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エール5-6
団服の長い裾を持って校舎から聖堂に向かって全力で駆ける。校庭を抜けて、聖堂に続く茂みに入ると流石に息を着いた。
「はあ、はあ」
肩で息をする。心臓が破れそうな程の全力疾走は初めてだった。それでも早く行かなきゃと、密紀は汗を拭って再び走り出そうとした。その鼻腔に微かな煙の臭い。
「あっれー、保科じゃん」
「ホントだ」
密紀の身体が一瞬震えた。声のした方へ顔を向けると、木陰で地べたに座りタバコをくわえている二人組。
「橋野くん、元宮くん…」
二人は密紀の姿をじっくり上から下まで見ると、おもむろに立ち上がる。
「どうしたんだよその格好!」
「借り物の団服、すげえことになってんじゃん!」
半笑いで近付いてくる二人が密紀には酷く怖く思えた。これをやったのは十中八九この二人だろうが、怒りよりも怖さが勝る。
どうして?
殴られるかもしれないから?
二人が密紀の前に立つ。橋野も元宮も背が高い。見下ろす目線に威圧感がハンパない。
密紀は咄嗟に団服を抱きしめるように守った。
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