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エール5-14

「いや、忘れられる訳なかった。あんなにエールをもらったんだから」 「先輩…」  密紀が言葉を詰まらせる。  夢だろうか?  だって、自分が千秋の力になれていたなんて思ってもみなかった。 「入学式で保科を見つけた時、本当に嬉しかった」  千秋がそっと密紀の頬に触れる。その大きな手のひらは、緊張と心地よさを同時に密紀に与える。 「だって、ずっと待ってたんだ」  千秋の親指が、ゆっくり密紀の唇をなぞった。早鐘のように鳴る心音が苦しくて、密紀が少しだけ口を開く。千秋の爪が密紀の歯に当たって小さな音を立てた。  できれば、夢であって欲しくない。  できれば、現実であって欲しい。 「俺たちはもうとっくに惹かれあってたろ?」  ああ、どうしよう。  好き過ぎて、目眩がする。  千秋の顔が近付いてくる。唇を離れた手が、密紀の頬に滑って優しく上を向かせる。 「お前は俺の応援団だったよ、ずっと」 「千秋せんぱ…」  呼ぼうとした唇は、千秋の唇で塞がれた。それはほんの数秒重なって、離れた。それでも、まだ近いままの距離で千秋に見つめられ、その視界いっぱいに自分が居ることに、密紀は陶酔する。

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