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第22話 明日を生きる為にする努力 ❶

トナミ海運の社員達は、変わりつつある現状に戸惑いつつも受け入れて働く覚悟を決めていた 就職難な今現在、トナミ海運の様に福利厚生が確りした会社に再就職は不可能に近い 宗右衛門や竜馬の言葉に重きを置いた者と、そうではない者とに今度は分かれて来るだろう 明日を生きる為の努力をする者と、明日を軽視する者とに分かれ篩にかけられるのだ 戸浪には違反者は幾ら仕事が出来ても、規律が取れなくなるから即刻クビにしろ!と謂われている それをするか?しないか?では明日が変わって来る事になる そうしたら誰からも見向きもされぬ会社となるだろう! と早々に宗右衛門からは謂われているのだ! 戸浪は意識改革をイギリスで受けて、その重要性を学んだ今、宗右衛門の言葉はちゃんと胸に刻まれていた 戸浪も社員達に冷徹な顔を向け 「我が社は幾度も社内にいる虫に腸を食い千切られそうになり、瀕死の状態を迎えました 甘えは捨てなければならない! 甘い事を言っていたら明日へ逝けません! 我が社は社内マニュアルを作成致しました そのマニュアルに通りに今後は違反者は解雇と致します! 幾ら仕事が出来ようが、社内の風紀を守らぬ者など不要! 皆で協力し合って先へと進まねばならぬ時に、会社を軽視する者など、何処の会社へ行こうとも必要とはされません! 部署に戻ったら社内マニュアルを配るので、良く読んでおく様に! 我が社は幾度も飛鳥井に助けられましたが、その協力も今後は期待は出来ません! 今はどの会社も生き残る為に必死な時なのですから!なので皆も必死になって会社を盛り立てて逝って下さい!以上、社内に戻って仕事をして下さい!」と言った 社員達はIDを翳して社内に入って行った そして各部署に戻り仕事を始めた 烈と竜馬はそれを見送り「では頑張って下さい!」と言い引き上げた 戸浪は深々と頭を下げ、二人を見送り社内に戻った 戸浪と田代が社内に入ると自動ドアは閉まった 今後は来客のアポが入ると入り口の自動ドアのロックが解除され来客が入れるようになる その作業をするのは受付嬢となるから、受付嬢は1日早く出勤してその講習を受けて、仕事へ入った 自動ドアの開閉操作を何度も練習し、仕事を始める 受付嬢は責任重大だと今更ながらに身の引き締まる想いだった 戸浪はこんなに大きなテコ入れをして貰ったのだ こんな協力は二度と受けられはしないだろう 気を引き締めて、エレベーターを目指し最上階の社長室を目指した トナミ海運を後にした烈は竜馬に県警本部まで送って貰う様に言った 竜馬は「県警本部?烈何やったのさ?」と心配して問い掛けた 宗右衛門は「桜林に押し入った暴漢の事件は知っておるか?」と竜馬に問い掛けた 「知ってるよ、ニュースに流れたから 俺、眠り続けてる烈の病室に通ったじゃないか」 「その事件の途中説明らしいのじゃよ」 「闇サイトでバイト受けてやったんだっけ? でもそんなに簡単に引き受けてやっちまう現状が怖いな、人のモラルはどうなってるんだよ?って想っちまう!」 「最近はゲーム感覚でやる者も多いと聞く 人の命がどんどん軽視され尊厳もなくなって逝くのが嘆かわしい……… 儂はバイトで人殺しをする時代が来るとは想いもせなんだな……」 幾度も転生し生まれて来たが、今世程に人の命を尊厳を踏み躙る行為が行われるとは……… 時代は変わる 人も変わる だが………人の命の重いさは変わってはならないと、想うのだ そんな想いで烈と竜馬は県警本部へと向かうのだった 県警本部の駐車場に車を停め、中へと入る 中へ入ると受付にいる者に来訪の理由を告げた すると奥から偉そうな人が出て来て、烈と竜馬を部屋へと案内した 案内された部屋の中へ入ると、康太と榊原が既に来て椅子に座っていた 烈の竜馬はその横に座ると、康太が 「全員揃ったからな、話があるなら始めろ!」と言った 男は「私は警部をしている江成と謂と言います!」と軽く自己紹介して、テーブルに桜林学園の現場の写真を並べ始めた そして犯人と思しき男の写真を並べる 烈はその男の写真を見て「あ、犯人!」と言った 警部は「そうです、この者達は闇サイトでバイトを引き受け桜林の襲撃をした者達です!」と言い犯人二人を並べて置いた 宗右衛門は「こっちの男は犯人ではなかろう!」と言った 康太は「え?どう謂う事だよ?それは?」は訝しんだ声を上げた 宗右衛門は嗤って警部に話し掛ける 「不正を警察がやるのか? 我等が何も知らぬから誤魔化せるとでも想っておるのか?」 と焚き付ける様に話す 警察はそれには乗らず相手は子供だと甘く見てか? 「たかが子供が犯人を覚えていたとでも謂うのですか? 虚偽を述べるならば、子供だとて容赦はしませんよ!」と毅然として言う 烈は携帯を取り出すとラインで「出番よ!」と送った 暫くしてドアをノックする音が響き、警部はドアを開けに向かった するとそこには弁護士が立っていた 少し前にコテンパンに痛め付けられた企業弁護士が立っていた 警部は顔色を変え「何故貴方が?」と不思議そうに問う 「儂か?儂はそこのチビッこいのに呼ばれたから来たんだよ!」 そう言いズンズン部屋に入ると弁護士は「よっ!真贋!」と挨拶した 「神威、待機していたのかよ?」と康太は飛鳥井神威を視た すると全容が視えて来て、そこまで用心していたのかよ?と感心した程だった 神威はテーブルの上に並べられた写真を目にして 「コイツは誰よ?」と問い掛けた 康太は「犯人の一人だってさ!」と教える 「コイツは違うだろ? もう一人は合ってるが、コイツは不法就労でオーバーステイしてるだけの存在だろ?」と意図も簡単に言った 警部は顔色を変えて 「虚偽は罪になりますよ!」と言った 神威は「それ自分に言ってるのか?」と返した 特大級のブーメランだと含みを持たせて謂う 榊原と康太は肩をぷるぷる振るわせ笑うのを耐えていた 飛鳥井神威は小脇に挟んでいた書類の封を開けると、中から防犯カメラの映像から拾った画像を写真にして並べた その写真は警備室に押入り警備員を殴ったり刺したり遊んで楽しんでいる写真から顔の解る1枚1枚を並べた そして溝口恋次と謂う男の写真と、桜林に押し入った時の写真と分析に掛けて99.9999999%同一人物と謂う証拠付きで並べた そしてその横に溝口恋次の親の写真を並べた 警部は顔色を無くしていた 神威は「俺が証拠もなしに此処に来るかよ!」と吐き捨てた 康太は兵藤に今現在起こっている事を電話で伝えた 兵藤は黙って話を聞き『少し待ってろ!』と電話を切った! 暫くして警視総監から派遣された警察関係者が続々と県警本部へと入って来た 警視総監から派遣された者達は有無を言わさず、康太達のいる部屋へと入って来て、警部の周りを取り囲んだ そして一番偉い者が康太の前に立つと 「飛鳥井家真贋と宗右衛門殿で間違いありませんね!」と言った 康太は「あぁ、間違い無い!」と答えた 烈も頷いた 派遣された警察関係者中から一番偉そうな男が 「ではお聞かせ下さい!」と謂うと神威が 「ならば儂が話をしよう!」と立ち上がった 一番偉そうな男は神威を見て「貴方がいましたか?あぁ、飛鳥井だからですか?」と問い掛けた 神威は一蹴して嗤った 「儂はそこにいる宗右衛門の顧問弁護士であるからな、儂が呼ばれて来ただけじゃ! 儂が飛鳥井ってだけで仕事などしないのは菅野、お前が一番知ってるんじゃねぇのかよ?」 「だろうな、だから不思議だったんだよ 宗右衛門殿の顧問弁護士でしたか ならばお前は倅の役に立つ為に、ってのが叶った訳だな!」 「そうだ!だから俺は無敵だぜ!菅野!」 「それは怖いから我等は警察と謂う秩序の元に正す約束を守ろう!神威!」 二人は顔見知りなのか? 笑い合い、そして視線を警部に注いだ 「では説明をお願いします!」と謂うと神威は説明を始めた 兵藤が部屋に来ると、説明の真っ只中だった 兵藤は康太の横に座ると黙って説明を聞いていた 菅野は「この資料はそちらが用意したモノなので、我等も公平に捜査をして逝きたいと想います 冤罪は罪もない者に罪を科せる重罪だと我等警察は誰よりも理解せねばならぬ筈 それを署長への忖度でして良い事ではありません 犯人が署長の息子ならば尚更、より慎重に調べて闇サイトで安易にバイトして人を殺した罪を問わねばならない! 此れ等の全容解明には我等が携わります! 貴方達は此処でお帰りなって宜しいです 飛鳥井烈君 君には警察側から表彰状が贈られる事となりました! 君の応急処置には人々が改めて考えさせられました、人を助けて偉かったですね!」 と言われると、烈はフンッとそっぽを向いた 康太達は帰宅して良いと告げられたから、還る事にした 烈は何も謂わず竜馬と立ち上がると 「母しゃん 父しゃん ボク帰るねぇ!」と声を掛けた 「おっ!気を付けて還れよ! ならばオレ等も帰るとするか!」と言い立ち上がった 兵藤も「それでは後は頼みます!」と言い康太と榊原と共に還る事にした 菅野はそれを見送り、部下に再捜査する様に指示を出した! 神威はその資料を菅野に渡して還る事にした 皆が還った後、菅野は警部を別室に連れて行かせて調書を取る事にした 警察の威信に掛けて不正はしてはならないのだ! それが現場で汗水流して捜査している者達への信頼の積み重ねだと想っていた そして何より明日を信じて生きている人々の為に、警察と謂う法を取り締まる我等が存在を、正しき存在だと知ら示しる必要があった 警察署を後にした烈は「神野にょの所へ行くにょね!」と言った 竜馬は「相賀、須賀、神野の事務所が入っている総合事務所へと向かった 近くのコインパーキングに車を停めて事務所へ向かう 1階には総合受付が入り、受付業務をしている社員が烈達を見ると深々と頭を下げた 「何階に御用命ですか?」と受付嬢が問い掛けると烈は「2階の神野にょの所よ!」と告げた 受付嬢は烈が来た事を告げると、神野は「通してくれ!」と言った 受付嬢は「あちらの扉からエレベーターへどうぞ!」と言うと烈と竜馬はセキュリティゲートを通ってエレベーターへと向かった エレベーターのボタンを押すと、そんなに待つ事なくエレベーターのドアが開いた それに乗り2階へ行く 2階でエレベーターが止まると、またセキュリティを通って事務所のドアの前に立つ すると神野が待ち切れずにドアを開けて、烈と竜馬を向かいに来た 「どうしたのよ?烈!」と神野は嬉しそうに問い掛ける 小鳥遊はドア近くで話す神野を押し遣り、烈と竜馬を応接室へと通した ソファーに座ると烈にカロリー低めのジュースと竜馬には珈琲を持って来る様に言った 飲み物を持って来るとテーブルに置き部屋を出ていくと烈は口を開いた 宗右衛門は「主等は鳳城優花里をご存知か?」と突然問い掛けた 神野は「それは誰?」と知らないが、小鳥遊は「ハリウッド女優にまで名を馳せた女優ですね! 近年は全く名を聞きませんが、彼女がどうかしましたか?」と聞く 「彼女は先日セキュリティの為に来日していた鳳城葵が母上じゃよ!」と謂うと小鳥遊はセキュリティに来てくれていた鳳城葵を思い浮かべていた 何処かで見た顔だど想っていたら、ハリウッド女優をしていた鳳城優花里だったのか……と納得した 瓜二つのコピーのような顔に何故気付かなかった? あの日の鳳城葵は作業着を着て、壁をぶっ叩いて壊していたから……… 気を取り直して宗右衛門は「彼女は今イギリスで養成スクールをやっておるのじゃ! 須賀の所の子達も鳳城優花里の所へお願いして鍛え上げて貰ったのじゃよ! 勿論 おっさん臭くなった笙も洗練された輝きを取り戻す為に鍛え上げて貰った で、此処からは相賀も呼ばねばならぬから、神野、相賀を呼ぶのじゃ! 早くしないと宗右衛門の限界来たら話は明日になる!」と少し脅して焚き付けた 小鳥遊は慌てて相賀に連絡を入れた 暫くして相賀が慌てて神野の事務所にやって来た 「烈!学校でのニュースを見たよ! あれから入院していたと聞いた 大丈夫だったのかい?」 と烈に心配して問い掛けた 烈は「大丈びよ!それよりね相賀、お仕事のお話にゃのよ!」と謂うと相賀はソファーに座って姿勢を正した 宗右衛門は小鳥遊に「小鳥遊、相賀に鳳城優花里の話までをしてやるのじゃ!」と謂うと小鳥遊は鳳城優花里の話をした 相賀は瞳を輝かせ「鳳城優花里は昔、儂の事務所の女優じゃった!ハリウッドで活躍するから向こうの事務所へ移ったが、懐かしいなこんな所で優花里の話を聞こうとは!」と言った 宗右衛門は「で、相賀、神野、約束じゃったからな、光る卵を見て鳳城優花里に預けて磨き上げて貰うとしようぞ!」と約束を覚えていて、今その約束を果たしてくれると謂う 相賀は「体は大丈夫なのかい?私は烈の体の方が心配だよ?無理したりしないで下さいね!」と言った 約束を果たして使える人材を育て上げて貰えるのは嬉しい だが、烈は本の少し前に学校に暴漢が入り、応急処置をしていたとかで、無理して入院していたと言うのだ 相賀、須賀、神野はニュースを見て康太に連絡を取った すると烈は入院していると伝えられた ならば直ぐにお見舞いに………と申し出たか、事が事だけに大事にしたくねぇからな、烈の入院は極秘なんだよ 治ったら連絡させるから今はそっとしておいてくれねぇか? と言われて相賀達はお見舞いを控えた だから手放しでは喜べなかった 「心配するでない相賀! 育て上げて欲しい人材を選出して、明日の午後、飛鳥井に書類を持って来るがよい! レイがその子の性格等を視て問題を起こすか? 何処へ入っても使える性格かどうか?選んでくれる故、それをした後にイギリスの鳳城優花里の所へ送り、みっちり鍛え上げて貰う事にする かなり厳しいレッスンの日々になる故、挫折するやも知れぬ 須賀の所の5人は崖っぷちじゃったから、踏ん張り堪えて今の地位を己の手で掴み取った じゃが甘えが抜けぬ者は絶えられぬ世界となる じゃからある程度の書類選考は必要なのじゃよ どうじゃ?儂は約束したから約束を果たす 主等はそれをどう活かすか?決めればよい!」 神野は「チャンスならば即座に掴み取る! それは飛鳥井家真贋の教え故、我等は迷う事なくチャンスを掴み取ります!」と言った 小鳥遊はうんうん!と頷いた 相賀も「我等に与えられたチャンスならば、儂も迷う事なく掴み取らせて貰うよ! 康太は常に人材は宝だと申しておる 儂もこの先 柘植に譲るつもりなので確りとした土台で譲りたく想います! なので此処で踏ん張って果てへと繋げて行きたいのです!」と言った 「ならば、神野、相賀は人選をした後、明日の午後連絡を入れて飛鳥井へ来るが良い! そしたらレイが選んだ者を鳳城優花里に預ける事にする! 因みに隼人も国際大会まで優花里に扱かれておったのじゃよ! だから今 更に花開き船上イベントでは注目集めまくりで仕事も増えておろう?」 神野は「はい!最近は音楽の方でも声を掛けられる様になりました!」と嬉しい悲鳴を伝えた 「ならば儂の話は此処までじゃ! じゃが主等に逢って素通りしたら須賀は拗ねる故、呼ぶがよい!」 宗右衛門が言うと相賀は須賀に連絡を入れた 烈が来てると連絡を入れると直ぐに神野の事務所へとやって来た 「烈!ご無事な姿をこの目で見られて良かったです!」 宗右衛門は笑って「イギリスから残りの5人も還って来たじゃろ?どうじゃ?使える奴になっておろう?」と問い掛けた 須賀は「はい!今までが嘘のように生まれ変わってます! 貴方が此処にいると謂う事は約束を果たされるのですか?」と思い当たる事を口にする 「そうじゃよ!主の所の5人も還って来たからな 相賀の所と神野の所の者をイギリスへ送り出す時が来たのじゃよ! まぁあの扱きに絶えられるかは?本人次第じゃが、須賀の事務所の者は脱落者は0じゃったな 皆 泣きながら血反吐を吐きながらも堪えて堪えて耐え抜いて帰国したのじゃからな!」 相賀と神野は生半可な思いでは送りは出せぬと覚悟を決めた 須賀の事務所の訓練を受けた子はどの子も、宗右衛門が言った分野で活躍している 宗右衛門は「神野、主の事務所に篁がおるじゃろ?篁椎堂!」と問い質した 神野は「はい!おります!」と答えた 「あれはカタにハメすぎじゃ! 殻を破り投げ出さねば本領など発揮はせぬよ!」 それに答えたのは小鳥遊だった 「それは本人が一番理解していて、苦しんでいる所です!」 「硬く拗らせた殻を破って抜け出せてやろう それが配置した母へ対する果てへと繋がる道なのだから、儂はせねばと想っておったのじゃよ!」 神野は「篁は……もう使える役は………」と謂う まるで昔の隼人の様に………役の幅がなく糊代のなさに拍車が掛かり、今では仕事は減る一方だった 烈は立ち上がると「明日までに名簿を揃えて飛鳥井へ来るのじゃよ! その時は是非ともケースでお酒の差し入れを期待しておる!」と笑って竜馬と共に立ち上がった そしてドアを開け立ち去る前に 「主等は明日を生きる努力をせねばならぬ! 明日を生きる為にする努力を……な!」と言い残し事務所を後にした 階段で1階まで下りて、受付嬢に「邪魔をした!」と言い外に出る 受付嬢は深々と頭を下げお見送りをした 相賀と神野は「とんな特訓を受けるのか教えて貰えないかな?」と須賀に頼んだ 須賀は困った顔をして 「彼等はイギリスへ行っていた時の話はしないんです! それが約束だとかで、一切の事を口にはしません なので私が把握している事はないんです イギリスへは送り出しました だけどあの子達が何処で訓練を受けたのかも、知らされていない 私は烈を信じて送り出しただけですから………知らないんですよ!」と言った 相賀は「ならば我等も信じて送り出しかないと謂う事なんですね!」と覚悟を決めて謂う 神野も「食えねぇからなあのジィさんは! でも誰よりも頼りになる康太の息子だ! 我等は明日を生きる為にする努力をせねばならぬ!って事だ!信じて逝くしか道はねぇ!」と覚悟を決めて言った 相賀は「ならば明日までにイギリスに逝かせる為の人選をせねば!」と謂う 須賀は「私で出来る事なら協力しますよ? 我等は切磋琢磨して果てへと逝く存在! なので名簿は3人で決めてレイと宗右衛門にチェックして貰えば良いかと?」と提案した 小鳥遊は「ならば5階の会議室へ行き、名簿を見て各々選出して行くとしますか!」と謂う 神野も「流石小鳥遊!ならば名簿を持って行くとするか!」と言った 相賀は「ならば会議室で!」と言い事務所を出て行った 須賀は「私は先に5階に行ってます!」と言い事務所を出て行った 神野と小鳥遊は手分けして今所属している子の名簿を出して、手にして5階に向かった エレベーターの中で小鳥遊は「前の事務所、やっと借り手が付きました!」と神野に報告した 「烈の好きなスーパー?」と神野は問い質した 小鳥遊は「まだ良く知らないんですよ、康太が決めてくれたので………」と謂う まぁ何にせよ、このビルに蓄えの総てを使ったのだから、貯蓄は必要なのだ 家賃収入があるならば、何でも贅沢は言えないって事なのだ 神野と小鳥遊は5階へ急いだ 名簿を見て売り出したい子を選出して行く 相賀も神野も必死にタレントを見てあれこれと話す! こんな機会は滅多とないし貴重な体験をしたと痛感していた そして翌日、飛鳥井へ持って行く様にして、その日は終わり、皆で食事に出掛け楽しい時間を送った 同じ建物の中に事務所を構えていればこそ、出来る交流だった 翌日の昼過ぎ、神野から連絡が入り、烈は飛鳥井の家の応接間で彼らを待つ事になった レイもその場に立ち会い、そして今回は凛と椋も同席する事になった 飛鳥井の家に相賀、神野、小鳥遊がやって来ると、チビッこいのが二人増えていて驚いていた 宗右衛門は「今回は凛と椋も立ち会いさせる事にした!」と告げた 相賀と神野に異論はなく、頷いていた だが宗右衛門は一応、二人を紹介した 「凛と椋じゃ!今回はこの者達にも視させる事にする! この者達は次代を継ぐべき存在じゃからな力持ちじゃよ!」と言った 神野は「この子達はそんな力が有るのですか?」と問い掛けた 宗右衛門は「竜胆はその人間がどっちに向かっておるか?を視れるのじゃよ 椋は人の悪意を見抜く、その悪意はレイの様にクッキリ闇を纏っているとかではなく、本当に本人が知らぬ内に相当の性格の悪さばりに出ておるのを見抜くのじゃ! そして竜胆も東矢も獣憑きかを視られる唯一の存在じゃからな視て貰うがよい! それたら無用なトラブルは避けられる事となる! そして凛と椋の修行の一環となる故、同席させたのじゃ!」と説明される 神野は「東矢って何年か前に……康太の為に命を落とした子と同じ名前じゃないか……… 悪趣味過ぎやしませんか?宗右衛門……」と言った 宗右衛門は「椋は東矢の転生者故、転生前の名で呼ぶ事もある 凛は竜胆と我等は呼ぶ、それは転生前の名前じゃからだよ 儂は初代斯波宗右衛門として転生した それ故宗右衛門と呼ばれて参った まぁ我等は名前などそんなに重きを置いてなどいない、まぁ宗右衛門と謂う名は偉大で大きくなってしまったがな…………」と告げた 神野は「東矢………嘘……そうか、転生したんだな」と納得して言った 小鳥遊はそんな簡単な話でないと察して、書類を烈の前に並べた 相賀もそれに習って選出した写真付きのタレントの詳細や経歴が書かれたファイルを並べた 椋、凛、レイの順に写真付きのタレントの経歴矢詳細が書かれたファイルを見て回り、その結果を宗右衛門に知らせる と謂う事になる 椋は眼の前のファイルを丁寧に見て、無難なモノを通した 目にしただけで気持ち悪くなるモノは即座に凛に 「これ気持ち悪い!」と伝えていた レイはそのファイルを手にして「はらきゅろいのにょよ!」とボヤいた 烈はそれを見て「そーね、相当性格悪いにょね!」と言った 相賀は「え?その子は優しい天使のような子だと評判の子ですよ?」と絶対に選ばれると想い入れた1枚だったのだ 宗右衛門は呆れた顔をして 「この者に泣かされておるのは一人や二人ではないぞ? この者を排除した方が事務所は上手くいくかも知れぬ、それ程に外では優しく天使みたいだと謂わせ、本心は自分より目立つ奴は徹底的にいびり倒す!儂が最も嫌いで………思い出したくもない輩ではあるな………」と吐き捨てた 相賀は宗右衛門の言葉を聞き入れ  「ならばこの子は解雇致します!」と申し出た 「それは主の目で確かめてからにした方がよい 儂が言ったとしても、本人が見ておらねば、あの子は残しておいた方が……とか想いそうじゃからな じゃからメイク室にてもカメラを仕込んで見てみるのも手じゃろうて!」と言った 相賀はこの目で確かめようと心に決めた 凛と椋は確実に人を視て選出してレイに回す レイも着実にその人の闇の部分を視て選別をして行く! 全員を見るまでに4時間を要した 昼過ぎに始まったそれは、康太と榊原が帰宅して来る時間となり、応接間に顔を出した康太は相賀と神野の姿を見て約束を守ってやるんだ、と納得した ある程度選出が終わり、選出した者を相賀と神野にファイルを渡す 二人は手渡されたファイルを見て、通るであろう!と見通しを付けた者は一人も入ってはいなかった 宗右衛門は「何故、この者達が選ばれたのか? それが解るのはイギリスで血反吐を吐く訓練を受けて帰国した後に解る事となる 後、この第一陣に篁を入れておくかよい! 篁は別枠で少し血反吐を吐いて貰う事となる! 篁が行くのは訓練所ではない、ヨニー©イギリスの本社である! 彼はヨニー©イギリスで仕事をして貰う そこで歪んだ性根を叩き直した後に訓練所へと送る!まぁその後は己次第故、一度篁に合わせるがよい!」と今後の予定を口にした 神野は「ならば貴方の都合の良い日にご連絡下さい、さすれば篁を連れて行きます!」と約束した その夜は神野と相賀の差し入れ、ビールのケースを開けて皆で宴会へ突入させた 選出した子達は一ヶ月後 イギリスに向けて旅立つ事となる! その間、家族へ連絡したり携帯を海外でも使えるようにするとか?解約するとか?して準備する様に告げた そして準備するならばTシャツと短パンかトレーニングパンツ以外は必要ない!と告げた 毎日がレッスンを受けるのだ、他の服など着る暇もない!と告げた 相賀と神野は了承した! 相賀と神野はイギリスへ旅立つ為の猶予は一ヶ月と謂う事で、忙しく動いていた その頃烈は、学校を昼で早退し帰るとケント・マクガイヤーに送られてクリストファーが建ててくれたマンションへと向かった 【R&R】のメンバー達はリビングで皆それぞれ好きな様に過ごしていた だかフレディ・ボライトだけが、その場にいなかった 烈が「フレディは?」と問い掛けると、ヘンリーが「時期的に……あの時期に突入した出るか……」と言い淀み言った ダニエル・ジョーズは「仕方ないよ………僕だって気を抜けば………想いに囚われてしまうんだから、フレディならば尚更だよ!」と言った 「………ならばイベントじゃな!」と言った ダニエルは驚いた顔で烈を見た 「今はそっと…………」 「儂は飛鳥井に転生して、その転生総てで生涯独身で過ごした、そんな話は聞いた事は有るであろう?」 「………」 「愛する人を亡くした、愛する人を失った そして愛する子も……失った そんな想いならば儂は誰よりも強い………… 主は愛する人を目の前で日々いたぶられ弱っていくのを姿を、その目で見させられた事はなかろう 儂は無力じゃったから……ただ見てるしか出来なかった……… 愛していたのに護れなかった 愛していたのに黙って……奪われるしかなかった 愛していたのに、日々弱り 愛していたのに……己の復讐しか考えられなくなり………… 愛していたのに………幸せにしてやれなかった 愛していたのに………手放してやる事こそが………最大の幸せだと手放した そんな儂の思いは主等には解るまい……… 炎帝は儂に愛しているならば、生まれ変わって妻や子を愛するが良い……と言ってくれた じゃが儂は家の為に生きると決めて愛する人を手放した 臆病な儂は人を愛するのが怖いのかも知れぬ 愛する人しか要らぬ 愛する人だけいればいい……そう思っていたが… 何も出来ぬ臆病者じゃから………手放した 長らく生きる儂は笑う事さえ妻に対する冒涜だと想い、常に罪悪感を覚えた 儂は幸せなってはならぬ……… 愛する人を手放した儂が幸せになる資格などない そう想い過ごして参った……… 贖罪の日々は儂の何もかも奪った 奪われた儂はそれこそが相応しいと想っておった そして儂は何度も何度も転生を繰り返した じゃが今は贖罪の想いなどない 愛した人は輪廻の道を辿り全く違う人生を送り、幸わせに生きているのだから… 儂は悔やんでも想っても報われぬ事は誰よりも解っておる じゃからイベントをするのじゃ! イベントのタイトルを【誄歌】として想いの総てを捧げて愛した人の想い讃え昇華するのじゃ 儂もそれで四半世紀続けた想いに一区切りを着けるとしょうぞ! 四半世紀想い続ければ………そんな想いも昇華しよう 儂も新しい一歩を踏み出さねば………と想っておるのか また誰かを愛する………とかそんな事は考てはおらぬが、己の人生を己の為に生きると決めている まぁ直ぐではない考えておいてくれ! 断ってもよいし、各々考える時間を持つとしようぞ! 主等はイギリスへ還るがよい! 少し距離と時間を置いて今こそ互いを見直そうぞ!」 そう言い烈はマンションを出て行った 竜馬は動く事すら出来なくて、烈を黙って見送ってしまった 竜馬は「明日を生きる為に努力をする…………ってこんな意味だったのか?」と呟いた ダニエルも宗右衛門の独白があまりにも衝撃的過ぎて………言葉もなかった メンバーは誰に言われるでもなくリビングに集まって来ていた フレディも烈が来てると聞きリビングのドアを開けて………入ろうとして全部を聞いてしまった 愛する人を亡くした 愛する人は元気で何時も笑顔で笑っている………そんな女性だった バリバリ仕事をして、それなりに役職も着いて責任ある仕事をしていた そんな時……彼女が倒れた 入院した時には手の施しようもない程に癌が進んでいて手遅れだと謂われた フレディは彼女を亡くして寝る事が怖くなった その分仕事して建築士として世界中に名を馳せた ………か、心は今も血を流し傷付いていた 荒れに荒れたフレディを【R&R】に誘ったのはダニエルだった 同じ傷を持つフレディを放ってはおけず、ついお節介してしまった 元々は大学で見かける程度の存在だった そんな彼を目にしたのはクラブで荒れに荒れた姿だった 色々と心の傷を抱えた者同士が集まり、好きな事をしようと集まったのが【R&R】だった 天才と謂われ、光の魔術師とまで異名を持つ竜馬の元へ集まったメンバーだった 適当にやって趣味として楽しんで来た それが竜馬の知り合いの子供が、練習をよく見に来るようになって、ある日、あまりにも焦れったくて叱り付けメンバーの案を上手く生かして各々の意見を上手く取り入れ生かして映像にしてくれる様に導いてくれるようになった そくして【R&R】として活動して行ける様になった イベントをしている時は総てを忘れられた 楽しくて全く違う世界を自分たちの手で作れるのだと想うと、のめり込む様に活動に精を出した そして何時しか、竜馬の知り合いの子はリーダーとなり、皆に活動の場を与えてくれた 何の悩みもない子供だと思ってい 家は特殊だと何となく解る 子供なのに大人の声で話す烈を怖いとか気持ち悪いとかは想った事は一度もない    我らがリーダーだと思って皆が接している 信頼もあるし、リーダーの言葉は絶対だと信用している だから宗右衛門の言葉が痛烈に心に刺さった 子供だと想っていたのに………… 誰よりも傷つき 誰よりも藻掻き苦しんていたなんて……… ダニエルも過去に愛する人を失った ダニエルの場合、家柄が釣り合わず引き裂かれたのだが……… 彼女は親の言いなりになり他の人の妻になり…………二度と手に入らぬ人となった だから宗右衛門の言葉が胸に響いて痛かった ダニエルは胸を押さえて蹲り………泣いた 他のメンバーも言葉もなく………そんなメンバーを見守り、宗右衛門の言葉を胸に抱いていた その後【R&R】のメンバーはイギリスへ飛び立った 竜馬は烈にその事を報告した だが返信は返っては来なかった 竜馬は置いてきぼりにされたのだと想った……… だが烈は突然竜馬の今住んでる家にやって来た インターフォンが鳴り出てみると、烈で竜馬は慌てて玄関を開けた すると烈は家には入ろうとせず 「りゅーま、これからこの世でない所へ行くにょよ!」と突然そんな事を言うから竜馬は驚いた 「え?この世でない所なら、俺死んじゃわない?」 「大丈びよ!気にすんにゃ!」 気にするって! 絶対に気にするって! 烈は悲しげな顔をして 「にゃら、りゅーまとは 暫くお別れね!」と言われたら何処だって着いて行く気になる! 「行くって!烈!」 「にゃら行くにょよ!りゅーま!」 楽しげに言われて、竜馬は諦めた 何処へだって烈と一緒なら逝けると想っていた 「にゃら、行くのよ!りゅーま!」 「え?何処へ?」 「飛鳥井の菩提寺よ!」 「解った!支度するから少し待って!」 竜馬は慌てて支度して車の鍵を手にして、烈と家を出た そして地下駐車場まで下りて車に乗り込むと、烈と共に菩提寺まで向かった 菩提寺の駐車場に車を停めると、竜馬と共にズンズン歩き出す 菩提寺の住職の城之内が「準備は出来てるぞ!」と声を掛けると、烈は「ありがとうにゃのね!」と礼を言いズンズン歩いて行き、足を止めるとそこは試練の間の前だった 烈は竜馬の手を取ると、試練の間に一緒に入り込み、真っ暗の世界に突入した グラグラと足元が覚束なくなり………立っていられなくなる まるで今の【R&R】のメンバーの様に………何処へ向かうのか? ちゃんと自分の足で立っていられるのか? 解らなくなり不安で仕方なくなる 竜馬は烈に手を伸ばした 烈は竜馬の手を摑んで、強く握り返した それだけで安心出来た それだけで心は一人じゃないんだと安堵する どれだけそうしてたのか? 解らない だけど突然視界が開け、眼の前に何もない荒野が広がった そしてプカプカ宙を浮く八仙が姿を現した 「待っでおった聖神 頼まれておった馬、届いておるぞよ!」 と謂れ烈は「ありがとう八仙!」と礼を言った すると八仙はふぉほはほと笑い屋敷の中へ入って行った 烈は「竜馬、馬に乗れたよね?」と問い掛けると 竜馬は「うん、乗れる、父さんと良く康太の牧場の馬に乗せて貰っていたから!」と答えた 烈は指差し 「あれに、乗るにょよ!」と簡単に言った 指の先には馬?なのか?真っ白な馬が、烈のアルくんと共に並んで草を食べていた 烈が「アルくん!」と声掛けると馬は 「久しぶり、早く乗れよ!」と喋った 馬が………喋った 竜馬はそれだけで気絶しそうだった 竜馬は「アルパカ?」と烈に聞く するのアルくんは「失礼なヤツだな!俺は天駆ける馬だぜ!」とボヤいた 白い馬は「お前が飼い主になるんだろ?ほらほら、俺に名前をつけやがれ!」と言った 竜馬は「え?名前?アレキサンダーのアレク?」と頭に浮かぶ名を口にした 馬は「まぁそれで許してやる!さぁ乗れよ!」と鼻で竜馬を突っ突いた 烈はアルくんに乗ると、竜馬とアレクに乗った 竜馬はアレクと共に烈の後を走って行く 「烈、此処は何処?」 「竜馬、一度来てるよね?」 星詠みの婆婆に最初に逢いに行った時、一生と共に竜馬も一度来た事があった 「あれは、あのプカプカ浮いてる御人の家だったからさ」 「これから魔界に行くのよ! 竜馬にはやって貰いたい事があるにょよ!」 「俺にやって貰いたい事?」 「そーよ!竜馬飛ぶわよ! 落ちないようにアレクの手綱持ってるのよ!」 そう言い烈はアルくんと空へと飛んだ 竜馬は「アレクは飛べるの?」と馬と話すのも何だかな………と想いつつも問い掛けた アレクは「俺も天駆ける馬だからな!」と言い空へと高く飛び上がった そして大きな羽根を出して気流に乗り飛んでいた 烈のアルくんはパタパタ小さな羽根で飛んでいた 「あれ、本当に馬?」と思わず呟く アレクは「言ってやるな、アルくんは農地も耕す力強い馬でもあるんだ! 空だって飛べるだぞ!だからもう言うなよ!」と執り成して言う 竜馬は「解った、もう謂わない!」と約束した 大分空を飛び荒れ地を抜けると、そこは緑が生い茂った世界が急に飛び込んで来た 烈はその緑の生い茂った森を抜けて田畑が作られている広大な敷地に下りた 烈はアルくんから下りると飛び交う妖精と楽しげに話をしていた そして小さな可愛い妖精と話をしていた 烈は「クロス、竜馬よ!」と竜馬を紹介した クロスは小さな羽根をパタパタさせ竜馬の肩に飛び乗り「クロスです!宜しく竜馬!」と自己紹介した 竜馬は「竜馬です!宜しく」とご挨拶をした 「クロス、新作の出来栄えはどう?」 「苦戦してる………何かが足らないのね」 「ならそれ持って行って、じぃさんの所で何が足らにゃいか考えてみりゅのよ!」 と謂うとクロスはパタパタ飛んで小さな籠に新作を入れて烈に渡した 「クロス!」と烈が言うと内緒話なのかヒソヒソゴニョゴニョ話をして クロスは驚いた様に「え!本当に?」と問い掛けた 「本当なのよ!待っててね!」 「はい!嬉しいです!」と言った 烈はアルくんに乗ると、竜馬がアレクに乗るのを待って走り出した 竜馬はアレクに乗るとアルくんの後を着いて飛んだ 農地を抜けて川沿いに天を駆けて行く すると一際目立つお屋敷が現れ、烈はその屋敷の傍に下りた 厩舎に馬を止めて、新しい草を入れてやる 竜馬もアルくんの横にアレクを止めると、烈が新しい草を入れてやった 「アレク、竜馬はどうだった?」 「気に入った、俺を労る乗り方をしてくれるからな!」 「それは良かったにょよ!」 とアレクの頭を撫でてから、屋敷の中庭へと回る するとそこには…………烈の顧問弁護士の飛鳥井神威と良く似た存在が縁側に座っていた 烈は「じぃさん!とうしゃん!」と名を呼び走る 竜馬もその後を追い掛けた 素戔嗚尊は竜馬を目にして「この子は?」と問い掛けた すると大歳神が「烈の友人じゃよ!来世は魔界へ来られる故、閻魔にその前に魔界へ来られないか?話をしておったのじゃよ! そして許可が下りた故、この度魔界へお連れした次第じゃ! 滞在中はこの屋敷で生活する故、親父殿良しなに頼む!」と紹介してやった 素戔嗚尊は目尻を下げて「聖神の友人か、それは宜しく頼む、儂は素戔嗚尊と申す!」と自己紹介された 素戔嗚尊って古事記とかで聞く人? 竜馬はパニックになりそうだった 大歳神は立ち上がり竜馬の肩をポンポンと叩くと縁側に座らせた 「儂は倭の国を守護しておる豊穣の神 大歳神である!烈………嫌、聖神の父親じゃよ!」と自己紹介した 良く見れば3人とも似たような容姿をしていた 親子だよ!祖父だよ!孫だよ!と謂われれば、成程!と納得してしまえる程に似ていた アルくんが厩舎から出て来ると「忘れ物してるぞ!」と背中に括り付けた籠を早く取れ!とばかりに催促した 大歳神はアルくんの背の籠を取ると、アルくんを撫で撫でしてやった アルくんは満足して厩舎に還って行った 素戔嗚尊は「それは新作かえ?」と問い掛けた 「そーにゃのよ!れもね、クロスが苦戦してるにょよ!」と縁側に持って行く 「それよりじぃさん、作ってくれた?」 「おぉ!かなり試行錯誤して倅も協力してくれたから、何とか試作品は出来たのじゃよ!」 素戔嗚尊は立ち上がると部屋に入り、頼んでいたモノを手にして戻って来た そしてそれを烈に渡した 烈はそれを竜馬に渡した 「弾くのよりゅーま!」 それを渡されて竜馬は驚いた顔をした 「え?俺?」 「当たり前にゃのよ! それは、りゅーまの為のモノにゃのよ!」 竜馬はそれを手にしてコードを確かめる様にポロンポロンと弦を弾いた 宗右衛門は「此処は魔界と謂う所じゃよ! 魔界には人の世に在る様なモノは何一つない! 文明の利器も娯楽も何一つない世界なのじゃよ!」と説明した 竜馬は「このギター何もない癖に良く出来てるよ!音も悪くない、けどこの弦は戴けないな もう少し細くならないのか?」と弦を爪弾き言う 「にゃらりゅーまが弦を作るにょよ!」 「え?俺が?」 「とうしゃん 手伝ってくれるし」 烈が言うと大歳神は「あぁ、良いぞ!儂が手伝ってやるとするかのぉ〜!」と言った 素戔嗚尊は奥から木が草か解らない植物を持って来ると「これでは出来ぬのか?錦糸とかじゃなくば無理か?」と難しい顔をして謂う 素戔嗚尊は器用にその草か木か解らぬ植物から繊維を取り出しナイフみたいなので削いで行った 「これは大笹の木の葉っぱじゃよ 此れの他なれば……」 と奥へ行き、目が飛び出る程の大きな繭を持って来た 「これは天蚕虫の卵繭である 我等はこれを外の畑で育て上げて卵繭を手に入れ紡いで服とかに作り上げておる!」 と言い、一本出てる所から器用に繊維を取り出した 竜馬はその糸を手にして爪弾き確かめる 「こっちの方がしっくり来ますね でも此れだけだと軟過ぎるから、何か細工をしないと!」 竜馬が言うと大歳神は「蝋か?蜜か?合わせて蜜蝋か?」と言った 「それも試行錯誤ですね!」と言いやる気満々で作業に取り掛かろうとする 素戔嗚尊は「まぁ待て!」と言い何かが足らないイチゴをデカくした様なフルーツを取り出した 一人一粒配り試食をする  大歳神は「やっぱやらなきゃ駄目?」と謂うと素戔嗚尊が「当たり前じゃ!」と言った 4人仲良く何かが足らないフルーツを試食する 素戔嗚尊は「此れは何もかもが旅に出ておるぞ!」とあまりの苦さに謂う 大歳神も「旅に出たの連れ戻せ!」とボヤき水を取りに行き皆に配った 慌ててそれを飲む 竜馬も「何これ?」と理由の分からないフルーツに疑問を口にした 宗右衛門は「これは試作品のフルーツじゃ! 魔界は何もない世界じゃった、それ故に常に食べ物は枯渇しておったのじゃよ 獣は狩られ過ぎて絶滅寸前で、雑草さえ食い尽くされ魔界は存続の危機にあった それを是正したのが炎帝じゃよ! 炎帝は通年通して食べられる、物凄い速い速度で成る野菜を手に入れ魔界で広めた 儂はそれよりも品種の幅を広げて皆が楽しめる食をこの魔界で成す為に日々野菜やフルーツ等の品種改良や新作を生み出しておるのじゃよ! で、時々、甘さも味も旅に出たいモノが出来てしまうのじゃ! まぁそれも仕方ない事なのじゃ、魔界には元になるべきモノがないのだから、総てが最初から作らねばならぬのじゃよ クロスと謂う妖精と雑草から食べ物を量産出来ないか工夫して作り始めたのがキッカケじゃった 妖精が集めてくる食物を食べられるように種を取り品種改良して育てる 甘くなるまで掛け合わせして変えていく 気の長くなる作業をクロスとしておる最中なのじゃよ!我が父と祖父はそれを手伝ってくれておるのじゃよ!」と竜馬にでも解る様に話してくれた 大歳神も素戔嗚尊もうんうん!と頷いていた

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