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エール1-10

「あ、もしかして善、この子なん?」  長い足を交差し、机に腰掛けたままそう千秋に問いかけたのは、二年生で千秋と同じクラスの鳥越(とりごえ)だ。背中まである金色の髪がサラリと揺れる。青い瞳は鳥越がアメリカ人とのハーフであるからだ。  その横でどっしり構える体格のいい寡黙な三年生は、団旗も担当する可南(かなん)。もともと柔道部で全国制覇もしたことがある大柄の男だ。黙ったまま密紀と千秋の横を通り過ぎ廊下に出て行く。 「五人なのには訳があってな」  千秋が密紀の緊張を解すように、肩に置いたままの手をゆっくり一つ叩く。それでもこの面子を前に緊張するなと言う方が無理で、密紀はほとんど息もすることができないまま両手を胸の前で組む。察した二階堂が更に優しく微笑んだ。 「今朝ね、団員の一人が急に引っ越してね」 「そんな大事なこと言うとけっちゅーねん」  金髪碧眼の容姿からは想像しなかった関西弁が鳥越の口から発されて、密紀は目をぱちくりさせる。 「お別れが寂しかったんだってー」  水野が半分笑いながら鳥越を振り返る。まあ団員としては無責任かもしれないけどとも付け足した。

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