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第2話 昏睡

点滴を終えた康太は自宅へ帰ろうとした すると兵藤が「行くのかよ?」と問い掛けた 「おー!忖度していた自分が愚かだったって、つくづく思うからな 反撃に出るしかねぇなって、痛感したんだよ オレは何時からこんなに日和っちまったんだ? 忖度なんて覚えてなかったオレは怖いものなんて何一つなかったのにな……」 「護るべきモノが増えれば身動き取れねぇ想いもするさ! おめぇには護るべきモノが沢山あるからな それを考えるのは当然の事だろ?」 「でもな、それは我が子の命と引き換えにしても良い話じゃねぇかんな! オレは烈の母ちゃんだかんな、6人の我が子を護らねぇとならねぇんだよ!」 「おし!俺も協力するぜ! その前にこのお子様、本当に怖いんだけど… さっき何やら呪文唱えていたし」 「あれか、破滅の序章を唱えようとしてたんだよ」 「え?……そんなの出来るのかよ?」 「出来るだろ? レイはニブルヘイムだかんな 創世記の一柱なんだ、出来ねぇ事はねぇんだよ」 益々恐ろしい 烈に直結した奴には破滅の序章を唱えてしまうのか……… 康太は笑っていた 「ニブルヘイムは前よりも性能の良い眼と力を創造神に与えられてるからな!」 「あ、眼、聖神に授けたんだっけ」 「本人が転生を望んだから転生をさせた だがこの世を照らし闇を沈めるのはニブルヘイムしかいない だからオレの力と合わさり発揮出来る様に力を与えたんだよ でもレイはその力を烈の為だけに使おうとするからな、創造神も誤算だったろうよ!」 「んとにな、この子は頑固一徹で困るわ」 兵藤がボヤく 康太は「行くぜ!」と言い点滴を終えたレイを小脇に抱えると 一生に「後は頼むな!」と言い病室を後にした 兵藤は「連れて行くのかよ?」と聞くと 「一人にしてたら怖いだろうが!」とボヤいた 兵藤は「だな!」と納得した 飛鳥井の家に歩いて戻ると榊原は康太が還るのを待っていた ピキーっと緊張した空気が一瞬で伝わる 榊原は小脇に抱えられたレイを受け取ると、ソファーに寝かせた 慎一がレイの上にブランケットを掛けた 康太は足を組み皮肉に口の端を吊り上げて嗤うと 「反撃に出るわ!」と告げた 榊原はこんな康太は久しぶりに見るなっと想った 神野や相賀、須賀は息を飲み、次の言葉を待った 「ったく、オレも日和っちまったぜ! 忖度なんて言葉、昔のオレなら度外してトドメを刺すのによぉ! って事でオレは我が息子 烈を護る為に動くとする! 悪いけど虫の息のヨニー、この世から消し去ってやんよ!」 神野は経緯を聞いていたから 「それだとトナミも相当のダメージが来るんじゃ?」と問い掛けた 康太は冷たい瞳を神野に向け 「それがどうしたよ? オレは忖度してやった それを無下にして烈を誘き出したのは若旦那だ! これ以上の忖度は必要ねぇだろ?」 と吐き捨てた 神野は言葉を失った 何で忘れていた? 飛鳥井康太と謂う存在を………… 動き出したら止まらない! 止めを刺して息の根を止めて………完璧に潰す 家族が増えてからの康太は、昔のような剥き出しの敵意を見せなくなっていた 飛鳥井の一族にとっても、康太にとっても、宗右衛門と謂う存在がどれだけ真贋を支えていたのが、解る程に…… 役割分担した存在は安定した未来を齎した そのバランスが今 崩れようとしていた 何としてでも、烈の命は守らねばならぬ! 康太の覚悟にも似た想いだった……… 榊原は「反撃に出る?何をする気ですか?」と問い掛けた 「株価操作……もう竜馬やっちまったのか?」と竜馬を目にして康太は呟いた 竜馬は皮肉に嗤うと 「完全にトドメを刺して葬り去る それが【R&R】のメンバーの総意ですから! 烈が殺されかけたとメンバーに知らせたら、メンバーは怒り狂ってました ダニエル・ジョーンズは金融の神と謂れる程に、金融関係に顔が利く奴なので、情報一つ流せば経済が変動するとまで謂われている なのでヨニーを全部オブライエン家の力を借りて買収するつもりです!」と言った 全世界からヨニーが消える 世界に誇るヨニーとまで謂われたのに……… 呆気ない幕引きとなった 康太は「ならば【R&R】オレと記者会見開かねぇか?」と問い掛けた 竜馬は「謂れねばイギリスで、そちらの記者会見よりもど派手な記者会見を開くつもりでした! 我等はリーダーが殺されかけた 嫌、息が止まったと謂う事は殺されたも同然だと想っている! 此処で怒らねば男が廃る!と宗右衛門に発破をかけられます!」と言った その記者会見には真矢も「私も出ます!」と言った! 清四郎も、相賀、須賀、神野も同席すると言った 堂嶋と三木は議員の身の上では私的な記者会見には出られない……と還って行った 嵐が来ると堂嶋と三木は想っていた 康太が動けば嵐を呼ぶ 大きな嵐は総てを巻き上げて吹き荒ぶだろう 榊原も最近は烈が巻き起こした嵐に、衝戟に耐えていたが、久しぶりに康太が巻き起こす嵐に、自分も安定して日和ったなと想った 父として我が子を護ると決めた日から、必死に生きて来た 康太と共に生きて来た 烈が宗右衛門として動く様になり、その軸は烈に移った様に大人しくなった 飛鳥井家真贋にとって、宗右衛門と謂う存在は絶対であり、正しき道へ導く道標の様な存在だったのだ! 記者会見の準備をする 幾らニブルヘイムが浄化したと言っても悪賢い奴を用心して会見場に入るには金属探知機を通らねば入れない様にした そして用心の為に防弾チョッキを着る 誰もが筋肉で銃弾や鏃を止められる訳では無いから…… 竜馬は記者会見の場を三木敦夫財団が所有する 代々木総合体育館で遣ると決めた その日【R&R】は入念にメイクをして別物に顔を作り上げると、会見場に入り込み準備を始めた 特殊なゲートを出入り口に設置する 出入りが出来る扉は一つだけ遺し、後は施錠した 竜馬は康太に「このゲートはデービッドのPCに総て表示される仕組みになってます 此れは病院とかにあるCTスキャン検査と同じ役目を持つ機材で、この下を通れば、四方八方に取り付けたセンサーが丸ごと裸にしてしまう 所持品にナイフが検知されれば、即座に取り押さえます! 神威さんが襲われた時に我等は開発出来ないか考えていた そしてヨニーの技術開発部の子会社を我等が買収したから開発させたんです!」とサラッと言った この男も烈の為に生きていると言っても過言でない男だった 共に生きて逝くと決めたからには戦線離脱は許さない! そんな思いに駆り立てられ、作ったのだろう……… 竜馬は「烈の大切な両親に牙を剝かせる気はないですから!」と護ると言ってくれた 記者会見の時間が迫って来ると、誰が情報を流したのか? 【R&R】が代々木体国際育館に来る!と噂を聞き付けたファンが、一目見たいと一般の市民が、体育館の周りに集まり出したと警備する者から報告が入った ネット社会の今 誰かが呟けば、その場には人が大挙して押し掛けてくる その数 300越えたと謂われた時は絶句した そして更にどんどん人が集まりつつあるとの事 【R&R】が体育館でイベントをやるとでも思っているのか? 一目見ようと人が押しかけて来て、パニックになりつつあると謂う 康太は直ちに警備部から警察の方に連絡を入れて、取り締まりするように要請した その場に警官がやって来ると、何故警察が来てるのよ!と慌ててその場を離れようとするものも出てきて更に混乱に拍車が掛かる だがかなり数の警官が動員され未成年は補導され、成人した者はその場から離れる様に告げた それを無視したらその場で逮捕となる これは闇の力とかではなく、ファンの心理や有名人を見たいと謂う人間の心理を利用した者達が引き起こした騒ぎだった 誰が引き起こしたかは、剣持陽人が探って逝く事となる 竜馬は【R&R】からは裏のスタッフ、イギリスでは名の知れたホワイトハッカーOO(オーオー)を派遣させた オリヴァー・オブライエン そう、ヘンリー・オブライエンの兄を今回、頼んで動いて貰う事となった OOの実力はかなりの腕前で国から頼まれて仕事する事もある謂うだけあって、かなり使える男だった OOは出逢って3秒で蹴り飛ばされネジ曲がった根性を一晩説教されて矯正され、以来ホワイトハッカーを趣味として【R&R】が立ち上げた会社の社長をしていると謂う OOは烈を愛していると謂う だから烈の為ならば命を賭けて追跡すると言った 康太はその話を聞かされて、デジャブを覚えて竜馬を見た 竜馬は苦笑していた 竜馬は「オリヴァーは烈を愛していると言ってもプロポーズしたいとか、性的になんとかしたい、とかではなく、烈の総てを信頼し絶対的に想っているんだ! それには愛していると謂う言葉しかないから使っているだけです!」と伝えた 康太は「んな事心配してねぇよ!烈が男でも愛してくれるなら、オレは無条件で許してやんよ!」と言った、そして続ける 「アイツはな、手放した愛を悔いて幾度転生しようとも生涯独身を貫いていた……… そんな寂しい生涯を送らなくても良いならば、相手なんて関係ねぇよ!」とまで言った 竜馬は言葉もなかった 刻々と記者会見の時間が迫ってくる 真矢はメイクの人に化粧をして貰っていた あの日 烈に謂われた様に明るいメイクを施して貰っていた 清四郎も凛々しく少しだけメイクして貰い 相賀、須賀、神野はメイクを拒否した 康太もメイクは断り、飛鳥井家真贋の着物を榊原に手伝って貰い着る 家族には記者会見を開く事は告げておいた 久々に攻撃的な瞳をした康太に、家族は言葉もなく了承した 記者会見の進行は西村沙織 会見場に記者やカメラマン 取材クルーが駆け付けたゾロゾロ入って来る 検査の結果が即座にデービッドのPCへと入る 警戒すべき存在は出て来ず、記者達は割り振りれた座席に着くと、時間が来るのを待ちながら準備に余念がなかった 時間が来ると西村がマイクを持ち 「この度は飛鳥井康太が開く記者会見に駆け付けて下さり、誠にありがとう御座いました 此れより飛鳥井家真贋 飛鳥井康太、そして榊󠄀 清四郎、榊原真矢 、芸能事務所から相賀、須賀、神野 そして【R&R】メンバーが同席した記者会見を開きます!」と会見の開始を告げた 康太を中心に右側に神野達が座り 左側に竜馬を始めとしたメンバーが座っていた パシャパシャとフラッシュがたかれ、会見前の写真を一斉に取り始めた 康太はマイクを持つと最初から喧嘩越しで話し始めた 「オレが本日会見を開きましたのは、オレの6男の烈が殺されかけたからです! 烈は、一時的に息が止まった! 何故、我が息子が殺されかけねばならぬ! 幾度も幾度も記者会見を開いた筈だ 最初は子供なのに大人の声で話すから化け物だと傷付けられ、烈の祖父母が会見を開いた筈だ 烈は此れ迄に幾度と命を狙われ入退院を繰り返し、小学2年なのにその半分も学校に通えなかった! あまりにも理不尽な現実に我等も手を打たねばならなくなったからです!」 と先制攻撃をかました 「我が息子、烈は【R&R】のリーダーをしています! 【R&R】は普通に活動していた筈なのに、倭の国から弾かれる様に活動場所を失った テレビ局や芸能事務所等はヨニーの圧力によって忖度した結果 【R&R】の3年先まで入っていた仕事は総て白紙にされて倭の国での居場所をなくした 彼等は活動場所を失った事により、イギリスへと活動の場所を移した より強い力を得て反撃に出るのは、当たり前の事なんじゃありませんか? 【R&R】がそれをやる事は違法だとでも言いたいのか? 我が息子烈を、襲ったのはヨニー系列会社の社長をしていた八神克己と謂う男だった 八神は烈を逆恨みして戸浪社長を使って何度も何度もコンタクトを取って来た そして烈が根負けして話を聞こうと用意した料亭で、一方的に罵り出刃包丁を出して襲おうとした 一度は戸浪社長の顔を立てて、見逃そうとしました……ですが八神は反省を口に出しつつも隙を見て烈に飛び掛かり首を絞めたのです! 烈は一旦息が止まりました! 処置をしてる間も何度も息が止まったそうだ! 何故我が息子が逆恨みで殺されねばならぬだ? 最初に喧嘩を売って来て【R&R】を倭の国から追い出したのは、ヨニーではないか!」 康太はそう言いマイクを置いた 相賀、須賀、神野、真矢、清四郎が喋り終わると質疑応答へと移る そんな時だった、会社の上役から電話が来たのか?席を外す記者が多発して、記者会見どころではなくなっていた 時を同じくして、イギリスの大富豪であり、皇族を親類に持つ クリストファー・オブライエンが世界に向けて声明を発表したと伝えられた 『【R&R】の活動を妨害したばかりか、リーダーを殺害しようとした者を我等は許しはしない! こんな異常な状況を何故、倭の国の人間は黙殺しようとするのか? 【R&R】は我が息子の活動の場所であり、メンバーは我が息子の宝も同然、如何なる妨害も許しはしない! オブライエン一族に喧嘩を売ったも同然だと想いなさい! 此れより先に【R&R】の活動を妨害する輩は我ら一族の力を持って排除すると、此処に宣誓する!』 この声明は世界を駆け巡り……倭の国の政治家は国際情勢を可視して動かねばならなくなった クリストファー・オブライエンは俳優であり起業家で、女王の妹を妻に持つ大富豪だった 幾つかの複数の企業を持つコングロマリットを有する 元々オブライエン一族はイングランド貴族と呼ばれる御三家に名を置く名家でもあった 親類には首相やら代議士、起業家、俳優、女優、歌手なんでも排出している一族だった その一族の当主が声明を出すのだ、尋常な話でないのが解る 記者会見場がザワザワと上からの連絡でざわめく この日の記者会見は質疑応答は一切なく尻切れで終了する事となった 【R&R】はまだ何一つ喋ってはいなかった 記者達は【R&R】に質疑応答で聞いてみたい事が、沢山あったろうにな…と康太は想う そしてその会見場に今枝の姿がなくて、康太は東城に電話を入れた 「あ、オレだけど今日の記者会見、どうして今枝がいなかったのよ?」と尋ねた 『今枝は今倭の国にはいないので、記者会見には出られません! 貴方のご子息は本当に曲者だ………こうも簡単に今枝を動かして海外へ行かせてしまった 私もね止めたんだよ、でもね今枝が持っていた名刺が更に曲者でね、私は今枝を出すしかなかった なので今枝は2年間はイギリスで記者をする事となります!』 「オレの息子って烈か?」 『そうみたいです、私は今枝が苦悩して絶望してるのを知っていた 知っていたが、人間生きて逝くには我慢も忖度しなければならない事も出て来るのだから…と今枝に我慢を強いた そこへ上手く烈君が誘導して今枝を自由に飛び立たせてしまった』 「なら今はイギリスか?」 『そうです』 「すまなかったな東城」 『嫌構いません、今枝が選んだ事ですから それより烈君は?』 「意識はまだ戻らねぇよ……… で、もう一つ聞きてぇんだけど、今日の記者会見途中でざわついて、それ以降は質疑応答するらなかった!何でだよ?」 『君も名前位聞いた事が有る筈です クリストファー・オブライエンが声明を出したのです 異例中の異例で事です、彼は静観を決め何事にも発言する方ではなかった しかも【R&R】にはご子息もいるとか? 我等は初めて耳にする事ばかりで右往左往の騒ぎです! 私も今はやらねばならない事がありますので、失礼します!』 と言い東城は電話を切った 康太は榊原に「ニュース見せてくれよ!」と言った 竜馬達 【R&R】は会見が終わると同時に会見場を後にしていた 榊原はクリストファー・オブライエンの声明のニュースを動画で拾い見せた 「この人ってめちゃくそすげぇのか?」 康太が聞くと相賀が「クリストファー・オブライエンの妻が女王の妹で3大御三家と謂う程にイギリスの貴族の間では有名人なんですよ」と教えてくれた 須賀は「【R&R】のメンバーの中にご子息がいらしたとか?我等は聞かされてはおりませんでした」と言った 康太は「【R&R】のメンバーの詳細なんて竜馬と烈しか知らねぇんだよ! オレ等も名前だけなら聞いたが苗字は謂わなかったもんな知る筈ねぇよな!」と言った 榊原も「そうですね、烈や竜馬にとったら、名家の家の出とか関係ないんでしょうね 烈も知ってたか、まぁ烈は子供なので知ってたとして、それは関係ないんでしょね 気の合う仲間と創り出す世界、それだけしかありませんから!」と言い切った 神野は「これでヨニーはこの世から抹消されたも同然となった……康太は若旦那との付き合いをどうするのよ?」と問い掛けた 「まぁ今後オレは誰に対しても忖度する行為をなくして行こうと想う! んでもって若旦那、騙し討で烈を殺しかけた現状は許せねぇから、少し距離を取るつもりだ!」 「それしかないな……」 烈を想えばそれは仕方がない事だと想う テレビで八神克己が逮捕されて護送車に乗せられて行くシーンが何度も何度も流された 八神はまだ何一つ語ってはいないが、部屋に取り付けておいたカメラ映像が決定的な証拠となり、言い逃れは出来ないだろう……… 康太は消化不良起こした様な現状を抱えて飛鳥井の家に還って行った 飛鳥井の家に還ると瑛太が誰かと話していた 険しい表情に康太は珍しいなっと想った 電話を切り康太に気付くと 「田代からでした」と言った 「あんだって?」 「まぁ謝罪ですかね? あの場に田代も同席してたんですって? なのに何も出来なくて済まなった、との謝罪と、烈の容態を聞かれたのです 許されるならば謝罪の場を作って貰いたい とは言われたが、今は何も聞きたくもない!と切りました!」 「あぁ田代もいたからな、あの場には……」 「田代は動かなかったのですか?」 「あの場で動けたのはSP位なもんだよ ニックでさえ、数秒出遅れたから、烈が首を絞められて一度は心臓が止まってしまったんだからな まぁ田代に非はねぇが、今は逢いたくもねぇわな!」と康太は吐き捨てた 烈はまだICUから出られていなかった 烈がICUに入って三日目の夜 素盞嗚尊と大歳神と建御雷神と弥勒が烈のICUの前り姿を現した 素盞嗚尊は「まだ意識が戻らぬのか?」と心配して問うた 大歳神は「戻らねぇんだよ!親父殿!」と弱音を吐く 弥勒は「首を絞めたなんて………許せねぇよな!」と言った 建御雷神も「だな、許せぬな!其奴!」と怒りに任せて言った そんな4人がいるなんて知らない、兵藤と一生が烈が目を醒ましてないか?確かめに来て、4人を目にして固まった 兵藤は想わず「素盞嗚殿、何をしに来られたのですか?」と問い掛けた 「孫の烈がまた入院したと聞いたから参ったのじゃ!」と心配して謂う姿に胸が痛む 兵藤は「心臓が何度か止まったと謂われた……だから俺等も気になって何度も見に来ているんだよ!」と謂うも素盞嗚尊が兵藤の頭を優しく撫でた 「主等にも心配させたな」 優しく頭を撫でられて兵藤は涙ぐんだ 建御雷神は一生の頭を撫で「今宵は眠るがいい!お主等が倒れてしまう」と言った 大歳神が「烈は我等が見ていよう!」と謂うから、兵藤と一生は個室へと戻った 翌朝起きたら、何時帰ったのか?素盞嗚尊と建御雷神と大歳神と弥勒の姿はなかった 1週間経っても烈は覚醒めなかった 久遠は「今度は烈を低体温療法で寝させてある訳じゃねぇんだがな、目を醒まさねぇんだよ」と伝えた 康太は「もう心臓は止まる心配はねぇのかよ?」と問い掛けた 「バイタルは安定しているからICUから出しても大丈夫か?様子見してる所だ」 榊原は「このまま目醒めないなんて事はありまけんよね?」と問い掛けた 「それは何とも言えねぇ……目が醒めたらどんな後遺症が出ているかも解らねぇからな! だから様子見してるんだよ今は……」 康太は言葉もなかった 飛鳥井の家族や榊原の家族は朝 烈を見舞ってから出勤する そして帰宅して目を醒ましてないか?確かめてから家へと還る、それが日課になっていた 病院には一日ずつ変わって付き添っていた 烈の戻らぬ個室で寝泊まりして過ごす そしてICUを確かめに何度も行く そんな日々を送っていた あれから素盞嗚尊達は何回か夜中に来ているのを目にした 烈が起きるのを待っていた 早く起きろ!烈 家族や康太の仲間は祈るように待っていた もうすぐ2週間経つ頃にやっと烈は目を醒ました 朝の検診に久遠が向かうと「おはよう せんせー」と烈が言った 久遠は驚いて「何時目を醒ましたのよ?」と問い掛けた 「すこしまえにゃのよ、めをさましたらね にゃんかみうごきとれにゃくて こまったのよ」 久遠はスタッフを呼び寄せて器具を外させた そして寝台に移して検査に向かった 久遠は「飛鳥井のご家族に連絡を入れておいてくれ!」と言い検査へ向かう 一通り検査して異常がない事を確認すると、烈は個室へと移された 個室には康太と榊原、そして飛鳥井の家族や榊原の家族も来ていた 病室にはレイも連れられて来ていて、烈に飛びついて泣いていた 康太は「大丈夫か?烈……」と話し掛けた 「ぼくね にゃにしてたのかしら?」 入院する前の記憶がなかった それは無理もない事だった 突然の出来事なのだから、記憶になくても不思議じゃなかった 康太は榊原を見た 榊原は久遠に「事件の時の話とかして大丈夫ですか?」と尋ねた 久遠は「もう少し様子見てからにしてやってくれ!」と言った そしてレイをひょいと抱えると 「また食ってねぇなコイツ!」と言った 烈は「れい、ねる?」と問い掛けた 久遠は「おー!そうしろ!点滴をするから寝てろ!」と謂う 久遠はレイを烈の横に寝かせると、二人分の点滴を指示して持って越させた 烈は「かあしゃん かにぱん……」と悲しそうに言った 康太は「久遠の了解が出たら持って来てやる!」と言った 家族は烈が覚醒めて安堵した 一生は竜馬に「烈 覚醒めたぜ!」とラインすると直ぐに飛んで来て、烈のベッドに突っ伏して泣いた 「りゅーま、なくにゃ」 それには答えず、おいおい泣いていた 一生はラインで一斉に「烈 目が醒めました!」と心配していた皆に知らせた あれから戸浪は何度も何度も、見舞いに来ようとしたが、今は遠慮願います!と謂れ身動きごとれずにいた あの日……まさか信頼していた人が、暴挙に出て烈を殺そうとするなんて…… その場にいたと謂う事で戸浪も事情聴取される事となった その場に仕掛けてあったカメラ映像を康太が提供した事により疑いは晴れたが……… 烈の意識が1週間経っても戻らないと聞くと、お見舞金として分厚い封筒を田代に託して飛鳥井へ持って行かせた ……が、門前払いを食らい、封筒は受け取っては貰えなかった 戸浪はずっと信じられずにいた あの知性的で 時代の最先端を走っていた従兄弟が、殺人鬼と化して烈を襲おうとした事実を受け止めかねていた 妻側の親族と謂う事もあり、沙羅は戸浪に迷惑をかけぬ様に離婚すら考えていた テレビでは八神の生い立ちやら犯行に至るまでを連日放送されていた 烈が死んだら未遂ではなく、殺人犯となるのだ! 名家で著名な人間を輩出する一族だとしても………犯罪者を排出すれば地に落ちてしまうのだ 沙羅は叔父の存在が戸浪を苦しめているのは……理解していた あんなに憧れた存在に寝首を掻かれた様なモノなのだ 康太も我が子が殺されかけた今、戸浪に掛ける情などないに等しいだろう…… 烈を誘き出し殺そうとした男に加担したのだから…… 烈は日を追う事に、事件の事を把握して理解出来る様になっていた 榊原は烈の携帯を解約して新しい携帯を2台持たせた 後遺症はまだどう出るか解らないけど、体力と機能が回復したら退院しても大丈夫だと謂われた 今は寝たきりで落ちた体力の回復訓練を毎日行っていた 機能回復訓練を始めた頃、烈の足に後遺症が出ているのか?動きが悪く引き摺る様に歩くと、理学療法士から結果が上がって来た 久遠が色んな検査を入れ調べると、やはり後遺症で酸素が脳に行かなかった数分の間に、運動を司る部位にダメージがあって、それで足の動きが悪くなっているのだろう、と謂われた 手の回復もまだなのに、足も機能障害を抱えてしまったと謂うのか? 烈の長いリハビリ生活が始まった リハビリの日々と並行して、烈はストップしていた【R&R】の仕事を病室でPCを運び込ませて片付けていた そして鴉からの報告を目にして、一族の抜き打ちチェックの予定を立てて行く 康太は烈に「………若旦那の事許せないか?」と問い掛けた 康太も迷っててついつい烈に問い掛けてしまっていた すると宗右衛門の声で「許せるとか許すとかの次元はとうの昔に過ぎ去ったわ! まぁ許せるか?許せないか?を問われたら、許せる筈などない!としか答えられぬ!」と言った 康太は、どーでもいいにょよ!の台詞が返って来ると想っていた 宗右衛門は「どーでも良いにょよ!とか謂う台詞を期待しておったか? ならば、それは筋違いだと申そう! 烈は人の感情の機微には疎いが、愚鈍なのではない! 殺されて掛けて、どーでもいいにょよ!なんて台詞は菩薩でもない限り謂わぬであろうて! まぁ主なれば、殺されかけても許すであろうが、儂も許さねばならぬか? そうではなかろうて! 許す、許さぬは人それぞれ違うのじゃ! 況してや殺されかけて、許せるなど皆無だと申そう!」と吐き捨てた 康太は「すまなかった……オレは許してやれとか謂うつもりで、聞いた訳じゃねぇ……」と言った 「主は迷っているのであろう? 今後の若旦那との付き合いを、迷っているからこそ、儂に問い掛けたのじゃろ?」 「……お見通しか……オレだって許せねぇ想いはあるんだよ! オレが忖度したばかりに、おめぇの命を危険に晒した……… そして今後は気の遠くなる程のリハビリを続けて行かねぇとならねぇんだもんな だが今 苦渋に満ちているだろう若旦那を想ってはいるが、それを引き起こしたのは若旦那だから自業自得だと謂う想いもある……」 「主はどうしたいのじゃ?」 「此処で戸浪を終わらせたくない想いもある 煌星を引き取らせ配置したのはオレでも有るからな、その前に潰したくねぇ想いはある 夏海から煌星を託されたんだ………潰して溜まるかよ!」 「なれば力になればよいではないか? 儂は許せぬ想いはある あの日あの時呼び寄せ殺されかけたのじゃからな 巫山戯るな!と謂う想いはあるが、そんな想いを抱き続けるのは疲れる故、切り捨てるが一番じゃ 儂はな真贋、既に先に進んでおる! 1000年先へ繋げた飛鳥井を盤石なモノにせねばならぬ! 立ち止まってなどおれぬのじゃ! ならば逝くしかあるまいて! 立ち止まっておる奴は飛び蹴りかまして動かせる! それしかあるまいて!」 「宗右衛門……」 「なぁに、儂は飛び蹴りは得意であるならな かまして来いと謂うなれば、飛び蹴りをかましてやろうか?」と言い笑った 康太も笑って「だよな、おめぇは竜馬に飛び蹴りかましてOOにも飛び蹴りかましたんだって?」と問い掛けた 「あやつは引き篭もりの偏屈な奴じゃった ヘンリーんちに行く度に出て来て難癖つけるから、我慢出来なくなって飛び蹴りかまして夜中まで説教してやったのじゃ! そしたら泣きながら、何だか懐かれたのじゃ 使える男じゃからイギリスの会社のトップに据えたのじゃ! あやつは喜々としてヨニーの全権を手に入れ活用するであろうて! だからな儂は立ち止まる暇はないのじゃ! お主も気になるなら行くがよい! そして軌道修正してやるがよい! 道に迷った迷子は戻さねば、どんどん間違った方へと向かうからのぉ!」 「んとに……おめぇは前向きなんだか後ろ向きなんだか解らねぇ奴だよな」 「まぁ根っこが復讐しか考えておらぬ根暗故、基本は後ろ向きじゃが、立ち止まれぬからのぉ今は、だから前に向かって進むだけじゃ!」 そう言い宗右衛門はガハハハハッと笑い飛ばした 康太は宗右衛門の存在に何時も救われている、と想った 何時の世も宗右衛門の言葉に救われ背中を押される 「烈、もう少し体力が着いたら退院だな」 「真贋、儂は退院したその日にイギリスへ旅立たねばならぬ! クリストファーが世界に向けて喧嘩を売ったも同然の発言をしたからのぉ、堂嶋から頼まれておるし、宥めに逝かねばならぬのじゃ!」 「めちゃくそ凄い人脈持ってるんだな、お前って………」 「儂は人脈とか関係ない 【R&R】は竜馬の仲間じゃった奴らじや! 最初は個性強すぎて纏まらぬ集団じゃった それを、叱りつけて意見を出し合わせたらクオリティーの高い世界を創り出す集団になった 儂はアイツ等が好きじゃ! じゃから気の合う奴等と馬鹿騒ぎして一つのモノを創り出したいのじゃ! それには家柄や経歴など関係はない まぁ関係はないと言っても、使えるモノは使おうと、講習会の時は使ったがのぉ、まぁそれだけじゃ!儂は利益を考えて人と付き合うなど下らぬ思考は持ち合わせてはおらぬ!」 「宗右衛門らしくて安心したわ!」 「それよりも真贋、鴉の報告で気になる点が一つ有るのじゃ!目を通しておいてくれぬか?」 「了解したわ!オレのPCに飛ばしておいてくれ!」 「もう送っておいたわ! それより烈のカニパン、そろそろ持って来てくれぬか? 此奴 夢にまでカニパンを見ておるからな」 「久遠が数値が悪すぎって言ってたからな カニパンは持って来られなかったんだよ!」 烈はガックシ肩を落とした 「かにぱん……たべたいにゃ…」 烈は呟いた 「烈、戸浪に行く時、おめぇも行くか?」 「いくにょよ!とびげりかますにょよ!」 飛び蹴りかます気満々の烈だった 「れもにゃー、このあしらとむりなにょよ」 と烈が悲しげに謂う 引き摺ってしか歩けない足では飛び蹴りはかませれない、と烈は想うのだった 「ならレイも連れてけばええやんか! 飛び蹴りはレイがしてくれる!」 「それいいにょ! れいたん がんばってくれるにょ!」 榊原は横でそれを聞いて、あくまでも飛び蹴り確定な話しですか………と想った だが最近の康太は笑う事もなく、悩んで考え込んでたから、その方がらしくて良いと想った だから榊原も「ならば、ここの入院費も支払って貰いましょうか?」と話に乗る 康太は瞳を輝かせて「それ良いな!」とすっかり上機嫌になった 烈は「にゃら、たいいんしたひにいくにょよ! ぼくは そのあといぎりすにいくからね りんどうをあとでよんでください!」と言った 榊原は「後で連れて来ます」と約束した 康太と榊原が病室を出て行くと、慎一に連れられて凛が病室にやって来た 烈は凛を呼び寄せてPCの画面を見ながら話をしていた 竜胆が「宗右衛門黙っている気かよ?」と問い掛けると 宗右衛門は「黙っている程お人好しではない! 主等が転生したら飛鳥井ありませんでした!では配置した転生者に顔向け出来ぬではないか!」と怒って謂う あれから飛鳥井から抜けた一族の身内の者であるが、素質ある者の果てを視て、一族に仕える気があるか問い掛け、輪に入れ一族を増やして来た 真贋が篩をかけ50世帯に減らした一族を 宗右衛門は増やして今現在70世帯に増やしていた 宗右衛門は「あと少しで総て入れ替えして帳尻合わせが出来るであろうて!」と嗤った 増やしているのではなく、総て入れ替えする気で、増やしていたのだ 一族も長くそこにいると利益や私欲を貪るだけの存在となる 斯波家初代真贋が始めた一族が今まで繋がり遺された 守り通すべき一族は”血" ではなく絆なのだ 同じ想いをして、同じ方を向いていなくば意味がない 過去に人の世に堕ち斯波家初代宗右衛門として生きて来た 以来何度転生しても【宗右衛門】の名称で呼ばれ一族の為に生きて来た 今世は先の1000年続く果てへと逝かねばならなかった より強固な【絆】を結び果てへと逝ける様に動かねばならなかった その為に竜胆を転生させたのだ! 無論 顔見世も有ったが、生まれたからには竜胆の役目を全うさせるつもりでいた 一族の総ファイルを(飛鳥井の一族に一度でも籍を置いた者達も入れて)をPCに転送させ鴉や、調査会社にその後を追わせる 滅んでいたとしても構わない 天賦の才さえあれは、それだけで良いのだ そうして繋がれし一族は1000年果てへと続く軌道を描くのだった

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