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エール3-1
聖院学園応援団人気、恐るべし。
その日、密紀は教室に着くなりクラスメイトたちから質問攻めにあった。
「保科、応援団に指名されたって本当か?」
「千秋先輩に指名されたの?ウラヤマ!」
女子も男子も、普段喋ったことのない隣りのクラスの生徒まで様子を伺いに来ていた。
昨日の放課後で今日の朝、どうやって噂が広まったのかは分からない。密紀はただただ他人事のように凄いなと思う。
「いやまだ入団テスト前の段階で…」
密紀が周りにそう告げた時、
「たまたまその場にいただけなんだろ?」
教室の後ろにある備え付けのロッカーの上に座って、橋野と元宮が冷ややかに密紀を見た。湧いていた教室がピタリと静かになる。
「千秋先輩だって人集めのために必死で、誰でもよかったんじゃね?」
密紀の心臓がバクンと音を立てた。そして、昨日からの出来事に少なからず浮かれている自分にも気付いて、橋野と元宮の言葉に頭からスッと血の気が引く感じがした。
「じゃなきゃこんな弱っちいチビを指名しねえだろ」
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