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エール5-4

「う…」  胸が痛い、張り裂けそうだ。例え団員になれなくても、密かに好きでいることは許して欲しいと、そう思っていた。でも、もうそれすらも許されない気がする。  ダメな自分、弱い自分。  地面がぐにゃっと沈む感じがする。泥濘に身体が埋まっていくような、引きずられるような…。  ピピピ!  その時密紀のスマホが鳴った。密紀がハッとして顔を上げる。鳴り続ける着信音はメッセージではなく電話だと気付いて、ポケットからスマホを出した。液晶画面に『千秋先輩』という文字が浮かんでいる。 「も、もしもし」  声を振り絞るようにして密紀は通話口で答えた。 『保科、よかった、時間なのに来ないから』 「…え」  密紀が振り返って黒板の上にある掛け時計を見る。四時を少し回っている。 「す、すみませ…」  声が掠れた。  自分は一体どのくらい泣き続けていたのだろう、立てなくなっていたのだろう?

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