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エール4-9
「そうだ、保科これ」
千秋はデイバッグを開けると、そこから綺麗に畳まれた長ランを出して密紀に差し出した。
「え?」
驚いて密紀が千秋を見上げる。
「多少…いやだいぶデカイかもしんねーけど、明日のエール演舞これ着てやらない?」
「えっでも、こんな大切なものお借りする訳には!」
「いんだよ、俺が保科に着て欲しいんだから」
千秋が笑いながら密紀の肩に長ランを掛ける。
「袖は折らなきゃなんねえけど、基本エールはそんなに足使わないから、裾は長くても平気だろ?」
「でも先輩も明日練習するんじゃ…」
密紀が心配そうに問う。
「団服は予備含めて二枚あるから大丈夫。つか…」
千秋が密紀の頭をくしゃっと撫でた。竜也のそれとは違い、いつの間にか特別になっていた行為。
「一緒に頑張ってる感じするじゃん」
いつも感じていた千秋の匂いが、温かい言葉と共に密紀の身体を包む。密紀は堪えきれず涙を浮かべた。
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