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第9話 校書掃塵 ❶
崑崙山に康太達が降り立つと八仙が姿を現した
「炎帝殿 頼まれてた神髄師をお呼びしております故、来られるとよい!」と八仙は告げさっさと屋敷の中へ入って行った
その後を追い、康太達は屋敷の中へと入って逝く
榊原は神髄師?と問い質した
「足の治療に逝くって言った以上は治さねぇとならねぇだろうが……
治らずに帰ったりしたら、家族がもう治らないんだね……と思うからそれは避けてぇんだよ!
烈は悠太と違い骨がどうのこうのなってる訳じゃねぇからな
神髄師に骨の矯正をしてもらえば、ビッコは治ると想うんだよ!
まぁ悠太は骨がバッキバッキだったからな、手を打とうにも、どうにも出来なかったけど烈なれば神髄師で何とかなるかもって八仙も言ってくれたしな!」
と謂うと八仙が神髄師と謂う存在が何なのかを話した
「神髄師と申すのは古来中国の地方の方で整体師みたいな事を生業とする者を発祥に、そう呼ばれる様になったのじゃ
今の中国には神髄師はおらぬが、桃源郷にはちゃんと神髄師は存在して仕事をしておるから今回は呼ばせて貰ったのじゃ!」
と八仙は説明を兼ねて謂うと、烈の手を引き神髄師の前に立たせた
神髄師は「歪んでおるな、そして脱臼も最近したであろう?」とその体を詠み当てて逝く
神髄師は烈をヒョイッと抱き上げると歪みを取る為に、あっちこっちにポキポキ向けて骨の矯正をする
その度に烈は「さけるぅ〜」だとか「やぶれるぅ〜」だとか「ちぎれるぅ〜」だとか「折れちゃうぅぅぅ〜」と謂うから
レイが呪文を唱えようとするから、榊原が屋敷の外へと連れ出した
そこへ閻魔がやって来て、アルパカみたいな馬の更に小さな馬を小脇に抱えてやって来た
「閻魔殿!」と榊原が言うと閻魔は
「レイの馬を持って来ました!」と笑顔で告げた
閻魔は馬をレイの前に置くと、レイをその上に跨がせた
レイは「れちゅといっちょ!」と喜んで馬に乗っていた
榊原は閻魔に「ありがとうございます!」と礼を言った
「烈にプレゼントした馬の、親馬が子を産みました
その中にやはり烈にプレゼントしたタイプの馬が一匹混じっていたので貰い受けたのです
やはりその馬はレイにと、想ってね
炎帝は中にいるのですか?」と問い掛けると
「はい、中にいます」
「なら、何故青龍殿は入らないんだい?」と問い掛けると、直ぐにレイが呪文を唱えるので出ています!と伝えた
「呪文?それは何を唱えるんだい?」
「破滅の序章や死神を召喚しようとしたり
鏖殺や滅殺は得意だと謂いますからね、離さないと危険で仕方ないのです!」と言った
閻魔はたらーんとなった
八仙が「総て終わったから入るが良い!」と呼びに来ると、榊原はレイを抱き上げて八仙の屋敷に入った
烈はぐだ〜っと寝ていた
レイは「れちゅ!」と慌てて駆け寄り抱き締めた
「レイたん 大丈びょ!
ボクね引きずらにゃくても歩けるにょうになったのよ!」と嬉しそうに謂う
レイは泣いて「れちゅ〜」と喜んだ
康太は立ち上がると「なら兄者も来た事だし逝くとするか?」と言い立ち上がった
屋敷の外に出て馬を呼ぶ
烈もアルくんを呼ぶと、レイが馬を指して「れいのうまよ!」と喜んで烈に見せた
烈とレイはパカパカと母達の後を追い駆け着いて逝く
だが烈の馬よりレイの馬の方が足が早くて 、烈はたらーんとなった
「レイたん 名前ちゅけてあげるのよ!」
「うん!」
と一緒に駆けて逝く
榊原は「何でレイの馬の方が足が速いんですかね?」と笑いを堪えて謂う
康太も「しかしまた同じ様な馬、良くも探して来たよな?」と涼しい顔をして走る閻魔を見た
閻魔は楽しそうに笑っていた
康太は「大歳神来たかよ?」と問い掛けると
「ええ、昨夜から来られて宴会しまくりです、あの方は」とボヤいた
もうすっかり馴染んで遥か昔から、存在していた様に浸透して違和感もなく溶け込んでいた
一旦 閻魔の屋敷の前の庭に馬を止めると、烈はスタスタと閻魔の邸宅に入って行き、食堂へと向かった
食堂では毘沙門天がガツガツご飯を食べていた
そして烈の姿を見ると「待ちくたびれわ!」と吐き捨てた
宗右衛門の声で「すまぬ、人の世でも片付ける事は多くてのぉ!
で、何故朱雀がサクサク動けぬのじゃ?」と問い掛けた
「まぁね、話を決めようとしたら横槍が入って来るのよ」
「ならばその横槍、排除して魂を朱雀に管理させねばならぬ!」
毘沙門天は全部は話さず、お茶を飲み食事を終えると立ち上がり
「ならば、面倒なの片付けちまうとするか!」と言いレイを肩に担ぎ上げて歩き出した
レイは嬉しそうに笑っていた
康太と榊原は裏の自分ちで炎帝と青龍の服に着替えて戻って来た
毘沙門天を見ると炎帝は「なら行くとするか!」と問い掛けた
「だな、で、何処へ行けば良いのよ?」
と行き先をまだ聞いてない毘沙門天は炎帝に問い掛けた
炎帝は「そりゃ増殖してる伯父貴んちだろうが!」と答えた
「あ~素盞嗚殿のお宅か……」
そう言い屋敷の外に出ると毘沙門天にレイは
「おろちて!」と謂うと、毘沙門天はレイを下に下ろした
外に停めた馬に近寄り、よいしょ!っと乗ると、毘沙門天は「何だよ?この馬は!」と叫んだ
烈のアルくんは変異種で、滅多といない種類なのに、そのまた小さいのがいたなんて………
炎帝は毘沙門天に「置いてくぞ!」と謂うと天馬に乗り走り出した
青龍も風馬に乗り込むと走り出し素盞嗚尊宅を目指す
毘沙門天は慌てて愛馬を呼び乗り込み走り出す
烈の馬よりも早く走る馬に、毘沙門天はプルプル笑っていた
アルくんは空へと駆け上るとパタパタと羽根を出して飛び出した
レイの馬はまだ小さくて飛べないから、レイは泣き出した
毘沙門天はレイを抱き上げて、空を飛ぶ
レイの馬はせっせとレイを追い走っていた
毘沙門天は「あの馬は羽根がまだ出来上がってない子馬だからな、飛べないんだよ!」と謂うとレイは「そのうち、とべゆ?」と問い掛けた
「飛べるさ、烈の馬みたいに飛ぶ事が出来るさ」と謂うとレイは嬉しそうに笑った
その顔に赤い鳥を想い出す
毘沙門天はレイを撫でてやった
素盞嗚尊のお宅に着くと、皆馬から降りて庭へと出た
すると大歳神と素盞嗚尊が採れたての野菜に齧り付いていた
大歳神は烈を見ると「倅よ帰って参ったか!」と嬉しそうに言い烈とレイを抱き上げた
そして縁側に座ると、素盞嗚尊は生き生きとした顔で「梃子摺るならば我の正義の槍で串刺しにしてやろう!」と豪快に笑った
炎帝は「朱雀は今 何処で寝泊まりしてるのよ?」と問い掛けた
すると大歳神が「聖神の部屋に寝泊まりしておるぞ!あやつは!」と答えた
「え!アイツんちあるがな!」
炎帝がボヤくと素盞嗚尊が
「朱雀はこの横に越して来るみたいじゃ!」と言った
青龍は「それを素盞嗚殿は許されたのですか?」と問い質した
「許すも何も、朱雀の家は朱雀の山の裾野であるからな、不便だから越したいと謂う想いは解る
あんな寂れた場所では寂しいのもあるからな
近くに越して来るならば、共に過ごそうではないか!と申した所じゃ!
儂も……最近は息子と孫に囲まれ幸せだと思えるからの……誰もおらぬ部屋にいるのは寂しいと解るのじゃ…………」
そんな事謂われたら、即座に朱雀の家を建てちゃうじゃねぇかよ!
騒ぎを聞き付け朱雀が顔を出すと、皆の姿に唖然となった
朱雀は「どうしたのよ?」と問い掛けた
すると炎帝が「烈が掃除するって毘沙門天呼んでやる気になってるんだよ!」と答えた
朱雀は「烈、来てくれたのか?」と嬉しそうに謂う
相当酷使し動いていたのだろう…………目の下には隈が出来て、窶れてボサボサだった
烈は「お風呂……にゃいの?やっぱしかわ?」と問い掛けた
炎帝と青龍と毘沙門天は腹を抱えて笑い出した
朱雀は素盞嗚尊本人を前にして川だなんて口が裂けても言えない!
「お風呂はあるんだよ!烈
俺は徹夜で寝てねぇからボサボサなだけだ!」と言った
前に魔界に泊まった時、雪に温泉ばりのお風呂に誘われ一緒に入ったから素盞嗚の家ではお風呂に入ってなかったのだった
大歳神は息子を抱き上げて「心配するな倅よ!炎帝んちの風呂に引けを取らねぇ風呂はある!」と安心させた
なら風呂はあるのに、こんなにボロボロなのは何故?
烈は「兵藤きゅん かわがいいにょ?」と問い掛ける
朱雀は慌てて「違うって、風呂から離れような!烈」と言った
「兵藤きゅん、邪魔してるのは元素盞嗚の一族よね?」と確信をいきなり突いて来た
「烈…………」
「ボクの奥しゃん奪ったやつ……まだ生きてたにょね!」
何処まで調べて知ってるのか?
朱雀は恐ろしくなり「烈!ごめん!烈………」と謝罪する
「気にちなくて、大丈びよ!
ボクはもう、にゃんとも思ってにゃいからね!」
素盞嗚尊は「今度こそ八つ裂きにして息の根を止めてやる!」と言った
その顔は清々しく爽やかに言った
台詞と顔が反比例してて朱雀は言葉を失った
レイは「れちゅ!」と飛び付いて抱き締めた
「レイたん 大丈びよ!」
朱雀は「一緒に連れて来たのかよ?」とレイを抱っこして問い掛けた
青龍が「一生達だけでは荷が重いので連れて来ました!
死神を呼ぼうとしたり滅殺は得意だと謂う子ですからね………」と目を離すと直ぐに呪文唱えてるし…と言った
朱雀は爆笑してレイの頭を撫でた
烈は縁側に座ると、難しい顔をして考え始めた
その横に大歳神が座り、大歳神の横に素盞嗚尊が座る
すっかり何時もの光景だった
炎帝と青龍は縁側から部屋に上がり、ソファーに座った
ソファーの前のテーブルには野菜が山の様にザルの上に入っていた
炎帝はキューリみたいな長いのを一本手にすると
「伯父貴、食って良いかよ?」と問い掛けた
「あぁ、好きなだけ食べるが良い
成長が早いから、直ぐに実がなるし、味も悪くはないのじゃ!」と言った
炎帝と青龍はキューリみたいな長い野菜を食べた
意外と美味しくて、瑞々しい野菜だった
「これって伯父貴が作ってるのか?」戸問い掛けた
素盞嗚は「あぁ、この近くに畑があるからな
この庭と畑で作っておるのじゃ!」と答えた
素盞嗚尊が野良仕事………正義の槍を鍬に持ち替えて野良仕事する姿は案外しっくり来ていた
炎帝は「上手いな、これ!」と魔界で育つ野菜なんてたかが知れていたのに………
「聖神がガブリエルに祝福された光と太陽の光を世界樹から放出して魔界を照らして、陽の光が常に入る様にしたから、魔界の野菜も獣も家畜も破竹の勢いで育ち出荷されているのだ!
我等は増殖し過ぎた獣を狩って、金を稼ぐ方法も見付けられるようになり、前よりは断然過ごしやすいが、やはり何処にでも自分の利益を主張したい奴は出て来てな、魂の管理委員会のあった敷地は何時の間にか強奪されてしまっていて、朱雀は何処に建てるか?管理システムと管理する人間の選別と研修でストップしてしまっている!」
と現状を織り交ぜて素盞嗚尊は話した
炎帝は信じられないって声で
「強奪?元々あの地は管理委員会のモノだろ?
強奪したのならば、取り返せば良いだけの事だ」とサラッと言った
素盞嗚尊は「儂もな、孫が還る魔界がこんなに無秩序な世界では、また絶望してしまうから、正さねばと想っておったのじゃ!」と言い正義の槍を掲げて謂う
「じぃしゃん 刺さるにょよ!」と振り回す槍を目にして怒ると素盞嗚は「烈、すまなかったな!」とすっかり好々爺と成り果てていた
朱雀は「どうするのよ?」と問い掛けた
烈は宗右衛門の声で「邪魔者は排除する!楯突くならば潰す!絶対の魔界を作る為に、これは必要な鮮血なのじゃ!」とらしくない事を謂う
朱雀は「烈らしくなくないか?」と謂うと
「甘い事を言っておったら、何もその手に掴めませんでした!となる
それでもよいならば、儂は来た意味を無くす!」と吐き捨てた
朱雀は覚悟を決め、気を引き締め
「解ってるよ宗右衛門!
俺は絶対に聖神が敷いてくれたレールの上に乗ると決めているんだ!」
そんな朱雀と宗右衛門の遣り取りを、炎帝は黙って見ていた
「ならば甘さは捨てられよ!
そして痛みを感じるのじゃ!
切り捨てねばならぬ痛みを……な」
「ならば、行くとするか!
俺はこんなにも強い援護射撃を貰ったんだ!
動かねぇとならねぇだろが!」
宗右衛門は笑って「ならば朱雀風呂に入って参れ!そんなボサボサで討伐するのは相手に対して失礼であろうが!
儂は野菜を食っておるから支度をして参れ!」と言った
朱雀は慌てて湯殿へ向かい風呂に入った
烈はレイと共に野菜を齧っていた
「美味ちいにょよ!じいしゃん!」
「そうか、作った甲斐があったな」
素盞嗚は嬉しそうに謂う
朱雀が支度して来ると、皆が立ち上がり馬に乗った
朱雀はレイの馬を見て「何だよ?これは?」と驚いていた
「れいのよ!」とレイが嬉しそうに言う
朱雀は宗右衛門に「で、何処へ行くのよ?」と問い掛けた
「魂の管理委員会のあった場所じゃ!
あの地には父者の根が封印がしてあった筈じゃ!
その封印を呼び起こし、後から来た輩を追い払う事とする!逆らえば排除あるのみじゃ!」
宗右衛門が言うと、魂の管理委員会のあった地へと皆が走る
今度は烈はレイと並んで走っていた
空を飛んで泣かれたからだ
レイはニコッと笑いつつ、何やらブツブツ唱え始めていた
目的地に到着すると、そこにはど派手な品のない建物が建てられていた
大歳神は「何なのじゃ?この建物は!」と言い呪文を唱えると地面から根が畝りあっと謂う間にそこに建っていた建物を総て壊した
地震かと家から出て来た者は唖然として、その光景を見ていた
宗右衛門は「この地は魂の管理委員会の所有する土地じゃ!
空き地にしてあったが、盗んて建てて良いと我等は許可など出してはおらぬぞ!」と吐き捨てた
一人の男が出て来て「あれぇ?聖神の転生者じゃないか?昔の君ならば僕にそんな偉そうな口聞けなかったのにね!」と少し小馬鹿にして謂う
烈はその男を見ても顔色一つ変えなかった
「お前こそ誰にモノを申しておるのじゃ?」と宗右衛門は返した
大歳神はマサカリを振り飛ばし、下品な建物の残骸の処理をした
「あれぇ、泣いて僕に跪いていたのにねぇ
随分と偉くなったみたいだね?
君の奥さんガバガバのユルユルの女だったね
君は本当に女を見る目がないねぇ!」
それでも顔色一つ変えない烈に、周りはハラハラと心配になる
烈を貶め服従させて来た男は、下僕だった男が気に食わなかった
聖神の噂ならばこの魔界にいれば、何処でだって耳にする!
魔界に必要だから処刑した魂を呼び起こし再生させたと知ら示めた!
その男はそれが気に食わなかった!
甘い汁と素盞嗚尊の系譜と謂うだけで優遇されて生きて来たのに……
一族は取り潰しで何の権力も肩書もなくした
財産もすべて剥奪され、魔界でのステータスを失った
だからこそ、憎かった聖神が!
男は下僕だった癖に!と聖神を見下す
レイは聖神が毎晩『辛いんだ……』と泣いていた日々を想う
この男が聖神を苦しめ蔑み下僕扱いしたのかと思うと居ても立っても居られなかった
レイは右手を天高く指し示すと、一条の光が一直線に男目掛けて堕ちて来た
男を貫く様に槍が突き刺さって、男は息絶えていた
炎帝と青龍は何が起きたのか?一瞬の事で解らなかった
毘沙門天は「何が起きたんだよ炎帝!」と問い掛けた
「オレも知らねぇよ!
何かしたとしたらレイだろ?」と謂うと一斉にレイを見た
青龍は「何をしました?」と問い掛けた
レイはニブルヘイムの声で
「聖遺物を此処にお呼びした!
神に天罰に下すなれば、やはり聖遺物でなくてはならないので!」と謂うと炎帝は槍に目を向けた
「ロンギヌスの槍……本物じゃねぇか!
めちゃくそすげぇ力を秘めて目的を持って飛んで来やがった!」
と炎帝はボヤいた
烈はレイの頬をバシンっと叩いた
「人の命も神の命も等価交換でなくばならぬ!」
「その男は聖神を貶め蔑み下僕扱いした奴ではないか!
悔しくないのですか?憎くはないのですか?」
レイは泣いていた
烈はレイを抱き締めて
「痛みを知らにゃい粛清は意味がにゃいの
人を断ちゅなら、痛み知らにゃいと駄目にゃのよ
それじゃにゃいと道は続かにゃいのよ!」
「ごめん烈……でも………許せなかったんだもん
貴方が毎晩辛いと泣いていた日々を思い出したら許せなかったんだもん
僕はすっと貴方の苦しい胸の内を聞くしか出来なかった
貴方は聞いて貰えて凄く助かってるし嬉しいんだよ、と言ってくれたけど………
僕はどんな思いで貴方が復讐を決めて来なくなったのか?
思うと胸が張り裂けそうになる………
最後の夜、貴方は後悔なんてしてない
本当に傍にいてくれてありがとうって言ってくれた
僕は君の傍に行きたいと願って転生した
傍に来ても………こんなに苦しいんだもん………
貴方も泣いてよ!無感情で心を殺さないでよ!」
烈はレイを抱き締めて
「ぎょめんね、ぎょめんね」と何度も謝った
炎帝は取り敢えず男を突き刺してる槍を抜いた
すると男はポロポロと崩れ落ち、砂の様に消えてなくなった
炎帝はロンギヌスの槍を素盞嗚尊に渡して
「おい!ニブルヘイム!消えたやんか!」と訴えた
レイは烈の胸に顔を埋めたまま
「それは聖遺物ですよ?
イエス・キリストの血に触れたモノですから、悪事を働けば消えてなくなります
その男は悪事を重ねて魂が穢れまくっていた
そんな男が聖遺物で貫かれれば、消えてなくなるのは当たり前の事です
普通の人を刺しても消えません
それ以前に貫かれても穢れがなければ痛みさえ感じず命も取りません!
この魔界はそんな穢れを持つ存在を野放しにして放置した
管理してるのですか?と逆に聞きたい!」と吐き捨てた
青龍は「ならばあの男は消えるだけの罪を背負っていた………と謂う事ですか?」と問い質した
レイは「そうです!嘘だと想うならば、僕を突き刺して見れば解ります!」と言い立ち上がり両手を開いて見せた
素盞嗚尊は「儂はレイは突き刺せんよ!」と言った
烈は素盞嗚尊から槍を取ると、躊躇する事なく自分を貫いた
青龍は「お尻ペンペンしますよ!」と怒り槍を抜いて、お尻をペンペンした
烈は「とうしゃん ぎょめんにゃさい!」と泣きながら謝った
大歳神は「怪我しておらんか?」と心配して烈を抱き締めた
「痛くもにゃいのよ」と烈が言うと大歳神は槍の先で自分の手を刺した
「本当じゃな、痛くもないし、何も感じぬな!」と謂うと毘沙門天も腕を突き刺して
「だな、砂にもならねぇし、どうなってるのよ?この槍!」と言った
炎帝は「あぁ、聖遺物だから人を選ぶのか?」と納得した
青龍は「教えて下さい!奥さん」と意味が解らない!と訴えた
「これはイエス・キリストの死を確認する為に脇腹を突き刺したと謂われるロンギヌスの槍だ
イエス・キリストの血に触れた槍は聖槍と呼ばれる
まるで伯父貴の正義の槍と同等、いや、それ以上の性能を持つんだよ!」と説明した
男が砂の様に消えてなくなるのを目にした輩は、即座に消えていなくなっていた
炎帝は「一人の犠牲で片付いたみてぇだから、ある意味めでてぇ事だな!」と呑気に言った
朱雀は「……衝撃が強過ぎた、んとに、この子は!」と謂うとレイを小脇に抱えてお尻をペンペンした
レイは泣いて「ぎょめんにゃちゃい!」と謝った
素盞嗚尊は渡された槍をずっと持ってて
「この槍はどうするのじゃ?」と問い掛けた
炎帝は朱雀の手からレイを取り上げて
「どうするのよ?」と問い掛けた
するとレイはニコッと天使の様に微笑み、手を天高く指差し
「返せと謂うのならば、取りに来るでしょ!」と言った
炎帝は「だな!」と言いレイを下ろした
レイは烈の所へ走って行き抱き着いた
烈は「叩いてゴメンね」と謝った
レイは「いいにょ!」と烈の手を強く握った
炎帝は「伯父貴、その槍、貰っとけよ!」と言った
素盞嗚尊は「えええ!聖遺物なのじゃろ?」と言った
「返せって謂うならば、とうの昔に消えてるんだよ!消えてねぇって事は使って良いって事なんだよ!
槍は伯父貴しか使えねぇやんか!
青龍には青龍の槍があるかんな!
夫の槍はやはり青龍の槍じゃねぇとな!」
素盞嗚尊は手にした槍を握り締め
「ならば貰っておくとするか!」と言った
炎帝は「そうしとけよ!伯父貴は無駄な殺生を嫌うかんな!その方がらしくて良いじゃねぇかよ!
烈に渡した草薙剣はロンギヌスの槍と同等の力を秘めていた
まぁロンギヌスの槍は誰も手にした事がねぇからな、その性能は良く解らねぇけどな!」と言いガハハハハッと笑った
素盞嗚尊は槍に話し掛け契約を結んだ
槍は素盞嗚尊の手の中に消えた
槍も持ち手を選んだ瞬間だった
宗右衛門は「さぁサクサク進めるのじゃ!朱雀!」と発破をかけた
ど派手な建物は大歳神がぶっ壊して地中に還して原始レベルまで分解を続け地の養分にした!と告げられた
朱雀は大歳神めちゃくそすげぇな!と想った
閻魔は黙って見ていたが、やっとこさ出番だと口を開いた
「この地に新たな魂の管理組織を創ります!
宗右衛門の魂は冥府の闇に落とされ消滅されられかけたと聞きます!
そんな悪事は二度とさせぬ為に朱雀が全権利を所持し進められる組織をやっと創る事が出来ます!」
閻魔が言うと何時の間に来たのか、黒龍が
「魔界は今 大歳神と聖神が考案した建築製法を用いて建てる手法が主流に乗りつつあるからな
お二人がいるのだし、その力を最大限に活かして創られる事を期待するぜ!」と言い烈を抱き上げた
「烈、待ってたぜ!」
「こくりゅー!」と笑顔で黒龍の名を呼んだ
黒龍は烈を下ろすと、レイも抱き上げて撫で撫でする
「こーちゃ!」とレイも黒龍に抱き着いて懐いていた
大歳神は「今日中に基礎までやるぜ!」と発破を掛けると、皆が一斉に動き出した
烈が指揮して基礎を作らせる
大まかな所は大歳神が根を張り動かし地を耕し平地にして行く
そこへ何時呼んだのか、手伝う為のスタッフが来ていた
厳つい鬼が「聖神、頼まれていた土、持って来やしたぜ!」と言い大きな容器に土を入れ、砂を入れ「レイたん!」と謂うとレイが水を注いでいた
「ストップ!」と謂うとレイは水を止める
鬼達がその合わされた土と砂を捏ね始める
炎帝はそれを見て「コンクリートかよ!」とボヤいた
スタッフは基礎に指示通りに杭を打ち、土を捏ねて乾かしておいた煉瓦を並べ始めた
朱雀は唖然としていた
その尻を蹴り上げて「教育を始めんか!」と檄を飛ばされる!
朱雀は「烈、何でお前、こんなに準備万端なのさ?」と問い掛けた
「約束したではないか!
ならば、儂は祖父を使い父を使い準備をしておったのじゃ!
そして母を使い鬼達を駆り出して貰っておるのじゃ!」
宗右衛門がそう謂うと朱雀は炎帝を見た
「ありがとう炎帝」
「烈に頼まれたからな!
オレよりも青龍が兄弟を酷使して準備をしていたんだよ!」と内情を話す
朱雀は信じられない顔で青龍を見た
「烈に頼まれましたからね
頼まれたからには最大限の事をする
聖神は来世魔界に還ったとしても、親子の絆はなくなったりはしない!
貴方達は自分の絶対の人だから、炎帝が創る魔界を絶対のものにする!
その為の第一歩だと謂いましたからね
僕も頑張らねば男が廃ります!」と爽やかな顔で笑って謂われる
朱雀は「ありがとう青龍」と礼を述べた
その後は酷使されボロボロになりつつも、教育に邁進して行くのだった
何とか基礎まで完成させ地面を硬める為に明日の工程は休みとなる
その間に教育の場に烈も同行すると謂う
その夜の素盞嗚尊の屋敷で宴会は行われた
応接間にしてる奥の部屋は宴会場になっていて、大人数の者が来ても何時でも宴会に突入出来る様にしてあった
烈が野菜を使い食べられる料理をする
大歳神も料理をし、素盞嗚尊も料理をする
この親子は本当に料理が好きで、常に何かしら作っていた
その料理をテーブルに並べる
煮物に漬物にサラダにお肉!
彩り良く並べられる料理はどれも美味しくて毘沙門天は美味しい料理とお酒にスッカリ満足していた
建御雷神も天照大御神と共にやって来て、金龍夫妻と黒龍と、何時来たのか赤龍も席に着いていた
赤龍は「めちゃくそウメェな!この料理!」と言い毘沙門天と共に飲んで食べてしていた
転輪聖王もやって来て飛来クラゲの酢の物と唐揚げを目にして「お主、まだ捕獲しておるのか?」とボヤいた
素盞嗚尊は笑って「その料理はレイが毒を抜き作っておるから安心じゃよ!」と告げた
獣の肉は臭いから漬け込み匂いを消してから焼く、この料理は絶品だった
黒龍も「この肉美味いな!」と謂うと素盞嗚尊は
「聖神が肉の匂いを消す為にハーブを育て始めたのじゃ!じゃからそのハーブで匂い消しして豆を味噌みたいに発酵させて漬け込んだのじゃよ!」と言った
炎帝は「え?時々烈魔界に逝くって言ってたけど、ハーブ育ててたのかよ?
でも人の世のモノは育てるのは生態系を狂わせるって桜を持ち込んだ時に言ってなかっかよ?」と謂うと大歳神がそれに答えた
「そのハーブは人の世のとは違うのじゃ!
妖精のクロス殿と烈が考案して妖精に種を紡がせて試行錯誤して改良に改良を重ねて作り出したモノなのじゃ!
それがやっと成果を出して市場に出回る様になったのじゃ!」
それに黒龍が「利益の一部は種の改良の為に還元して、また種の研究に費やす事を繰り返してかなりの野菜を生み出しているんだよ
妖精は色やカタチを変える力を持つからな
試行錯誤して育てては直しの繰り返しをして日々
糖度を上げたり、改良を重ねているんだよ
素盞嗚殿の所で植えてる野菜はその一部で、大歳神と素盞嗚殿が食して合格を着けたモノを市場に流すを続けているんだよ!
そのお陰で魔界の食生活はかなり潤っているんだぜ!」と謂う
炎帝は「野菜作りが趣味なのではなく、聖神とクロスが種を改良して、その種を植えて、食べられるかどうか選別していたのか?」と呟いた
黒龍は「素盞嗚殿の親子は魔界に絶大的な貢献してくれている!
今の魔界の発展は素盞嗚親子の力無くば成し得なかった実績だからな!
そして何より、聖神とクロス殿が獣の食べ方とかも伝授して調理法も本にして売りに出したらバカ売れしたからな、魂の管理組織の建築費にしたんだよ!」と内情を話す
朱雀は驚愕の瞳を烈に向けた
「烈…ありがとう………」
「ぼくは魔界でおきゃねの使い道がにゃいきゃらね!」
黒龍が「朱雀、おめぇ、レイにも礼を行っとけよ!毒抜きの水を売りに出してくれたから、飲んでも良し!漬け込んでも良し!と大人気でバカ売れしたから、建築資材が良いのに買えたってのあるんだからな!」と付け足した
朱雀はレイにも「ありがとう、レイ」と礼を言った
レイは無表情で、その言葉を聞いていた
黒龍は「おめぇ、何時も思っていたけど、朱雀に対して一切の反応しねぇのな?」と謂う
青龍は「あ~言っちゃいましたね」とボヤいた
赤龍が黒龍を連れ出して説明する
「人の世のレイは兵藤貴史の子供なんだよ!
貴史がポイ捨てした女がニブルヘイムの魂を宿してこの世に産み落としたのがレイなんだよ」と謂うと黒龍は「そう謂うのは早目に説明頼むな」と言った
戻って来た黒龍は居た堪れない想いをしつつ飲んた
レイは時々朱雀にお肉を小さくして貰って食べていた
お肉が来るとお口を開ける
まるで親鳥と小雛の様な関係に苦笑してそれを見ていた
烈は「カロリー高いと怒られりゅからね!」と野菜を食べていた
食べた後に「酸味かにゃ?硬さかにゃ?」と思案しつつ食べる
大歳神は「ええい!食す時は素直に食せ!」と怒る
金龍は烈を抱き上げて、溺愛して撫で回す
銀龍も我が子のように世話を焼き溺愛する
天照大御神もレイと烈を溺愛して大切にする
そんな光景を炎帝は目にして笑っていた
建御雷神も素盞嗚尊と転輪聖王と共に飲む
友は今は笑っていた
幸せそうに笑っていた
それが嬉しくて転輪聖王と建御雷神はついついお酒が進んで酔い潰れていた
酔っ払いにブランケットに似た布をかけた頃
炎帝と青龍は自分ちに還って行った
朱雀は烈と共に飲んでいた
烈はお茶で朱雀は酒だけど…
朱雀は「レイも何時か魔界に還るんだろ?」と問い掛けた
「そーね。ボクの所に還ってくれりゅのよ!」と答えた
「その時はニブルヘイムの本体になるのか?」
「……………本体はにゃいのよ」
「え?それはどう謂う意味だよ?」
朱雀が問い掛けると宗右衛門は
「ニブルヘイムは本体を捨てて転生の道を辿られた!
儂の痕跡を辿り転生の道を辿られる事となった時
ニブルヘイムは創造神に本体など要らない!と謂い、烈と同じ様に魂だけで転生を果たされたのじゃ!
だから魔界に戻って来ても、あの容姿のままじゃ!まぁ歪められた果て故の結果じゃ!
仕方あるまいて!」と言った
「じゃ、魔界に戻ってもあの姿のままか…」
「我が子として公言されよ!
そして二人で仲良く過ごされてはどうじゃ?」
「レイは俺を嫌っているじゃねぇかよ!」
「嫌っておる訳では無い……
元々ニブルヘイムは人とは接してこなかった神であられる故、距離感が解らぬと今もボヤいておられるのじゃ!
それ故にお主との距離感を測り兼ねておるのじゃろ………まぁ母親に愛される事なく罵られ暴力振るわれた幼少期を忘れろと謂うのはまだ時間が足らぬのじゃ!
嫌いならばお主の差し出すお肉に口など開かぬよ!レイは!」
「…………言葉もない………」
「レイは主に親に似た愛情を、感じておるのは確かじゃ!
じゃがそれを認めたら儂が離れて行くんじゃないかと心配なのじゃよ!
少しずつ教えて行くしか無いのじゃ、朱雀
レイは無垢な魂を持つ孤独な神 ニブルヘイムだったのじゃからな!」
「誠心誠意接する事にするよ
俺はこの近くに越して来るつもりだ
やはり皆の側にいたい想いは強いからな!」
「ならば越して来ればよい!
炎帝が護る魔界を共に護ろうではないか!
じゃが側に来るなれば、別邸は必要じゃから今の家は遺しておくがよい!
おなごを連れ込む時はそこへ連れ込むのじゃぞ!
愛妻家な祖父や父やレイはそう謂う事を嫌うからな!」
「肝に銘じとく!
お前は来世も誰とも暮らさないのか?」
「そーね、魔界にりゅーま呼んで笑ってくらしぇれは、良いのよね!」
「竜馬、来世は来るのかよ?」
「母しゃんに頼んだのね!
良いよって言ってくれたにょね!」
朱雀は烈の頭を撫でた
大好きな人に囲まれて暮らせるならば、それでいい
そんな想いを込めて撫でた
烈は大歳神の部屋に行きレイと共に寝る事にした
朱雀は聖神の部屋で休む為に部屋に行き、ベッドに寝そべり目を閉じた
静かに夜は更けて行った
翌朝 ホカホカのご飯と味噌汁が食卓に並び、毘沙門天は喜んだ
赤龍も「嘘、魔界にお米ってあったのかよ?」と言った
大歳神は「これも烈とクロス殿がお米に似た食物の種を手に入れ試行錯誤して出来た米だ!
味噌は大豆の様な豆が元々有ったからな、それをより大豆に近付けて作ったモノだ
聖神は畑に大豆に近い豆を大量に育てて味噌工場を作ったのじゃ!
そこの工場から市場に出荷され市場に出回っておるのじゃ!
まぁ我が家には工場から直に貰いに行くんだけどな!
味噌工場は普段は親父か儂か黒龍に監視して動かしておるのじゃよ!」と伝えた
赤龍は「すげぇな食物ってそんなに簡単には出来たりしねぇから大変だったろうな」と苦労を想い口にする
素盞嗚尊は「それはもぉな……食べたら吐く野菜や、ぶっ倒れた野菜も、噛んだら爆発するプチトマトなんかもあったな……最初からは上手くは行かなかった
儂らも協力して育てて味見して倒れての繰り返しじゃったしな!」と完成までの苦しみを語る
朱雀も「少し前に見た目はスイカに似たヤツ食べたんだよ、そしたらゴーヤを苦くした様な味で、口ゆすいでも苦味が取れなかった」とボヤいた
烈が「あれはね甘みがどきょかへ旅に出ちゃったにょよ!」と言った
朱雀は「旅に出たい甘み連れ戻せ!」と文句を謂う
するとレイか「れちゅ いじめゆな!」と怒る
賑やかな朝餉だった
まるで飛鳥井の家のような騒々しさに、赤龍は笑ってご飯を駆け込んていた
この日 閻魔が選別した魂を管理する職員の教育に烈とレイが同行してやって来ていた
魂を管理する職員は30名と小規模ながらも少数精鋭で行うつもりだった
烈は職員の顔を見て一秒で「駄目にゃのね、やる気にゃしだわ!」と言った
職員達は顔色を変えた
朱雀は「…………何故そう思う?」と問い掛けた
すると宗右衛門の声で
「礼節がなっておらん!
主が管理すると謂う事は雇用主は、朱雀がなる!
だが其の者らは誰かを雇用主か頭に入れてはおらぬ態度ではないか!
主が現れても、頭一つ下げる事はない!
総て解雇されよ!朱雀!」と告げた
朱雀は「お疲れ様でした!貴方達は今日でこの日を持ちまして、解雇とさせて戴きます!」と告げた
そしてその足で閻魔の元へ行った
宗右衛門は最初からは怒りまくり
「あの程度の職員では今後がやられる!
総て解雇させて貰った!」と告げた
閻魔はまさか………本当に駄目なのか?と謂う瞳を向けた
「あの者達は魔界でも忠実な者達でした!」
宗右衛門は冷徹な瞳を閻魔に向けた
「忠実?ならば閻魔を雇用主だと想っておるのじゃな!
朱雀が姿を表しても、頭一つ下げぬ態度は忠実だとは言い難い!」と吐き捨てた
閻魔は朱雀に「本当に?」と問い掛けると
「本当です、俺も上手くやれるか心配はありました………でも教育していく内に何とかならないかな?とは想っていた、だけど聖神は一目見て総てを解雇した
そう言われてみれば、挨拶しても返さねぇわ
会釈一つしなかったな!」
宗右衛門は「魔界においての朱雀の立場を明記しておらぬからだろうな……
四神は青龍を欠いて四半世紀経つ!
四神?そんなのいたの?状態なのではないのか?
だから朱雀が敬われないのじゃ!」とズバッと吐き捨てた
そこまで言われたら閻魔も動くしかなかった
「ならば魔界を上げて魂の管理組織の入庁試験をやろうじゃないですか!
聖神、それを見届けるまで帰るのは許しません!良いですね?」
「仕方なかろうて!
組織化せねば魂は匙加減で何とでもなる存在なんだ、と手を加えようとする奴が再び出て来るやも知れぬからな!」
「解りました!本当に君は母に似て頑固で融通が効きませんね!
ならば君が納得出来るレールを敷きなさい!
そしたら人を選びレールの上に乗せて起動させなさい!解りましたか?」
「承知した!では魔界に入庁試験に当たり組織を
【魂の管理庁】と名付けて閻魔庁とも紐付けて朱雀が全権を握りつつも、評議委員会成るものを組織して選別する、それが儂が目指しておった全容じゃよ!
そしね新しく建てる建物の名称は【魂の管理庁舎】とする!」
朱雀はうんうん!と頷いていた
閻魔は良くもまぁそこまでの緻密な策を考案し実行しようとするな、と感心した
炎帝があの日、人の世の過去に堕とす!と決めたのは、聖神の策士としての資質を解っていたからなのか……………
閻魔は即座に【魂の管理庁舎】入庁試験を行う!
と魔界中に行き渡るように回覧を回させたり、区内で放送を流させたり、伝令鳥に入庁試験日を告げさせ広めた
魔界は今 龍族 神属 どこにも属さぬ者達と、区画毎に振り割、どこにも属さぬ者達はマンションを建てそこへ生活させていた
仲間や同族意識が強い一族を纏めて区画に分けて住まわせる
炎帝の案だった
閻魔は総ての作業を終えて屋敷に還ると、炎帝と青龍が応接室にいて、給仕の者にお茶を頼むと言い、応接室に行きソファーに座った
そしてついつい愚痴る
「炎帝、君の息子、容赦のない鬼だね
用意した職員のクビを一瞬で切ったんだよ」
閻魔が愚痴ると炎帝は笑って
「礼節がなかったらしいやんか!
宗右衛門は誰よりも礼節に重きを置く存在だからな、礼節がない人間は去れ!とまで言い切るんだよ!やはり最後は礼節がないと仕えると謂う部分まで見下す態度が滲み出る
そう謂う考えなんだよ!
人の心の機微を視る存在だからな!」
「ニブルヘイムの眼を貰ったんでしたよね?
ニブルヘイムの眼も人の闇や心の機微を見抜くのですか?」
「あれは聖神に渡り、聖神の目に馴染み、聖神の眼になった瞬間、もっと実用的になり変化して行ったんだよ!
だから違うんだよ、ニブルヘイムの今の眼は、前より性能良くしたと言っていたからな、オレの力とは相違の存在となってる!
だから別モノとしか言いようがねぇな!」
「あの二人には絶対の絆があるのですね
昨日の二人を見ていて想いました……
それにしても情け容赦なく、一瞬で解雇となった者は文句を言いに来てましたが、礼節がなってなかったのでは、解雇は当たり前だと申しておきました!」
「それで良い!
烈は今、朱雀の進むべく道を正す為だけに、魔界に来ているんだよ!
朱雀に礼節がない態度を取る者など目にした瞬間、一秒で解雇となるのは当たり前なんだよ!
やはり青龍、四神の絶対の神聖、見せつけねぇとな!烈はそれもやりたかったのかも知れねぇ!
絶対的な存在
絶対的な神聖
絶対的な目に見える確かなモノを見せ付ける時なんだよ!」
炎帝がそう謂うと青龍も頷き
「私もそう思っていました
我が子の道を邪魔する者は、この父が薙ぎ倒して遣ります!
我が子に見せる絶対的な存在!
私はその方が良いですからね、我が子に見せる為に私は頑張ります!」
そう言い笑った
とても優しい笑みだった
閻魔はこの男がそんな風にも笑えるのだと驚いた
炎帝と過ごした日々が青龍をそうさせたのだろう
閻魔は「ならば私も頑張りますかね!素盞嗚親子の存在感に負けぬ様にせねば、閻魔っていたの?ってなりかねませんからね!」と言った
本当に最近の魔界は素盞嗚親子の話題が耐えない
すると、そこへ烈がクロスとレイと共にやって来て
「えんま、クロくんが種を吹き飛ばしゅにょ!」と怒って閻魔に謂う
クロスも「やっと完成間近の種が吹き飛びました!」と怒っていた
閻魔は「なんでクロウは妖精達の所へ?」と問い掛けた
炎帝は「クロウって何だよ?」と問い掛けた
閻魔は「クロウは烈が魔界を自由に歩ける為の護衛の鬼です!
妖精の所へは送ったら直ぐに還る様に言ったのですが…」とボヤいた
黒龍がクロウを捕獲して連れて来ると
「コイツは聖神が大好きだから、魔界にいるなら何処でも着いて行きたいんだよ!」と謂う
クロウと謂われた鬼は「ごめんね!烈!クロス!」と謝った
鬼、と謂うけど厳つい鬼ではない
かなりイケメンな姿をして角があるから鬼に間違いはないが、雪のように人に近い鬼だった
炎帝は「ひょっとして、桜の里の鬼かよ?そいつ?」と尋ねた
黒龍は「そうだよ、あれからあの里の子達は魔界の奴等と結婚したりして、子を成して増えたんだよ!で孔明が増え過ぎたから、働ける子は魔界で仕事させてくれ!って謂うから寮を作りそこに住まわせて働かせているんだよ」と説明した
そしてクロウを炎帝に見せると
「コイツは烈が魔界にいる時は護衛の為に傍いて護る存在なんだよ!
烈がいない時は素盞嗚殿の所で畑を手伝っている」
炎帝は「最近師匠の所へ行けてねぇけど、師匠は元気かよ?」と問い掛けた
「はい!元気です!
先日、師匠の所に烈とレイが遊びに来てくれ、師匠は大変喜びました!」
炎帝は烈を見て「お前、師匠の所も行ってたんやな!」と言った
それに答えたのはクロスだった
「孔明さんは種の改良の為に何度となく行かせて貰ってます!
あの里でも改良には手伝って貰っているので、お味噌とか差し入れすると喜ばれています!」
炎帝は嬉しそうに「そうか、師匠は忙しい方が嬉しい人だから協力を惜しまねぇでやってくれるだろうな!」と言った
烈は「レイたん 置いてきたから帰りゅね!」と言いクロスを持ち上げると黒龍に連れられて還って行った
クロウはクシュンとしてその後を着いて行った
炎帝は烈を見送り「忙しそうだな、烈」と呟いた
閻魔は「魔界にいる間に朱雀の件も、母に送るフルーツの件も全て済ませてしまいたいのでしょう!」と言った
「母に送るフルーツ?
あんだよ?それは?」と炎帝が問い掛ける
「烈は母を唸らせる程に美味しいフルーツを製作中なのですよ
野菜と比べてフルーツは糖度が勝負となるので、難しいみたいです
見た目はスイカ、中身はゴウヤやんか!と朱雀は怒ってましたからね」
炎帝は想像する、見た目はスイカ、中身はゴウヤのフルーツを!
想像して、うえっと吐きそうな顔をする
「それはキツイわ!」
「何でも糖度は旅に出たらしいと烈が言うと、朱雀が今直ぐ捕まえて来やがれ!と叫んました!」
と楽しそうに話す
炎帝は騒がしい魔界の秩序と統制はやはり必要だと痛感した
青龍が「魔界に還ったら私は正義を掲げるので、秩序と統制は聖神に担わせましょうかね?」と謂う
炎帝は「おっ!それは良いな!そしたら青龍は正義の為に動きやすくなるかんな!」と賛成した
青龍がそこまで謂う存在なのだと閻魔は痛感した
其れ程に秩序と統制を重んじる存在、それが聖神だった
炎帝は笑って「やっぱ素盞嗚尊の孫だからな!
あの魂は曲がる事を許さず、つに進む闘志を燃やしているんだよ!
受け継がれてるんだよ不屈の闘志 不屈の精神が!」と言った
一筋縄ではいかない存在が1人増えた
いや大歳神も入れたら2人か………レイを入れたら3人………
閻魔は魔界の未来は明るいな
そんな感じて笑っていた
何時になく爽やかな笑みだった
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