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エール1-14
恥ずかしくて団服の襟をぎゅっと握って口元を隠す。するとさっきまで肩に手を置かれていた千秋と同じ匂いがした。
これ、千秋先輩の団服だ。
気付いて密紀の心臓が跳ねた。
「なあ保科」
優しい声が自分を呼ぶ。千秋が口元に寄せた密紀の両手を取った。
「顔、隠すな」
声と同じだけ優しい目で密紀を見つめる千秋に、密紀はもっと鼓動が高まるのを感じる。憧れの人がこんなに近くに居る、自分の手に触れている。
「俺なんかって言うな、やってないうちから諦めるな」
「千秋先輩…」
「出来るよ、保科」
魔法の言葉のように、その声が密紀の全身に浸透していく。吸い込まれそうなくらい千秋に見つめられている。
どうしよう、嬉しい。
自分に応援団が出来るとは思えない、だけどそれに向けての努力なら、出来る…かもしれない。そう思わせる千秋の暖かい笑み。
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