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⑦
side.Akihito
「怒んねーから、言ってみな…?」
宥めるよう髪を鋤いてやりながら、ふわりと笑ってみせる。
暫くすると保は、怖ず怖ずと俺を見上げてきて…。
重たげなその口を、ゆっくりと開いた。
「きっ…キス、したらさ…治るって言うでしょ…?」
「……はぁ?」
だからっ、と保は茹でダコみてぇな面して答える。
ベタな理由ながらも、まさかコイツがそんな迷信紛いのコトを、本気で実行してくるなんざ思いも寄らなず。
俺は驚くあまり、すぐには反応出来なかったんだが…
「お前、なぁ…んなコトしたって、ムダに風邪移るだけだろがよ…」
今時んな話を鵜呑みにするとか、少し考えれば判るハズなのに、たくっ…。
そう口では呆れつつ、内で浮かれてんのをただ誤魔化してるだけなんだが。
保はあくまで真剣だったみたいで…
「だって、学校来ても上原君いなくて…。メッセージも既読付かないし、電話も繋がんなかったからっ…」
“寂しかったんだもん…”
潤んだ瞳で凄む保は言い切った後、俺の汗で湿気ったシャツをギュッと握り締めてきた。
その手からコイツの想いが小さな振動となり、伝う。
「だからって…お前まで風邪引いちまったら、意味ねぇだろ?」
そしたら今度は俺が寂しいじゃねぇかよ…。
じっと見つめ合いながら、間近にある保の頬に触れると…
「いーよ…それで上原君が元気になってくれるなら…」
今日に限ってえらく頑固で可愛い、恋人の行動に絆されてしまった俺は…
堪えきれず、その顔を自ら引き寄せた。
「ンッ…はぁ……」
熱で少しフラつく意識を奮い立たせ、保の口内に舌を捻込む。
風邪が移るとか既に今更。
お構いなしに俺は本能に任せ、保の甘い唇を味わう。
「んぅ、あっ…」
息苦しさに名残惜しくも唇を離せば、うっとりと保に捕らえられ。赤く色付いた唇を繋げていた糸が、ぷつりと切れ…情欲を引き立てる。
「お前のカラダ、もう熱が移っちまったみてぇに熱いな…」
「あっ…」
低く唸り、ペロリと舌で保のぽってりした唇を舐め上げる。
そうすりゃ保は、過敏にビクビクと肩を揺らして。
首まで真っ赤に上気させながら、艶っぽい悲鳴を漏らした。
コレは、ヤベェな…
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