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エール1-11

「後任探しは善が何とかすると思って敢えて言わなかったんだろう」  低い声が入り口でした。密紀が廊下に落としたままだったノートを拾って可南が戻って来る。 「それな!」  また軽い感じで水野が笑う。応援団長と言うと真面目で堅物というイメージもあるが、水野には全くそれがなく、その笑みや話し方は逆に人懐っこさを感じさせる。しかし成績は全国でもトップクラスで、運動神経も抜群と言う、いわゆるスパダリ系として団員の中でも男女問わずダントツの人気だ。 「ちゃうやん!俺が言いたいんはお別れも言えんかったてことやん!」  鳥越がむうっと口を尖らせるのを、水野はやっぱり笑って見ていた。 「それで今談議していた訳だ」  水野が再び密紀を振り返る。 「サッカー部壮行会、規模は小さいけど、伝統ある応援団が人数を一人欠いて出るのか、それとも下手な代役を立てるくらいなら欠いて出た方がいいのかってな」 「それでお前がスカウトされたんだよ、保科密紀」  やっぱり肩に手を置いたまま、千秋が後ろから密紀の顔を覗き込む。

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