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第19話 今を生きる明日を夢見て…❷
レイと凜は椋の後を追って走っていた
案外 椋の足は早くレイと凜は息を切らせて後を追う
竜胆は「体力不足か?日々修行してるのに?」と疲れ果て、ぜーぜーと息が切れて弱音を吐く
ニブルヘイムは「彼が闇雲に歩いているからでしょ?その内気絶でもしなきゃ良いけど…」とボヤく
「だな、こんなに体力あるなんて、ならば更に上の修業しかねぇわな!」
「ですね、更に上に行きましょう!
そして宗右衛門が敷いたレールの上を逝かねばならないのですからね!」
「だな……おい、そろそろヤバいぞ!」
椋はフラフラと駆けて逝く様に歩いたかと想えば、立ち止まりボーッと雑踏を見ていたり……
そしてトイレがありそうな所に駆け込んで吐いていた
そしてトイレから出て来た椋は歩道橋に登り、日暮れに染まった街を見ていた
椋は「後を着いて来てるのは知ってる…」と声をかけた
凜とレイは椋の前に姿を現した
東矢は「朝………一生と聡一郎を視て眼が悪くなったのか?と想った………一生は赤い龍で聡一郎は神々しい姿に視えたから……そしてさっき真贋と伴侶殿に逢った……彼等の姿も人のそれではなかった
ならばレイ、お前の姿は?なんの変化もないじゃないか!」と訴えた
ニブルヘイムは「私は転生した時に元の姿を捨てた故、その眼には見えないのですよ!
その眼で兵藤君を視ればどうです?
彼は朱雀、真紅の焔に包まれ綺麗ですよ」と暢気にそんな事を言っていた
「お前……こんな眼で良く生活出来るな……
人の悪意が目に映る………その闇に飲み込まれそうになると吐きそうになるし………怖かった」
「それが私の定めですからね!
貴方は少しだけ闇に汚染されていますね?
ほらほら、このお水を飲みなさい!
そしたら気持ちの悪いのは取れます!」
と言いレイはお水のペットボトルを渡した
椋はそれを受け取り蓋を開けて飲み始めた
するの闇に染まった様な己の中が綺麗になるのを体感していた
「稀代の真贋になると謂うのは並大抵の力ではなれないと謂う事なのか?」
「でしょうね、宗右衛門だとて元は神ですからね
神の力そのままに人の世に堕ち転生を繰り返したのですから、貴方に宗右衛門が務まるのですかね?」
「それは常に想っているんだよ、僕本人が一番知りたい事なんだから……」
「ならば貴方には何かが在るんですよ!
宗右衛門はそれを解っているからこそ、継ぎを継がせると決めたのです!
貴方はもう少し自身を持ちなさい!」
ニブルヘイムが言うと竜胆も
「だな、宗右衛門が決めたのならば、お前には何かが在るんだよ!
来世からはもっと厳しい状態に突入するって恵方が言っていた
だからこその今世の顔見世なんだよ!
今世、稀代の真贋を継ぐ者、宗右衛門を継ぐ者、源右衛門を継ぐ者が転生したのは偶然じゃねぇんだよ
だからさ東矢、俺等は日々修業を積み重ねて、来世へと逝かねぇとならねぇんだよ!
この先、どんな困難が俺等を襲ったって、力を合わせて立ち向かえねぇと、其処で終わっちまうんだよ!」と訴えた
今世の顔見世の意味を知る
東矢はレイに深々と頭を下げて
「ごめん!レイ
君に当たっていたのは八つ当たりだった
何故僕が宗右衛門を継ぐのか?
僕に宗右衛門が継げるのか?不安で仕方がなかったんだ!
そんな不安、口に出したら、もう要らない!と謂われると想って言えなかった……」と本音を吐露した
レイは椋を抱き締めた
凜もその上から強く強く抱き締めた
竜胆は「五通夜、やり直さねぇか?そしたら初等科に上がる年には連通連夜30通夜をやる!
一ヶ月間、寝食を共にして自給自足しながら過ごすんだよ!
それには連携が取れねぇと不平不満ばかりになったら、即座に命に直結するからな
本当に連携は必要となるし、互いを信頼してなくば、その儀式は出来ねぇんだよ
俺は2度、宗右衛門とその儀式をやった
宗右衛門は3度やってるから、今世は免除されてるんだけどな!
俺等はそれをやらねぇと来世へと逝けねぇと考えている…………」と今後の事を口にして問う
東矢は「通らねばならぬ道ならば、逝くしか無い!今まで本当にごめんなさい二人共!
そして宗右衛門にも謝罪しないとならない
彼は怒れば怒る程に何もしなくなるんだろ?
殴られた時にそれに気付いた……
宗右衛門は何処までも非常に人を切れる人間なのだと理解したよ
彼の信頼を勝ち取るには、0からのスタートとなるけど、頑張るつもりだよ!」と前向きな言葉を吐いた
レイと凜はホッと安堵の息を吐いた
「兵藤君だけ視たら、その瞳は解除して上げますね!」と笑うとレイは振り返った
すると其処には兵藤貴史が立っていた
「心配で来てみたら、大丈夫みてぇだな!」と笑った
東矢はニブルヘイムの眼で兵藤貴史を視ると、それは綺麗な生命の赤の焔を背負っていた
とても美しいその赤は産道を通る時に眼にする赤だと、気付いた
「輪廻転生の神 朱雀ですからね、彼は」
ニブルヘイムはそう謂うと呪文を唱えて、瞳の同化を解除した
兵藤は「ならば行くとするか!俺は烈にお前等3人を連れ帰ってくれ!と頼まれたんだよ!」と告げた
兵藤はレイを抱き上げると、凜と椋に「逝くぜ!」と言った
もしやと想っていたが、並んで見れば酷似した姿にレイの出自が解った様な気がした
歩道橋の下に停められた車に3人を乗せると、兵藤はレイの靴を脱がして腫れ上がった足首を確かめた
「おめぇは体力ねぇのに走るから捻挫するんだろうが!」とボヤく
「ぎょめん……」
「家に帰ったら湿布だな
治らなきゃ久遠の所だな!」
笑いながら後部座席のドアを閉めて運転席に乗り込む
そして飛鳥井へ帰る前に在るファミレスの駐車場へ入り、車を停めた
3人を車から下ろすと店内へ入って逝った
レイはにこやかに走り出した
「捻挫してるのに走るなよレイ」
兵藤がボヤくが何のその!
「れちゅ!」と言い烈の傍へ走って逝った
烈は「レイたん!」と笑っていた
レイは烈の横に座ると嬉しそうに足をぶらぶらさせていた
凜と椋も席に座らされる
翔は凜と椋に「何を飲む?」と尋ねる
凜は「こーら!」と答え、椋は「おれんじ!」と言った
流生は椋に「答えは、出たの?」と問い掛けた
椋は「はい、れました!」と答えた
流生はそんな椋を抱き締めて「さぁ飲むわよ!」と何処ぞの酔っ払いよ?とばかりにメロンソーダをカチンっと乾杯させて飲み始めた
椋は笑っていた
とても清々しい気分で笑っていた
この優しい兄達まで拒絶して、自分は何をしようとしていたのか?
意固地な自分は何も視えていなかったのかも、知れない
烈は大空に世話を焼かれて「にーに!」と甘えていた
太陽はレイの世話を焼く
康太と榊原は何も言わずに、そんな光景を見ていた
兵藤は「雨降って地固まる?」と問い掛けた
康太は「んな単純なら苦労しねぇよ!」とボヤいた
「烈、どうよ?」
兵藤は熱を出して寝ていたと謂う烈を心配して、問い掛けた
「熱は下がったけど、消化器系が弱ってて柔らかいのしか食べられないんだよ
当分はイギリスには逝けねぇと想う……
今世の宗右衛門はやはり母体からの栄養不足で無理が出来ねぇみてぇだからな……」と伝えた
「音弥は超未熟児だったよな?
烈は通常分娩じゃなかったのかよ?」と疑問を口にした
「烈は早産で超未熟児で飛鳥井に来るのが音弥より遅かった
産まれて3ヶ月位は保育機の中だったしな
やはり宗右衛門の魂の消失も大きかったのか?
今世は本人も長生き出来ないかと……と言ってる程だしな」と伝えた
「烈は家に来てからもゴタゴタで預けられていたりしたからな、俺が目にしたのは3歳位になってからだもんな
偉く貫禄があり、お茶飲んでても酒飲んでる雰囲気出していた頃からしか知らねぇもんな
大丈夫だよ、烈はまだまだ1000年続く果てへと繋いでねぇから踏ん張るしかねぇだろ?」
「だな、悪い……今後の難題山積でオレも疲れてるんだ、見逃せ!」
「トナミの件だろ?
俺で力になれる事があれば、言ってくれ!
あのレイが腐敗臭がするって言ってた奴等は今 檻が着いた中に入って取調べ中だ!
なのに何か心配事が有るのかよ?」
「何かな、ずっと胸の奥に燻る不安が取れねぇんだよ………こんな時は今までの経験上何があるんだよ!」
「………かなり前にもそんな事が有ったからか?」
「あぁ、前にもこんな事はあったがな、今は意味合いが違う………烈が運命を少しズラシてるんだよ」
「それってどう謂う事だ?」
「今まで烈が刺されたり、殺されかけたり怪我させられた事は全てオレが受けるべき事だった
それを微妙にズラシてるんだよ、烈が……」
「そんな事が出来るのかよ?」
「出来るだろ?賢者ラルゴと3人の賢者が聖神を弟子と認め教え込んだ成果は着実に実を結び、今じゃ右に出る者はいない程の実力を発揮しているんだからな
微妙に自分に降り掛かる様にするのは簡単な事だろ?」
兵藤は言葉もなかった
少し離れたテーブルでは烈、レイ、凜、椋は兄達に世話を焼かれて楽しそうに笑っていた
小声で話している康太と兵藤の声は、子供達のテーブルまでは届かないだろうが……
兵藤は烈の方を向いて確かめる様に「それは本当なのか?」と確かめた
「オレと伊織が出した結果だ、間違ってはいない
その上、星詠みの婆婆の所へ確かめにも行って聞いて来たからな!」
「何で烈はそんな事を……」
最愛の母の為に、母を想いした事なのだろう
だが普通はそんな事は想ってても、出来る力を持っていたとしてもしない!
榊原は「母を想えばこそ……なのでしょうね
僕だってそんな力があれば、ズラシまくって変わりたいですから!」と謂う
兵藤は頭痛を覚えていた
「まぁ何にせよ!今夜は答えを聞くんだろ?
ならば俺も見届ける事にするわ!」
「あぁ、その目で見届けてやってくれ!」
話は終わったと兵藤は子供達のテーブルに行き、楽しげに過ごす
食事を終えると皆、飛鳥井の家へと還った
夜 夕飯を済ませ客間に家族が揃う
今度は榊原の家からは誰も呼ばなかった
椋は東矢の声で烈の前に正座をして、土下座ばりの詫びを入れた
「本当に申し訳なかった!
今後は凜とレイと連携して行くと約束する!」
そう言ったが、宗右衛門は何も言わなかった
ただただ無言で頷きもしなかった
竜胆は「まぁ宗右衛門だからな、行動と態度を見てしか判断しねぇわな!」と言った
レイはうんうん!と頷いた
大空は「ねぇ烈、何も言う事ないの?」と問い掛けた
「にゃいのよ!言う気もにゃいのよ!」とにべもなく返す
そして「そーえもん出す気もにゃいのよ!」と謂う
竜胆は「昨夜あんだけ出したからな!ガス欠って事で!」と無難に言う
レイも「そうにゃのよ!れちゅ ちゅかれてるにょ!」と言う
東矢は「信用0からのスタートですが、もう二度と貴方の信頼は損なわない様に致します!」と言った
烈は一瞥しただけで何も謂わず客間を後にした
康太は烈の想いが良く解っているから、何も言わなかった
此れからは己の足で信用と実績を積み重ね、実践で使える様に修業せねばならぬのだ
そんな椋に掛ける言葉なんて有る筈などないのだ
簡単に許されてしまってはいけない
そんな想いがあるからこそ、声は掛けなかった
声を掛ければ今までの態度を鑑みて責任を感じるだろう
声を掛けねば、失望に打ち拉がれるやも知れぬが……前へと進める筈だ
前へ進めるならば、明日は途絶えてはしない
明日の飛鳥井は繋がれて逝くならば、今は声を掛けずともよい
そう考えたのだろう
兵藤は総てを見届けて「宗右衛門らしいな!
優しさなんて必要ねぇ筈だからな
今許して優しくするなんて、真綿でギューギューと締付け許してるよアピールしてるようなもんだもんな!宗右衛門らしくて、本当にアイツは優し過ぎると想う!」と言った
家族は言葉にこそ出さなかったが、それを感じていた
瑛太は「烈の体調どうですか?」と問い掛けた
それに答えのは慎一だった
「あまり芳しくありません
今度精密検査を入れると久遠先生は言ってました
其れ程に……今は体調を崩しています
城之内が、烈の様子を見て『何処かへ力を使っているか?調べろよ!
短期間でこんなに弱るなんて尋常じゃねぇだろ!』と言ってました
康太、なにか知りませんか?」
康太は慎一の言葉を聞き
「何処かへ力を使っている?
あぁだからあんなにも弱っているのか?
だとしたら、何処へ力を使っているんだ?
転生者は総て揃ったのに………視えて来ねぇな」
そう呟いた
そしてレイを見て「おめぇ何か知ってるか?」と問い掛けた
レイは何も謂わず首を振った
覚悟を決めた瞳を目にして、康太は何も言えなかった
真矢と清四郎と玲香と清隆は、来週船の旅に出る事となった
撮影スタッフ側とトナミとの話し合いが持たれ、決められた
撮影は二週間、旅行は二週間船で旅して、世界一周は無理だけど、日本一周はしたいわね!って事になり北海道スタートで沖縄まで船旅を楽しむ
その後、船から降りて一週間位は沖縄でゆっくりリゾート気分で滞在しようと謂う話になった
瑛太は既に会長の仕事をしていた
榊原は社長の仕事をし、烈は副社長の仕事を片付けていた
どの道、今月は会社で副社長の仕事を片付ける事を優先するつもりだからイギリスへは行く事は、到底無理だった
烈は翼を秘書に据え、仕事を片付けて行く
停滞した現場に出向いて、何故遅延しているのか?徹底的に話し合い解決するまで通う
そしてカタが着くと、その現場は嘘みたいにサクサクと仕事をして逝った
副社長から上がって来る仕事の量が半端ない
瑛太は「そんなに飛ばさなくとも大丈夫ですよ!」と謂うが、烈は
「来週から検査入院するにょね
だからその分上げているにょよ!」と言った
玲香や清隆が船旅に出て、安心して送り出した後に入院するとは………
烈の優しさに瑛太は言葉もなかった
烈は体調がずっと悪いのもあり検査入院が決まった
消化器系が弱っているから山盛りのサラダは食べられなくなり、青汁になった
ご飯も柔らかいのしか食べられなくなり、沢庵は禁止となった
井筒屋の沢庵は烈の前には並べられなくなった
「ボクの沢庵……」と悲しげに食事をする
慎一は「体調を戻したら食べられますから!」と励ます
凜とレイと椋は沢庵断ちをした
宗右衛門が食べられないのだから、一日も早く食べられるように!と願を掛け沢庵断ちをした
兄達もレイ達の想いを知り、沢庵断ちする事にした
慎一がそれを告げた時、烈は涙ぐみ
「嬉しいにょね」と言った
「慎一くん」
「何ですか?」
「ボクの入院、ばぁしゃん達に言わにゃいで!
そして竜馬にも黙っててね
副社長の仕事が忙しいって言ってあるから、慎一くんは知らにゃいって通してね!」
「解りました!
烈の頼みならば何としてでも護り通してみせます!」
「ばぁしゃん達、行かにゃいって言いそうだもんね!」
「それは言いそうですね」
「だから………お願いね!」
「解りました!」
慎一は烈と約束した
約束した以上は、守り通すと決めていた
そして家族に見送られ清隆と玲香は船旅へと旅立った
飛行機で北海道まで出るから見送りは出来ないけど、船が横浜に来た時は紙テープを持って見送りするから!と約束した
康太は翼が持ち帰ったトナミ海運のPCの中身を確かめ合い、プログラミングの甘さに、徹底的にファイヤーウォールを築く散弾を付ける
ファイヤーウォールを構築するのは、来月 会長が復職した後に決行する事を決めた
その時、オリヴァー・オブライエンと弟子のアンソニー・クルーガーもやって来ると竜馬から連絡が入っていた
竜馬は今 烈の変わりにイギリスへ飛び、【R&R】の仕事を仕上げに行っている
仕上げる前の段階まで烈は指示を出して、後は竜馬がイギリスに行き総仕上げをする
そしてイベントを大々的にやる予定だった
今回は烈は副社長業が忙しくて、欠席する事になっていた
竜馬は烈の分まで頑張らねば!と躍起になっていた
烈と謂うリーダーを欠いたイベントは成功を収めたが、メンバー納得の出来栄えではなくて、イライラとした気分を抱え、些細な事でメンバーと喧嘩して竜馬はその足で倭の国へと帰国して来たのだった
翼は烈の変わりに副社長の仕事をしていた
烈の指示で仕事を仕上げて行く
そんな烈は現在、入院中だった
久遠はとことん検査して細胞の一欠片まで検査しまくった
烈は連日の検査に耐えて、良い子して入院していた
検査をしまくって、出た結果に久遠は
「何か胃に負担になる様なモノを食べたのか?
それか許容以上の力を使っているから、体が限界を迎えて食べられなくなったか?
の、二択なんだが?どっちだよ?」と問い掛けた
烈はバツの悪い顔をして
「今は絶賛力を使い中じゃからだと想うのじゃが……」と宗右衛門の声で答えた
「ならその力を中止にしゃがれ!」
「………そしたら我が祖父母は………助からぬ
死の航路になってしまう故、船の軌道を反らしているのじゃ!」
「え?それっておめぇ以外の奴の力を借りたら、そんなに力は使わなくても良くならないか?
それは出来ねぇのか?」
「…………それを謂う訳にはいかぬのじゃ………
何処に悪意が潜んでおるか解らぬ故……表立っては出来ぬのじゃ……」
「だが康太には伝えるぞ!
このまま逝けばお前はその意識さえ保てなく衰弱するしかねぇぞ!
そしたらどうするんだ?」
「その時は……この命擲って逝くしかあるまいて!」
宗右衛門の言葉に久遠はコツンッと拳骨をお見舞いした
「痛いにゃぁー」烈は頭を抱えて痛がった
だが久遠は「お前の命を助けている俺に対して、とても失礼な事を言ったのは、宗右衛門 おめぇだろ?」と拳骨で済んでマシだと言い捨てた
「済まなかった久遠………」
宗右衛門は謝罪した
「康太と伊織を呼ぶ、そして話すが良いか?」
「それが定めと謂う事じゃな………総ては久遠に任せる!
じゃが久遠……儂は限界を超えた故……暫し眠る……」
と言い、烈の体はグタッと崩れ落ちた
その体を支えて久遠はベッドに寝かせた
そして院長室へ戻ると、康太と榊原を病院に呼び出した
そして病院にやって来た二人に、烈の身体の状態、そして検査の結果を見せて話す
検査の結果は、何処にも悪い場所はないが、検査してる最中でさえ大量の力を消費していてるらしく数値はどんどん悪くなって行った
宗右衛門を問い質すと素直に力を使っている事を認め、死の航路にしない為に軌道を逸らしていると言っていた事、そして限界を超えて気絶した事
全部を話し、烈がこのまま力を使えば意識は確実になくなり、昏睡状態になり……死ぬ可能性も捨てきれない事を伝えた
康太はその話を聞き
「烈は嫌 宗右衛門は死の航路になるって言ったのか?
それは前もって解っていたって事なのか?
でも何故?この旅行の話は家族しか知らねぇ
会社の社員だって会長が不在だなんて知りはしねぇ………なのに軌道を逸らさないと死の航路になると謂うのか?」
そう呟き何かを考えるように黙り込んた
榊原も何かある………とは嫌な感じが取れないと謂う康太の言葉に覚悟はしていたが………
狙いは船上だとは想いもしなかった
康太は立ち上がると「久遠助かったわ!烈が何に力を使っているか?視えて来なかったからな
これで手が打てると想う!」と言った
久遠は「お前でも視えて来ない事なんてあるのかよ?」と不思議に想い口にした
康太は苦笑して久遠に説明した
「烈の事は殆どが解らねぇんだよ!
宗右衛門と謂う御人は星を詠み運を詠み定めを詠む存在なんだよ
その力はどの世界にも宗右衛門以上の力を持つ者などいない程に………な
そして宗右衛門は運命を操作出来る唯一の存在でも在る
運命まで操作出来る存在は、オレの知る所宗右衛門 唯一人なんだよ
そんな烈の果てだからな、オレに視える訳がねぇんだよ
今何をしてるかさえ、オレは知る事すら出来ねぇ
唯一理解してるのはレイだろう
だがレイは烈の動きを止める事は絶対にしねぇからな、今の所お手上げ状態なんだよ!」
「力を使わせるな!
でないと本当に死ぬぞ!
もう自力で食事が出来ねぇ程だ!
これ以上衰弱したら打つ手はなくなる!」
「解った………直ちに動く事にするわ!」
康太はそう言い院長室を後にした
烈の病室へ行き話を取り敢えず聞くしかないと、向かうと病室の前にレイが待ち構えるようにして立っていた
榊原はレイに駆け寄り「レイどうしたのですか?
幼稚舎は?黙って来てしまったのですか?」と問い掛けた
病室のドアが開くと、其処には兵藤が立っていた
兵藤は「レイが泣いて『れちゅ ちんじゃう!』と電話来たからな、慎一に頼んでレイを幼稚舎から連れ出して貰い、取り敢えず烈の病室へ来たんだよ!」と伝えた
康太はレイを小脇に抱えて病室へ入ると
「ニブルヘイム、知ってる事は総て話せ!」と迫った
「烈はトナミを救う為と、祖父母孝行の為に船舶旅行をプレゼンするって喜んでました
一石二鳥を狙ったセコい考えでしたが、烈はそれでも祖父母が喜ぶ顔が見たかったのです……
ですが、話が決まって具体的に動き出すにつれ、烈の顔色は曇って行きました
これを………見て下さい…」
テーブルの上にレイは海図と航路を示した紙を出した
そしてその上にセロハンの様な透明の紙を乗せた
セロハンの上✘がされた場所を目にして、康太と榊原は驚愕した
瞬きすら忘れ、息をするのを忘れたかの様に、その✘マークを見る
兵藤も「レイから聞かされた時は驚いたし、手立てはねぇかと魔界に行き話もした
で、大歳神が倭の国の守り神として毘沙門天達十二支天を使い、何とかすると約束してくれた!
で、俺は其処へ着く前の地点から船に乗り込むつもりだ!」と言った
康太は「レイはお前に総てを話したのか?」と問い掛けた
「あぁ、黙ってるなら手は貸さねぇし烈は確実に死ぬ事になると現実を知ら示めて、やっと口を開いた!んにとによぉ、あんでコイツはこんなに素直じゃねぇんだよ!」
と兵藤はボヤいた
「そりゃぁDNAが素直じゃねぇからじゃねぇのかよ?」と呆れて謂うとレイも、うんうん!と頷いていた
榊原は驚いた顔をしてレイに
「貴方は………兵藤貴史の血を継いでいる事を認めたのですか?」と問い質した
ニブルヘイムの声で「それは今更変えられない事実ならば認めろ!と宗右衛門が言いましたから!
愛する聖神が謂うならば、私は聞きますよ!
それに私は本体を捨ててしまったので、この姿で何度も転生する事となります
そして魔界へ還ったとしても私は本体を捨ててしまったので、この姿しか在りません!
ボヤいていても仕方ないので、認めろ!
でないと口効かない!と謂われれば……認めるしかないじゃないじゃないですか!」と嘆きながら言う
兵藤は爆笑して「何度聞いても笑えるな!その話!」と言った
レイは兵藤の脛を蹴り上げた
「痛えなレイ!蹴るなよ!」
「でりかちーにゃいと、きられるりゅのよ!」
レイが謂うと兵藤はレイを抱き上げて
「それは済まなかった!」と謝った
で、気になっている事を康太は問い掛けた
「大歳神って魔界へ還ったんだよな?
ならば人の世で何かしたら、魔界へ還れなくならねぇのかよ?」
「あくまでも大歳神は倭の国の豊穣の神だから、それまでは捨ててない!
だが年老いた父が気になるから魔界へ帰化する事を申請して認められた訳だからな
問題はねぇって閻魔は言ってたな!」
「ならば、十二支天も同じ理由で許可されていると謂う訳か?」
「だな、だからレイ、烈を想うならば力を貸せ!
烈を助けてぇならば何一つ隠す事なく話せ!
でねぇと二度と生きて顔は拝めなくなるぜ!」
「………れちゅ………れちゅ………」
と言いレイは泣き出した
榊原は兵藤に「レイは素直な子です!なので烈の命が掛かってて隠し事なんてしませんよ!」と言いレイを奪って抱き締めた
ニブルヘイムは「創世の……」と言いかけて
「それは止めとけ!ニブルヘイム!
それを唱えずとも、手はあるし動ける奴もいる
お前も烈の為を想うならば、んな呪文を唱える暇に話し合おうぜ!」と言った
「こーたん……れちゅ……」
「うしうし!烈は何としてでも助ける
まだ魔界へ還す訳には逝かねぇんだよ!
だからレイ、烈が力を流して軌道を逸らしているならば、その力を一旦遮断しろ!
お前ならばそれが出来るんじゃねぇか?」
康太に言われレイは烈のベッドの横に立つと、烈の手を握り締めて呪文を唱えた
そして烈の額に韻字を切ると、手を握り締めて額を押し付けた
すると烈は目を醒まして、横にいる烈の頭をもう片方の手で撫でた
「レイたん、どうしたにょ?
心配させちゃったのね……ごめんね」と言った
目を醒ました烈に康太と榊原が左右に立つ
「烈、隠し事せずに全部話しやがれ!」
目を座らせた康太が言う
「本当にね、ぶっ倒れないと真実が伝わらないってどうなんでしょうね!
親に隠し事をする子はお尻ペンペンですよ!
全て話しなさい、そしたらペンペンは10回で止めてあげます!」
あくまでもペンペン確定な父の気迫に烈は
「ペンペン……痛いにゃ………」と弱音を吐く
兵藤も「さぁ俺にも話しやがれ!烈!」と謂う
烈は仕方なく宗右衛門を出した
「儂は祖父母が喜ぶなれば、トナミを救って祖父母孝行も出来ると一石二鳥を狙っておったのじゃ
じゃが日程が決まるに連れ、榊原真矢の体に黒い靄の様なモノがチラつき始めたのじゃ!
儂はレイに頼み真矢を浄化して貰った
じゃがその黒い靄の様なモノは取れはせなんた
儂は持てる限りの力を出し切りホロスコープを駆使して調べた
そして星詠みの婆婆にも聞きに行った
そして導き出した答えは、黒い靄は真矢の死の影じゃと星詠みの婆婆は言った
儂は真矢にこの先、何らかの危険があると知らせようかとも考えた
じゃが知らせればショックを受けるだろうと、それは避けた
儂は必死に調べた
どうすれば死の影は取れるのかを………そして導き出たのは、どうやら船旅にあると解った
その時点では日程は決まってはおらなんだ
日程を決めて、延期させたのは一度や二度ではない………予定を延期しても靄は消えず
だから船旅の日程が中々決まらなかったのは、そんな内情があればこそじゃった
延期しても定めが変わらぬのならば、船の軌道を変えるしか無い………そう想い軌道を逸らしておったのじゃよ
それが全てじゃ、もう嘘などついてはおらぬ!」
と宗右衛門は総てを話した
康太は「真矢さんに黒い靄の様なモノが出てたのかよ?
んなのはオレの眼には映らなかったな……」と謂う
烈は「母しゃん 手!」と言い手を差し出した
康太はその手を取った
すると烈の視た榊原真矢の残像が脳裏に映し出された
康太はその映像を榊原と兵藤と視覚を共用して視ていた
榊原真矢の体には常に黒い靄の様なモノがヨモヨモと被さる様にして映し出されていた
宗右衛門は「多分 今回船旅をせずとも、真矢の身に起きている死の影はなくなりはせぬだろう……
と星詠みの婆婆は言った
船に乗らぬならば別の場所で事故か何かに巻き込まれる定めだと……謂われた
ならば何処へ行こうとも、何をしていようとも起きるならば、船旅をさせる事にしたのじゃ
そして航路と海図から弾き出した地点で事故は必ずや起きる
じゃが、それは祖父母の死と、トナミの壊滅的なダメージとなる
それを避けて通る為に軌道を逸らしておったのじゃ………じゃが今世の体は……本当に弱くて絶えられなんだ………済まなかった………じゃが力を貸して欲しい!」と言い深々と頭を下げた
その横でレイも深々と頭を下げていた
兵藤はレイを持ち上げると
「康太と伊織の両親を一度に亡くす事になるのは避けねぇとならねぇ!
レイ、おめぇは何が出来るよ?」と問い掛けた
「私は闇しか祓えませんよ
元々がそんなに力がある神じゃありませんし、だから早々に冥府の地下に押し込められた様なモノですから!」
とニブルヘイムの声でボヤいた
兵藤は笑って「そうそう僻むな、おめぇはおめぇの出来る事で烈を護れ!解ったな!」
レイは頷いた
康太は「宗右衛門、この✘に船が来るのって何日後位か解るか?」と問い掛けた
「1週間半後位じゃと想う
鳴門の渦潮が見えるギリギリの所を船は通る
じゃがその時、渦潮の渦が増えるか?大きくなるか?でギリギリのラインを超えて船を巻き込む
と謂う事故で大勢の人間が死ぬ事になる
多分 鳴門の渦潮を見ぬ航路にしたとしても、別の災厄が待ち構えておる………
リミットは多分、この日この時をピークに死の影は消えて逝くじゃろう……
じゃから何としてでも乗り越えねばならぬのじゃ!
でなくばトナミ海運は終焉を迎え、我等は祖父母を一度に亡くす事になる
それだけは避けさせねばならぬ!」
康太はメラメラと体から焔を撒き散らし
「解った!母ちゃん達を失ってたまるかよ!
そしてトナミの終焉なんて迎えさせるかよ!
烈、力を使うのをやめろ!
体調を整えて、1週間半後に備える!
大歳神も十二支天も手伝ってくれるって謂うからな、悲観するな!
お前の果てにあるのは絶望なんかじゃねぇ!
最高の想い出をプレゼントしたんだろ?
ならば還って来るまで、護り通せば良いだけじゃねぇかよ!」
「母しゃん………」
烈は泣いていた
己の非力に悔しくて、それでも護る為に限界超えても頑張って来たのだった
榊原が優しく我が子を抱き締めた
「烈は頑張りました
だけどこれからは限界超える前に助けを求めなさい!解りましたね?」
「はい!父しゃん………」
レイも泣いていた
兵藤はレイを抱き締め、背中を撫でてやった
だが榊原は約束通りお尻ペンペンを10回、完遂した
頑張りましたね……と優しく抱き締めた後にヒョイと小脇に抱えて、お尻ペンペンを10回ちゃんとしたのだった
有言実行の父の手加減の無さに、烈は泣きながら許しを請うた
その日から烈は約束通り力を使うのを止めた
すると体力が戻って来て、退院もそんなに遠くはない!と謂われた
竜馬は倭の国に還って来て、飛鳥井の家へと還って来た
だが飛鳥井の家は、清隆と玲香が船旅に出たのもあり、社長が会長職をし、副社長が社長職をし、烈が副社長の仕事をする事になり、忙しそうだった
飛鳥井の家にいても烈の顔を見る日はなかった
慎一に「烈に逢いたいんだけど?」と問うが
「烈は今 超絶忙しいので捕まりませんよ?
俺だって烈に中々逢えませんからね!
今月一杯は副社長職に専念するので、捕まりませんよ?」
と謂われた
竜馬はクリストファーが建ててくれたマンションへと移動して、其処で過ごす事にした
何でこうも上手く行かないかな?
自己嫌悪に陥る
烈にラインしても既読にすらならない
飛鳥井の家に顔を出しても烈はいない
そんな日々に竜馬はやる気をなくして、ただ虚無感に囚われて過ごしていた
烈は体力が戻りやっとこさ退院した
退院した烈は廃人バリになっている竜馬を何とかしないと!と、マンションへと向かった
メンバーの誰もいないマンションは閑散として、音もなく静かだった
烈は自分の与えられた部屋へと向かった
部屋に入ると散らかって乱雑した部屋が目に入った
寝室を覗くと竜馬が寝ていた
烈は竜馬に飛び蹴りをかました!
あまりの痛さに竜馬は目を醒ました
すると怒りの形相の烈の顔があり、竜馬は烈を抱き締めて泣いた
烈は竜馬を引っ付けたまま、ヘンリーに電話を掛けた
ワンコールで国際電話なのに出る素早さに烈は苦笑しつつも
「この前のイベントはどうじゃった?」とズバッと問い質した
『烈!竜馬が使い物にならず、完全燃焼出来ずじまいで終わってしまった……』と嘆いた
「この戯け者が!」
と烈の叱責が飛ぶ
『ねぇ烈、どうして連絡すらくれなかったの?
【R&R】は君にとってその程度のモノだったの?』と哀しげに問い掛ける
「済まぬな、儂は今さっきまで入院しておったからな、国際電話なんか掛けてみろ、久遠にそれは痛い点滴を打たれてしまうではないか!」
『え!烈、入院してたの?
僕らは何も聞かされていなかった?
多分……竜馬も知らなかったんでしょ?』
「じゃな、誰にも言うなと申してあるからな!
申し付けてある以上は誰も漏らしはせぬよ!」
『何で?我等はそんなに信用がないの?』
「それは違う、儂が入院しておるなど噂が立てば、チャンスとばかりに騒ぎ立てる輩がおるからな、体力を戻さねばならなかったのじゃよ
それと………祖母に死の影がチラついておったからな、それをどうにかしようと躍起になり、ぶっ倒れたのじゃよ
じゃから他は考えられなかった、ってのもあるのじゃよ!」
『烈の祖父母、船旅に出たと謂う祖父母?』
「そうじゃよ!榊原真矢、伊織の母上に当たる祖母に死の影が取れなんだ……」
『なら今は?どうなったの?』
「今も………取れてはおらぬよ
リミットは1週間半後……じゃからそれまでは必死に悪足掻きして乗り越えるつもりじゃよ!」
『今からメンバーで倭の国へ向かうよ!
そんなリーダーを我等は捨ててはおけないからね!だからさ、烈は腑抜けの竜馬を何とかしてよ
そしたら1週間半後に【R&R】は船上出イベントしようよ!
不発じゃ消化不良だからね!』
「そんな事したら主の命の保証も出来ぬぞ!」
『そんなの関係ないよ!
我等は悪運だけは強い【R&R】だよ!
どんな逆境も乗り越えて来たし、乗り越えて逝くんだよ!
だからさ大丈夫、皆で迎えれば運命だって変わるさ!』
「本当に戯け者じゃな………」
『待っててね烈!』
ヘンリーはそう言い電話を切った
烈は竜馬に「解ったか?」と問い掛けた
「入院してるなんて知らなかった
言ってよ、そう謂う事はさ!」
烈は笑って「りゅーま、腑抜けらと捨てるにょよ!」と発破をかけた
「腑抜けてなんか無いって!」
「なら掃除ね、汚いのよ!」
綺麗好きな烈と一緒にいる時は常に掃除していた竜馬だった
竜馬は部屋の中を片付けて掃除機を掛けた
それが終わると烈は「何か食べに行くにょよ!」と言い竜馬とファミレスへ向かった
軽く食事を取り、飛鳥井建築へと向かう
退院して来ても烈には副社長としての仕事があるのだ
会社へ顔を出すと、社員達は口々に烈に挨拶をした
そして横にいる竜馬に「お久しぶりです竜馬さん!」と声を掛けた
烈は階段で上に上がり各フロアの社員達と挨拶しながら上へと上がる
そして最上階へ上がる為にエレベーターに乗り込んだ
最上階へと着くと宗右衛門の部屋へと入る
すると其処には翼が仕事をしていた
翼は烈の姿を目にすると立ち上がり
「もう大丈夫なんですか?」と心配して声を掛けて来た
「もう大丈びよ!翼、指示通り動いたにょ?」
「はい!後、凛太郎兄弟もお呼びしております!
会議室にお通ししても宜しいですか?」
烈はコクッと頷いた
すると翼は社長と副社長にも会議室へ来て貰える様に連絡を入れた
烈は竜馬と共に会議室へと向かった
会議室へ行くと凛太郎達 飛鳥井五兄弟が来ていた
瑛太と康太と榊原も会議室へと向かうと、会議室にいる面子に唖然となった
宗右衛門は「凛太郎、飛鳥井五兄弟じゃよ!飛鳥井には五つ子は彼らしかおらぬ!では、右から」と紹介を始めた
右から飛鳥井施工で副社長を務める凛太郎
孝太郎、宗太郎、英太郎、遼太郎、と五人を紹介した
宗右衛門は「彼等は当時には珍しく五つ子で、飛鳥井の中では役割を持たせて働かせておる儂の駒である!」と紹介した
瑛太は「今回何故、我等に紹介するのですか?」と疑問を投げ掛けた
康太は五人を知っていた
飛鳥井で働いているのも知っていた
宗右衛門の駒なのも知っていた
「真贋は既に承知であろうが、改めて五人を紹介するのには理由がある!
凛太郎と孝太郎は施工会社へ行き仕事をしておるが、遼太郎、宗太郎、英太郎は飛鳥井建設で仕事をしておる
現場や事務仕事などオールラウンド通用する仕事をやっておるのじゃが、遼太郎、説明するのじゃ!」
と言うと遼太郎が口を開いた
「営業と広報宣伝部のジャミングシステムが破壊されました!
彼等はジャミングが入っている事さえ知らない
だから今一度防犯カメラで確かめたいのです
多分、防犯カメラ、死角を多く取る様に移動させられていますよ?」
と思い掛けない言葉を聞き、瑛太も榊原も唖然としていた
宗右衛門は「この場に五人も呼ぶ必要はなかったけどな、珍しい五つ子故、顔を覚えて貰おうと思ったのじゃ………じゃが同じ顔故、余計解らなくなったような気がするのじゃよ……」と困った顔をして言った
宗右衛門の言葉に瑛太と榊原は笑った
榊原は気を取り直して
「ならば飛鳥井にもスパイが潜んでいると謂うのですか?」
「スパイかどうかは解らぬが、目的があり入り込んだ鼠なのは間違いはない!」
「ならば対策せねばなりませんね
その輩が、あの自立歩行式の盗聴器を放ったのかも知れませんし、今一度徹底的に洗い直して見ます!」と榊原は宣言した
凛太郎と孝太郎は「我等は持ち場に還ります!」と言い会議室を後にした
英太郎は「施工へ行ってもアイツの融通が利かない性格治ってないじゃないですか!宗右衛門」とボヤいた
「謂うでない英太郎!
融通が利かないならば、実践で柔軟にしておる最中じゃからな」
「………無理じゃね?」
「………儂もな、最近無理な気がして来たのじゃよ」
「………宗右衛門、我等が主!
まぁ主が使い分けしてくれてるから文句はないよ!」
「ならば持ち場に戻るがよい!
今後も密なる連絡頼む!」
「了解!」
そう言い、3人も会議室を後にした
宗右衛門は「早急に対処を頼む!」と言った
そして疲れた様にミネラルウォーターを飲み始めた
康太は「しかし何度見ても同じ顔じゃねぇかよ!」とボヤいた
「そーにゃのよ
見分けるにょ大変よぉ〜」とボヤいた
瑛太は「彼等はずっと我が社に?」と問い掛けた
「そーよ、その為にょ駒だからね!」
榊原は「此れから早急に対処をします!」と言った
宗右衛門は「真贋、隠してある防犯カメラも調べられよ!
最上階の中抜きの部屋にモニターがあるから録画はされておるじゃろ!
ダミーの防犯カメラまでは知るまいて!」と嗤った
康太は「了解!それよりおめぇは無理するなよ!
今後の為に体力は温存しておいてくれ!」と謂う
「委細承知した!」と宗右衛門は答えた
烈はジャミングのスイッチを切ると、会議室を後にした
そして宗右衛門の部屋に戻ると竜馬に
「りゅーま、【R&R】でるなら相賀と逢えにゃいか、連絡いれてね!」と言った
竜馬は直ちに相賀に連絡を入れさせた
竜馬はテキパキと相賀にアポを取ると
「来て貰う?それとも我等が出向く?」と問い掛けた
烈は「相賀って事務所移動したにょよね?」と問い掛けると竜馬は確認をした
「移動してるから歩いて出向けるって!」
「ならば来て貰うにょよ!
翼、受付に連絡お願いね!」と指示を出す
翼は部屋を出て秘書課へと出向いて連絡を入れた
竜馬は相賀に来て貰う算段を取り付けた
翼は玄関入り口まで出向き、相賀を連れて行く事にした
暫くすると翼が相賀を連れてやって来た
烈は相賀を滅多と使われない7階へと連れて行った
非常階段から7階へ上がりテラスへ向かう
サンルームばりのテラスに並べられたテーブルに近付き椅子に座った
烈は「悪かったにょね、相賀 呼び出しりして」と謝罪した
相賀は「御用はなんですか?」と問い掛けた
竜馬が「鳴門の渦潮近くに差し掛かる日、我等が船上でプロジェクションマッピングのイベントを開こうと想い連絡を入れたのです!」と説明した
その期間中はまだ撮影クルーも船上にいるから、イベントをするならば、乗客も視聴者も喜ぶだろう!
相賀は「何故突然?」と嬉しい反面、疑問を口にした
宗右衛門は相賀には総てを話した
榊原真矢に死の影が消えなくて、船旅の日程が二転三転変更された事を伝えた
そしてリミットが近付く一番危ないと予想した日に【R&R】のイベントを入れたいのだと伝えた
相賀は言葉もなく…………宗右衛門の言葉を聞いていた
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