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エール2-6
朝日に照らされて少しだけ茶色に光る千秋の髪がとても綺麗だ。その前髪の間から覗く両目に自分が映っているのが、何だか奇跡のようだった。
「でも、ちゃんと最後まで走ったろ?」
千秋が親指で密紀の汗を拭う。
「諦めなかったろ?」
濡れた密紀の髪を耳に掛ける。
「それが大事なんだよ、保科」
そう言って笑う。
ああ、好き。
密紀の心の中に、その二文字が浮かんだ。
身体中に広がる心音が心地良い。キスをするのかと思うような顔の距離、密紀の頭は酸欠も手伝ってぼおっとして、一瞬目を細める。密紀を見つめたままの千秋の親指が、密紀の唇に残る水を拭うようにゆっくりその形をなぞった。
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