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エール1-12
「ええ?!」
今回に限っては、密紀は腹の底から声が出た。ほとんどパニック状態で聞き返す。
「どうして俺なんかが?!」
額に汗が浮かんで来る。え、ドッキリ企画?いや俺にドッキリ仕掛けた所で何の面白みもないしと、どんどん変な方向に思考が向かっていく。
「そうだ、何より!」
密紀は思い出して団長を見上げた。きっと団長とも二十センチ近くは身長差があるだろう。
「団員は前任者からの指名で決まるんじゃ」
「そうだよ」
にっこり笑って二階堂が頷く。密紀の肩から手を離した千秋が密紀の前に回った。
「だから俺が指名してんじゃん今。現役兼前任者」
自分を指差してウィンクした千秋は壮絶にかっこ良かったのだが、密紀にはそれを堪能する余裕がなかった。
「む、無理です!俺なんかに務まる訳ないです!」
とんでもないにもほどがあると、密紀がブンブン頭を横に振る。
「と言っておりますが、どうします?千秋くん」
言葉遊びのように軽い感じで問いながら、水野が千秋に口元だけで笑う。しかしそれは真剣に問うているのだということを団員たちは知っている。人当たりはいいが、団長に指名される程の水野の本質は団員全員が分かっている。
しかし千秋は水野に緩く微笑んで返した。想定内という顔にも見える。
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