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エール5-2
「…え」
密紀の足が止まる。
「え、何これ…」
密紀が自分のロッカーに目を落としたまま固まる。そこにはドアが凹んで、見るからに無理矢理こじ開けられた跡があった。
密紀が膝を着く。額に嫌な汗が浮かんだ。心音が耳に大きく響く中、密紀は壊れてガタつくロッカーを開けた。
「!」
息が止まる。
中から滑り落ちるそれを密紀が受け止める。ぐしゃぐしゃに丸めて放り込まれていたであろう千秋の団服。広げると、カッターで切り刻まれ破れた跡が数カ所あった。力任せに引き裂かれたと表現する方が正しい。
「………っ」
密紀は声もなくその場に座り込んだ。心臓だけが爆音で響く中、頭からすっと血の気が引いていくのを感じる。耳の奥がキーンと鳴る。目眩を起こしそうだ。
『正義を成す者は時に恨みも買う』
水野の言葉が脳裏に蘇る。
そうだ、こういうことだ。
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