き止める。 「…お前は……」 「うん?」 どうすんだと、保の顔を見上げる。 しかし鈍感なコイツが、俺の心中を簡単に察してくれるハズもなく… スッゲェ言いにくい話だったが、俺はぶっきらぼうな口調に任せ独り言みたく。保に向け、遠慮がちにも言い放った。 「…帰んなよ……」 来るなって言っときながら、いざとなるとお前が恋しくて堪らない。 くらりとする意識を擡げ、 じっと保を見据えながら、応えを待ちわびていると… 「…いるよ、ちゃんと。」 傍にいるから…俺を安心させるよう、保はふわりと笑って。手にしてたトレイを一旦テーブルに戻すと、ベッドサイドに手を付き跪いた。 コイツに導かれ、俺も身体を布団へ委ねると…。 途端に誘発的な睡魔が襲ってきた。 「保、手…」 目を伏せながら手を差し出せば、すぐに絡められた保の指。俺のよりひと回りも小さくて…細長いんだ、コイツの指は。 今はじんと冷たくて。 それが高温の肌に、心地良く馴染む。 「早く元気になってね…」 じゃなきゃ寂しいから、と。 保の声で紡がれる音に耳を傾けながら… 手の中の温もりを抱き締め。 俺は穏やかな眠りへと、落ちていった。

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