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エール1-15
「俺…」
千秋を見つめたまま密紀が小さく呟く。千秋がゆっくり頷いて、密紀も答えるように頷いた。
「んじゃとりあえず壮行会前日に入団テストな」
水野が「二人の世界作らないでね」という目線を千秋に送る。
「テ、テスト?!」
急に現実感が襲って来て密紀がまた緊張で体を固くした。しかし千秋が握ったままだった密紀の手に力を入れてくれて、少しだけ密紀が安心する。手のひらから『大丈夫』という言葉が流れ込んでくるようだった。
「基本のエールの型だけな。それで団員全員が合格だとみなしたら入団を許可する」
いつの間にか水野団長を囲むように他の団員も立っていた。団長の決定ならそれに従うと、どの目も語っている。
密紀の代わりに千秋が頷いた。そして密紀を振り向くともう一度「出来るよ」と言って笑った。
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