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第16話 果てへと進むべき道

玲香は真矢と連絡を取った 「真矢かえ?烈から船旅の話を聞いたのじゃが……」と切り出すと真矢は嬉しそうな声で 『姉さん、孫が豪華客船の旅をプレゼントしてくれたのです! 思いっ切り楽しみましょう! 世界一周は無理ですが、時間が許す限り行きましょう! こんな時間、滅多と持てませんからね!』 「真矢、本当にこんな時間など二度と持てぬやも知れぬから、思い切っきり楽しもうではないか!」 『姉さん達は何時から出掛けたいですか? 旅行の日程を決めたら、それに合わせて撮影の日程も決まるので、何日から行きたいか?希望はありますか?』 「我等は何時でも決まれば逝くだけじゃ!」 『ならば相賀さんと話して日程を決めます! それで良いですか?姉さん』 「それで構わぬ!」 玲香は信じられない想いで一杯だった 清隆と旅行に出れる そして真矢と清四郎と水入らずで旅行に行ける きっとこのまま忙しく働いて、引退してから何処かへ旅行にでも行こうか?と話していた それが思わぬ形で旅行に行けるなんて……… 清隆と玲香が旅行に持って行く服を新調しようか?と話をしている頃 榊原は翼を連れて一生や隼人や聡一郎と共に買い物に出掛けていた 隼人と聡一郎は、榊原が買うならば、僕達も翼の服を買うから!と、着いて来ていた 「こっちの服が似合うんじゃない?」  「いやいや、絶対にこっちなのだ!」と競い合い服を買う 翼は「あの…僕お金ないので……」と辞退しようとするが 聡一郎の目は座ってて「君に出せなんて言ってません! 僕達が烈の秘書に似合う服を選んであげたいのです!」と言い、あーだこーだと騒いで服を買う 榊原は無難な服や下着や靴下を買い、スーツをオーダーメードで作らせた それまでは既製品のスーツを買う 一生も聡一郎も隼人も翼は氷室灰音だと解っていたが、烈の想いを汲み取り何も謂わなかった 買い物を終えて飛鳥井の家に帰ると、力哉が応接間にいて、翼を待ち構えていた 「飛鳥井翼さんですね! 君は烈の秘書になると聞いたので、来ました!」 「え?駄目だとか?」 「誰が宗右衛門の決めた事に異論など唱えられるんてすか! この飛鳥井で生きるならば、宗右衛門の言葉は絶対なのですから! 逆らう者などおりません!」 「え!そんなに偉いの?あの子………」 「ええ、だから君にはお話せねばならないので、僕がいるねです!」と言った 飛鳥井は特殊な一族で眼を持つ飛鳥井家真贋と謂う存在と、宗右衛門と謂う存在 この二人は同列で、その下に竜胆、源右衛門となり、その下に次代の真贋と一族の総代となる と、一族の仕来りから成り立ちまでを、図に書き解りやすく説明する 「理解出来ましたか?」と問い、頷くと次に進む 「飛鳥井家真贋の伴侶は榊原伊織 お二人は男同士ですが、お子様が6人います うち3人が榊原真矢さんが産んだお子様です」と子供のルーツを話す 「此処までで解らない事はありますか?」 「ないです!」 「ならば続けます 烈には成人したら養子にする子がいます その子がレイ、金髪の子です 彼は飛鳥井家稀代の真贋の後継者です そして凛と謂う子は竜胆と謂う役割を持つ子です そして椋は宗右衛門を継ぐべき子です! この子達も飛鳥井烈の秘書になるなら、覚えておいて下さい! レイと椋も凛と3人のお子は育児放棄され過酷な環境で育った経緯がある子達ですので、優しく面倒見て下さると助かります!」 「育児放棄?」 力哉は当時の資料を出して説明を始めた 凛は戸籍もなく土蔵に閉じ込められて過ごし 椋も女学生の母が不本意に妊娠して出産 だガ生まれた椋を育児放棄して、邪魔になったら殺そうとして保護され施設へ送られたと話し レイも母親に育児放棄され八つ当たりされ暴力を受けて過ごしたので、大きな声は避けて下さいね!未だにレイは怒鳴り声や罵倒の声は怯えますから!と説明した レイと謂う子は目を覚ました時、烈にベタッと引っ付いていた子だと理解していた 「大まかな話しはしました! で、君は最終学歴は?教えてくれたせんか?」 「東京大学 情報理工学科を卒業してます」 力哉は「東大、僕も東大の経済学部を卒業してるんだよ!」と言った 「本当は………武蔵野音大に行きたかったけど、親には何一つ望まれてない事が、解っていたから……適当に入れる大学に行っただけです!」 「僕もそうだよ、祖父が兄の役に立てと東大に行かせただけで、僕が望んだ事じゃない でもまぁ………学歴は裏切らないんだし、今さえ良ければそのうち何も感じなくなるよ!」 翼は頷いた そして一番気になる事を口にした 「烈は今何歳なんですか?」 それに答えたのは隼人だった 「烈は今8歳なのだ、桜林学園の初等科の2年なのだ! だけどオックスフォード大学の学位記まで取っているのだ! 前世は東京大学を卒業しているとの事なのだ! 調べたら直ぐに解るのだ!」と教えた 「8歳………嘘……」 一生が「まぁじぃさん出たら貫禄半端ねぇし、そう想うんだろうけど、烈はまだ子供だよ 氷室灰音、おめぇは己を捨てて烈の秘書になるならば、そんな烈の事を理解して傍にいてやってくれ!」と頼んだ 翼は「はい、解ってます!」と答えた そして一生は「力哉はな、安西力哉になる前は戸浪力哉と言う名前だった」と同じ大学を卒業したならば、学部は違えど知っているんじゃないか?と話した その名に聞き覚えがある翼は「経済学部を首席で卒業した人ですね!何年か前の先輩の偉業なら聞いてます!」と答えた 「まぁそう謂う事だ! 案外お前等二人は仲良くなれるだろさ!」と言った 烈は虎之助を頭をに貼り付け、ガルの腹のもふもふに顔を埋めていた レイが烈の上から虎之助を追い払おうとする レイと虎之助の目から熱い火花が飛び散る! 【R&R】のイベントで忙しかったから、この日は烈はゆったりと過ごしていた お昼過ぎになると、慎一が牧場から戻って 「烈、久遠先生の所へ行きますよ!」と言った 烈は起き上がると虎之助を剥がして、ガルに託した そしてレイと手を繋ぎ慎一と共に病院へと向かう 翼は「烈は何処か悪いのですか?」と尋ねた 聡一郎がお子様の癖に塩分過多な食事を好んでたから定期的に検診をしなければならない事を伝えた  翼は言葉を失っていた 一生は「まぁじぃさんの嗜好が出てたからな、でも今はちゃんと自分からセーブ出来てるからな!」と心配はないと伝えた 聡一郎は「竜馬、マンションの部屋を翼に教えてあげて! この服をクローゼットに服をしまい込むから、早く案内してよ!」と言うと竜馬は烈が気になるのか? 鍵だけ渡して来て、聡一郎はブチッと青筋を浮かべて 「烈が気になるのは解るけど、烈の秘書になるべき子なんですよ!さっさと案内しなさい!」と竜馬を蹴り上げん勢いで怒った 竜馬は仕方なく聡一郎と隼人と共に翼を連れてマンションへと案内して行った 力哉は榊原に「烈は本当に彼を秘書に使うつもりなのですか?」と問い掛けた 榊原は「何故ですか?」と問い質すと 「烈の年で秘書を持つと謂うのは異例中の異例なので………」と答えた 「烈は宗右衛門ですから、宗右衛門の役目を果たす為に仕事をせねばならない それには仕事の管理をさせる存在は必要になると、少し前に話していたのです! 西村は烈を溺愛しているから西村に烈の分も面倒を見させようか?と案も出てました それは秘書課の皆も周知の事じゃないのですか?」 「確かにそんな話は出てました ですが、烈は秘書には乗り気ではなかったし、康太も必要な時に宗右衛門が出てくれるならば……と【R&R】の事もあるし、然程必要性を感じてないのかと想いました」 「宗右衛門には宗右衛門の考えがあります! 僕等には宗右衛門の意見に反対は述べられません! 況してや康太がそれを良しと認めているならば、それは既に決定事項と謂う事です! 君は烈が秘書を得て仕事をする事に異論が有るのですか? それとも彼を秘書にするには、何かあるのではないかと、思っているのですか?」 「僕が異論など申せる立場ではありません! 何故 今 宗右衛門が彼を秘書にすると言ったのか?突然だったので……」   「ええ、突然でしたね 家族も突然秘書なる者を連れて来て一番驚いていると想います 彼と宗右衛門は境遇が似ていたから……放おっておけなかったのだと想います」 「境遇が似てる?」 力哉にはさっぱり訳が解らなかった 「君は誰かを殺したいと想う程憎んだ事がありますか? 滅んでしまえと復讐に身を窶して自分諸共破滅してしまえと想った事がありますか?」 「…………あります………」 「宗右衛門になる遥か昔……彼もそんな想いをして来た事があるんですよ 君も聞いた事位あるのではないですか? 宗右衛門が過去独身を貫いた話は、飛鳥井では有名な話ですからね…… 彼には愛した人がいた、そして子供もいた だけど奪われ踏み躙られ生きて逝く事が嫌になる程の想いをした 滅んてしまえ、一族の名も一族の者も総て滅んてしまえば良い 彼は復讐に身を窶しその想いだけで生きて来た そんな自分と重なるモノを感じたのでしょ? 本当に秘書にするかは解りませんが、自分の足で立てる様になったら送り出してやるつもりなのかも知れません ですが僕等は見守って行こうと決めているのです だから君も………見守ってあげて下さい!」 烈がそんな苦しい思いをしていたなんて知らなかった 宗右衛門は生涯独身を貫いた話は有名だから知っているが、その理由に至るまでは知らない 力哉は俯いて涙を流していた 診察を終えた烈が帰宅して来たのを感じて、力哉は涙を拭って「会社に戻ります!」と言って立ち上がると応接間を出て行った 榊原も後は慎一に頼み会社へと向かった 烈はレイと共に自分の部屋へと戻った レイは烈の部屋へ通され座布団に座るとニブルヘイムの声で「本当にあの者を秘書にする気なのですか?」と問い掛けた 烈は「そーね、仕事は沢山あるにょよ!」と笑った 「あの者は【R&R】を陥れようとしたのに? 何故なのですか?僕は彼が許せない………」 納得が出来ないとばかりにレイは謂う 烈は仕方なく宗右衛門の声で答えた 「あの者が生きて明日へと向かうならば、好きな所で生きれば良いと送り出してやるつもりじゃが、今は駄目じゃな…… 人の目がなくなると選ぶのは、己の死だけじゃろうから、仕事を与えて明日を与えて、生かして今を刻まねばならぬのじゃよ!」 レイは驚愕の瞳を宗右衛門に向けた 「彼は……死に焦がれてるって事なのですか?」 「そうじゃな、破滅を望み、無謀にも己が滅ぶ場に飛鳥井を選んだのじゃからな! ニブルヘイム、主に逢った時の儂と一緒なんじゃよ………氷室灰音は……… じゃが儂にはお主がいてくれた…… 儂の心を何時も照らして支えてくれたお主が儂にはおったが、あやつには誰もいない 儂は炎帝が果てへと進む道を示してくれたからこそ、二度と違わぬ明日へと行けるが、あやつには示してくれる存在すらおらぬ 何もないのじゃよ、あやつには…… そんな何一つ持たぬ灰音を哀れに想ったのは確かじゃ……そしてそんなあやつと自分をシンクロさせてしまっていたのも……確かじゃな……… じゃから途絶させてしまおうとした今を捨てさせ、果てへと進むべき道へと繋いだのじゃ! 全く別人になり生きて行ける明日を……用意くらいされねば、あまりにも惨めではないか…… 違うか?ニブルヘイム 儂には主がいてくれた………暗闇に堕ちそうになる儂を照らしてくれた一条の光よ……そうは想わぬか?」 「聖神………」 「儂は今 幸せじゃと想える そんな今を与えてくれたのは炎帝なのじゃよ そして儂の元へ還ってくれたレイ、お主がいてくれるからこそ想える想いなのじゃよ!」 レイは烈に抱き着いた その話を部屋の前で竜馬は聞いて、動けずにいた 氷室灰音の存在は自分も納得が出来ない事だった 烈が決めた事だから黙認はしたが、許せない想いならば誰よりも抱いていた 烈の想いをこんなカタチで聞く事になるなんて… 烈は竜馬が部屋の外にいるのを知っていた 翼達をマンションへ送ったら直ぐに還って来る事を知っていたから、部屋のドアは閉めずにレイと話をしたのだった 「りゅーま!戸浪に行くにょよ!」と謂うと、バツの悪い顔をして、顔を出した 「盗み聞きするつもりじゃなかった……」 「気にしてにゃいのよ! それよりりゅーにーは?帰って来てりゅ?」 「まだいなかったかな?」 「にゃら早く帰って貰わなきゃ!」 「慎一さんに聞いて来る!」 竜馬はそう言い階段を降りて一階の慎一の元へ向かった 烈はクローゼットから【R&R】のスーツを取り出すと着替え始めた 竜馬が戻って来て「栗栖が迎えに行ってるから、直ぐに還って来るって!」と伝え、烈の着替えを手伝う ゴムのネクタイをワイシャツの襟を上げて装着し、襟を元に戻すと 「俺も着替えて来るわ!」と言い部屋を出て行った 烈は自分の部屋を出ると、2階にあるレイの部屋に行き、クローゼットからスーツを取り出すとレイの着替えを手伝った レイは「れちゅとおでかけ!」と楽しそうにしていた 其処へパタパタと走る音がしたから、烈はドアから顔を出した すると流生が桜林学園から還って来て、スーツに着替える為に部屋へ行く所だった 「りゅーにー!」 烈が声を掛けると流生は「烈!」と烈に近寄り抱き締めた 「待っててね、今着替えて来るから!」 「ゆっくりで良いにょよ!」 流生は頷くと走って階段を駆け上がった 「ゆっくりで良いにょよって言ったにょに……」と烈がボヤくと、レイは烈の背を撫でた 竜馬が【R&R】のスーツに着替えてレイの部屋にやって来ると、レイのゴムのネクタイをはめてやった そして身なりを整えて「もう触ったら駄目だよレイ!」と言った レイは頷いて竜馬に擦り寄った レイはやっとこさ、竜馬は烈にとって魔界へ連れて行って過ごしたいと想う程大事な存在だと理解して、竜馬に甘えていた 竜馬はレイを抱き上げると、烈と共に応接間へと向かった そして応接間に入って逝くと、レイをソファーに座らせた 其処へスーツに着替えた流生がやって来て、烈は携帯を取り出すと電話を掛けた 「あ、若旦にゃ?これから戸浪に行きゅから!」と伝えると、突然で驚きつつも戸浪は 『今日はずっと社長室にいるのて何時でもお越し下さい!』と言った 電話を切ると烈は立ち上がり応接間を出た 地下まで降りて車に乗り込む この日の竜馬の車の後部座席に流生とレイが乗り込むと、烈は助手席に乗り込んだ 「りゅーま、カニバンありゅ?」 車に乗り込むと烈は竜馬にカニバンを要求した 「ダッシュボードにありますとも!」 烈の食料を確保しないと腹減りで不機嫌になるからだ 烈はダッシュボードを開けて、カニバンを取り出すと竜馬に封を開けさせ食べ始めた モヨモヨとカニバンを食べる姿は幼稚舎の時から変わらず………まぁ今も烈は小さいから幼稚舎時代と変わらないのだけど……… 反対に流生は初等科に上がってからの成長速度は目を見張るモノがあった 兄弟の中で一番大きくなっていた 烈は存在感は半端ないが、母体にいた時の栄養不足で何かと発育に影響が出ていた だが同じ様に母体にいた時の栄養不足で音弥も超未熟児ではあったが、今は流生に負けずと成長しているから、烈も伸びると信じて疑わずにいた 前世の宗右衛門は榊原位には大きかったのだ…… 竜馬はトナミ海運へと向けて走っていた 流生は緊張していた その手をレイはそっと握ってやった 「レイ………」 「にーに!」とニコッと笑う 竜馬の車は港沿いにあるトナミへと向かう 車が結構空いてる事もあり、そんなに時間をかける事なくトナミ海運へと到着した 竜馬は来客者用のスペースに車を停めると助手席のドアを開けて烈を下ろすと、後部座席のドアも開けて流生とレイを下ろした 烈は流生に手を差し出すと、流生はその手を取った 烈はスタスタとトナミ海運の社屋へと入って逝くと、受付嬢に「飛鳥井烈が来ましたと、お伝え下され!」と宗右衛門の声で伝えた 受付嬢は「伺っております、どうぞ!」と言い深々と頭を下げた 竜馬は直通のエレベーターのボタンを押すと、直ぐに来たエレベーターに乗り込んだ 最上階に着きエレベーターのドアが開くと、社長秘書の田代が出迎えに出ていた ドアが開くと「烈!」と声を掛けた 烈と竜馬だけだと想っていたら、流生もいて田代は驚いていた が、田代はレイを抱き上げると「どうぞ!」と言い4人を社長室へ招き入れた 田代はレイをソファーに座らせると、お茶の準備をしに行った 戸浪は烈に「本日はどの様な件でお越しを?」と尋ねた 宗右衛門は「この前の【R&R】の船上セレモニー以来客足は少しでと戻ったか?」と問い掛けた 「ええ、少しずつですが戻りました!」 「トナミは船上結婚式はやらぬのか?」と問い掛けた 「船上結婚式ですか?やっておりませんね」 「世界一周の豪華客船を船上セレモニーの場にするのも手じゃと儂は想うぞ! 世界一周回らせとけば利益が上がる時代は終わったのじゃ! 創意工夫をしてアイデアを出して乗り切る者こそが、果てへと歩を進めるのじゃ!」 「………船上結婚式は考えも付きませんでした 確かに世界一周だけさせとけば利益が上がる時代は終わりました だけと停泊させとけばお金を食いますから、回らせとかねばならないのです!」 「じゃから船上をパーティー会場にしたり、豪華客船に乗りたいと思っている者達にも乗るチャンスを与えて、停泊所を各地に作り、国内でも船旅を楽しめる様にするとか、工夫せねばこんな不景気な世の中だからな、金のない者は船にも乗れぬのじゃ!フェリー並みにしろとは言わん フェリーにはフェリーの役割があるからな じゃがフェリーより少し高い金を出しても乗りたいと思わせる船旅は必要ではあるな 世界一周に回る前に国内数カ所に停泊し、そこまでの距離を人を乗せて行くとか、他の船はそれを打ち出しておるじゃろ? 何故トナミにはないのか?不思議じゃった」 謂われてみれば、国内有数の客船は国内数カ所に停泊した後、世界一周の旅へと出る 各国にも停泊し、其処まで乗って行ったりと、ニーズに合わせて船旅を楽しめる様にしてある トナミは豪華客船と謂う誇りが、融通を効かせなくさせていたのか?と戸浪は改めて想った 遊ばせておく位ならば船上結婚式やパーティーに使うのも良い 工夫でより楽しい船旅は打ち出せていたのだ そうして来なかった時点で、トナミは時代から乗り遅れた事となる! 戸浪は「今日はその話を?」と烈に問い掛けた 宗右衛門は「祖父母の撮影日程が決まった 近い内に相賀から連絡があるじゃろ! 視聴者は榊󠄀夫妻に憧れ一時的にはトナミは起死回生となるであろう、じゃが長い目で見たならば、煌星に継がせる前に大分縮小せねば生き残りは出来ぬと談判に来たのじゃよ! 抜本的な改革も意識改革も、優先して必要なのは社長である戸浪海里にこそなのではないか? これでは我が母がトナミにファイヤーウォールを入れたとしても焼け石に水にしかならぬからな! じゃから戸浪海里に勉強をさせる為に来たのじゃよ!」とズバッと言った 「我が社にファイヤーウォールを入れて下さると?」 「じゃが、今のままじゃと宝の持ち腐れであるからな、戸浪、お主を我等【R&R】に直接教育させる為にイギリスへ連れに行く為に連れに来たのじゃよ!」 「え?イギリスですか?何時からですか?」 「今からじゃよ!」 「えー!!今から!」 「さぁ亜沙美と沙羅を呼ぶがよい! 勉強に行く間、任せねばならぬならぬからな! 田代、お主も一緒に行くがよい! 2時間位はこの近くのホテルで待ってやる! じゃが遅れたら置いて逝く故、直ちに戸浪の服とお主の服を取りに行くがよい!」と宗右衛門が言うと田代は「では直ちに!」と言い社長室を後にした 亜沙美と沙羅を社長室に呼ぶと、竜馬は亜沙美と沙羅に事情を説明した そして此れより一時間後にはイギリスへ飛び立つと言い、後の仕事は頼むと申し付けた 宗右衛門は亜沙美に 「亜沙美、宿題じゃ! 社員達にどうしたらよりよい船旅が出来、会社が伸びるかを話し合いレボートを儂に見せるのじゃ!豪華客船を金持ちだけの楽しみにせずとも、より良い活用法が無いか? 儂が打ち出した船上結婚式やパーティーに勝る案を考えよ!と宗右衛門が申しておったと話して話し合いをするのじゃ!」と謂う 亜沙美は深々と頭を下げて「解りました!必ずや貴方に納得してもらえる案を考えてみます!」と言った すると流生が「違うよ!宗右衛門を納得させるんじゃなくて、貴方達かどの様な考えを持ってトナミを大きく育てるか?を宗右衛門は聞きたいのですよ!」と答えた 亜沙美はハッとして流生の顔を見た 流生は大きくなって、子供の頃とは違い一生に似てはいるが、オリジナルの顔をしてそこに立っていた オリジナルのその顔は、何処か戸浪にも似た顔になっていた やはり戸浪のDNAを受け継いでいるんだと、亜沙美は痛感していた 宗右衛門は「流生は儂の変わりに見届ける為にトナミに通う事となる!」と伝えた そして烈になり「りゅーにー!大丈び?」と問い掛けた 流生は烈を抱き締めて「大丈夫だよ!海と煌星も学校を休み話し合いに参加してくれるんだよね? ならば大丈夫に決まってるじゃない!」と言い弟を安心させた 「レイたん着けるから!」 「ええええ!呪文唱えない? 僕じゃ……止められないよ!」 流生が言うと烈はレイの瞳をちゃんと見て 「レイたん、ボクの変わりに見届けてくれるんだよね?」 烈が聞くとレイは頷いた 「なら呪文を唱えてりゅーにーを困らせちゃ駄目だよ!」 「わかっちゃ、れちゅ!」 「約束」 「まもれりゅ!」 「りゅーにー、レイは約束守りゅ子なにょよ! だから同席させて、でも……レイたん傷つけるにゃら、ボクは黙ってにゃいのよ!」 「そしたら僕も黙ってないよ烈! レイは僕の弟みたいなモノだもの! 烈の大切な存在は僕達兄にとっても大切な存在なんたよ! 絶対に傷なんて付けさせないよ!」 烈は頼もしい兄に抱き着いた 「にーに!」 「烈!」 レイと必死に流生と烈に抱き着いていた そんな烈をペリッと剥がして、竜馬はレイを膝の上に乗せた 竜馬は「亜沙美さん、沙羅さん、此れより我等が帰国する日まで流生とレイを頼みます! この事は康太さんも伊織さんも了解しています なので送迎は誰かを着けてくれると想います!」と伝えた 亜沙美と沙羅は「「解りました!」」と答えた 宗右衛門は「そしてその場には必ずや海と煌星を立ち会わせるのじゃよ!」と念を押した 沙羅は「了解しました!」と答えた 「トナミ海運が滅ぶか?繋がるか? その瀬戸際と申そう! 繋げたいのならば、お主等も社員達も必死にならねばならぬ! 明日を生きたいのならば、今を繋げねば明日は生きられぬのじゃ!」 正にその通りだった 沙羅はトナミの経営が苦しくなって行くのを感じずにはいられなかった コロナ禍の世の中に突入して、潰れた会社は数しれず増え、我社だとて悠長な事は言ってられなくなった 烈は数日前に両親には話をした 戸浪海里をイギリスに連れて行き、経営の何たるかを叩き込む!と伝えた 康太は殺されかけたのに、そこまでやるのか?と逆にどうして?と聞いた程だった 「海と煌星は学友にゃのよ! 高等部ににゃったら、ボクと煌星が会長と副会長になって、学園を乗っ取って伝説を作るにょね! で、海がギチギチに執行部の部長ににゃって締め付けるのよ!」 何とも壮大な野望だった 康太は「父さんと同じ執行部の部長じゃねぇのかよ?」と笑って聞くと 「ボクの役割じゃにゃいのよ、それは それは海がやり、知らにゃいと駄目にゃのよ ギチギチに締め付けたら、人は反発するって海は思い知らにゃいと駄目にゃのよ!」 海の性格は戸浪と酷似してて、容赦という事を知らない 大きくなって行くに連れ、それが顕著に出るのだろう 烈なれば会長だとて遜色なく出来るだろう 執行部の部長だとて、楽勝に出来るだろう それが人を正し、規律や秩序を植え付けていく宗右衛門なのだから、存在感あるし人を導くべき存在なれば出来ぬ事などないのだ 煌星とタッグを組んでやる高等部の会長と副会長……きっと伝説作れちまうだろうぜ…… 康太は笑っていた 榊原も苦笑していた そんな時代が来たら生徒はきっと大変だろうから……… そんな未来の為に今 トナミ海運を潰せない! 烈の想いを汲み取り康太は了承してくれた 宗右衛門は「流生には見届けて貰おうと想うのじゃが?どうじゃろ?」と問い質した 康太は「流生が嫌じゃねぇならば、見届け役をやらせれば良い!」と言ってくれたから、流生に問い掛けた 流生は「僕?見届け役なんてやっちゃうの?」と驚いた 「そーにゃのよ!」 「そーなのね、でも何故?」 「りゅーにー、ボクの親友を支えて貰いたいきゃらにゃのよ!」 「海と煌星?」 「そーにゃのよ! ボクはね学友と高等部に上がったら野望がありゅのよ! だからね、今潰したら野望果たしぇにゃいのよ!」 「野望………それは何なの? 僕やるなら、それ聞いておきたいのよ!」 「高等部に上がったら、ボク会長で煌星副会長でね、海が執行部の部長ににゃるのよ! でね、と派手に伝説作るにょよ!」 キラキラした瞳でそう言われ、流生は弟の頼みを断れなくなった 「レイたん付けるにょよ!」 「え!変な呪文唱えない?」 「大丈びよ、ボクいなきゃ唱えにゃいのよ レイたんの瞳で視てくれるから、ボクの変わりね」 「何か心配なのよ!」 「そんな心配にゃいのよ!」 「大丈夫かしら?」 「大丈びにゃのよ!」 お前等どこぞの主婦よ!と康太は聞いてて想った この二人が揃うと、何時もどこぞの主婦の会話になる それにレイが加われば「「「そーなのよ!」」」の3倍になるのだ 「あ~!何処の主婦だよ!お前等!!」 康太が怒ってもどこ吹く風か……… 烈が「いやーねぇ〜」 流生が「血圧上がるわよぉ〜) レイが「そぉにゃのよぉ〜」 となるのだ! 康太は暴れ出したくて立ち上がると、大空が「母さん、井筒屋の羊羹!」と母を止める 音弥が肩を揉んで「何時もなのよ母さん!」とあの兄弟の主婦話しは前からだと謂う 「でもよぉ!」ボヤく康太を内輪で仰ぎ 太陽が「母さん、カルシューム足りてる?」とサプリを母の口に放り込む 至れり尽くせりに康太の機嫌は良くなるのだった 烈は「母しゃん りゅーにー達トナミまで送り迎えしてくれるの誰?」と問い掛けた 「ならば一生に専属で頼んでおく!」 烈は頷いた そんなやり取りをして、迎えた日だった 準備は万端だった 竜馬は「話が着いたならホテルへ移動しようぜ!」と言った 宗右衛門は「竜馬、何時ものように電車で逝くとするかのぉ〜」と謂う 竜馬は「だな、俺の車は飛鳥井に停めてから行くとするか!」と答えた 「ならば流生とレイを置いて、横浜駅まで出て電車に乗り成田まで逝くとするかのぉ〜」 宗右衛門と竜馬が話していると、沙羅が 「ならば私がお送り致しましょう!」と言った 烈は沙羅に「良いにょ?」と嬉しそうに問うと 沙羅は「この前子供達の為に大きな車を買ったんですよ、なので8人までなら乗せられます! 流生とレイも毎日私がお迎えに行きますから安心して下さい!」と申し出た 烈は「大変じゃにゃい?」と沙羅を気遣う 沙羅は笑って「夫の不在を守るのは妻の務めですから!」と言った 烈は「にゃら沙羅お願いね!りゅーにーとレイ頼むにょよ!」と言うと、沙羅は「解ってます!」と言い烈を抱き締めた 竜馬は「俺は車を飛鳥井に置いて来るわ!烈はホテルへ移動しててくれ!」と謂う 烈が頷くと竜馬は社長室を出て行った 烈は「若旦にゃ、ホテルに移動するのよ! 沙羅も行くにょよ!そこでお茶してたら竜馬と田代が来るにょよ!」と謂うと沙羅は亜沙美に 「少しお願いできますか?」と頼みごとを口にした 亜沙美は「はい、大丈夫です!」と謂う 烈は流生を見て「大丈び?話しゃにゃくても?」と問うと流生は「大丈夫よ!烈、明日から毎日来るんだもん!」と返した 「そーにゃのね!」 「そうなのよ!」 「なら大丈びね!」 「大丈夫なのよ!」 亜沙美は今もどこぞの主婦ばりの話し方は健在なのだと解り笑みが溢れた 兄として弟を気遣う優しさが垣間見れる レイが流生に抱き着くと、優しく抱き締めている姿を見ると、そうして護りながら日々を過ごしているのだと伺えられた 沙羅は「レイちゃん明日から宜しくね!」と声を掛けるとレイは嬉しそうに笑って頷いた 烈は立ち上がると、戸浪も立ち上がり共に行く覚悟を決めている瞳をしていた 烈はレイに手を差し出すと、レイはその手を握り締めた 流生も烈の横に立つと、戸浪と共に社長室を後にした エレベーターのボタンを押すと扉が開いて乗り込む 一階の正面玄関に出ると沙羅は「車を取って来ますから、此処で待ってて下さい!」と言い駐車場へと走って行った 烈は「愛と感謝の言葉が足らにゃいのね」とボヤいた 戸浪は「え?それって私に言ってますか?」と問い掛けた 「それしかいにゃいのよ!」 「少ないですか?」 「ありがとう、と、愛してるは常に言わにゃいと、会社の経営まで押し付ける男にゃんて捨てられるわよ!」 「えぇぇぇ!捨てられる………」 戸浪はショックを受けていた 流生が「烈、若旦那は不器用なのよ!」と執り成すが烈は「不器用は逃げ道にしかにゃらにゃいのよ!」と一蹴した 沙羅が車を取って来て、烈達の前に停まると、その車に乗り込んだ そして近くのホテルへと向かう ホテルの駐車場に車を停めるとレストランへと向かう レストランでお茶をしていると竜馬が車を置いて戻って来た 急いできたのか?汗だくで息を切らしていた 烈は竜馬にメニューを渡すと、竜馬はそれを見る事なく「アイス珈琲で!」と注文した 暫くして田代がやって来た 烈は「若旦にゃ!」と謂うと戸浪は沙羅を見て 「私の留守中は会社も家族も君に任せてしまいますが頼みますね!」 突然感謝の言葉を投げられて沙羅は驚愕の瞳を戸浪に向けた 「貴方…どうかお気を付けて……」 戸浪は頷いた それで終わる会話に烈は「レイたん!」と謂うとレイは戸浪の脛を蹴り上げた 「痛いっ………」と情けない声を上げる戸浪に烈は 「感謝の言葉足らにゃいのよ!」とボヤく 「沙羅、何時も本当にありがとう 私は……君の優しさに甘えて……あまり言葉にはしませんが……見切りを付けてしまわないで下さい!」 「え?貴方……どうなさったの?」 烈は「もう一声!」と謂うと戸浪は「愛しています!沙羅!なので私が帰国まで大変でしょうが、会社と我が子をお願いします!」と言った 烈は「うし!」とジュースをズズズッと啜った 竜馬は「また無理難題言ったの?」と烈に問い掛けた 「言わにゃいのよ! ボクは感謝の言葉と愛してる想いは告げにゃいと、会社まで任せる男にゃんて捨てられるわよ!って言っただけよ! ボクは感謝の言葉、何時も伝えてりゅよね? ねぇ、りゅーま!」 「烈はその時々に感謝の言葉は謂うのは確かだね メンバーも見習わねば!と想った程だからね! まぁ愛の言葉は烈の御両親が常に愛の言葉を垂れ流しにしてる御方なので、その影響でしょう! でも俺はそんな愛し合う恋人同士には憧れます 幾年月経とうとも、愛の言葉は聞きたいですからね、真矢夫妻や玲香夫妻を目にしていて、そんな想いを知りましたからね」 「ボクは二度とその愛の言葉は謂う相手はいにゃいけどね………その言葉は相手も自分も幸せにしてくれるってのは解るからね!」 竜馬は「烈……」と悲しげな顔をした ジュースを飲み干すと「行くにょよ!竜馬!」と言った 竜馬は立ち上がると「それでは行きますか!」と言った 戸浪が「沙羅が空港まで乗せて行きます!」と謂うと皆で駐車場まで行き車に乗り込んだ 流生は「田代さん車は?」と問い掛けた 田代は「会社に停めて此処までタクシー出来ました!」と答えると沙羅は 「ならば飛鳥井で流生とレイを下ろして空港で宜しいのですね?」と問い掛けた 戸浪が「あぁ、悪いね手間を掛けて!」と謂う 沙羅は笑って「手間だなんて想いませんよ!」と笑う その笑顔の美しさに今更ながらに我が妻が美人だったのだと思い知る 飛鳥井の家に着くと、流生とレイを下ろす レイは烈に抱き着いて泣いていた 「レイたん……いい子でお留守番しててね!」 「れちゅ!れちゅ……」と泣きながら烈に手を伸ばす それを流生が抱き上げて車から降りた 後はもうレイは流生の胸に顔を埋めて泣いていた 車は飛鳥井の家を通り過ぎて、空港へ向かって走って行く 流生はレイを抱っこしたまま家の中へ入ろうとすると、ドアがガチャッと開いた 流生はその人物を見て「兵藤君……」と名を呼んだ 兵藤は泣いているレイを抱き上げると、流生を家の中へ招き入れた 「烈は行っちまったのか?」 「はい、だからレイが泣いていて…」 兵藤はレイの頭を撫でて「烈と約束したんだろ? ならちゃんとご飯食べて、いい子して過ごさなきゃ駄目だぞ!」とレイに言い聞かせる レイはプンッとそっぽを向いた 「おっ!反抗期か?」 「れちゅといたいもん……れちゅ……」と言いまた泣き始めた 応接間に入ると凛が栗栖の課題をせっせと片付けていた 「あ、れいもやらにゃきゃ!」と兵藤の腕から下りると、栗栖の課題を始めた 椋は黙々と課題を片付けていた 流生は兵藤をソファーに座らせると、飲み物を取りに行った 慎一がキッチンにいると、兵藤が来てるから飲み物お願いします!と謂うと飲み物を用意して流生に渡した 暫く流生が出してくれた飲み物を飲んでいると、康太と榊原が還って来た 応接間にいる兵藤を目にして「よぉ!貴史!少し待っててくれ!」と声をかけた そして着替えに向かい、私服に着替えて来て、戻って来た 兵藤は玄関開けたらレイが泣いていたけど、また烈は留守か?と尋ねた 「おー!今回は若旦那の教育の為にイギリスに行ったんだよ!」と伝えた 兵藤は怪訝な顔をして「どうして?竜馬は少し恨んでいるんじゃねぇのかよ?」と言った 康太は烈の壮大な野望を語った その野望の為には、此処でくたばって貰っては困るんだとよ! と伝えると、兵藤腹を抱えて笑った 「それは壮大な野望だわ! それなら納得だな!」と言った レイはニブルヘイムの声で「私には理解は出来ない………秘書の件も戸浪の件も理解なんかしたくない!」と言った 榊原はレイを抱き上げて膝の上に乗せると 「理解できなくても、否定はしてはいけませんよ?」 と諭す様に謂う 「否定なんか出来ない……でも………」レイは泣き出した 榊原は優しくレイの背を撫で 「そう謂う生き方しか出来ないのです 康太も烈も………ほらほら泣かない、貴史が心配しちゃいますよ?」 レイは頷いた 竜胆が「レイ、課題をやらねぇと連帯責任なんだよ!怒った栗栖は怖いんだよ!だから泣いてる暇に課題をやりやがれ!」とボヤいた 椋は頷いていた レイは榊原の膝の上から下りると、課題を始めた 兵藤は「秘書って?俺はその話知らねぇんだけど?」と問い掛けた 康太は黙って何も言わなかった 榊原も説明が面倒で何も言わなかった 仕方なく牧場から還って事の経緯を黙って見ていた一生が説明した 兵藤は言葉を失っていた やはり許せなくてレイは呪文を唱え始めた 傍にいた流生がレイのお口を慌てて押さえた 「レイ!烈とのお約束破るの?」と謂うとレイは俯いて課題を始めた 兵藤はレイの頭を撫でてやった そんなレイを見て椋は「そうやって甘やかすから、直ぐに泣くんだよ!」と兵藤に言った 兵藤は「子供は甘やかされるもんだろ?」と椋に言う 椋は東矢の声で「我等は死命を持って生まれて来たのだから、泣いて甘えている時間などないんだ!」と答えた すると「それは違うぞ!椋!」と黙って課題をしていた竜胆が口を開いた 椋は「凛…」と呟いた 竜胆は「我等は転生者だが、人らしさまで捨てて来た訳じゃねぇんだよ! レイが泣くのは烈を想っての事だ それは別に良いんだよ! 今やる事がないのなら人らしく生きていくのまで止められている訳じゃねぇからな! 今やらねばならぬ事があるなれば、泣くな!と怒鳴るのは宗右衛門の務め! 我等は宗右衛門が敷いた1000年続く果てへと逝かねばならないが、笑って怒って悲しんで喜んでする人らしさまで捨ててやらねばならねぇ事じゃねぇんだよ! だから椋、少しは人らしく笑って泣いて怒って悲しんでしろや! お前は泣かなすぎ、レイお前の涙を少し椋に分け与えてやれよ!と謂う程にな!」とボヤいて言った 康太は椋を抱き上げると「少し話をしようか?東矢!」と言った 椋は頷いた 榊原と康太は椋と共に応接間を後にした レイは流生と兵藤に「ぎょめんにゃさい!」と謝罪した 流生は「気にしなくて大丈夫よ!」と言った 兵藤は「凛、おめぇは本当にちゃんと椋と向き合ってて偉いな!」と言った 竜胆は「東矢は一体どんな生活を送ったのか?と想える程に人に関心ないし寡黙で信頼は置けるが、気を許してくれなくて真贋に何度も相談したんだよ! で、真贋には東矢が暮らした前世の話をされて、何とか理解はした だが向こうは全く気を許してくれねぇからな、参っていたんだよ まだ烈命のレイの方が人間味があるってもんだ レイは指示を出せば即座に行動に移してくれるしな、五通夜の儀式の時、指示を出しても返事すらしねぇから聞いてるのかさえ解らなくて…連携取れなくて一度目は失敗した 屈辱だったし、俺は椋と謂う存在を知らねぇとならねぇって想ったんだよ 今も悪戦苦闘してる最中だからな、偉そうには言えねぇ」と心中を吐露した 兵藤は凛の頭を撫でて「人を知るってのは難しい事だ………なのに向き合おうとするお前は偉いよ!」と言った 凛は褒められて泣きそうになった レイが凛の顔を抱き締めて「にゃいても、いいにょよ!」と言った 凛はレイに抱き締められて少しだけ泣いた 康太はリビングに椋を連れて行くと、ソファーに座らせた 榊原はリビングのドアの鍵を掛けた 康太もソファーに座ると、椋の方を向き 「なぁ東矢、お前は親の愛を知らずに、使い捨ての駒みたいにオレを殺す為に放たれて、オレの前に現れた オレはそんなお前の柵を切り捨て、新しい人生を与えて命を繋いで生きさせた オレの願いは、お前の幸せだけだった なのにお前はオレの為に命を落とした お前を転生させたのは、家族の愛を知り、友人を作り平凡な生活を味あわせたかったから……… お前は宗右衛門を継ぐ者として次は転生するのが定めだとしても、ロボットみたいに生きて欲しいなんて願ってねぇぞ!オレは! オレは何時だって人らしく愛を知り、人の優しさに触れ生きて欲しいと願っている なのにお前は……人の感情を捨てた様に……生きてるのは何故なんだ?」 東矢は「俺は貴方の役に立ちたかった………」と呟いた 「お前はレイが甘えている様に映るのか?」 「甘えているでしょ? 烈がいなきゃ食べるのさえしないレイは、烈に依存し過ぎだ なのに何故誰も止めないのか? 俺は不思議で仕方がなかった………」 「お前は命と等価の存在を作らねぇから、レイが甘えて見えるんだよ!」 「???…………あれはただの甘えではないと?」 「レイと烈には遥か昔からの結び付きがあるんだよ レイは烈の為だけに転生して傍へと生まれて来たんだ! 竜胆はそれを良く理解しているから、レイの事は何も言わない 行き過ぎれば烈が怒るのをちゃんと見ているからな! だけど、お前はどうだ? 五通夜の失敗は連携不足だ、お前の事を理解出来ずにいた竜胆は悩んでオレに何度も相談に来ていた、頷くだけじゃなく返事をしてやれよ! 竜胆とレイとちゃんと交流して親交を深めろよ! 今世の顔合わせは来世以降も繋がる絆となる その絆がちゃんと繋がっていなければ、飛鳥井は破滅へと進んで行くしかねぇんだよ!」 東矢は「すみませんでした」と謝罪した 「謝罪の言葉を聞きてぇ訳じゃねぇんだよ お前が失敗だと竜胆が感じたならば、お前は宗右衛門として来世転生する事は不可能となる! その意味は理解できるよな? 飛鳥井の危機に連携不足は致命的なミスとなる その為の今世の顔合わせなんだよ! 竜胆は難しい奴だが飛鳥井の明日の為には欠かせない存在なんだよ! そんな竜胆が絶大な信頼を置くのは、宗右衛門唯一人! オレは稀代の真贋だから勿論言うことは聞くし信頼も積み重ねてある! 今世の顔合わせが失敗だとしたならば、お前は飛鳥井からの轍から弾かれる事となる 信頼を勝ち取り、宗右衛門が敷いた1000年続く果てへと繋いて逝けよ東矢!」 「努力します……」 「宗右衛門がその返事を聞いたならば、即座にお前は飛び蹴りかまされる事となるぜ! 誰も努力しろと言ってるんじゃねぇんだよ! 相手を知る為には自分を晒せと言ってるんだ! それは努力で何とかなる筈などないんだ! そこの所を理解出来てねぇんだよお前は!」 「僕はどうしたら良いんですか?」 それに答えようとした時、康太の電話がブーブーと震えた 康太は携帯を取り出し着信の相手を見ると、烈だった 通話ボタンを押すと 『母しゃん、ボクが還ったら一度家族を交えて話をしゅると良いにょよ!』と烈の声が飛び込んで来た 「なら今話しても仕方ねぇのか?」 『根本的にゃ部分の欠落してるから……皆の意見も聞かないにょよ!』 「解った、ならお前が帰国したら家族を集めるとするわ!」 『椋は人を見にゃいから、人の観察をする事が宿題だと伝えてね!』 「了解した!」 『にゃら母しゃん行って来ます!』 「おー!気を付けてな!」 『父しゃん行って来ます!』 「またラインします!」  『父しゃん、待ってりゅね!』 と言い通話が切れた 康太は「烈から宿題だ!烈が帰国して来るまで人間観察しろって言ってた 烈が帰って来たら聞かれるから、お前は全力で人間観察しとけ! オレからもそれだけだ、烈が帰って来たら家族会議を開く! それまでにそのロボットみたいな能面な顔、何とかしとけ!」と言い榊原に椋を連れて行く様に頼んだ 榊原は椋を抱き上げると、リビングを出た 応接間に戻ると栗栖が来ていた レイは必死に課題を見せていた 凛も「りょーおわってるにょか?」と問い掛けた 椋は黙って課題を栗栖に渡した 栗栖はその課題を受け取り「椋、無言で差し出すのは禁止と言いませんでしたか?」と怒られた 椋はコミニュケーションって難しいって痛感していた そんな頃 烈は搭乗前で母に電話を掛けていた 電話が終わるとアナウンスが流れ、飛行機に乗り込む時間となった 今回はクリストファーの専用機ではなくて、ちゃんとチケットを取って出掛ける空の旅だった 事前に康太から田代に連絡を入れさせ、チケットとパスポートは用意してあったのだ 烈は竜馬と戸浪と田代と共に大和の国の空を後にした 果てへと進むべき道へ逝く為に……… 決意を込めて、戸浪は飛行機に乗った

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