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第17話 突き当たる現実
イギリスのヒースロー空港へ到着したのは翌日の昼近くだった
日付変更線を飛行機の上で迎える程の長丁場なフライトは何時もの事だから、飛行機に乗るなり
烈はずっと寝ていた
竜馬もずっと寝ていた
戸浪と田代は仕方なく寝て過ごす事に決めた
ヒースロー空港に到着すると、お迎えの車が空港入り口に停まっているとの事で、烈と竜馬は税関を通過すると空港入り口に向かった
戸浪と田代も税関を通過して空港の外に出ると、目の前にリムジンが停まっていた
助手席から男性が下りて「烈様、竜馬様 お迎えに上がりました!」と声を掛ける
その男性は燕尾服を着て何処から見ても執事にしか見えない男性だった
執事が挨拶をすると、戸浪と田代は言葉を失っていた
呆然とする戸浪と田代を車に押し込み、烈と竜馬はリムジンに乗り込んだ
リムジンの中へ乗り込むと竜馬は戸浪と田代に
「この車はクリストファー・オブライエンの家から遣わされた車で、さっき挨拶した人はオブライエン家の執事なんです」と説明した
クリストファー・オブライエンと聞き、戸浪はイギリスでの名家を思い浮かべた
イギリス皇室と関わりの深いコングロマリットを展開する大企業の頂点に立つ存在
生きている内にお目にかかれる事はない人物でもあった
烈は「取り敢えずクリスんちで今夜は休むにょよ!」と言った
竜馬は「明日からはイギリスに来た目的を果たすべく逝く所が沢山ありますから!」と言った
戸浪は何故烈が戸浪をイギリスに連れて来たのか?その真意を測り兼ねていた
車はオブライエン家の敷地に入ったが、中々正門に辿り着かない程の大豪邸だった
かなり走ってやっとオブライエン家の玄関側の車寄せに停車した
烈と竜馬は車から下りると、戸浪と田代も車から下りた
エントランスに出るとクリストファーが出迎えに来ていて、烈を抱き締めてスリスリしていた
「烈!逢いたかった!
体は大丈夫なのかい?」
「クリス大丈夫だよ!
今回は【R&R】の仕事じゃなく、私用で来たんだよ!」
と烈が英語で話している姿に戸浪は驚いていた
クリストファーは烈を離すと皆を屋敷の中へと促した
皆を広間横の応接室へと招き入れると
「紹介してくれないかな?」とクリストファーは切り出した
竜馬が「トナミ海運の社長の戸浪海里さんです!」と紹介した
戸浪は「戸浪海里と申します!」と自己紹介した
そして「此方が秘書の田代と申します!」と紹介した
クリストファーはニコッと笑って「クリストファー・オブライエンです!」と手を差し伸べた
戸浪はその手を取ってお辞儀をした
「今宵はヘンリー達も還って来ている
そして烈と竜馬が還って来たのだ
パーティーを開く事にしたから、貴方達も楽しまれると良い!」と言い応接室を後にした
クリストファーと入れ替わりに、ヘンリーとオリヴァーがやって来て「烈!逢いたかった!」と抱き着いた
竜馬は「他のメンバーは?」と問い掛けた
ヘンリーが「来てるよ、今宵はパーティーだからカクテルスーツに着替えないと駄目だよ!
その人達のスーツは聞いてたから用意はしてあるから!」と答えた
竜馬は「なら着替えに行こうぜ!烈」と言うと烈は立ち上がった
「着替えるにょよ!」と言うと戸浪と田代は立ち上がり応接室を後にした
そして与えられた部屋へと向かった
オリヴァーは「戸浪さん達はこの部屋で着替えて下さい!今宵はそのまま休んで貰って構いませんが、その前にパーティーです
クローゼットを開けたらカクテルスーツが入れてあります!
それは貴方達にプレゼントします!」と言い部屋へと案内した
そして烈と竜馬も与えられた部屋に行き着替えて、戸浪達の部屋のドアをノックした
ドアを開けた田代はカクテルスーツに身を包んでいた
竜馬は「流石、ヘンリーだな!」と言った
宗右衛門は「クリストファー・オブライエンの家のパーティーは謂わば社交界場だと言っても過言ではない程に、世界に轟く企業の人間が来ているからな、話し掛けられたらトナミ海運の社長だと必ずや名乗るのじゃぞ!」と念を押す
戸浪は「解りました!」と緊張して答えた
烈が何故、クリストファー・オブライエンの屋敷に連れて来て、パーティーに参加させるのか?
その真意は計り兼ねるが、行けと謂われるならば、恥じぬ様に行動せねば!と覚悟を決める
クリストファー・オブライエンの屋敷には何時でも人を呼びパーティーが開けるように広間はかなり大きく作られていた
その広間はベルサイユ宮殿を模したて造られたと有名な話で、豪華絢爛で溜息が出る程に美しいとかなり有名だった
パーティーに参加した戸浪はクリストファーに紹介される事はなかった
だが【R&R】のリーダーの横にいると謂う事は身内も同然な存在なのだと認識された
ここパーティーでは名刺のやり取りなど無粋な事は一切されないが、カクテルを手にしてやって来る存在は戸浪と握手を交わして話をすると、周りには人が集まり、賑やかな談笑の場となる
戸浪は流暢な英語で会話の場を盛り上げる
そのスマートさは外交に長けた存在として認識された
烈の為に薄いジュースも用意され、烈はそれを飲みやって来る人達と楽しげに談笑していた
その場に来ている人物ならば【戸浪】と自己紹介されただけで何処の企業の人物かを即座に認識する
それこそが烈の思惑であり、狙いだった
隙のない男は頭の先から爪先まで完璧に洗練されたスーツに身を包み、完璧な話術を披露した
烈の姿を見付けると世界的に有名な女優からロックバンドのボーカルまでやって来て話をしようとあっという間に人集りが出来ていた
戸浪は烈の華麗なる貴公子然とした姿に、今更ながらに凄い子なんだと痛感した
その夜は最高に楽しい余韻を残し、パーティーはお開きになった
戸浪と田代はメイドに案内され着替えた部屋へと案内され「この部屋でお休み下さい!」と謂われ部屋へ入った
戸浪はカクテルスーツを脱ぎ捨て、先にシャワーを使いバスローブを着ると、田代が入れ替わりにシャワーを浴びに向かった
ベッドに寝そべると戸浪は泥のように眠りに落ちた
田代がシャワーを終え出て来ると、戸浪は既に寝ていた
田代も夢のような時間の終わりを噛み締めて眠りについた
烈は竜馬と共に与えられている部屋へ向かい、シャワーを浴びていた
竜馬が烈の背中を洗ってやると、烈も竜馬の背中を洗ってやった
「もぉね、ちゅかれたのよ」
と呂律も危うくなって来て竜馬はシャワーで泡を流して浴室を出た
半分眠りそうな烈の体を拭いて、バスローブを着せる
竜馬も髪を乾かしてバスローブを着ると、ベッドにダイブして眠りについた
翌朝、メイドに起こされた烈はバスローブは脱げて、全裸だった
メイドは烈をバスルームに放り込み、竜馬を起こした
「おはようございます!
烈様はシャワーを浴びておいでです!」
「なら俺もシャワーを浴びて来るわ!」
「ならば朝食はどうなさいますか?」
「戸浪と田代の二人をこの部屋に呼んでくれるかな?そしたら此処で朝食を取るよ!」
「了解致しました!」
と言いメイドはベッドメイキングを始めた
手早くベッドメイキングを終わらせると、戸浪を呼びに向かった
メイドに起こしに来られた戸浪と田代は、素早く支度して昨夜のカクテルスーツをスーツケースの中へ入れて、メイドに案内されて烈と竜馬のいる部屋へとやって来た
烈はシャワーを終えて、髪を整えて【R&R】のスーツに着替えていた
竜馬も一緒のスーツに着替えて、戸浪達を待っていた
「昨夜は疲れましたか?」
竜馬は問い掛けた
戸浪は「はい、こんな場には滅多と遭遇出来ませんから、疲れましたが貴重なお時間を作って戴きありがとうございました!」と礼を述べた
烈は「これからが、本番だから根を上げられたら困りゅのね!」とサラッと言った
これからが本番………ならば昨日のパーティーは前菜みたいなモノなのだろう………
朝から山盛りのサラダを食べながら烈は「時差が抜けにゃいのよね」とボヤいた
「俺も時差が抜けなくて眠いけど、そんな事は言ってられないんだろ?
二人をマンションまで連れて行って荷物を置いて来なきゃ駄目だし」
「そーにゃのね!」
「俺の部屋の方で泊まって貰えば大丈夫か?」
「そうね、どうせりゅーまは自分の部屋には行かにゃいからね!」
「意地悪い謂うなよ!烈」
「言ってにゃいのよ!
若旦にゃも早く食べるのよ!」
と謂うと戸浪も朝食を取った
田代は「昨夜のパーティーはどんな目的が有ったのですか?」と問い掛けた
竜馬は「クリストファー・オブライエンと謂う存在をお二人はご存知ですか?」と逆に問い掛けられた
戸浪は「女王の妹と婚姻し幾つかの企業の頂点に立つ存在……としか解りません」と答えた
「クリストファー・オブライエン家は皇室の繋がりもある名家に数えられる家なんです
だからオブライエン家のパーティーには出たいと言っても、容易く出られる訳ではありません
招待状を貰いやっと出られるパーティーなのです
そのパーティーに戸浪が参加したと謂うのは、顔を売り名を売るチャンスでもあるのですよ
昨夜のパーティーは烈の為に開かれたパーティーだったのです
だから常に烈は中央で招待客の相手をしていた
その横に立つ男はかなり興味津々だったと想われた、だから貴方の周りにも人が群がった
パーティーの場で名刺交換はされないが、自己紹介したと謂う事は名刺交換したも同然なんですよ
トナミ海運の名は少なくともイギリスの企業の間では優良株と見做されたも同然なんですよ」
昨夜のパーティーがそんな意味があったなんて……戸浪は驚いていた
宗右衛門は「やはり帝王学を叩き込まれた存在はパーティーの場でも卒なく己の立ち位置を確保して、招待客に名も顔も売ったから成功じゃたと言えよう!
じゃが本来の目的はそれではないから、覚悟しておくがよい!」と言った
朝食を取り終えると、食後のティータイムに突入して、ゆったりとした時間を送った
そして立ち上がると「荷物を持って着いて来て下さい!」と竜馬が言った
戸浪と田代は立ち上がると、スーツケースを手にして烈と竜馬の後に続いた
オブライエン家の車寄せに向かうと、昨日乗った車が待ち構えていて烈達は車に乗り込んだ
車は烈達がプレゼントされた高級マンションまで向かいマンションの前で停まった
車から下りると、執事はドアを開けて烈達を見送ってくれた
マンションのエントランスへ入り、暗証番号を打つとドアが開いた
5基あるエレベターの一つがやって来てドアが開くと、乗り込み最上階へと向かう
最上階は【R&R】のメンバーの部屋になっていた
烈もその中の一室を貰い受けていた
リーダーと謂う事とあり、メンバーの中で一番大きな部屋をプレゼントされていた
竜馬は自分の部屋のドアを開けると
「イギリスにいる間はこの部屋を使って下さい!」と言い部屋のキーを渡した
「この部屋は4LDKあるので好きな部屋を使って下さい!
寝室と来賓室も備えているのでベッドが入っている部屋は2つありますから、好きな方を互いに選んで使って下さい!」
と言うと戸浪は「君達は何処に泊まるんだい?」と問い掛けた
「我等がリーダーの部屋が一番大きいので、そこで俺は過ごしています!
この部屋は滅多と使う事がなかったので、こうして泊まって貰えて良かったです!」
「烈の部屋?このマンションにあるのかい?」
「そうです、烈の部屋は8LDKありますからね
我等の部屋の倍はありますから、メンバーも自分の部屋に行くのが面倒な時は泊まっちゃいます
最上階は我等【R&R】以外の人間は存在しないので、気楽に過ごしてくれれば良いです!」
戸浪と田代は荷物を置いた
宗右衛門は「ならば逝くとするか!」と言った
「もぉ、年寄りはせっかちでいけない!」と竜馬はボヤいた
「逝くにょよ!りゅーま!」
「はいはい!」とはいを多く言うと烈の蹴りが飛んだ
「痛いって烈!」
「はい、は?」
「一つでしたね!
では若旦那逝くとしますか!」
竜馬は脛をさすさすして、言う
戸浪は「何処へ行くんだい?」と問い掛けた
「ヨニー©イギリス本社です!」と答えた
「その後はヨニー©Rウッズスタンを見回り
昼食後はオブライエンの系列企業を回ります
大企業の中って中々見学出来る事はありませんからね、貴方達は企業の成り立ち、そして回し方を見て貰います
その中で自分の会社との違いを考えながら見て下さい!
宗右衛門はその中に必ずや答えはあると示していますから!」
そう言い戸浪は竜馬達とマンションの地下へ向かう
烈達はマンションに着替えとか既に用意されているから手ぶらでイギリスに向かえるのだと、今更ながらに想った
地下に向かうと一目で高級だと解る車ばかり停まっていた
その中の一台に竜馬はロックを解除して乗り込んだ
「どうぞ、乗って下さい!」と謂われ
後部座席に戸浪と田代は乗り込んだ
烈は助手席に乗り込むと、竜馬は車を走らせた
烈はコックリコックリ眠っていた
竜馬は頭を打たない様に膝の上に頭を移動させ寝させた
ヨニー©イギリス本社ビルに到着する前に、烈は起きた
竜馬はダッシュボードからウエットティッシュを取り出すと、烈の顔を拭いた
「目やに着いてにゃい?」
「大丈夫だ!烈」
「時差、抜けにゃいのよね」
「今回は京香さんの番だから、夕方までに来てくれるだろうから、夕飯期待出来そうだから!頑張れ烈!」
「今回はママにゃのね!
にゃら頑張らにゃいとね!」
そう言い烈はダッシュボードから鏡を取り出した
身なりを整えると、竜馬はヨニー©イギリスの副社長のスペースに車を停めた
そして車から下りると、戸浪と田代が降りるのを待ち、一緒に社内へと入って行った
社内へ一歩踏み込むと副社長の存在に、社員達は会釈したり、話しかけて来たりした
副社長と言う存在はそんなに遠い存在ではない
フランクな感じで、社員の方へ向いている
竜馬は「俺と烈は副社長をしています!だからリモートで仕事したり役員会議にはこっちに来て会議に参加したりしています」と言った
竜馬は社長室のドアをノックすると「どうぞ!」と声が掛かりドアを開けて社長室の中へ入った
社長室の机にはオリヴァー・オブライエンが笑顔で待っていた
「烈!もっとこまめに逢いに来てよ!」と言いオリヴァーは烈を抱き締めていた
宗右衛門は「オリヴァー、此方はトナミ海運社長 戸浪海里さんと秘書の田代だ!」と紹介した
オリヴァーは「商談?」と問い掛けた
宗右衛門は「会社を見に来ただけじゃ!」と言った
「でも昨夜のパーティーにもいたよね?」
「じゃな!」
「なら商談でしょ?」
「今 戸浪がヨニー©イギリスと商談する様な事はない!勘繰るでないオリヴァー」
「そうなの?なら何で連れ歩いているの?」
「それは大企業の成り立ちと、最終的に【R&R】による意識改革と企業実践の為じゃよ!」
「ならば僕が何日か面倒見るよ!
どうせ竜馬の部屋にいるんだろ?
そしたら夜にでも【R&R】による意識改革すれば良い!
アンソニーを貸し出してファイヤーウォールを築くんだろ?
ならば僕にも彼達を知る必要があると想わないかい?」
「ならば何日か、主が面倒を見てくれ!
そしてマンションに送り送迎をしてくれ!
来賓級の扱いを頼む!」
「了解したよ!
僕が適任だと想ったから一番に連れて来たんだろ?宗右衛門!」
「まぁ戸浪を見たら面倒を見たがるとは想った
昨夜から目を着けておったのは知っておるからな
まぁお手柔らかに頼んだぞ!」
「任せといて!
今の僕は最高に忙しいからさ
起業家としての僕を存分に見させられるし、帝王学を学んだとしても、そんなのは通用しない世界なんだと見せられるからね!
実践 経験 そして愛だよね宗右衛門!」
「愛は知らんが、実践と経験を見せてやれ!」
「任せといて!」
宗右衛門は戸浪に向き直り
「と謂う事で何日かは此処で実験教育を受けるのじゃ!田代もオリヴァーの秘書から学ぶのじゃ!
まぁ儂がお膳立て出来る教育の場の第一弾じゃな!」と言いオリヴァーに頼み烈と竜馬は還って行ってしまった
残された戸浪と田代は別々の場に移され、オリヴァー自ら起業家としてのノウハウを叩き込む事となった
田代はオリヴァー直属の秘書が着いて教育に当たっていた
ヨニー©イギリスの平均年齢はかなり低く、社長であるオリヴァーもこの秘書もかなり若かった
だが仕事ぶりを目にすれば、熟練された秘書バリに能力は高く勉強させられる事は多々とあった
オリヴァーの部屋に残る事となった戸浪は、オリヴァーと共に仕事をさせられた
此処の社長と謂うのは常に接客も自分でやらねばならないし、一日に一回社内を回り社員達とフランクに話をしていた
年配者にも気を配り話をする
そして社長室に戻りまた仕事をする
此処の秘書のレベルもかなり高く、社長と同等の仕事をして振り分ける
スケジュール管理だけじゃなく社員や役職の管理もする
田代もトナミ海運もやはり秘書課の必要性を感じていた
飛鳥井が秘書課を作ったと聞いた時から考えていた
そして今、その必要性を思い知らされる事となった
そして何より、飛鳥井とは比べ物にならないセキュリティの練度の高さに、驚かされていた
オリヴァーは「この会社のセキュリティの練度の高さに気付かれましたか?」と仕事の手を止めて問い掛けられると戸浪は「はい!凄いです!」と素直な感想を述べた
「飛鳥井も此処程のセキュリティではないが入っているんだよ
そしてこの部屋には常にジャミング電波が流れている
些細な情報でも漏らさぬ為に我等は日々改善点を考えて導入して逝く
トナミもセキュリティを考えているならば、ヨニー©Rウッズスタンに行った時相談してみると良いよ!飛鳥井レベルを入れるのは大変かも知れないが、投資をしておけば必ずや自分達に返って来ると想わねばならないんだ!
まぁ宗右衛門の受け売りですけどね!」
「宗右衛門殿はこの会社の副社長をなさっているとか?」
「そうだよ、まぁ子供だから竜馬を着けて二人で副社長となっているんだよ
実際は子供じゃないんだけどね、うちの社員は宗右衛門を恐れているから……
それはあの眼で見られたりしたら、総てを暴かれてしまうんじゃないかって……ね、恐れている
僕等は何も怖くなんか無いけど、烈はそんな迫害にあいながらも立ち向かってる凄い子なんだ
引きこもりの僕に飛び蹴りかまして、半日説教かましてくれたからこそ、僕は目を醒ましたんだよ
そして飛鳥井のセキュリティを入れに飛鳥井へ行った時、宗右衛門よりも凄い瞳を持った烈の母さんと出逢って、凄い親子だなって想った
烈の瞳より数倍も恐ろしいのは康太の眼なのにね
今度康太夫妻をヨニー©イギリスに招待したい位なんだけどね!」
そう言いオリヴァーは笑った
戸浪は言葉もなかった
「トナミにファイヤーウォールを入れに行く時
僕も行くからね、おもてなしお願いね!」
「え?それは決定なのですか?」
「決定なんだろ?宗右衛門が貴方を連れて来たって事は…………
僕達【R&R】は貴方の引き起こした所業を知らない訳では無い………
竜馬が少し恨んでいる様に、我等も少しは恨んでいるんです!
大切な大切な我等がリーダーを………貴方は殺しかけたのだから……少しの恨み言位許しなさい!」
「はい!恨まれても罵られても仕方がない事をしましたから………どうぞ恨んで下さい!」
オリヴァーは潔の良い戸浪に苦笑した
この人も苦しみ傷付いたのが伺えられて、ほんの少しにしとこう!と心に決めた
「戸浪煌星と海は貴方のご子息か?」
「はい、我が息子に御座います!」
「烈は学友と過ごす壮大な野望を抱いている
だから今、トナミを生かして果てへと繋げなければ、学友が高等部には上がる未来が途絶える……と危惧している
だから戸浪海里、貴方には血反吐吐いたとしても踏ん張って戴きます!
それもこれも烈の壮大な野望の為!
学友と過ごすべく未来の為!
良いですね!戸浪海里!
貴方には経営者の何たるかを叩き込むまでは次へは行かせません!」
「はい!お願いします」
この日から戸浪の血反吐を吐く程のスパルタな実践教育がスタートした
烈と竜馬はマンションに戻り次のイベントの話し合いをしていた
メンバーも烈の部屋にいた
ヘンリーは「我が弟ながら、どうしてアイツはあんなに融通が利かないのか?不思議な程なのに、アイツに戸浪を預けて大丈夫なのか?」と不安そうな声で問い掛けた
宗右衛門は「適材じゃろ?来賓級には扱ってくれるじゃろ!
まぁあの二人は少しはスパルタで叩き直された方がよいのじゃよ!
甘い事を言っていたら果ては消えてなくなるのじゃからな!」とボヤいた
竜馬も「此処が勝負の分かれ道って事か?」と問い掛けた
「じゃな!」
そして電話が着信を伝えて震えると、烈は電話に出た
「はい!」
『おぉ!烈かえ?
イギリスに着いた故お迎えを頼む!
お買い物して逝く故荷物持ち出来る者を!』
京香からの電話だった
「ママ!直ぐに向かわしぇるにょよ!」
と言い電話を切ると
「ママのお迎えお願い!」とメンパーに言った
ダニエルが「京香が着いたのか?ならば私が行こう!帰りにお買いものして来る!」とスキップせん勢いで出掛けた
「今夜はにゃんだろ?」
烈が呟くと竜馬は「何でも美味しいか等楽しみだな!」と喜んだ
メンバーも京香の手料理が大好きだった
玲香の母の味の料理や、京香の家庭料理
慎一のメンバーの好みを作ってくれる料理や一生の男の料理
隼人と聡一郎のデリバーだけど、発掘作業が楽しい料理など、レパートリー豊富な飛鳥井からの援護射撃にメンバーは皆楽しみで仕方がなかった
ちなみに瑛太と清隆の料理の腕も凄くて、倭の国の連休じゃないと来てくれないが、それも楽しみの一つだった
夕方、京香がマンションにやって来て料理を作り出来上がる頃、戸浪と田代がマンションまで送られて還って来た
オリヴァー自ら送って来たのだった
オリヴァーはワクワクと京香の料理を楽しみに来たのだった
京香は戸浪を見ると「大切でしたね、さぁ沢山食べるのじゃ!」と食卓に誘った
烈の部屋の食卓台はメンバー全員座っても席が余る程に大きくてもクリストファーがメンバーや裏方全員が食べられる様に………とオーダーメイドで作らせた一品だった
話し合いに詰まったら、キッチンで何か飲みながら……とリラックス出来る空間になっていた
戸浪と田代はかなり絞られたのか?疲れ切った顔をしていた
が、食事を終えた後、簡単に部屋には戻れなかった
【R&R】による意識改革が始まるのだ
腹を満たしての講義は戸浪達の意欲高め、二人は食らいついていた
講義も終わりティータイムに突入すると、メンバーはリラックスした様に寛いでいた
メンバーも京香の事をママと呼び大切に扱った
京香も疲れたのか?早目に部屋に戻り寝る事にした
烈は「今日はこれで終わりにゃのね!部屋に戻って寝りゅのよ!」と言った
戸浪と田代が部屋に戻ると、メンバーも自分の部屋へ戻った
烈も自分の部屋へ行くと竜馬も着いて来た
一緒にシャワーを浴びて、パジャマに着替えてベッドに入る
烈の部屋のベッドはツインのベッドが入れられていたから、それぞれのベッドに入り眠りに落ちた
他の部屋はシングルのベッドが入っていたが、竜馬が烈の部屋はツインを!ってお願いしたからツインのベッドが入れられていた
ベッドとベッドの間に照明を挟み、切り離して置いたのは寝相の悪い烈のパンチをお見舞いされない為だった
烈は直ぐに眠りに落ちたが、夜中誰かと話している話し声で目が醒めた
烈はPCを開いて誰かと話をしていた
「れちゅー!」と声がして相手がレイなんだと解る
「レイたん、いい子にしてる?」
『れい いいこよ!』
「ちゃんとご飯食べてる?」
『たべてるにょ!」
「還って竜馬が持って軽かったら怒るにょよ!」
『らから…たべてりゅ!』
「いい子だね、レイたん
後少しお留守番しててね!」
『うん!れい おるすばんれきる!』
烈はレイに手を振ると通話を遮断した
時差があるから夜中にレイに連絡を入れているのだと想った
その後、両親にZoomして話して、祖父母にもZoomする
兄達にはラインを送る
昼休みに合わせて家族全員にZoomで話す
そして学校にいる兄達にはラインを送る
それから榊原の祖父母にもラインを入れて、話せるならZoomで話をする
それを終えて烈は再び寝るのだった
そんな烈を見てマメだなぁって想った
竜馬は親には滅多と連絡はしない
托卵か養子かと想っていた時なんてら一度も連絡をしてなかった
何年も何年も連絡をしてなかった
母さん元気かな?父さん……無理してないかな?
と想っていると烈がムクッと起き上がりPCを開いた
「繁雄ぉー!元気だった?」
いきなりのZoomにきっと三木は驚いただろう
「りゅーま!」と烈が呼ぶと竜馬は烈のベッドに行き、父に「父さん元気?」と声を掛けた
『竜馬、今イギリスかい?
この前のイベントで騒がれていたから心配してたのに………』
「父さん、心配掛けた」
『お前が元気なら……それで良い!
母さんにも連絡を入れてあげてくれ!』
心配しているから……の言葉は飲み込みそう言った
烈は「次は智美だから!」と謂うと三木は嬉しそうに笑って手を振った
次は竜馬の母にZoomをした
『あらま!竜馬じゃない!!!
この子は何の連絡も入れないで!』
と怒るが烈の姿を目にして
『烈!怪我してない?ちゃんと食べてる?』と心配した
「大丈びよ!元気してる!
還ったらまたお茶しょうね!」
『ええ!またお茶を楽しみにしてます!
竜馬も体に気を付けて、も少し烈を見習ってこまめに連絡して下さいね!』
「解ってるよ母さん!
こまめに連絡頑張るよ!」
竜馬の母の智美はニコッと笑って手を振って回線を遮断した
「りゅーま、想うにゃら連絡しゅるにょよ!」
と怒ってサイドテーブルの引き出しを引いて中にPCを入れた
そして眠りに着く!
久し振りに両親の姿を目にして、竜馬は嬉しく眠りに落ちた
翌朝、烈にドスンッと乗られて目を醒ました
「烈、も少し優しく起こしてくれないかな?」
「目覚めのキス、やっときゅ?」
「それは要らない!
俺は金髪のお姉さんとの熱いキスしか受け付けません!」
「そんなのいにゃいから、直ぐに起きるのよ!」
「解ったよ烈」
「下半身だらしにゃいと切りゅのよ!」
「それは辞めて!今は手当り次第犯ってないじゃないか!」
「それが当たり前にゃの!」
厳しい一言に竜馬は起きて支度をする
こうしてイギリスの朝は開けるのだった
京香がイギリスに滞在するのは一週間
その後は烈が滞在する間は飛鳥井から食事の管理をしに誰かが来てくれる
戸浪と田代は最初は着いて行けなくてヘロヘロだったが、一週間もすれば意識改革がちゃんと実を結び理解出来る様になり、動けるようになって来た
するとオリヴァーは烈を呼び教育の終了を告げた
「僕が教えられるのは此処までだよ!
彼等は本当に食らいついて頑張った
宗右衛門の繋げる果てへと逝ける存在になったと太鼓判押して次のステップに行かせられるよ!
って言う事で、トナミ海運社長 戸浪海里
次のRウッズスタンは僕の様に甘い奴ではない
どうせ鳳城と東堂が教えるんだろ?
僕でさえ裸足で逃げ出したい奴等だと言っとくね
でも君達ならば堪えられるよ!
頑張って下さい!
そして僕達が行ったら、おもてなしお願いしますね!貴方の家はかなり大きな日本家屋だとか?
期待しても良いですか?」
オリヴァーの言葉には戸浪は
「はい!来日されたら我が家でお過ごし下さい!
おもてなしさせて戴きます!」と言った
「我等【R&R】は倭の国での隠れ家は、我が父クリストファーが用意してくれてるので、滞在に不自由する事はありません!
ですが、倭の国の伝統ある屋敷と謂うのに興味があるのです!」
「ならば是非お越し下さい!」
「カイリと呼んでも?」
「ええ、ならば私はオリヴァーと呼んでも?」
「おー!カイリ!また会える日を楽しみにしてるよ!」
「ええ、私も楽しみです!」
かなりフレンドリーな別れを惜しみ、戸浪と田代は次のステップに移動した
烈と竜馬は代表を務める会社ヨニー©Rウッズスタンへのやって来ていた
【R&R】の制服とも言えるアルマーニのお揃いのスーツに身を包みやって来た代表に、社員達は皆喜び声を掛けて来た
かなり奥からバタバタと足音がすると、竜馬は飛び退いた
「烈!私の可愛い烈!」とかなり美人が飛んで来て烈を抱き上げた
その後ろにやけに男前が控えていて、烈を奪い取ると「俺の烈!何日位に滞在するの?」と聞いて来た
烈は東堂御影にスリスリされていた
竜馬は「この美人が©Rウッズスタンの副社長の鳳城葵で、此方の烈にスリスリしているのは専務の東堂御影です!
東堂は秘書の役割も副社長の役割も熟しているオールマイティな奴ですが、この二人は烈を溺愛して我が子にしたいと謂う野望の為ならば偽装結婚でもしちゃえる奴です!」と紹介した
東堂は「その変な紹介止めて下さいね!」と文句を言った
「なら葵を愛する男と紹介した方が良い?」
「冗談!例えこの世が滅んだとしても葵となんて冗談じゃない!」
「大学時代はせフレって有名な噂出てたよね?」
「一度たりとも犯ってねぇよ!
萎れて勃つか!」と怒った
「ならなんで寝食共にしてるのか?不思議なんだよな?」
「異性として見てないからだ!」
東堂は即答した
鳳城と「それはこっちの言い分だ!」と烈を奪い取りスリスリした
竜馬は烈を奪い取ると「お前等トナミ海運の社長の前で烈に恥かかせるなよ!」と言った
鳳城葵と東堂御影は姿勢を正すと
嫣然と美しく笑って「鳳城葵です!Rウッズスタンの副社長をしております!」と自己紹介した
東堂はキリッと顔を引き締め男前を全面に出して
「東堂御影です!Rウッズスタンでは専務をしております!
副社長が研究馬鹿なので、副社長の仕事もしています!
と謂う事で俺が引き受けましょう!」と申し出た
「御影、私がお二人はお教えします!」
「研究を目にするとお二人の存在すら忘れてしまうでしょうから、俺が最初から見た方が良いに決まっている!」
二人はバチバチと熱い火花を飛ばして牽制し合った
宗右衛門は「ならば葵はセキュリティの仕組みや大切さを二人に説明し、何年ローンで入れられるか?説明を頼む!
そして御影は二人に上が不在でも仕事をせねばらぬ状況になった時も仕事が出来る強靭な戦士であるお主を見せてやれ!」と指示を出した
東堂は瞳をキラ~ンと輝かせ
「お任せあれ!宗右衛門!」と答えた
鳳城も「かなり勉強して見せますとも!烈の御学友の為に!でも少しばかり根に持っている分は上乗せしても?」と笑って問い掛けた
「まぁ根に持つ分は倭の国に行った時にご飯を食べさせて貰ってチャラにするがよい!」
「でも少しばかり根に持って行くのは大丈夫かしら?」
「まぁそれは大丈夫じゃろ!
竜馬も少しばかり根に持っておるからのぉ!」
と言い宗右衛門はガハハハハッと笑った
竜馬はバツの悪い顔をして「少しだもん!」と言った
鳳城も「私も少しだもん!」と言う
東堂も「俺だって少しだから!」と言うと宗右衛門は「それでよい!先に進めぬ程でないならば、それでよいのじゃ!」と言った
鳳城と東堂は烈を抱き締めた
きっとこうして謂われなきゃ、ずっと根深く恨みそうだけど………少しなら良いと謂われて許されて、先に進める道が出来て行くのが嬉しかった
竜馬は二人をバリッと引き離すと
「ならば戸浪社長と秘書の田代にお前らが持ってる総てを叩き込んでくれ!」と告げた
鳳城は「任せとけ!どの道倭の国へ行きセキュリティを入れるんだから、作業費はサービスして烈割引で計算を出してやるさ!」と約束した
東堂は「俺も任せとけ!オールマイティな仕事の仕方を叩き込んでやる!
どうせ帰国前にはオブライエン家のコングロマリットを見学するんだろ?
あの統制の取れた仕事はオブライエン家特有でしかないと先に言っといてやれよ!」と言う
「まぁ、それは見ねば解らぬからな
そして仕上げがコングロマリットの仕事の光景じゃからな
この日々に答えを出すか?
何も見つけられなかったは?
儂が決める事ではないからなのぉ〜
それは戸浪海里が出さねばならぬ答えであるからな、儂はそれを用意するだけじゃ!」
「ならば答え合わせが出来る様に腕より掛けてやる!」
「頼んたぞ!」
「頼まれたからには期待しててくれ!」
東堂の返事に竜馬はあちゃーと額を押さえた
「じゃが来賓級の持て成しは忘れてはならぬ!」
「了解した!」
「送迎を誰か着けてやってくれ!」
「ならば秘書に送迎はさせるとする!」
「頼んだぞ!」
そう言い烈はスタスタと歩き、Rウッズスタン社を後にした
竜馬は心配しつつも二人を残してその場を去った
この日から戸浪海里と秘書の田代の血反吐を吐くハードモードな企業実践が始まった
オリヴァー・オブライエンが如何に甘かったか……を身を持って思い知った
オリヴァーの所で叩き込まれたのに、東堂の所ではそんな事は通用しない位に、ハードな企業戦士となるしかなかった
自分の船に付けられているレーダーが出来るまでを知る事となりる
船に乗せられ吐いて吐いて酔って、それでも試験作の出来を知る為に船に乗りそれを試す
そんな日々の上にあのレーダーは出来上がり市場に出るのだと知る
そしてセキュリティが出来上がるまでも見学させられた
どんな妨害にも対応出来る様に試験を続ける
鳳城は足が生えた気持ち悪い機械を手にすると
「この機械は盗聴の為だけに造られた機械です
この機械は卵を産み付け、卵は自立歩行して電話の機械や回線に取り憑いて自在に情報を流していくのです
飛鳥井ではこの手の機械が見付かりました
今 駐車場にIDを着けた車しか入れないのはその所為です
外部に駐車場を借りて内部に引き入れない様にしている
戸浪も調べねば解りませんが、情報が漏れているならば、この手の機械が在ると考えて妥当です!」
と防犯に対するノウハウ
そしてセキュリティを入れる為のリスクと効果を説明された
午前中は東堂がオールマイティな仕事を叩き込み
午後からはセキュリティに対するノウハウや、戸浪に入れている機械がどうやって出来たのか過程を説明し、実践の為に船に乗る
そんな日々を繰り返した
船酔いもしなくなった頃、烈と竜馬が迎えに来た
「これでRウッズスタン社での実践教育は終わりました!
これからコングロマリットの社内風景を見学して、明日帰国します!」と突然告げられた
約一ヶ月近くイギリスで過ごし、毎日目が回る日々を過ごして勉強した
学ぶ日々は突然終わりを告げられ、安堵する気持ちと、まだ学びたい気持ちと複雑だった
竜馬は「良く御影の試練に堪えられました
大学時代から御影の要求する試練に絶えられる存在は我等【R&R】しかいませんでした!
烈なんかは堪えるより、より練度の高い試練を二人に与えちゃったりしたから、敵わない存在として烈を溺愛しているのですが………この二人は出来ないって事が理解出来ない奴なので、かなり要求は高めでしたでしょう!
そんな東堂御影の試練を耐えて生き抜いた貴方達ならば、この先どんな試練が目の前を塞いだとしても、難なく超えて行けられるでしょう!」と賛辞を述べた
宗右衛門は「まぁ倭の国に還ってからこそが試練の始まりでは有る!
この乱世に繰り出すと言う事は、どんな災厄が巻き怒るか解りはしない
今回の病だとて、あれでダメージを受けた会社は数多くある
倒産して数を減らした今こそが狙い目だと申そう
生き残った会社には生き残った意味が在るのじゃ
それを忘れる事なくは日々精進なされよ!」との言葉を送った
鳳城は「烈、我等も直ぐに倭の国へ逝く故、待っておれ!」と烈を抱き締めてスリスリした
それを奪い東堂も「セキュリティを入れに行くからね、待ってて烈!
葵は今から相賀の事務所に入れる倭の国を視野に入れた実験に日々胸を躍らせている
俺も飛鳥井でその間は仕事しちゃうからね!
待っててね!烈」と名残惜しそうにスリスリした
そんな烈をバリッと剥がして竜馬は
「それでは戸浪社長ら行きましょうか!
今宵はイギリスの夜の街に出てフレンチを食べましょうね!
イギリスで迎える最後の夜ですからね
楽しんで有終の美を飾りましょう!」と言い還って行った
烈が帰ると鳳城は「実験してくる!」と言い実験室に引っ込んだ
東堂は「さぁ今日も頑張って仕事するよ!業績落としたら宗右衛門に蹴り飛ばされるよ!」と発破を掛けた
社員達は慌てて自分の持ち場へ散らばって行った
烈と竜馬はオブライエン財団が所有する一つの会社を見学の場に決めて見学に来ていた
©オブライエン貨物船舶と謂う貨物の会社だった
オブライエン総帥から、この日烈と竜馬が訪問するから絶対に失礼のない様に!とのお達しを告げられていたので、出迎えをしてくれたクリストファー・オブライエンの一番下の弟のジェイコブ・オブライエンは緊張しまくっていた
兄が其処まで言う人物に失礼を働いたら、明日はないのだ
兄はそんなに甘い人間ではないのだ
一族の為に頂点に立っている男なのだ、甘くては付け狙われるだけなのだが……
烈と竜馬は出迎えくれたジェイコブに
「【R&R】のリーダーしています飛鳥井烈です!」と宗右衛門の声で自己紹介をした
「【R&R】の三木竜馬です!宜しくお願いします!」と挨拶した
そして宗右衛門は「此方が我が学友の父上で在り、トナミ海運の戸浪海里社長と秘書の田代です!」と紹介した
トナミ海運と紹介され、あぁだから我が社がコングロマリットの中で選ばれたのか?と理解した
ジェイコブは「©オブライエン貨物船舶のジェイコブ・オブライエンと申します!」と自己紹介した
そして「我が社は貨物船舶と謂うだけあって、陸路と空路と船舶を所有してイギリスでの大体8割を我が社が締めています!
我が社はトナミとは違い荷物を主流に扱っています!では作業ラインを見ながら説明致します!」と言い歩き出した
工場見学が出来る様に莫大な大きさの倉庫の上には、ラインに合わせて見学するスペースがある
「この場は謂わば我が社の心臓部です
此処で荷物を各地に分けて送り出す作業をしています!」と言い説明していく
トナミにはないスタイルだった
Amazonとかで目にする様な作業風景に戸浪は「これでどれだけの効率作業を叩き出せるのですか?」と問い掛けたりしていた
ジェイコブはタブレットを取り出して一つ一つ丁寧に説明していく
イギリス全土の荷物のほぼ全部を捌いているのだ
それは目を見張る光景だった
各地に持つのは倉庫ではなく配達を担う運送屋と契約してそこへ直に送るシステムに
「ならば各地の倉庫は不要となるではないか!」と興奮して言った
ジェイコブは「そうですね、荷物の保管は各地の運送屋に切り替えれば我が社で保管しておく事はない!効率も上がるし無駄な経費も削減出来ます
だけど、各国には代理店を持たねばなりません!
どうです?倭の国への荷物、運ぶ役割持ちませんか?」
「え?それはどう謂う意味ですか?」
「貴方達は週に1・2回我が社に倭の国行きの荷物を取りに出向いて貰う
そしてその荷物は即座に配送会社へ下ろせば良い!
そうすればコストは掛からないし、定期的に仕事は途絶える事なく入ります!損な話ではない筈です!」
「えぇぇ!何故ですか?
何故そんな高待遇の話を下さるのですか?」
「我等も倭の国に専属で賄える船舶業者を探していたのです
今は他の国の方が寄り道して下ろして下さっているので、専属となって取りに来て下さるのは助かります!
そして我が兄クリストファー・オブライエンは家族をこよなく愛する男です
私は兄の弟なので、此処の社長を任されています
兄は甘い男ではないが、愛する家族の為ならばどんな協力も惜しまぬ男です
その兄が貴方達を失礼のない様に!と言って来たのですから、大切な存在なのなと想っていました
そしたら【R&R】のリーダーと竜馬さんなれば納得出来ました
なのでこれは、兄からの忖度ではなく商談の話をしています
一通り説明した後に社長室に行き話をするべきでしたね!」と言い見学を再開した
一通り見学を終えて社長室に逝くと、ソファーに座りお茶を出された
ジェイコブは「では此れからが商談です!」とにこやかに笑って商談をスタートさせた
トナミ海運にとっては願ったり叶ったりの話だった
定期的に入る仕事と言うのは、本当に有り難い話となり、戸浪は契約書に目を通し、秘書の田代にも渡した
烈と竜馬がその契約書を覗き込みフムフムと納得していた
田代は「不明な点はありませんか?」と問い掛けた
烈は「にゃいのよ、むしろ高待遇よ!」と言う
竜馬も「本当ならこう言う契約の作成は弁護士を同席させ作成するのですが、今回は契約書とか結構長けている俺等が同席しているので安心して下さい!」と言った
戸浪と田代はホッと息を吐き出した
ジェイコブは「猶予期間は2ヶ月、船が足らないならば、我が社の使用していた船を差し上げますので2ヶ月の間に定期的に備えて仕事が出来る様にして下さい!」と言った
戸浪は「必ずや2ヶ月以内に整えて定期的に出られる様にします!」と約束した
ジェイコブは「これは契約とは話が別になりますが、貴方の会社にはリュウグウと謂う一族が作った海図があるとか?
その海図を我等オブライエンの方でもお願いしたいのですが?」と申し出た
戸浪は「竜宮家の仕事なれば、ご紹介は出来ます!」と謂うとジェイコブは大変喜んで戸浪を抱き締めた
「一度、海図を書く人に会いたいので、倭の国に行きます!
その時、我が社の船で行きますが、その船は差し上げます!
なのでトナミのマークに書き換えて行くので待ってて下さい!」
と約束を交わして、帰る事となった
帰る車の中で烈は「あっ!母しゃん!」と声を上げた
ウキウキと烈が喜ぶ
戸浪は「康太がどうしたかしたのかい?」と問い掛けた
竜馬は「きっと康太さん達がイギリスに来てくれたのですよ!
烈は両親が本当に大好きなので気配が近づくのが解るのですよ!」と説明した
案の定、マンションに帰ると康太が「お帰り烈!」と出迎えくれたから、烈は康太に飛び付いた
「母しゃん!父しゃん!」と言うと榊原は烈を抱き上げて「頑張りましたね烈」と労いの言葉を掛けた
父にスリスリしていると、竜馬がバリッと剥がした
そしてリビングに向かいソファーに座らせた
康太も戸浪と田代と共にソファーに座ると、顔付きの変わった戸浪に「お疲れだったな若旦那!」と声を掛けた
戸浪は「本当に疲れましたが……我等は本当に甘い経営をしていたんだって思い知られました
そして毎晩行われた意識改革も勉強して、何をせねばならぬか?の答えに導かれて行きました
本当に烈と竜馬には貴重な時間を貰いました
こんな貴重な時間を送れた人間はそんなにいないでしょう!
本当に我等は恵まれた時間を貰いました!
本当にありがとうございました!」と礼を口にした
烈は「母しゃん来たにゃらオリヴァーの会社にお迎えに行ってね!」と烈が言うと康太はノリノリで「おー!了解した!夜には上手いの食べに出るからな!」と言うと康太は竜馬を引き摺ってオリヴァーの元へと向かった
竜馬は「本当に我が社の社員が裸足で逃げ出したらどうしてくれるです?」とボヤいたが、康太は
「それは楽しみだな!」と言った
ヨニー©イギリス本社ビルに到着して社内を歩く
すると竜馬の姿に近寄ろうとして社員は固まった
が、ヨニー©イギリス本社の社員の誇りに掛けて深々と一礼する
康太はその姿に「すげぇな!この会社!」と賛辞を述べた
副社長の烈とは違う瞳の脅威に負けず
「副社長、何方ですか?」と尋ねる
「副社長の母上と父上だよ!」
何方も男にしか見えないけど?
だがそんな事はおくびにも出さないで
「あぁ、副社長が凄いのではなく御両親が凄いのですね!」と言った
他の社員も副社長の両親と聞き集まって来る
一瞬、康太の烈とは違う瞳に息を呑むが、フレンドリーに近付いて話し掛けて来た
時代劇が好きな社員の一人が榊原の顔を見て
「熱き想いの榊󠄀清四郎によく似てます!」と感激して握手を求められた
こんな海外でも父のファンがいるのだと嬉しくなり榊原は握手をした
竜馬が「この人は俳優の榊清四郎を父に持ち、榊原真矢さんを母に持つ人です
無論、兄は榊原笙さんです!」と紹介するとめちゃくそ興奮して光栄だと謂われた
泣いて喜ばれ榊原はどうして良いか解らなかった
竜馬は「今度相賀の所のセキュリティを入れる時に倭の国に行く子なので、その時に逢わせてやってくれませんか?」と問い掛けた
「解りました!父さんと母さんには言っておきます!」と言うと気絶せんばかりに喜んだ
そうしてガヤガヤと賑やかにオリヴァーの所へ行く
社長室をノックするとオリヴァーが顔を出し
「康太さん!」と喜んで抱き着いた
社員達は、あぁ〜やっぱ社長は最強だわと想った
修業間近の会社は活気づいていた
オリヴァーはスキップせん勢いで社員に
「それでは帰りますか!」と声を掛けた
基本残業はない会社だった
修業内で片付けられないのは無能との考えのオリヴァーの元、何とか残業なしで仕事を回していた
オリヴァーは「僕の車にどうぞ!」と謂うと榊原と康太は「ならオリヴァーの車に乗るよ!」と言った
竜馬は「なら俺は帰るわ!烈が待ってるから!」と言いサクサク還って行った
康太は「新婚かよ!」とボヤいた
駐車場へと出てオリヴァーの車に伸びこむ
オリヴァーは「トナミって業績悪いの今?」と問い掛けて来た
康太は「コロナ禍で業績上げてるのは滅多といねぇだろ?」と言うとオリヴァーは
「違うんだよ!何故そうなったのか?
分析しないと何処がザルになってて垂れ流しているか解らないからファイヤーウォールを入れる前に診断しときたいんだよ
下手な警戒心は要らないから、俺は烈の家族や身内を裏切る事は絶対にしないから!」と言った
「それはオレも考えていた
セキュリティを強化しても、何が足を引っ張ってあそこまて業績を落としたのか?
知らねぇとならねぇと想っていたんだよ
でも本当にオレも知らねぇからな答えようかなかったんだよ!
オリヴァーを警戒なんてしてねぇよ!
オレの眼を見て話せる人間の事を警戒なんてしねぇよ!」と言った
「最愛なる烈の壮大な野望の為に、トナミは生き残って貰わねばならないのですから!」
「だな、ならば共に調べようぜ!」
「了解です!」
その夜は戸浪が迎えるイギリス最終日と言う事もあり、外に繰り出してフレンチレストランへ行き
皆で楽しい時間を過ごした
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