23 / 100
第23話 明日を生きる為にする努力 ❷
竜馬は言葉もなかった
宗右衛門は「儂はな竜馬、魔界の者に音楽なるモノを聞かせてやりたいのじゃよ!
北欧の地には吟遊詩人なるモノが歌を聞かせておるらしい
ならば亜細亜圏の我等だとて音楽なるモノを取り入れたとしても良いではないか!と閻魔に掛け合ったのじゃよ!
そして何とか閻魔殿を納得させて竜馬を連れて参った、と謂う訳じゃよ!」と説明した
竜馬は覚悟を決めて「俺が呼ばれた理由ってのは皆に音楽を聞かせれば良いって訳なんだな!
ならば、俺は俺がすべき事をやるだけだ!
俺等のいる場所と同じ事をするだけの事だ!
俺に出来ない事はないんだろ?烈!」と確かめる様に問い質す
烈は「そーよ!りゅーまなら出来るのよ!」と言った
【R&R】がまだカタを成してなかった頃
竜馬は何度も何度もプロジェクションマッピングを諦めようか?と想った事があった
そのたびに烈が「りゅーまなら出来るのよ!」と言ってくれ背中を押してくれたから、歩みを止める事なく歩いて来れたのだ
今 改めて当時の事を想う
趣味だから、と口癖のメンバーと趣味を楽しむ
と自分を慰め、カタチに出来ない日は悔しくて烈に当たり散らした事もあった
悔しくて泣いた日も烈は横にいて、蹴り飛ばしてくれた
甘やかして、慰めて、蹴り飛ばす
出来ぬ事は仕方ないのじゃ、竜馬
ならば出来る様に踏ん張るか、スッパリ諦めるか?
二択しかない
どうするのじゃ?竜馬
そう迫られて「諦めたくなんかない!」と叫んだ日、竜馬は泣いた
悔しくも悲しくもない、涙だった
唯、唯、意地で歯を食いしばり、泣いたのだ
そんな日の事、何で忘れてたのかな?
ふとそんな事を想う
だが今は魔界の皆に音楽を聞かせる為に、試行錯誤をするのだ!
大歳神も素戔嗚尊も傍にいて、竜馬の想いを手助けしてくれるのだ!
望む音が手に入らない筈などないのだ!
それがこんなにもどかしい事だったんだって想う
竜馬は必死になり弦を探して、試行錯誤を繰り返していた
烈は「何が足らにゃいのかな?」と旅に出たフルーツの味を何と掛け合わせようか?と考えていた
そこへ兵藤貴史事、嫌魔界では朱雀がひょっこりと素戔嗚尊の庭に顔を出した
「烈来てるんだって?」と閻魔の邸宅で使用人が話してるのを聞いてやって来たのだった
「あ、兵藤きゅん!」
「おっ!烈、また旅に出たフルーツの掛け合わせを考えてるのか?」
「そーにゃのよ!」
「ならさ、ミネルヴァの奥深くに伝説と呼ばれた甘い甘い果物があるんだとよ!
それの花粉を取って来て受粉したらどうよ?」
「…………それ、めちゃくそ大変よ?」
「まあミネルヴァの森って富士の樹海ばりの険しさなんだよな?」
「そーにゃのよ!れもクロスに聞いて妖精達はかなり奥深く行ってるから聞いてみりゅね!」
「で、あんで竜馬がいるのよ?
よくもまぁ閻魔が許可したな………」
「りゅーまは定めを持って生まれたからねぇ
来世は魔界に来るのは許可されるし、条件出したら飲んでくれたにょよ!」
「条件って?」
「それはお楽しみにゃのよ!」
素戔嗚尊は「朱雀、飯は食ったのか?
まだならば、竜馬と烈も食べる故、主も食べるがよい!」と誘う
朱雀は「おっ!それではお邪魔します!」と玄関に回り靴を脱いで家に上がった
ご飯を食べる時になって竜馬はやっとその場に兵藤がいるのに気付き
「あれ?何で貴史か?」と不思議そうに聞いた
「俺か?俺は朱雀と謂う神だから魔界にいても不思議じゃねぇんだよ!
そう謂う烈は聖神と謂う神だぜ!
魔界にいるのは殆どが神か鬼か、それか役務をすべき存在か?しか出入り出来ねぇ世界なんだぜ!」と教えてやる
竜馬は言葉を失った
宗右衛門は「竜馬、弦は出来たのかえ?」と問い掛けた
竜馬は現実に引き戻され「難しいよ、全く訳の分からない素材だからな!」とボヤいた
朱雀は「弦?ギターか何かの弦を作ってるのかよ?ならば大鯰のヒゲなんてどうよ?
あれは張りもあるし、弦にするならば最適だろ?
だが捕獲が難しいのが難点だけどな!」とボヤく
素戔嗚尊と大歳神は瞳をキラーンと輝かせ
「ならば俺等が捕りに逝くしかあるまいて!
父者よ!儂らの出番じゃよ!」と言った
素戔嗚尊も「おぉ!我が倅よ!やっと本領発揮出来る時が参ったのじゃな!」と腕捲くりをして懐から襷を出してクルクルっと結わえて謂う
素戔嗚尊は立ち上がると大きな鑓を抱えて
大歳神には大きな銛を手渡した
大歳神はそれを肩に担ぎ上げ「では参る!」と言い外に出かけて行ってしまった
朱雀は「嘘……行動力あり過ぎ……」と唖然となった
烈は「それ兵藤きゅんが悪いにょよ!」と言った
「悪い烈………即座に行くとは思って無かった」
宗右衛門は「有言実行、の素戔嗚尊であるぞ?
即座に行かずして何時逝くのじゃ!と宣う素戔嗚尊じゃぞ?」とボヤく
「だな、俺はあんまし素戔嗚殿とは付き合いがなかったんだよ、許せ宗右衛門!」
「そんな事を言ったら儂だって魔界にいた頃は遠くから眺めておるだけの存在じゃったのじゃ!
近くに行こうとも一族の者に必ずや阻止され、近付く事さえ許されはせなんだ!
それ故、今世の祖父しか儂は知らぬからな……」
「あぁ、お前は影が薄かったからな、俺もお前の存在は知る由もなかったな
魔界では一言も口聞いたことなかったな………
こんなに楽しい奴ならば酒くらい飲んでおけば良かったったと何度も想ったぜ!」
「まぁ儂は後半は復讐の鬼と化しておったからな
誰かと話をしたならば、復讐を阻止されるんじゃないかって距離を取っておったからな………
どの道、人の世に堕ちねば、口も聞けなかった
あの朱雀だからな、儂は近付く事さえ出来はせなんだ!」
「あのさ、最近皆にあの朱雀、って台詞良く謂われるんだけど、あの朱雀って何なんだよ?」
「四神が一柱朱雀はそんなに簡単には誰も近寄る事は不可能だった
彼の回りには常に四龍の兄弟や閻魔の秘書官が傍にいて、近寄る事さえ許されない
畏れ多くて気軽に口さえ聞いてはならぬ
儂が魔界にいた頃はそう謂われておった
儂は素戔嗚尊の直径の孫じゃったが、その扱いは下僕並に悪かった
そんな儂が高名な神の傍へ行ける筈もない
儂にとっての魔界は本当の意味で地獄じゃった」
「それが良く………魔界に戻る気になったな……」
「炎帝が『オレがこの腐った魔界をぶっ壊してやんよ!
そしたらお前は憧れて止まなかった素戔嗚尊の傍に行くと良い!
もう誰もお前を止める奴なんかいない!
そうしてやるからお前は斯波の家を正せ!
俺の変わりに正して逝け!』と謂われたからな、儂は必死に生きて来ただけじゃ!
炎帝は約束を守ってくれた!
ならば儂は炎帝が護る魔界を護って逝くと決めたのじゃ!
それで何千年も没交渉だった親父と連絡を取り、魔界を盛り立てて逝くと決めたのじゃ!
祖父の傍にも行きたかったしな、儂はやっと魔界での意味を知ったのじゃよ
だから歩み出すと決めたのじゃ!
止まったままの時間を動かし、儂は儂の為に生きると決めたのじゃ!
四半世紀悔やめば……もう充分じゃからな
儂は日々楽しんて過ごしておるのじゃよ朱雀!」
思わぬ聖神の想いを口にされ、朱雀は言葉もなかった
なのに烈は「兵藤きゅん ボケたにょ?」と謂うのだった
「ボケてなんかいねぇ!」
「にゃら言い出しっぺの兵藤きゅんも湖に行かにゃきゃ!」
「はいはい!解りましたよ!」と朱雀が言うと烈は朱雀を蹴り飛びした
「はい、は?」
「一回でしたね?
んとにおめぇは康太の子供だよ!」とつくづく想うと口にする
外に出て厩舎に向かう
竜馬も烈に着いて外に出て厩舎に向かう
烈がアルくんに跨ると、竜馬はアレクに跨った
朱雀は「その馬、竜馬のだったんだ」と驚いて口にした
竜馬は「え?俺のだと駄目だった?」と躊躇して謂う
朱雀は「すまん、駄目とかじゃなく、その馬って炎帝の天馬の兄弟の馬の子だろ?」と問い質した
「そうよ、えんまがくれたにょよ!」と言った
「閻魔か………大盤振る舞いしちゃったのね」とボヤいた
烈は「アルくんも母しゃんの兄弟馬の子よ?
りゅーまの馬とは兄弟にゃのよ!」と謂う
朱雀は「え?嘘!!同じに見えない!」と朱雀が言うとアルくんは怒って鼻で朱雀を突いた
「痛いって!ごめん!アルくん!
白い色は同じだった!」
朱雀はアルくんにガジガジ噛まれた
「ちなみにレイたんの馬とも兄弟よ!」
あのポニーの様な馬も兄弟なのか?
「同時に3頭生まれたのか?」
「4頭よ!魔界の馬は元気で多頭出産出来るけどね、4頭目は………」
「まさか………死んだのか?」
「生きてるにょよ!でもね、天馬と同じ性格にゃのよ………荒くてね、誰も乗れにゃいのよ
りゅーまにそれはやれにゃいから無難なのくれたのよ!兵藤きゅん挑戦してみたら?」
「俺は愛馬はいるし」
「れも、それ、兵藤きゅんの馬じゃにゃいのよね?」
と鋭いツッコミを入れて来る
「……長らくの留守に白虎んちに預けていたら、何時の間にか白虎んちの息子に懐いて、俺が呼んでも来なくなったんだよ!」
ともぉヤケクソで言う
「にゃら、挑戦よ!兵藤きゅん!」
「……試し乗りしてみるとするわ!」
「そしたら四兄弟で乗れるにょよ!」
朱雀はもぉヤケクソで「だな、そしたら皆で散歩でもして走るか!」と言った
どこから見てもアルパカの容姿のアルくんと
どこから見てもポニーにしか見えないタカシ
そして天馬に良く似たアレク
そして天馬のコピーの馬か………散歩に出たら目立つ事間違いなしだろうな……朱雀は遠い目をして想う
小さな羽根でバタバタ飛ぶアルくんに乗り湖へと向かう
竜馬はペガサスばりの美しさの馬に乗り、飛んでいた
自分だけの馬、欲しいな!
朱雀はそう想い試し乗りする事を覚悟を決めた
湖に逝くと、素戔嗚尊と大歳神が建御雷神の手を借りて大鯰の捕獲に精を出していた
連携が昨日今日のそれじゃなく阿吽の呼吸と言って過言ではない程の連携が取れていた
素戔嗚尊と建御雷神は付き合いは長いが、大歳神はそうじゃないだろうに……血がそうさせるのか?
息の合った捕物をして、あっという間に大鯰を捕獲していた
大歳神は「おーい!竜馬、このヒゲならどうよ?」と呼ぶと竜馬は馬から下りて駆け寄った
そして素戔嗚尊と大歳神と話をしてそれを使う事にした
身は蒲焼にして食べる算段をして
「今宵は鯰の蒲焼じゃ!」と建御雷神と飲む約束をする
飲兵衛3人は嬉しそうそれを網に入れて持ち帰る事にした
朱雀は「烈、少し話そうや」と謂うと竜馬の事は父に託して、烈は湖の辺に腰を下ろした
「にゃに?話って!」
「何故、竜馬を連れて来た?」
烈は少し考えて………宗右衛門の声で話し始めた
「【R&R】も変革期に突入した故、竜馬には【R&R】を始めた頃の想いを呼び覚まそうと想い連れて参ったのじゃよ!
メンバーにもそれぞれ考える時間を与えた
そして儂も……今一度考える時間を持とうと祖父の所へ逢いに来たのじゃよ!」
「変革期?それはどんな風にだ?」
「人は慣れる生き物じゃが、慣れずに引き摺る思いがある
それは愛した過去の日々じゃよ!
愛した過去の日々は美化されて輝いて己の心を占めてしまう!
儂もそうじゃった………愛した人を思わなんだ日はない…………じゃがな時が経つに連れてその想いは美化されて逝くと気付いたのじゃよ!
そして愛した人を亡くしたメンバーも然り………
愛した時に縛られて身動き取れなくなる時がある
それが悪い訳では無い
じゃがな儂も含めて変革期の今変わらねばならぬ
変わらねば乱世の世には踏み出せぬ
そしたら【R&R】は空中分解するであろう
それは竜馬が一番望まぬ事じゃから、今一度考える時間を持とうと1ヶ月はそれぞれに暮らすと決めたのじゃ!
考える時間を持ち、今一度考える
儂らにとって【R&R】はどんな存在で、メンバーの事をどんな風に想っているか?
そんな作業をする為に竜馬には音楽が何もないこの世界に連れて来たのじゃよ
何もない世界で一から音楽を刻む
それがどんな想いをして、何を感じるか?
その日々から汲み取ってくれれば、よいと儂は想ったのじゃよ!」
やはり宗右衛門は凄いと朱雀は想う
ちゃんと見ているからこそ導ける道だった
何かを感じ取るチャンスを与えて考えさせる
魔界には音に繋がるモノ等何一つない
この世界で考えろと謂うのだ
繊細で尚且つ大胆な行動で蹴り上げる
宗右衛門しか出来ない事だった
「竜馬なら音を刻むだろ?
ずっとそうして心が願って来たから刻めた音だ
何一つ無くとも、刻んで行くさ
それが三木竜馬と謂う男なんだろ?
ならばさ、魔界に来たならば、ライバルやんか!
今世のライバルを来世も用意しちまうなんて意地悪いぞ聖神!
多分アイツは永遠のライバルなんだろ?」
「それは竜馬が踏ん張れば続けてくれる明日じゃろ?
明日を生きる為の努力をして逝くなれば、繋がる明日となるだろう!」
「んとに食えねぇ奴だよなお前は……」
「なに?兵藤きゅん 大鯰食べたくにゃいの?」
烈は笑って謂う
「食べたいよ!だから意地悪すんな!」
「にゃら逝くのよ兵藤きゅん
手伝わにゃいと食べさせてくれにゃいのよ!」
「それは大変だ!
そして腹拵えしたら暴れ馬に挑戦してやるよ!」
「ボク応援するね!
そしたらドライブ、でも馬だからやっぱ散歩?
するのよ!皆で走るのよ!」
朱雀は笑って「何でも良いさ、皆で走れれば!」と馬に乗り駆けて行く
烈もアルくんに乗り駆けて行き
「そうね、皆で走ると楽しいのよね!」と言った
素戔嗚尊の屋敷に着いて厩舎に馬を連れて行き、庭に出ると素戔嗚尊と大歳神は大鯰の解体作業を楽しんでやっていた
似たもの親子は息の合った作業で捌いて行く
竜馬は大鯰のヒゲを渡されて、弦バリの強度と音を奏でられそうなと想い、ヒゲをどうしたら弦として使えるか?考えていた
兵藤と烈は素戔嗚尊と大歳神を手伝う
鬼に頼んで金の串を作って貰っていたから、その串に鰻を通して行く
その間に大歳神はタレを作り始めた
切り捌いて行く鰻を串にひたすら通す
それを庭に作ったバーベキューとかで見る鉄網の上に乗せて焼く
何度も何度もタレを付けて焼く
その匂いに誘われて、素戔嗚尊の屋敷のテーブルに天照大御神と建御雷神と金龍と銀龍と黒龍と赤龍と、どう謂う訳か炎帝と青龍と転輪聖王が座っていた
そしてちゃっかり司命も司録と参加していた
その横にはレイもいた
切り分けられた身を
烈と朱雀はせっせと串に刺す
素戔嗚尊はせっせと蒸して
せっせと大歳神は焼く
烈と朱雀はせっせと串に刺す
素戔嗚尊はせっせと蒸して
せっせと大歳神は焼く
それを繰り返して、へとへとになるまで作る
大鯰はかなりの身を取り焼く事になった
そして内臓以外は鍋にぶち込み煮込む
たっぷりのお野菜をぶち込み煮込んで行く
漢の料理だった
今宵は大鯰で飲むと謂う事で、烈はクロウを呼び出し酒蔵から大樽を2個持って越させていた
烈がお米みたいな雑草を品種改良して、試行錯誤してお米として食べる前にお酒を作ろう!
と酒蔵をぶっ建て作り始めたのだ
麹菌に一番苦戦し何度も失敗して、最近やっと飲める酒が出来て来て、売りに出せるまでになって来たのだった
建御雷神は大樽を目にして感激して
「おおぉ!それは聖神特製の魔界酒であるな!
それに相伴に預かれるとは、光栄ですな!」と感激していた
試験的に市場に売出し今では魔界酒と呼ばれ人気になっている酒だった
人の世の日本酒の様なまろやかな味わいの酒に、やっとこさなりつつあった
大鯰の蒲焼と魔界酒で宴会は大賑わいになった
烈とレイは大人しく大鯰の蒲焼を食べていた
「レイたん美味しい?」
「うん!れちゅ おいちい!」
「それは良かったにょよ!」と笑顔で食べている
竜馬は「貴史だけじゃなく康太と伊織君も魔界の人なの?」と問い掛けた
それに答えのは司命だった
「そうですよ!康太は炎帝、伊織は青龍、貴史は朱雀、青龍と朱雀は四神が一柱です!
そして弥勒は転輪聖王、私は閻魔の書紀をしている司命司録が一人の司命です!
そして一生は青龍の兄の赤龍だったりします!」と紹介した
竜馬は言葉もなかった
素戔嗚尊は孫とレイを本当に大切に大切に想っているのが解る
何かと気にかけて頭を撫でる、その姿はどこから見ても祖父そのものだった
烈は甘さが旅に出たイチゴに似たフルーツを手にクロスと話をする
勿論 この日の宴会には妖精もご相伴に預かっていた
烈は「ねぇクロス、ミネルヴァの森の奥深くに伝説の甘い甘い果物って知ってりゅ?」と問い掛けた
クロスは「あ!知ってます!ですが伝説なので本当にあるか?確かめた者はいませんよ?」と謂う
「れもね、伝説でもね、有ると謂うにゃら確かめに行くにょよ!
そしてその受粉貰うにょよ!」
「それしかありませんね!
ならば明日決行しますか?」
「そーね、そうしようね!」
朱雀はそれを聞いていて、ちっこいのが無謀な作戦を立てるから心配になり
「おい!危ねえから行くな!」と止めた
だが頑固者な烈と妖精なのだ!一筋縄では行かないのだった
「でも」
「ねぇ!」
と引く気は見せない!
仕方なく朱雀は「ならば俺が連れて行ってやる!
だから勝手に行ったりするなよ!」と謂うしかなかった
烈とクロスはうんうん!と頷いた
が、それが一番信用にならないのだ
「俺はこれから暴れ馬を従わせて来るから!
そしたら烈とアルくんとレイのタカシとクロスは俺の馬に乗り散歩だぜ!」と謂い
素戔嗚尊に
「暴れ馬って何処にいるのよ?」と問い掛けた
すると黒龍が「それは俺の家の厩舎にいる、めちゃくそ暴れるからな、別の厩舎を作って其処へ入れてある!
炎帝の天馬とは兄弟の馬は我が伯父 黄龍が貰い受けていたからな
それが何度も子を成したんだけどな、今回の出産は本当に予想外の連続で、挙げ句気性が荒くてな乗るのも大変な馬が生まれ、当然だが引き取り手もなく残ったんだよ
んとに今回は……当然変異種としてアルくんとタカシの様なのが生まれて来て、俺も親父もビックリだった
まぁ足は太いかったから最初は農耕馬として育てるか?と考えていたら閻魔が今現在の聖神は小さいので聖神の馬にします!と貰い受け、もう一匹もどうする?と話していたら閻魔が、ならばその馬も貰います!と貰い受けたんだよ
それがレイのタカシだ!
そして俺は竜馬に渡した馬と荒くれの馬を管理していたんだよ」と内情を話した
朱雀は「ならば連れて行け!」と謂う
だが黒龍は「久方ぶりの大鯰の蒲焼なんだぜ?
今席を離したら数分後には無くなるから嫌だ!」とにへもなく断った
朱雀は仕方ないかと「なら明日挑戦させてくれ!」と言った
「おお!好きなだけ挑戦しやがれ!」と言い魔界酒をクビっと飲み干した
その夜はどんちゃん騒ぎに突入し、雪は早々に烈とレイを連れ出して黒龍んちに避難していた
黒龍には了解を得て避難していた
黒龍んちのリビングにお布団を敷いて寝る前に、烈は雪に北斗の写真を手渡した
雪は笑顔で全開で写るその写真を見て「大きくなりましたね北斗!」とすっかり大きくなって育った北斗の姿を見て感激していた
レイは「ほっきゅん!らいすき!」と雪に伝えた
家族が増えたけど、北斗はちゃんとお兄さんしててレイの面倒もちゃんも見ていてくれるんだ!
と嬉しくなり雪は笑っていた
その夜は3人で丸くなり眠りに着いた
雪は北斗の幸せそうに笑ってるその顔に安心していた
あれから北斗は自分の思いを伝える努力していると聞く
僕も頑張らなきゃ……雪は想う
だが烈が雪を抱き締めて宗右衛門の声で
「雪は充分頑張っておる
そんなに頑張らずともよいぞ!」と言った
「そうかな?」
「雪と北斗とは違う!
雪は雪でよいのじゃ!」
その言葉が胸に染みて………何だか涙が溢れた
レイと烈に抱き締められているから解らないよね?と雪はその涙を拭いもせずに泣いていた
とても優しい夜だった
雪は眠りに落ちぐっすりと眠った
翌朝 素戔嗚尊の屋敷に戻ると大歳神は朝食を作っていた
烈は朱雀の姿を探して見付けると、ドスンッと飛び乗った
朱雀は「うわっ!吐くってば!」と慌てた
「おはようにゃのよ兵藤きゅん」
「おはよう、烈
頼むから優しく起こしてくれ!」
「にゃら、おはようのチューしとく?」
「それは要らねぇって!」
朱雀の言葉に烈は笑って上から退いた
レイは黒龍の頬をペシペシ叩いた
「こっくん!こっくん!」
眠そうに目を開け「レイか?どうした?トイレか?」と問い掛ける
「あしゃよ!こっくん」
「そうか、起こしてくれたのか?
ありがとうなレイ!」
レイは黒龍に撫でられて嬉しそうに笑っていた
烈は「りゅーま、朝よ、目覚めのチューしとく?」と問い掛けた
「烈、勘弁して………」と二日酔いだった
「勘弁したいけど、時間にゃいのよ
魔界は人の世の時間より流れは遅いにょよ!
魔界に2週間もいたら、1ヶ月は過ぎてるにょよ!」
と説明してやる
「え?嘘………」
「ボクね、相賀と神野の所のタレントをイギリスに送らにゃいと駄目にゃのよ!
だからね魔界には2週間しかいられにゃいのよ!
そしてりゅーまはそれまでに音楽を奏でるのよ」
「解ってる!それが俺が魔界にいる理由なんだろ?」
「そーよ!そしてりゅーまは知るのよ」
「何を?」
「それは自分で探したら解るにょよ!」
烈はそう言い後は何も言わなかった
康太と榊原はそんな我が子を黙って見ていた
変革期なのだ
烈も止まっていた時間をやっと動き出させ、踏み出すと決めた
そして竜馬達 【R&R】のメンバーも今一度考える時間を持ち、見直して答えを探す
そして答えを見付けたら歩き出さねばならない
果てしない先へと一歩踏み出さねばならないのだ
それぞれが、想いに一区切りを着けて
歩き出して逝くのだ
でなくば、答えは見つからない
永久に出られない迷路に迷い込み………
そこで【R&R】は空中分解してしまうだろう
烈からその事を話されたのは、大分前の事だった
「りゅーまを魔界へ連れて行きたいにょ!」
と聞かされた時は驚いたが、来世は竜馬は魔界へ連れて逝くと聞いていたから何かあるだろうと想っていた
烈はこれから【R&R】の事
竜馬達が突き当たる壁
そして自分もそろそろ時を動かし歩き出す事にする
との告白を聞かされ驚いた
四半世紀、悔やんで贖罪を送る様な生活を送って来た宗右衛門だった
どんな心境の変化なのか?
それは解らない
解らないが、歩み出そうとする想いは応援したかったから閻魔に竜馬の魔界へ入る許可を求めてやった
その時には既に素戔嗚尊と大歳神からの方から要請が入っていると聞かされた
閻魔は「聖神には聖神の考えがあるみたいなので許可しました!」と聞かされた
その竜馬が魔界に渡ったから様子を見に来たのだった
竜馬の存在に朱雀はやる気になってるし、良い相乗効果が狙えてるじゃんか!と炎帝は想った
朱雀は朝を食べ終わると「うし!烈!俺は馬を乗りこなすぜ!
そして馬の名前をレイモンドと名付けてやるよ!」と謂うとレイが顔を上げて朱雀を見上げた
「れいにょ なまえ……」
烈が舌を噛むからと短くされた名前だった
だが一応戸籍には飛鳥井レイモンドとなっているのだ
あくまでも烈が発音出来ないから短く呼んでるだけだった
朱雀はレイの頭を撫でて
「お前の馬がタカシだからなら、ならば俺はレイモンドって名にしなくてどうするよ?」と笑って言ってやる
榊原はたらーんとなり飛鳥井に還ったら、ちゃんと話さねば!と心に決めた
康太もその横でうんうん!と頷いていた
朝食を済ませて朱雀は黒龍んちへ向かう
黒龍んちの厩舎はとても立派で、愛馬を凄く大切にしているのが解る
それに比べて自分は走れれば何でも良い………と愛馬に対して想い入れもなければ愛もなかった
そりゃあ………白虎んちで大事に大切に愛されて育てられたら名を呼んだとしても来ない筈だ
しかも朱雀は馬と契約もしていなかった
馬は飼い主が名を着ける事により、契約となる
だから烈がレイにも竜馬にも名前を付けてあげるにょよ!と言ったのはそれこそが馬との契約だったからだ
だから離れて暮らしていても、名を呼べば馬は来る
炎帝の天馬は天馬という馬だが、天馬と名付けた瞬間から炎帝の馬になったのだ
まぁ名付けるのが面倒で天馬を天馬と呼んだだけなんだが……
それでも名前は名前だ!
ちゃんと馬との契約はされる
だが朱雀は滅多と名を呼ばず、馬を呼ぶより飛べるから放置気味だったのは否めない
まぁ飛べるから、馬の必要性を感じていなかったのかも知れない
だから白虎んちの息子に名前をつけられ可愛がられたら朱雀の所へなど来なくて当たり前なのだ
朱雀は燃えていた
愛馬にすべき存在が炎帝の天馬の兄弟馬ならば相手に不足はない!
朱雀は黒龍の厩舎の横に建てられた別の厩舎に向かい、暴れ馬を見た
暴れ馬は何だコイツ?ばりの目付きの悪い目で朱雀を見た
朱雀は、うわぁ〜本当に天馬ソックリだわ、目つきの悪さまでソックリだわ!と想った
朱雀は暴れ馬を見た
暴れ馬は朱雀を見た
二人の視線からは火花が飛び散る程にバチバチと威嚇し合っていた
ジリジリと朱雀が暴れ馬に近寄る
暴れ馬はフンフンと鼻息荒く威嚇する
暫くは一歩も引かぬ攻防戦を繰り広げていたが、朱雀が軽やかに暴れ馬の背に乗り手綱を握った
「お前は今日から俺の馬だ!レイモンド!」と言い聞かせようと手綱に力を入れた
暴れまくり振り落とそうとする
だが半分鳥になり体を軽やかにして、その衝撃をやり過ごす
どうあっても振り落とせないと知ると、暴れ馬は抵抗を止めた
「レイモンド、俺の為に飛べ!」
『良いぞ!飛んでやる!』
暴れ馬、改めレイモンドは仕方なく朱雀を飼い主と認め背中に乗せてやる事を約束した
かなり長い間、レイモンドとの攻防戦を繰り広げていたが、やっと終りを迎えた
黒龍と烈とレイはお茶を飲み話をして………見ていなかった
朱雀はブチッと額に怒りマークを浮かべて
「おい!」と言った
烈は「やったね!兵藤きゅん!」と称賛の声を掛けた!
レイも「やったー!」と両手を上げて喜んでいた
黒龍は「レイモンドってひょっとしてレイの名か?」と改めて問い掛ける
烈は「そーよ!飛鳥井レイモンにょ謂うにょよ!」とそこで初めてフルネームを話す
レイさえ驚いていた
「ぼきゅ……れい…じゃにゃいにょ?」
烈はバツの悪い顔をして「ごめんねレイたん」と謝った
レイは「????」と何故烈が謝るのか?意味が解らなかった
「ボクね、はちゅおん悪いでしょ?
レイたんの名前、言えにゃかったのよ
それでね、レイで通しちゃってたのよ
レイたんはちゃんとレイモンにょだから、途切れてにゃいから!」と言った
レイは笑って「れちゅ ぼきゅ にゃんれもいいにょ!」と言い烈に抱き着いた
仲良くじゃれ合う二人に朱雀は
「うし!ならレイ、馬を取りに行ったらミネルヴァの森だぞ!」と言った
黒龍は「レイは置いて行けって炎帝が言ってたぜ!」とレイを抱き上げた
「母しゃん謂うにゃら、にゃんかありゅのね
レイたん、お留守番しててね!」
レイは涙を浮かべて、でもコクッと頷いた
するとそこに炎帝と青龍がやって来て、青龍が
「朱雀、レイの子守をお願いしますね!
烈、クロスを連れて来なさい!
そしたら僕が君達を乗せて行きます!」と言った
烈は喜んでアルくんに乗ってクロスを呼びに行った
暫くしてクロスを連れて黒龍んちに逝くと、レイは泣き疲れて眠ってしまっていた
青龍は龍に姿を変えると妻と烈を背に乗せた
クロスは炎帝の胸ポケットをお借りして、そこに入っていた
「母しゃんはミネルヴァの森の伝説しってりゅの?」
「オレは知らねぇな、朱雀は最近魔界に来てるから色んなヤツと話ししてるから聞いたんだろ?」
「わにゃ?」
「まぁ罠でもオレが綺麗に焼き切ってやんよ!」
炎帝はそう言い高笑いした
青龍はミネルヴァの森の上を高らかに気流に乗り飛んでいた
森の終わりを上空から眺めクロスに
「ミネルヴァの森ってラスボス級の精霊がいるんでしたよね?」と問い掛けた
「ええ、創世記からの精霊と謂われています」
あぁ、だから炎帝がレイをお留守場にしたのか?と烈は想った
炎帝は嗤って「創世記からいる精霊ならオレが知らねぇ訳はねぇんだよ!
レイがこんなの聞いたら怒り出し呪文となえたらどうするんだよ!」とボヤいた
クロスは「ならば創世記からの精霊ではないと?」と問い掛けた
「レイは創世記に冥府の地下深くの闇を司っていたニブルヘイムだぜ?
創世記からの気配をアイツが感じない訳はねぇじゃねぇかよ!」
クロスは「ボク帰りたくなりました」と弱音を吐く
烈は「甘い果物の受粉を手に入れたらね!」と言った
あくまでも目的の為ならば手段は選ばない男だった
ミネルヴァの森の中で一際目立つ大木を見付けると、青龍は静かに下りて炎帝と烈を下ろした
そして人のカタチになると、大きな花を見つけた
烈は駆けて近付こうとすると、地面から木の根が伸びて烈を絡めて宙に持ち上げた
「とぉしゃーん!」と泣きながら叫ぶと、何処からかマサカリが飛んで来て木の根をぶった斬った
根を切られ落ちる烈を受け取り、大歳神が立っていた
「おいおい!木の根を使うはわしの専売特許!
真似はいかんな!関心せん!」とボヤいた
青龍はそこ突っ込む所ですか?と想った
炎帝は本当に嫌になる程に伯父貴に良く似てて嫌になった
大歳神が一歩近づくと地面から根が生え、草木は活性し花が咲く
大きな老木を睨み付けると「我が家の焚き木になりたくなくば大人しくしやがれ!」と脅した
焚き木……大木に対して焚き木……
炎帝はぷるぷる震えて笑いを堪えた
大木は「我は創世記からこの森にある精霊である!」と無礼者とばかりに謂う
すると炎帝が「へぇ創世記から在るって本当かよ?オレはこの地球(ほし)が出来る前からいるが、この森がこんなに木々を増やして行ったのは創世記の後だぜ?
創世記からいる存在がいねぇからって嘘は感心しねぇな!」と少し怒りを滲ませて謂う
烈は何やらメモ帳を取り出して、気の遠くなる程の計算を始めていた
数字の羅列がメモ帳を何ページも使い書かれていく
「母しゃん!」と言い烈は紙を炎帝に渡した
炎帝はその紙を受け取り目を通した
そこにはその大木の星の周期が計算されてあった
「へぇーたかが10万年で育ったからって創世記を名乗っていたのかよ?笑える!
この地球(ほし)が息吹を吹き込まれたのは50億年前に遡るんだよ!
その頃はまだ魔界はなかった
人もいなかった、生命もなんもなかった
で、お前は創世記からいる精霊なんだよな?」
と敢えて問い掛けた
大木はもう何も言わなかった
大歳神は炎帝と青龍と烈を少し離すと、マサカリをぶっ飛ばした
大木の枝がバサバサ落ちて行く
炎帝は本当に素戔嗚家の薪にする気かよ?と想った
かなり葉を落とし枝を落とし大歳神は大木の根を取り出して、黒い塊をポイッと捨てた
青龍は「此れは?何なんです?」と問うた
「それはな精霊を名乗る悪い塊だ!
確かにこの木には精霊はいるが、そいつじゃねぇ!」
大歳神はそう言い、黒い塊をブチュと踏み潰した
え?今………踏み潰した?
青龍は炎帝を見た
炎帝は言葉もなく大歳神を見ていた
「で、この木に元々いた精霊だ!」
と言い大歳神は何処かで見た様な精霊を木から取り出して皆の前に見せた
そして大歳神は「この木に棲まうは八仙の鳩従兄弟に当たる精霊殿だ!」と自己紹介をした
何?その繋がり?
炎帝は軽い頭痛を覚えた
青龍はよろめく妻を支えた
精霊はほほほほっと笑って「宜しゅう!ミネルヴァじゃ!」と言い木の中へ入って行った
大歳神は「うし!これで危ねぇ事はなくなった!
この森は精霊達の手により開かれて行くだろうさ!」と言った
炎帝は「あんで大歳神は森にいたのさ?」と問い掛けた
「儂は森にいた訳じゃねぇよ!
親父殿と飛来クラゲを捕獲に来てるんだよ!
烈はそれを知ってたから呼んだんだよ!
流石の儂でもエスパーじゃないからな飛んでは来れんよ!」とガハハハハハッと笑った
炎帝は「凝りもせず飛来クラゲ取りに来てるのかよ!伯父貴は!
今度は倅まで引き連れて来るかよ?」とボヤいた
「今宵は飛来クラゲの唐揚げじゃ!来るがよい!」
「なぁ大歳神、お前さ素戔嗚尊の飛来クラゲ食わせて建御雷神とか転輪聖王を寝込ませ死ぬ想いさせた事件は知らねぇのかよ?」
「知っておる、その頃儂は崑崙山で親父殿に逢ってたからな、その時差し入れだと飛来クラゲの唐揚げを貰い受け毘沙門天と共にぶっ倒れ死ぬ想いしたからな!」
…………毘沙門天、お前苦労してたんだな
「毘沙門天、だからお前何時だって安全だと解る食べ物は飢えた様に食うんだな」
炎帝は毘沙門天を想い呟いた
青龍は絶対に違いますよ奥さん……とは言えなかった
大歳神は素戔嗚尊に呼ばれて、立ち去った
烈は「アルくんを呼ぶから後は大丈びよ!」と両親に言った
青龍は龍になり妻を乗せてその場を離れた
烈はクロスに「この花ね!」と感激して謂う
クロスも「甘い匂いしますから、ビンゴです!」と言った
大きなラフレシアばりの花の花粉を気密性の高い籠に入れる
だが烈はその横に咲く、何だか苦そうな匂いを放つラフレシアバリの大きな花に目を付けた
「クロス、こっちの花粉も持って行くにょよ!」
「でも苦そうよ?」
「人の世では、こんな苦いのが甘いって事もあるにょよ!」
烈がそう言うとクロスは甘い花粉の籠に【甘い】
と記し、辛い匂いの籠に【苦い】と記した
烈は苦い花粉を【苦い】と記した籠に入れた
そしてアルくんを呼んだ
パカパカ天を駆けて来るアルくんがやって来るとら、アルくんの背中に乗りクロスを籠の中へ入れ畑まで走った
花粉は鮮度と速度が命なのだ
丁度 花をつけたスイカ位の大きさのイチゴの姿をしたフルーツがあったのだ
烈は左右同じ数の真ん中に線を引かせた
そして甘い花粉の方に赤い紐を目立つように結び、苦い方の花粉の方には黄色のリボンを結んだ
そしクロスと手伝いに来ていたクロウとで受粉を始めた
烈もせっせと受粉を始めた
魔界の食物は育つのがやたらと早い
烈が魔界から還る頃には実がなっているだろう
烈は嬉しげにクロスと共に閻魔の邸宅まで向かった
閻魔の邸宅に行き、応接間に顔を出すと閻魔がいた
烈は閻魔にミネルヴァの森の話をした
だが今後も精霊が森を守るから、近づけない様にしてね!と頼んだ
閻魔はその話を静かに聞き「解りました!」と言った
そして「魔界酒は閻魔庁の方で管理してって話ですが、それで貴方は良いのですか?」と問い掛けた
売りに出す以上は利益が出るのだ
緻密に決め事をせねばらなぬと閻魔は思っていた
宗右衛門は「密造酒など作らせぬ為に法も制定せねばならぬと儂は想う、何時の世も酒と麻薬は世を狂わす事となる!
閻魔庁が管理して、一定数を売りに出す
それしかあるまいて!
それに儂は魔界で財を成す気は皆無じゃからな!魔界に還元出来るのならば、それで良いのじゃよ!」と説明した
「魔界で財を成す気はない?
それはどうしてなのですか?」
「そりゃあ食える分だけは魔界銭は要るがな
今現在、材料や開発費は儂が出しておる訳では無い、閻魔殿が予算として計上してくれているからこそ、続けられるのじゃから、利益は魔界へ還元するのじゃよ!
それでより良い人材を教育するのじゃよ!
儂はじぃさんが飢えなきゃ、今の所はそれで良いと想っておるからな!」
「素戔嗚殿が飢える日なんて永遠に来ませんよ」
「ならば行く行くは野菜やフルーツの管理も頼みたいと儂は想っておるのか
総てが閻魔庁で管理して物流の商品管理をする
それが劣化品を生み出さない為の品質の管理であるからな!」
今まで無法地帯になってた分野に管理の手を入れろと宗右衛門は謂う
閻魔はやはり炎帝の子なのだと感心する
先を見据える眼は本物だと想わせていた
閻魔は「今後はより一層畑と酒蔵の警備体制を強めましょう!
そんな時だから宝庫となるミネルヴァの森の管理は死守せねばいけませんね!」と気を引き締めて言う
「魔界では今も小さな争いならば、所々で絶えぬ現状ではあるならば警戒は必然じゃな
でも世界樹から湧く水を飲んでいるならば闇には染まらぬが、人の世では先手を打った存在に青龍の人の世の母親が狙われた
多分………ニブルヘイムの雨を警戒して動けなく時を計算して手を打ったのじゃと想う
じゃから魔界もどんな事態を引き起こすか?考えて逝かねばならぬ
まぁ警戒して、色んな災厄を想定しておらねばならぬ!と言っても何も見えて来ぬ今、何を警戒するのだと思われても仕方がない……がな
じゃか確実に狙いを付けて、ちょっかいは掛けて来るじゃろ!
人の世では頭にチップを入れた輩が姿を現していた
人の力以上の力で襲われたら一溜りもないじゃろ?
我等も日々警戒はしておるが、何時来るやも解らぬからな、そこまでの手は打てぬのじゃよ
じゃからな閻魔殿、儂から相談があるのじゃ?」
「相談、ですか?」
烈はテーブルに紙を取り出すと、物凄い早さで閻魔の星を詠み、危険を予測出来る日を幾つか割り出して逝く
そこへ炎帝と青龍がやって来ると、物凄い集中力で計算する烈を目にして、青龍は紙が足りるか?と用心して紙を用意してやった
炎帝は「烈のホロスコープや星詠みの腕は魔界随一だからな!」と親バカ発言丸だしで言う
烈は紙が足りなくなると辺りを探す
するの青龍がすかさず紙を渡した
そして閻魔の星を詠み割り出した日に丸をつけて顔を上げると
「母しゃん結界!」と言った
炎帝は応接間に結界を張って用心した上で烈は口を開いた
閻魔は…………言葉を失っていた
炎帝はエグい事………考えちゃうよか?烈よ………と想った
青龍も、やはり宗右衛門は一筋縄では逝かないな……と想っていた
閻魔は「解りました!貴方の想いの通りにやると約束します!」と約そがしてくれた
烈は紙を炎帝に渡して「燃やして!」と頼んだ
炎帝はチリさえ残さずに綺麗に焼いて消した
「にゃらボクはクロスを食堂に置いたら、還るにょ!」と言った
そして笑顔で宗右衛門の声で
「今宵は飛来クラゲの唐揚げじゃから来るとよい!」と誘った
炎帝は「此処には医者はいねぇじゃねぇかよ?」とボヤいた
「大丈夫じゃよ!飛来クラゲの毒はレイの水で洗えば綺麗サッパリ取れる故、昔の様に病院送りに成る事はないぞ!
まぁ………毒取り過ぎてバカ舌だからな……じいさんは…でも父者いるし安全じゃよ!」
閻魔が「ならば今宵は私も参戦致します!」と謂うと宗右衛門は「ならば魔界ワインを出さねばな!」と言った
閻魔は「ワインまで作っていたのですか?」と問い掛けた
「葡萄に良く似た果実を品種改良した故、ビンゴじゃったのじゃよ!
それはまだ試験段階故、味の保証はしてはおらぬ!何せ儂は未成年じゃからのぉ〜!」
笑えませんよ宗右衛門………と青龍は想った
烈は応接間を出るとクロスを食堂へと連れて行き、素戔嗚尊の屋敷に戻った
素戔嗚尊の屋敷の横の厩舎にアルくんを停めて庭を覗く
すると飛来クラゲの解体作業中だった
朱雀と竜馬も手伝い、レイがお水をたらいに流して逝くと身をそこで綺麗に洗った
朱雀は「レイ、毒はもうねぇか?」と問い掛けた
レイは「にゃいのよ、あ!れちゅ!」と喜んだ
朱雀は「甘い花はあったのかよ?」と問い掛けた
「あったにょよ!苦いにょもあったのにょよ!」と報告する
「楽しみだな!」と朱雀は甘いイチゴにると良いな!と嬉しそうに言う
大歳神と素戔嗚尊は自分の体より大きな飛来クラゲと闘い中だった
足だけでも大木並にある
烈は納屋を見ると真新しい薪があり、ミネルヴァの森の切り落とした木をちゃっかり集めて来たんだと想った
クロウが素戔嗚尊を手伝いせっせと動く
他の鬼も手伝い飛来クラゲをご相伴に預かろう!と手伝っていた
素戔嗚尊の屋敷には何時も賑やかな声が響いていた
庭の野菜も妖精達がせっせと受粉して、手伝うから何時も美味しい野菜が食べられていた
大歳神は大鍋を外に作った竈門の上に乗せて、火を着けた
油は野菜の種を潰して絞り出したモノを使っていた
トライアンドエラーの繰り返しで、今は人の世の油に近い油で揚げ物が出来ていた
唐揚げ粉なんてのはないから、お米を粉にして使用していた
何もかもが足らない魔界で、料理をするのも結構大変だった
魔界は使用されていない部分がかなりあり、使用されていない所にレイが海水を湧き上がらせた
まぁ人の世の海と繋いだ……とは言ってたが、どうやって繋いで海水を大きな湖に流しているかは、レイにしか解らなかった
その区域は立入禁止にして、桜の里で生まれた鬼達をそこで働かせていた
所謂 塩を取る作業をそこでさせていた
これで魔界に味噌と塩と醤油に近いモノが出来たと謂う訳だ
大歳神は飛来クラゲをぶつ切りにして、まずは醤油に漬け込んた
その醤油にはスパイスになる薬味を混ぜ込み、漬け込む
そして良く漬かったら、米粉でまぶして油で揚げる
烈はザルを用意して、その上にまぶした飛来クラゲを乗せた
そして素戔嗚尊の前に持って行く
するも素戔嗚尊はせっせと油で揚げ始めた
香ばしい香りが辺りを包む
その香りを誘われてまた昨夜の顔ぶれが食卓に並ぶ
大歳神は飛来クラゲを醤油漬けにしまくった
切っては投げて、切っては投げてしていた
烈は米粉をまふして、まふしてザルに乗せる
素戔嗚尊はまぶした飛来クラゲを油で揚げる
クロウがザルを用意して、揚げた飛来クラゲを食卓に並べる
かなり大きい飛来クラゲだから、かなりの時間を要して調理された
大きなザルに5個分の飛来クラゲの唐揚げが出来上がると、烈はクロウに言い付けてワイナリーの方のワイン樽を持って越させた
建御雷神は「おおぉ!それは魔界ワインではないか!連日こんなに大盤振る舞いして大丈夫か?烈?」と逆に心配して問い掛けた
「味の保証はにゃいのよ
それでも良いにゃら、飲んでね!」
「おおぉ!烈が作るモノに不味いのは一つもないわい!」と喜んで言う
建御雷神は烈の頭を撫で撫でした
クロウは皆に魔界ワインを注いで渡す
飛来クラゲの揚げ物終わると、皆で食卓を囲み、魔界ワインを飲む
転輪聖王は「おおぉ!倅と孫が加わると美味に変身するのか!」と何度も毒に当たり倒れさせられた日々を想う
素戔嗚尊は笑顔で「倅と孫が手伝ってくれるからな!」と言った
そこには勿論 宇迦之御魂神もいたのだが…アクの強すぎる家族を持つと本当に大変だった
だか宇迦之御魂神は笑っていた
とても楽しそうな父を見て笑っていた
素戔嗚尊は「一番の功労者は、レイが毒を抜いてくれるからなのじゃよ!」とレイを抱き上げた
レイは笑っていた
宇迦之御魂神もレイの頭を撫でた
「うーたん!」とレイは宇迦之御魂神に抱き着いた
建御雷神は「レイの水は毒を消すからな、幾つかストックさせて貰い、変なの食べた奴の処置に使ってて本当に助かってる!」とレイの頭を撫で言う
竜馬はそんな楽しげな風景を黙って見ていた
【R&R】のメンバーと飲む時は何時だって楽しかった
飲んで騒いで、より親睦を深め明日も頑張ろう!と想った
明日を夢見て
明日に思いを馳せて
明日生きる為の努力して紡いで来た
ともだちにシェアしよう!