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エール5-7
「小綺麗な顔してんなあ、密紀ちゃん」
橋野が顔を寄せてくる。くわえたままのタバコが密紀の頬に近付いた。
ああ、俺なら別にいい。
密紀は気付いた。
怖いのは、これ以上団服を汚されることだ、自分に何をされようが構わない。
そう思うと密紀は吹っ切れて、煙草の火が頬に触れそうなのも気にせずに、キッと橋野を見上げる。
「んだよ、その目は」
イラッとした表情で橋野が密紀の胸倉を掴んだ。
「破れた団服着て可哀想がられて媚びるのか応援団員に!そんなことしたってお前なんかが…」
「なれなくてもいい!」
密紀が叫んだ。掴まれたままの胸が苦しいけれど、それでも大声で啖呵を切った。
「そもそもあの人たちは媚びる奴なんか相手にしない!だから俺は自分の精一杯を出しに行くんだ!」
「はあ?」
元宮も密紀に掴みかからんばかりに顔を寄せて来る。
「それでダメでも悔いはない!」
「何言ってんだよ偶然選ばれただけの奴が!」
怒鳴った橋野の口からタバコが飛んだ。密紀を掴んだ手に力が入り、もう片方の手は大きく振り上げられた。
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