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⑥
side.Akihito
(…ん……)
薬が効いてきたのか…幾分、倦怠感や節々の痛みも抜け落ちてきたようで。
全身から吹き出る汗に、今度は暑苦しさを覚え。
俺の意識は微睡みの淵から、徐々に這い上がってく。
それでもまだ完全に目覚めるには至らず。
夢と現の真ん中辺りで、ウトウトしていたら…
ふいに与えられる感触に、気がついた。
(…コレ、は……)
唇─────そうだ…今俺の唇にあるのは、同じ柔らかな温もり。
ふにゃりと押し当てられるだけのソレが。
遠慮がちながら何度も何度も…微かな吐息と共に降り立ってくるのが判る。
夢…なんかじゃねぇ。
風邪で寝込んでる俺に、今こんなコトをしてくるのは…
「…ん……」
バレないよう薄く目を開けると、目の前のコイツは律儀にも目を閉じていて。
見られてるとも知らず、頬を染めながら。
ちゅっちゅと可愛らしいキスを…俺へと施してくる。
(…マジかよ、保……)
やられた…普段ならこんなコト、恥ずかしがってまずしてこねぇクセに。
人が寝てると思ったら、んな大それたコトしやがるだなんてな…
あまりに珍しく、また可愛すぎるその行為を目の当たりにして。
俺は敢えて黙ったまんま、寝たフリを決め込むと。暫しその姿を堪能する事にした。
すると…
「……わわッ…!!」
キスの合間、僅かに目を開けた保とバッチリ視線が合わさってしまい。驚愕に弾かれ、離れようとした保。
俺は思わず、ニヤリと口角を上げる。
「なんだよ?今の…」
「ちがっ…ぁ……」
逃がすかとばかりに腕を掴み、顔を近付ける。
捕らえた視線は羞恥に駆られ、見る間に赤く涙目となり。困惑する保は、その瞳を気まずげに泳がせた。
「これはっ、そのっ…」
まるで叱られた子どもみてぇに、しゅんと項垂れる保。本気で俺に怒られると勘違いしてんのか、今にも泣き出しそうな勢いだ。
そんな態度に、ついそそられちまった俺は。
怯える保の頭を宥めるよう、くしゃりと優しく撫でてやった。
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