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第20話 今を生きる明日を夢見て…❸

相賀は唖然としていたが、一番危険な状態の時に 船上イベントなんかしたら【R&R】も危険なのでは?と気付き 「下手したら貴方達も…………それでもやると申すのですか?」と問い掛けた 宗右衛門は「【R&R】のメンバーは来ると謂えば必ずや、やって来る! そして船上でイベントをするじゃろ! その航路は死の旅路になると解っていても、完全燃焼して死ねるならば逝ってやるさ!と決行する それが【R&R】じゃからな!」と言った ならば、と相賀も覚悟を決めた 「では私も船に乗り込み、それを見届けるとします!我が事務所には既に後継者がいるので困る事はない!」と言った 宗右衛門は「ならば皆で乗り込むとしようぞ! 相賀、撮影クールの方の連絡とトナミへの連絡を頼む!儂は今絶賛副社長業に忙しいのじゃよ!」と相賀に頼んだ 竜馬は「俺が知らない所で入院してたんだし、忙しくて当たり前じゃんかよ!」と拗ねて謂う 「じゃからな竜馬、イベントの不完全燃焼の詫びの為に働くのじゃよ! 最高のステージを我等【R&R】が創らなくしてどうするのじゃ!」と一喝された 竜馬は笑っていた 幸せそうに笑っていた 其処へ康太と榊原が飲み物をトレーに乗せてやって来た 烈は「父しゃん、母しゃん!」と嬉しそうに笑っていた 榊原は皆の前に飲み物を置くと椅子に座り 「我々もその時は船に乗り込み、母さんの死の影を追い祓うつもりです!」と言った 康太も「他にも何名か船に乗り込み、その日に備えるつもりでいる」と伝えた 相賀は「ならば儂はイベントを存分に楽しめますな!」と笑った 相賀には直ぐに取材クルーと連絡を取って貰う事にして、話をして還って貰った 康太は窶れた竜馬を目にして「食ってなかったのかよ?」と問い掛けた 竜馬はバツの悪い顔をして頷いた 「体調を戻しておけよ! 【R&R】が来日して来るならば、その勢いでトナミの仕事までやっつけるつもりだからな! でねぇと烈の壮大な野望が潰えてしまうんだからよぉ!」と謂う 竜馬は「解っています!」と言った 榊原が「久遠先生に診せて点滴打って気合を入れさせますかね?」とサラッと言った 烈は「そーね!ガス欠は困るものね」と謂う 似たもの親子の攻撃に竜馬は「はい、久遠先生に診て貰い体調を整えておきます!」と言った 烈は両親と話が着くと、宗右衛門の部屋へと戻った せっせと忙しそうに仕事する翼に烈は 「ちょっと話、するのね!」と声を掛けた 翼がソファーに座ると宗右衛門が 「仕事には慣れたか?」と問い掛けた 「はい!皆に良くして貰ってもう慣れました」 「翼はこの先も儂の秘書として生きて行くか? 他にしたい事があるのならば、主はもう別の生き方を知ったのじゃから、何処へ出しても恥ずかしくなく生きて行けるじゃろ!」と言った 翼は羽休めさせる為に自分を秘書として据えたのだと、何処かで理解していた 別の人生を生きる その事を体感させる為に宗右衛門の傍へ置いたのだ、そして傷が治ったら旅立たせるつもりでいたのも、何処かで解っていた 翼は笑顔で宗右衛門を見て 「僕は飛鳥井烈の専属秘書ですから! このポジションは誰かに譲ったりは致しません 他の道はもうどうでも良いです! 僕はこうして日々働いて、仕事終わりに仲間と飲みに行ったり、休日に映画に誘われたりして過ごしたいのです! 顔見知りから仲間と呼べる人まで出来ました この先、愛する人が出来るかは解りませんが、そんな未来を夢見て、明日を夢見て生きて行ける自分が愛しいです! なので他は行きません! 今後は真贋と伴侶殿に謂われているので、ビシバシやって行くつもりです!」 と宣言した 烈は「やぶ蛇ね!」と笑った 康太が「烈、防犯カメラを確かめに行くぞ!」と呼びに来ると烈は立ち上がった 「翼、指示した通りにお願いにゃのよ!」 「はい!承知しました!」 出来る秘書然として謂う 烈は竜馬と共に宗右衛門の部屋を出ると、康太が 「翼はおめぇの秘書として遺るんだな!」と問い掛けた 「そーにゃのよ!今後はビシバシ行くって謂うにょよ!」とボヤくと康太は笑った 5階と6階の間に造られた司令室並のTVモニターが並ぶ部屋へと出向き、防犯カメラを確認する すると2箇所防犯カメラの位置が微妙にズラされたカメラがあった 康太はボタンを押して、そのカメラを正常の位置に戻す 殆どの防犯カメラがリモートで位置が直せる最新式のモノだった そしてその防犯カメラの補助として絶対に解らぬ位置にサブカメラを仕込んであり、防犯カメラをズラしている社員を特定した 直ちに【R&R】企業向け調査事務所に調査人物のファイルを添えて転送した 榊原がタブレットを取り出すと、その社員の情報を取り出し、それも添付して送信する 調査を受け入れた暦也からは「了解した!」と返信が入った 康太は「目的は何だろ?」と呟く 宗右衛門は「トナミからの流れ弾じゃなくば良いと儂は想っておる!」とボヤいた ヨニー絡みではかなりの嫌がらせを受けた そしてトドメが戸浪を巻き込んだ暴挙だ 戸浪の従兄弟は未だに裁判中だ そして戸浪がイギリスへ行っている間には解雇劇も在った 逆恨み程厄介で理不尽なモノはないと飛鳥井では源右衛門の死で嫌と謂う程に味合わさせれているのだ 榊原と「逆恨みだったら、恨む相手が違う…… ですが相手が逆恨みで判断が狂ってしまっているならば、目にするモノ総てが憎く感じる事だって有り得ますね? それだと流生とレイが危ないですね!」と不安を口にした 康太は「流生にはSPの他に貴史に頼んで護衛を着ける事にするわ! レイもな、アイツに銃口なんて向けてみろ……槍で串刺しにされる事間違いない でもその槍が何処から飛んできたんだよ?って騒ぎになるからな、SPと護衛を着ける事にするしかねぇ………か……それより、烈、当分レイと共に行動しろよ!」 と、言うことを聞かない子に手を焼きそんな事を言う 烈は「そーね、そーするわね!」と言った モニタールームを出ると烈は慎一にレイと流生が危ない事を伝えた 流生の方は護衛が着くから、レイは烈が帰るまで家から出さないで!と頼んだ 慎一はフラフラ直ぐに動くレイの監視ほど大変なものはないじゃないか……とボヤきつつ約束してくれた その夜、飛鳥井へ還る前に烈は竜馬を飛鳥井記念病院へと連れて行った 翼に電話で予約を入れて貰っておいたから、直ぐに院長の久遠に診察をして貰い、その憔悴しきった顔に即座に点滴になったのは謂うまでもなかった 竜馬はより一層健康に気を付けよう、と心に誓うのだった 翌日から烈は朝桜林の初等科に通い、半日で早退してレイと共にクリストファーが建ててくれたマンションで過ごした 会社へはリモートで翼と連携を取り片付けていた すると矢面に流生が立ってしまう事になる どうするかな? と考えていたが、取り敢えずSPと護衛も着いているから様子を見るしかなかった それと時を同じくして暦也が調査報告を上げて来た そして真矢のタイムリミットは迫っていた 船旅に出ていた真矢達の船が横浜の大桟橋に到着した日には飛鳥井の家族と榊原の家族で出迎えをした 出港までの間に船から降りて、旅の話を聞く 真矢も清四郎も玲香も清隆も久し振りにゆったりと過ごせる時間に満喫して、とても楽しそうに話をする 家族はそんな土産話を楽しそうに聞いていた 一頻り話をしていると出港の銅鑼がシャーンシャーンと鳴らされた すると真矢達は船に乗り込んだ そしてデッキに出ると紙テープを康太や榊原、瑛太や子供達に放り投げた 康太と榊原はそれを受け取り、瑛太や笙は子供達と共にそのテープを手にした 子供達も一本のテープを仲良く手にして、祖父母に手を振った 真矢と清四郎、玲香と清隆は手が千切れんばかりに手を振った 船が岸から離れるけど、紙テープは何とか繋がっていたが、ブチッと切れて海に飲まれて沈んで行った 真矢や玲香は家族の元気な顔を見られて、とても嬉しくて涙が出た 家族は離れていると、その温もりを改めて知る事となるのだった 真矢達を横浜港で見送り一段落はしたが、問題山積でまだまだやらねばならない事は沢山在った そんな頃【R&R】のメンバーは誰にも知られぬ内に来日して来た ひっそりと一般人に紛れ込みチケットを取り今回は目立たぬように来日して来たのだった 烈はその日、母と共に社長室にいた 竜馬とレイも共にいた 暦也から報告書が上がって来たから、今後の対策を話し合っていた 防犯カメラを移動したのは吾妻太一と紺野アキラと謂う社員で、吾妻も紺野も身内にトナミ海運にいて処分を下された者を身内に持つ者達だった 吾妻は「別に殺しを頼まれた訳では無い!ほんの少し防犯カメラを移動してジャミングの機械を破壊してと頼まれただけだし、クビなら別に良いですよ!辞めてやるし」と居直って罪悪感の欠片すら抱いてはいなかった 況してや兄を解雇した流生が悪いとまで言い捨てた 紺野も「弁償して欲しいなら給料から差し引けば良いじゃないですか? どうせあんな機械、高くて五千円位でしょ? 俺の父さんは解雇され裁判まで起こされて苦しんでるんだ! トナミの事なのに首を突っ込んでまでやる事なのかよ?」と文句を言い反省などする気もないみたいだった 自分達はほんの少し会社へ嫌がらせする為に防犯カメラを移動させジャミングを破壊した それは身内が受けた苦しみを解からせる為に、身内に言われたからやった、との事だった ジャミングの機械2箇所で、一箇所200万、2箇所で400万円の返済を求められた 二人は一人200万の返済をする為に、即座に施工会社へ出向となった 施工会社の現場作業員として働かせる その教育指導に飛鳥井孝太郎がなる事となった 当分は寮に入れて生活から仕事全般の監視をする事となった 凛太郎、孝太郎は融通が利かない頑固一徹な性格で、自分に厳しい分相手にも同等の厳しさで接するのだ その孝太郎が一人200万円分は確りと働かせると約束し二人を預かったのだ 泣こうが喚こうが、返済分は働かされる事となる その後、残るが去るかは本人の自由とし、寮費、食費、返済分を引いた残りの僅かなお金で生活する事なるのだ、何よりの罰だと烈は想い処分を下したのだった 凛太郎と孝太郎は喜んで引き受けてくれたから、相当な日々を送る事となるだろう 何だって頑固一徹な二人なのだのだから 何故施工の方に融通が利かない二人を配置したかと言うと、施工の人間は少しだけルーズな奴が多かったってのがあった 建築が王道を逝く建設会社では、施工は刺身のツマ的な存在にしかならない だから適当に来てしまっていたからこそ、厳しい性格の二人をあてがったのだ その詠みは成功して、凛太郎、孝太郎兄弟は施工の顔となっていた だが宗右衛門が目を光らせているから適度なガス抜きや、楽しいリクレーション等もふんだんに盛り込み、社員達を懐柔しているのだった 宗太郎、英太郎、遼太郎の3人は頑固な面も持つが、柔軟な考えとユーモアを兼ね備えていて社員達と軋轢を生む事はなかった 上手く社員達の中に入り込み、観察し宗右衛門に報告する宗右衛門の駒だった 取り敢えず、防犯カメラを移動した社員の制裁を終え、より深く探るように暦也に報告を入れた 一つずつ片付けて逝く最中だった 烈は竜馬と共に不完全燃焼した【R&R】のイベントの完全燃焼すべく打ち合わせとリハーサルに余念がなかった そんな時、桜林の初等科を狙って暴漢二人が警備をナイフで刺して厳重な警備網をバールと鉄パイプで粉砕し強行突破して来る事件が起きた 警備員を刺して返り血で染まった暴漢は迷う事なく学園へ突入して行った 廊下歩く暴漢はズンズンと目的を持って歩いる様だった まるでその足取りは最初から狙いを着けて迷う事なく進んでいるようだった 男は目にした生徒を斬りつけて、逃げ惑う生徒を嗤って狩っていた 血に染まった男は楽しげに嗤い鋭利なナイフを振り回して、生徒達を追い掛けて行くと生徒達はパニックになり泣き叫んて逃げ惑った 逃げ惑う生徒を無差別で刺して、廊下には血が飛び散り、それを目にした生徒達は悲鳴を上がる さながら、その場は地獄の形相をしていた 烈は兄、流生の危険を早退する前に察知して、竜胆と東矢に直ぐに来てくれ!と思念を飛ばした その思念を受け取り、竜胆と東矢は烈の覇道を辿って初等科へと向かう 烈は暴漢の目を避けて、校舎の影に隠れていた 竜胆と東矢が近付いて来ると、二人に 「本当ならば解放の儀をやり、主等の奥深くに眠る式神を呼び起こすつもりじゃった じゃがそれをやる前にお主達の式神を出して、我が兄流生達を何としてでも救って貰わねばならなくなった! でなくば、飛鳥井の果てが狂う!儂が敷いた1000年先の飛鳥井が潰える!」と指示を出したした 東矢は「え?そんなのいるの?」と自分でも知らない事を告げられて躊躇していた 竜胆は自分が持ってる最強と謂えば、思い出し「管狐か?」と問い掛けた 「違う、もっと奥深くに眠る式神じゃよ! 初代竜胆が使っておった、式神じゃ! 解らぬか?竜胆よ!」 竜胆は考え込み記憶を総動員して思い出していた 「時間がないのじゃ! 強制的に現界する!」 と宗右衛門は呪文を唱え始めた 低く脳裏をかき回す様な呪文に竜胆と東矢は頭を抱えて苦しんた だがかなり深くに落とされた感覚の果てに、竜胆は奥深くに眠る記憶が呼び醒まされて行った 「あ!そうだった!」と声を上げた 遥か昔……竜胆には最強の式神がいた だが強過ぎる式神は出る場を持たずに眠らせる事となった 竜胆の記憶の彼方が鮮明に蘇り、意識の中へ流れ込んで来る 東矢も知らぬ感覚が呼び起こされ 「何これ?」とパニックになっていた 「東矢、主はその式神を封印しておった 今 此処で解放するのじゃ!」と印字を切った すると東矢の封印された記憶が蘇って来た 無理矢理一族の者の手により、命と引換えに持たされた式神だった だが強過ぎる式神を恐れて東矢は自分の奥深くに封印したのだった 記憶は蘇り映像を映している様に脳裏に、前世の記憶が鮮明に蘇る すると解放した式神は現界し、確りした姿を保ち現れた 竜胆の後ろには仁王 阿の式神が、東矢の後ろには仁王 吽の式神が、己の意識と同化して立っていた 烈は「さぁ、阿吽の呼吸であの暴漢を殴り倒して流生や兄達を救うのじゃ! 儂は傷付いた者達の救助に向かう! よいな!東矢、竜胆、二人は奇しくも同じ仁王を持つ者なのじゃ! さぁ行って救うがよい!」と謂うと竜胆と東矢は駆け出して行った 烈はその後を追って校舎に入り、傷付いた者達の傍に近寄り、傷の状況を確かめた 皆がパニックになり叫び続けていた 血を流して倒れている生徒や教師は、このまま手当されずにいたら救急隊員が来る頃には失血死になるしかない、助かる命も助からない 宗右衛門は恐れに戦いて呆然と廊下に蹲る教師の頬を叩き 「今直ぐに警察に連絡して、救急車を何台も越させるのじゃ!お主等は生徒を殺す気か!」と怒鳴った 正気に戻った教師は慌てて救急車と警察に電話をして事情を話し、生徒や教師が何人も倒れている事を告げて救急車の要請をした 宗右衛門はパニックになっている生徒達に大声で 「静かにするのじゃ! 騒げば負傷者が助かるのか? 違うならば、ありったけの包帯やガーゼを持って来るのじゃ!手伝える者は今直ぐに傷付いた者の傷口を押さえるのじゃ!」と指示を出した 即座に皆は黙り、動ける者は包帯を掛け集めて持って来て応急処置を手伝った 流した血よりも傷は浅く応急処置をしていく 深く傷付けられた者は、それ以上血を流さぬ様に止血をして処置をして救助される順番を指示してメモ用紙にマジックで番号をふってセロテープで止めさせた 警察と救急隊員が駆け付けて来ると、玄関入り口から応急処置された者が緊急性を要している順に番号を記され、寝かされていた それをやったのは初等科2年の飛鳥井烈だと教師が教える 手際よく応急処置をして救助されるべき順番を記したのだという 救急隊員は怪我の具合を確かめると、その番号順に救助すべきだと解り、人数分の救急車を要請した 要請を受けた救急車はフル回転させ患者を乗せて病院へ搬送して行った そして暴漢を捕まえに出向いた警察は、既に血まみれの暴漢が巨大な金剛ばりの姿をしたモノに捕まえられている光景を見て固まっていた 竜胆と東矢の阿吽の式神により捕まえられた様子を目にして、言葉もなかった 竜胆は呆ける警官に大声で 「此方が無差別で切り付けていた暴漢です! 我等は宗右衛門が指示して暴漢を捕まえろと言ったから、式神を出して捕まえた!」と伝えた 東矢も「我等は兄達に危害が及ばぬ様に式神を出しただけです! でなくば、どれだけの生徒が狙われて無差別に傷付けられる事となったか!」と文句を着けられない様に反論した 警察は「宗右衛門とは?」と問い掛けた すると教師の長瀬が「宗右衛門は、応急処置をしていた子です!」と伝えた パニックになっていた学校は警察が介入してくれた事により、沈静化され即座に保護者へ連絡を入れられた 保護者に事情を説明し、至急生徒を迎えに来る様に連絡を入れた 今回の事件の説明会は後日に行うと知らせ、今は生徒を迎えに来てくれと頼んだ 桜林学園 初等科に暴漢が押し入ったと、連絡を受けた康太と榊原は即座に駆け付けて来て血だらけになった烈を目にして、卒倒しそうになった 「烈!」 康太は我が子の名を呼び近寄った 「母しゃん、ボクは大丈びよ これは手当してりゅ時に着いた血よ」と答えた 烈の傍にいた警官が、救急隊員が到着するまでに全ての生徒の応急処置をしてくれたと伝えた 本当に感心する手際で、皆の応急処置をしてくれ、助かったと謂った 凜も椋が保護者が来たからと警察に連れられてやってくると、榊原は二人の後ろに控える式神に目をやった 榊原は「竜胆と東矢の後ろにいたのは金剛ですか?」と問い掛けた 烈は「偶然にもね、二人の式神は阿吽にゃのよ これはもう運命しかないって、想ったにょよ!」と嗤った 康太は東矢を次代の宗右衛門に据えた理由が、やっと解った 康太は笑って「なら阿吽の呼吸で暴漢捕まえたって理由か?」と謂う 「母しゃん、にゃんか気持ち悪りゅい!」と言い蹲った 長瀬に連れられ翔達5人兄弟が、康太の元へとやって来た その時血だらけで蹲る烈を見て、流生は慌てて烈に駆け寄った 「烈!怪我をしたの?どうしたの?」 泣きそうになり弟を心配する 康太は「血の匂いで気持ちが悪くなったんだよ! 烈をこの場から離しても大丈夫か?」と事情聴取をしていた警官に問い掛けると、警官は 「はい、応急処置された子達も搬送先が決まり運ばれて行きました どうか血を落として、休ませてやって下さい! この子は他の生徒に聞くと最初から怪我した子達の応急処置に当たっていたそうです この子が的確な応急処置をしたお陰で、被害はそこまで酷くはならなかった 事情聴取は後から聞きます! なので今は休ませて上げてください!」と言い警官は離れて行った 榊原は烈を抱き上げると、洗面所に行き烈の手や体に飛び散った血を流した 康太がその間に水を買って来て、手を拭いた烈に渡した 凜と椋は式神を無事体内に収め、烈の傍へとやって来た 康太は怒りに満ち溢れ「やってくれたな!」と怒り狂っていた 無差別殺人をまさか引き起こすとは想わなかった 説明に現れた警官の話によると、4年のクラスと2年のクラスを集中的に狙われたと聞く だがこの日、翔達のクラスは急遽美術教室に変更になり、流生達は美術室にいたから、難を逃れたのだった 「烈、やりやがったな……」と呟いた 暴漢達は迷う事のない足取りで4年の教室を真っ先に狙ってやって来る一人と、2年の教室を狙ってやって来る一人に分かれて来たらしいのだ 犯人は真っ直ぐに確かな足取りで分かれてていたから、内部の事を熟知した者が流した情報で動いていたのだろう、と警官は話した 狙いは烈と流生達と見て妥当だろう 康太は「おめぇは暴漢が来たの何時気付いたのよ?」と烈に問い掛けた 「母しゃんの結界を超えた辺りで気づいて身を隠したにょの! 暴漢から隠れて竜胆と東矢に思念を送ったにょよ 竜胆と東矢の式神を現界させれば、勝算はあったきゃら、二人を呼んだにょよ!」と説明した 烈はめちゃくそ窶れていた 血で気分を悪くしたのかと想っていたが、どうやらそうじゃないと判断すると康太は 「式神の現界に力使ったのか?」と尋ねた 烈は頷いた 「本当にゃら解放の儀をやる筈だったにょよ れも、連携取れにゃかったから………出来にゃかったのよ………らから強制的に力を解放させたにょよ れも、それ力使うきゃら、限界にゃのよ」 と言い烈は意識を手放した 榊原は烈を抱き上げると、長瀬に烈が気絶したから病院に連れて逝く!と伝えて外へ出た 流生達と凜と椋は慎一に連絡して連れ帰って貰う様にするから、慎一が来るまでは頼みますね! と、長瀬に頼み康太と榊原は烈を病院へ連れて行った 病院内は緊急搬送された患者の手当で、騒然としていた 久遠はスタッフに指示を出して患者の手当をしていた そこへ烈を連れた康太と榊原を見て、久遠は近寄って来た 久遠は「運ばれて来た奴等を見て、救急隊員に的確な応急処置してあるな!って言ったら、桜林の学生 飛鳥井烈の応急処置によるモノだと教えてくれた で、その応急処置した奴は気絶してるのかよ?」と問い掛けた 「暴漢を捕まえる為に凜と椋の力を解放したらしくてな、力を使い果たして気持ち悪がっていた………」 と康太が言うと久遠は「んとによぉ、コイツは!」と言い烈を貰い受けると、検査をさせる為にストレッチャーを持って越させて、その上に寝かせて連れて行った 康太と榊原は待合室のソファーにドサッと倒れ込むようにして座った 其処へ桜林の学園長をしている神楽四季がやって来た 康太と榊原を見付けて「烈は?烈のお陰で生徒に死者が出る事なく被害も拡大する事なく済みました………我が校の警備体制を問われる事になるかも知れない事件なので………」と四季は堪えきれずに顔を覆って泣いていた 「警備体制は万全だろ? 不審者が容易には入り込めない筈だった 警備員を殺害せん勢いで入られたら、何処の警備だって太刀打ちなんて出来ねぇよ! しかも相手は流生達のクラスと烈のクラスの見取り図持っていたんだろ? そんなの対処出来る方が難しいって!」 「烈が的確な応急処置をしてくれたお陰で、そこまでの重篤な状態は避けられました 後、パニックになっていた時、教師も生徒もどうしようもない状態だったけど、烈が的確な指示を出したお陰で正常な判断をし、警察と救急に連絡を入れられ、警備員以外は軽症で済みました…… また烈の指示で凜と椋が式神を出して犯人を捕らえてくれたそうで、被害が本当に拡大する事なくて何と礼を言ったら謂いやら………」 「四季、お前の学園側に落ち度はなかった 今は少しでも休むと良い…………」 「ありがとう康太、伊織 後ほど正式にお礼を言いに来ます!」と言い四季は還って行った 病院の周りは騒ぎを聞き付けた報道陣がチラホラと出て来て、被害者に話を聞こうと集まり始めていた 其処へ所轄の警官が唐沢を連れてやって来た 康太は何故内閣情報調査室の唐沢が?と疑問に想い「勝也か?」と問い掛けた すると唐沢は困った顔をして 「俺が総理からの指示で来るのは想像を超える事案が起こった時のみ、っては康太なら知ってるよな?」 「あぁ、だから何故唐沢が来たのか? 意味が解らなかったんだよ!」 「俺が遣わされて来た一番の理由は、凜と椋が式神を出したと謂う事だな そんな情報は世の中に流せないからな、我等が出て来ずにはいられなかったと謂う訳だ! 幾ら飛鳥井が特殊な家柄と言っても、阿吽は流石に……流せないわ! 幸いな事に、飛鳥井烈が凜と椋を遣わした時点で、他の生徒はその場にはいなかったから、そんなにパニックにはならなかったが、なら暴漢は誰が捕まえたんだ?って事になるから、公には出来ない 公には教師が連携して捕まえた、と謂う事にする そして飛鳥井烈が応急処置をして人を救った、それを全面的に出して人の目をそちらに向けたい! だから父兄の了解がいるから聞きに来たってのが一番の理由です!良いですか?」 康太は「あぁそれしかねぇわな! 流石に金剛を式神に持ってるなんて、オレだって知らなかったし、宗右衛門しか知らなかった事だからな」とボヤいた 唐沢は驚いた顔をして 「康太は本当に知らなかったのか?」と問い掛けた 「あぁ、知る由もなかったぜ! 宗右衛門関係はオレでは計り知れねぇんだよ! だから何も見えて来ねぇんだよ!」と答えた 「宗右衛門って、去年、あの記者会見をした子供だろ? 子供なのに嗄れた威厳のある声で話す子だったよな?あの子は何か力を持っているのかい?」 「飛鳥井で宗右衛門と呼べるのは、転生者のみ! 今世の宗右衛門は運命さえ変えちまうからな 詠める訳ねぇんだよ! 流生達を急遽美術室へ移動させたのは、宗右衛門が運命を少しだけ変えたんだよ 運命を変えれば己の体にダメージがモロに来る その上凜と椋の式神も解放して力を使ったからな、事情聴取したいだろうけど、3日は目を醒まさねぇだろうな!」 「何か規格外の子だね………末恐ろしい ならば事情聴取は3日後しか出来ないと謂う訳か………まぁ良い、で、ここからが本題なんだよ 彼等は闇サイトでバイトを引き受けただけの存在で、詳しくは聞けそうもないってのが現実だ! だが、犯人の狙いは飛鳥井翔達と飛鳥井烈 二手に分かれて脇目も触れず探し回っていたと、目撃者からの証言が出てる! 何故狙われてるんだ?あんな子供が!」 「烈が戸浪の従兄に命を狙われて死にそうになった件は知ってるか?」 「此処へ来る前に調べて知った!」 「そして今回も戸浪絡みで来てるんじゃないかと察している! 解雇しちまったしな、逆恨みかもな! でも烈はその場にいなかったのに、何故狙われるかは解らねぇな! 本当に訳が解らねぇってのが実情なんだよ!唐沢! 烈は記者会見を開いた事により化け物扱いされ怪我を負わされた それを皮切りに学校すらまともに通えなかった 今は血反吐吐くリハビリのお陰で足を引きずらなくなったが、戸浪の従兄に首を絞められ烈は足に後遺症が遺ったんだよ! そんな子供にまだ追い打ち掛ける気か?」 康太の刹那の訴えに、唐沢は言葉もなかった だが現実として遣わされた仕事はせねばならなかった 「康太、徹底的に調べ上げると約束する だがこのまま世間には公表は出来ない以上、協力を約束して欲しい………」 「くどいぞ!唐沢! だから好きにしろ!って言ってる!」 「ならば聞かせて欲しい! あの応急処置は子供のするそれではない それを言っても大丈夫なのか?」 「飛鳥井で生きるって事は応急処置は子供の時から叩き込まれるんだよ 建築と謂う世界は何時怪我するか解らないからな 現場の視察をしたりする時に応急処置が出来ねぇとならねぇって事で、オレの子供達にも宗右衛門が叩き込んでいるから、どの子も同じ様に出来るんだよ! オレも源右衛門から子供の時から応急処置は叩き込まれて来たからな、救急隊員位の処置は出来るぜ!」 「それを公表しても、差支えはないか?」 「ねぇだろ?烈が応急処置をしてたのは真実だしな、其処を偽るなら綻びが出て来ちまうからな」 「済まない………多分……貴方達に失礼な事を言っているのだと想います……… ですが、金剛仁王 阿吽が犯人を捕獲して生徒を護った………とは公表は出来んのです! そこの所ご理解をお願いします!」 唐沢は姿勢を正して深々と頭を下げ謝罪した 其処へ久遠がやって来て 「烈はあれは当分は起きんだろ? 個室に入院させて管理する!異存はねぇか?」と言って来た 榊原は「はい、限界超えて力を使いましたから、先生の方で管理して下さるのならば、その方が良いのでお願いします!」と言った 久遠は唐沢に「調書を取りたいならば意識が戻るまで待つが良い! アイツは限界超えて力を遣うと3日は眠り続けて起きねぇからな3日後にでも聞きに来るしかねぇぞ!」とにべもなく言い捨てた 唐沢は「烈君の調書は取りには来ません! その様に此方で手配します!」と言って還って行った 久遠は「んとによぉ、何でこうも大変な事が起きるんだ?」とボヤいた 飛鳥井記念病院が一番桜林学園に近いから生徒達は全員、此処へ運ばれた 入院が必要な生徒は入院させ、通院で済みそうな子は手当を受けて還って行った 康太は「オレも解らねぇんだよ久遠………」と弱音を吐いた そこへ子供達を飛鳥井の家へ連れ帰った慎一が一生、聡一郎と共にやって来た 「康太、烈はどうなんだよ! 凜と椋も気絶して起きねぇから連れて来たんだよ!」と凜と椋を抱っこして連れていた 久遠は凜と椋を目にして「限界超えて力を使ったんだろ?烈の病室に連れて行け! そしたら二人も点滴を打って様子を見てやる!」と言った 取り敢えず康太と榊原は立ち上がり、烈の病室に向かった 凜と椋も点滴を打ち、明日起きなきゃ検査するから点滴が終わったら還って良いぞ!と久遠は言って個室を出て行った 康太はソファーに座り、榊原の肩に凭れ掛かった 一生は憔悴している康太に「どうした?」と声を掛けた 「もぉな、問題山積だかんな……それなのに狙われて命を取られそうになるなんて………」 康太と榊原は目まぐるしく忙しく動いていた 清隆と玲香を船旅に送り出したからだと想っていたが、どうやら違うみたいだ 榊原は一生と聡一郎にこれまでの経緯を話した そしてどうやら流生は突いてはならない藪を突いて善からぬモノを出してしまったらしい……… 一生は牧場の出産ラッシュと重なり、補助的にしか動けなかった事態を悔いた 康太は「あ、レイは?しまったレイは何処だよ!」と慌てた 烈が入院なんて事になったらレイは黙ってはいないだろう…… 聡一郎は流生に電話を掛けた 「そこにレイはいますか?」 『慎一君と幼稚舎へ行ったらレイは泣いていたのよ だから直ぐに捕まえて帰ったから此処にいるのよ! 烈の所へ行くと聞かないから、母さんから連絡が来たら連れて行ってあげる!と宥めてるのよ!』と言った ちゃんとレイを連れて還ってくれた兄達の優しさに聡一郎は安堵して 「レイに変わって下さい!」と言った 『にゃに?』 とひっくひっくと嗚咽混じりに謂うレイに聡一郎は「烈は力を使いすぎたんで入院しただけです! 明日、病室に連れて行って上げますから、烈を休ませてあげましょ?」と言った 『れちゅ……けがちてにゃい?』 「大丈夫です、だからお約束守れますね?」 『まもりゅよ、そーちゃん』 「良い子です!帰りにレイの好きなプリン買って還りますからね!」 『………うん………』 そう言いレイは電話を流生に渡した 『レイは僕達が見てるから!』と約束して流生は電話を切った 聡一郎は「レイは飛鳥井にいました!」と言った 慎一が「幼稚舎を覗いたらレイが泣いて下駄箱の前に座っていたので、流生達が宥めて連れ帰ったんです!すいません、俺も気が動転してて……」と即座に説明出来なかった事を詫びた 凛と椋の点滴が終わり針が抜かれると、聡一郎は康太と榊原に 「今夜は僕が付き添うから、康太と伊織は還って寝なよ、疲れた顔してる……」と言った 康太は「頼めるか?」と謂うと聡一郎は「烈は起きないよね?力使ったなら3日は寝てるから、此処で仕事してるから大丈夫だよ!」と二人を送り出した 慎一は凛を抱き上げ「後で食事を持って来ます!」と言い還って行った 一生は椋を抱き上げて「何かあったら連絡入れろ!」と言い還って行った 静まり返った病室に烈の息だけが微かに聞こえる 聡一郎は烈の頬を撫でて 「君は本当に無理してばかりだね……」と声を掛けた 生き急いでいるみたいに、烈の時間は倍速で進んでいる 人の世も 魔界も 改革と謂う名の篩にかけられて その度に血を流し傷ついているのに……… その歩みを止める事はない 「君と康太は似てるよ 流石親子だよ、君達は………」 素戔鳴尊の魂を受け継いだ存在 炎帝とは縁続きな存在だけあって無茶して無謀に駆けて逝く様は同じだと痛感していた 聡一郎はずっと烈の頭を撫でていた 唐沢が手を回して、桜林学園の暴漢は教師達が連携して捕獲したと報道各社に伝えられた そしてそんな中、己の危険を顧みず、傷付いた者達の応急処置をしていた生徒がいたと流した その生徒の迅速な応急処置のお陰で、死者を出す事なく緊急搬送され手当を受ける事が出来た 救急隊員の話しではプロ並みの応急処置だったと絶賛され、生徒達からはパニックになっている時、宗右衛門の声で生徒を冷静に落ち着かせ手当をする為に包帯を探しに向かう者と手当を手伝う者とに分かれ協力し合う事が出来たと絶賛された その生徒は飛鳥井烈 初等科2年の生徒だと公表された 皆の記憶に新しいあの少年だと認識されて逝く 桜林の警備体制に不備はなかったか? と警察が捜査した結果、警備員を殺したとしても押し入れる状態ではなかった事も伝えられた 無理矢理破壊して強行突破までは想定されてはいなかった以上、警備体制に問題はなかった 報道各社も当日の情景を再現して放送したり、センセーショナルな事件は再発防止に向けられて話し合われた そして烈がどうして応急処置をそこまで出来たのか?との話になると、飛鳥井建設の子供は将来受け継ぐべき会社の為に子供の時から応急処置を叩き込まれて実践で使える様に教育を受けている と紹介され、学校でも応急処置は大切との話にまで発展して行った 桜林学園は初等科全員の父兄を呼び出して保護者説明会を開いた もう報道各社のニュースで学園側に非はないと解っているだけに、異議を唱える保護者はいなかった 桜林学園は破壊された警備システムを更に強化する為に1週間の休校を打ち出した 翌日から1週間、桜林学園は幼稚舎から高等部まで全校休校とされた 竜馬は烈ガ入院したと聞き、病室で目醒めるまで傍にいようと病室に通った レイを連れて烈の病室に行く 烈は3日経った今も起きなかった 凜と椋は翌日には起きて普通の生活を送っていた それだけ今世の宗右衛門の体は弱っていると証明した様なモノだった 船旅に出てる両親には、ニュースで知る事になるだろうから前もって知らせる事にした あんな事件は有ったが、全員無事だから心配無用だから!と伝えた ネット社会の今、下手に隠し立てする方が余計心配させると踏んで、早々に無事を伝え家族全員元気だと写メを送った 烈はレイが抱き着いて起きてる風に見せて兄弟達と写メを撮り送ったのだ 清隆、玲香も真矢、清四郎もその写メで安心していた 桜林学園の警備員二人のうち一人が病院で息を引き取ったと速報でテロップで流された 滅多刺しにされもう一人も瀕死の重傷で今も意識不明だった そこまで刺さねばならない程、抵抗したのだと警察の見解だった 暴漢達は死者が出た事により殺人事件として扱われ、警察の威信にかけて闇サイトの摘発、指示した者の逮捕へ乗り出した 烈は4日目の朝 目を醒ました そして慌てて「ふねにのりゃにゃいと!」と慌てた 自分が何日寝てたのか?解らなくて少しパニックになっていた 竜馬がそんな烈を抱き締めて「落ち着け烈!まだ少し時間あるからな!」と宥めた 「にゃんかねむきゅて、おきれにゃったのにょよ」 呂律もまだ怪しいから竜馬はジュースを取り出すと、紙コップに入れ薄めて烈に渡した 「飲め、烈、そして少し落ち着こう!」 紙コップを受け取り飲み始める 竜馬は康太にラインを入れた 「烈が目を醒ました 起きてパニックになってる」 とジュースを飲んでる烈をパシャと写メを撮り添付した 髪の毛が凄い事になってて、本当に今目が醒めたんだと解る 康太は『直ぐに逝くわ!』と返した 竜馬は烈のベッドの横の椅子に腰掛け 「烈、無茶は止めてくれよ」と言った 「ちかたにゃいのよ こょんきゃいは、よしーょーぉぎゃいの、じたいらったにょのよ」 「予想外の事態って、そんなの予想出来てたら怖いって!」 「かあしゃんにゃらわきったきゃもにゃのよ ぼきゅね みりゃいはみえにゃいきゃらねぇ〜」 「未来なんて視えなくて良い! ずっと俺の傍にいてくれれば良い!」 そう言い竜馬は烈の飲んてるコップをテーブルの上に置くと抱き締めた 「しょれ、ぷろぽーじゅよ、りゅーみゃ」 「違うって!」 「そーにゃの?」 「そうなの!」 康太は近くにいたから直ぐに病室に来て、その光景を目にして、そうなのか?と想った 榊原が目で余計な事は絶対に謂うなよ!そこは突っ込むな!と目で謂うから突っ込むのは止めた   榊原は咳払いして「烈、目が醒めたんですね!」と声を掛けた 烈は笑顔で「とうしゃん!」と言った そして母を目にして「かあしゃん、ねすぎじゃにゃい?らいじょうぶぼきゅ??」と心配して声を掛けた 康太は烈のベッドの横に行き、優しく抱き締めて 「ギリセーフだ!」と言った 「にゃらふなたびね! ぼきゅ、まらろれちゅらめね!」 「少しずつ治るから大丈夫だ!」 「ばぁしゃんたち たちゅけにゃきゃ!」 「おー!忙しいからもう寝てられねぇぞ!烈」 「わかってりゅにょよ!」 「なら退院するか!」 烈はコクッと頷いた 烈の目が醒めたとナースコールを入れると、久遠が病室にやって来て診察して 「退院して良いけど、無茶はするなよ! この前力を使いすぎて入院していたんだ! そんなに経ってないのに今度もだからな! 次は太い点滴の針を注文して来たからな、それを使ってやるからな!」と脅した 烈は「わかっちぇりゅにょよ!しぇんしぇー!」と言った 「うし!なら退院して良し!」 と退院の許可を貰い退院をした その足で飛鳥井建設へ出向き、仕事を片付けた 竜馬も酷使され手伝わされる事となった 何たって最低でも3日は不在にするから、その間は秘書が留守を守り通す事となる その前に出来るだけの仕事を上げて会長職をしている瑛太をヒーヒー謂わせる算段だった 明日の為に今 闘わねばならないのだ 明日を夢見る為には、今を乗り越えねばならないのだ 血反吐を吐いたとしても逝かねばならぬ果てが在る その為に烈と康太と榊原は仕事を上げて上げて上げまくっていた 烈も宗右衛門の仕事を、合間に片付けていた 今の宗右衛門は星詠み、ホロスコープなどを駆使して、顧客の運気を占っていた 建物の運気 その人の運気 逝くべき方角から依頼があれば総てを占う 予約は3年以待ちだった それでも良いと顧客は待っていた それを1日に一個片付け、飛鳥井建設と施工会社を見回る その時に社員に相談を持ちかけられたら、相談に乗りアドバイスをしてやる それが宗右衛門の仕事でも在った そして迎えるタイムリミットの日 康太と榊原、烈とレイと竜馬と【R&R】のメンバー そして相賀とどう謂う訳か?須賀と神野と小鳥遊まで船旅をすると申し出たのだった それに伴い隼人と笙も引き連れて船に乗って来たのだった テレビクルーは大喜びして、船上で楽しく過ごす光景を撮ると言い出した 真矢の死の影は今も真矢を覆っていた

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