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エール4-1

 とにかく時間はなかったが、密紀は休み時間や、もちろん帰宅してからも、動画を繰り返し観て型を頭に叩き込んだ。早朝のバイクでの迎え、ランニング、聖堂での練習、千秋は全てに付き合ってくれた。 「何か分からないことあったらここへ」  そう言って千秋は自分の番号とメッセージアプリのIDも教えてくれた。密紀は嬉しくて死にそうだったが喜んでばかりもいられない。千秋の『応援』に答えられるよう最大限の努力をしなければと自分の心を引き締めた。  明日にはもうテストがある、その放課後。 「伊藤ちゃーん、今日もヲタってんのー?」   いかにも絡んでますという声音に、聖堂に向かおうとしていた密紀も顔を向ける。橋野と元宮の最近のターゲットは、いわゆるアニヲタの男子だった。あまりクラスメイトと関わらない彼は、休み時間もずっと一人でノートに何か描いていた。 「うっわ、キモ!」  そのノートを取り上げて橋野がみんなに見えるように掲げた。そこにはきわどい格好をした女の子のキャラクターが描かれている。 「や、やめてよ、返してよ!」  小太りの伊藤がメガネを曇らせながら橋野からノートを取り返そうとする。橋野はノートを元宮に投げた。 「やっば、マジキモいんですけど!」

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