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エール5-9

「俺だって応援団員だからって人間が出来てる訳じゃねえし、自分が品行方正だとも思わねえ」  千秋が密紀の前に立つ。 「お前らが未成年のうちからタバコ吸って、テメェの身体壊そうが知ったこっちゃねえ、勝手にやれ。でもな」  足元に転がっている、まだ火の点いた吸い殻を、千秋が右足で踏みつける。 「自分の悪さに他人を巻き込むな」  自分で責任の取れないことはするなと、橋野や元宮よりも高い位置からの目線で見下ろす。 「………っ」 「………っ」  密紀から千秋の表情は見えなかったが、完全に顔を強張らせた橋野と元宮を見ると、密紀は千秋が二人に与えている圧が相当なものだと想像出来た。 「分かったら散れ、一年!」  腹の奥底から響くその氷の声に、橋野と元宮は焦ったように走り去った。 「千秋先輩…」  密紀が小さく呼ぶ。怒っているのは団服をこんなにしてしまったことも無関係ではないと思い、振り向く千秋の顔も見ずに思い切り頭を下げる。 「ごめんなさい先輩!神聖な団服をこんなにしちゃって、俺…」  言葉が詰まった。途端に涙が溢れてきた。 「団服は…ちゃんと、弁償し…ますから…」  声が震える。ポタポタと地面に落ちる涙を密紀は拭うことも忘れていた。 「ごめんなさい、ごめんなさ…」  千秋の両手が密紀の肩を掴んだ。怒られると思った密紀の身体が反射的に震える。

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