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エール4-10
「えっ泣いてる?」
街灯の薄暗い明かりだけではよくわからなかったのか、千秋が焦ったように密紀を覗き込む。
「すみません、だって…先輩が優しいから」
胸がいっぱいになって密紀が口元を覆った、その時。
「…せ、先輩?」
千秋は密紀の腕を取ると、グッと自分の方へ引き寄せた。倒れ込むように密紀が千秋の胸にもたれ掛かる。
「あ、あのっ…」
慌てる密紀の背中に千秋が手をまわす。そしてゆっくり密紀の髪を撫でた。
「千秋先輩…」
密紀の鼓動が早くなる。だけど耳に響くその脈さえ心地いいと思える抱擁。
泣いてしまった自分を元気付けるためだと分かっている、そう自分に言い聞かせるけれど、密紀はやはり千秋の腕の中に居るのが幸せでたまらない。
男なのに、先輩も、俺も。
男に抱きしめられて幸せなんて…。
違う。
千秋先輩だからだ。
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