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エール1-13
「保科、これ着てみ」
「え?」
千秋が机の上に置かれてた黒い服をバサッと密紀の肩に掛けた。
「団服…!」
それは聖院学園全生徒の憧れと言っても過言ではない応援団の正装、黒の長ランだった。金のボタンには校章が刻印されており、カラー部分の縁にだけ白のラインが入っている。
「うわあ…」
まさか羽織ることが出来るとは思っていなかった密紀は、一瞬今までのやり取りを忘れて感動した声を出した。
「何かコスプレちっくだな」
水野がほぼロングスカートと化している長ランを見て真面目な顔で瞬きする。後ろで鳥越が吹いた。
「ボクは身長いくつなのかなー?」
小学生に聞くように水野が膝に手を付いて密紀の頭を撫でた。
「百六十センチです…」
「サバ読んで?」
「読んでません!」
密紀が思わず大きな声で返す。小さいのと童顔なのは割とコンプレックスなのだ。
「でけー声出んじゃん」
水野がニヤッと笑う。
「え…」
密紀がハッとして目線を上げると、団員全員がニヤリとしていた。
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