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第24話 明日を生きる為にする努力❸
竜馬は【R&R】のメンバーと過ごした日々に思いを馳せた
メンバーの事を想う
なぁ…俺の事を想い出した?
俺の事や烈の事を想い出してくれた?
【R&R】の事を考えてくれた?
この先も共に【R&R】の世界を紡いで行こうと想ってくれた?
そんな事を想う
竜馬は外に出て行く宛もなく歩いた
そしたら一際光る樹を目にして、それを求めて歩いた
するとその樹の前に座っている烈とレイの姿を見つけた
二人は何やら話をしていた
ニブルヘイムは「貴方に声を初めて掛けた日、貴方は驚いて後退りして転けましたね」と笑って謂う
「あれは主が突然声を掛けたから驚いたんじゃよ!この魔界では誰も声を掛けてくれる存在はおらなんだ………
だから儂に声を掛けてるのか?と驚いただけじゃよ!
……じゃから主と話せた日は夢のように嬉しかったし、夢じゃないかって想っておった」
「ねぇ………歩み出すって本当なの?」
「あぁ……儂の中の妻の姿は何時だって美しく、出逢った頃の記憶のまま時を止めてしまっておるからな
想い出は時が経つ程に美化され心の中で輝き続ける………愛した人と愛した我が子に囚われ……想い出があれば生きていける
儂はそう想っておった………
じゃから儂は悔いて………妻と子に償う日々を送っておった
愛した人も子もとっくの昔に転生し、儂とは無縁な存在になったのに……な
じゃから儂はもう止まった世界にいる事は止めたのじゃよ
こうしてレイとして儂の傍に転生してくれた主の為にも………な、儂は歩まねばならぬのだと知ったのじゃよ!」
「聖神……」
「過去の輝きに縋り付く暇に、今を刻むと決めた
楽しい事も悲しい事も、今があるから想い出は増える
じゃからな竜馬、主も今を生きる為の努力をするのじゃよ!
それが主の糧となり、主を強くしてくれる
生きる指針となり、主の果てへと続くのじゃ!」
竜馬は宗右衛門が気付いているとは想ってもいなかった
烈は竜馬に手を差し出した
竜馬はおどおどとその手に導かれるように、手を伸ばした
すると力強い手が竜馬を掴み引き寄せた
レイと烈の間に座らされる
烈は「音は奏でられそう?」と問い掛けた
「音を一から作り出すのって難しいんだな
俺はそんな苦労はした事はなかった
何でも欲しい殿は直ぐに手に入る飽和社会に生きているからな
モノが溢れた社会しか知らなかった俺に取ったら、この魔界は信じられない事の連続だった
何もないんだな…この世界は…………
こんなに色んな人種がいるの、娯楽なんか滅多とない世界に生きているからなのか?
工夫して日々を生きている姿は新鮮だった
この世界で生きる総てのモノに俺の音楽を聞かせたいと想った
だから俺は日々弦を作り上げている
もう少しなんだ、素戔嗚殿や大歳神とか貴史とかが手伝ってくれるから、出来上がりも近いよ」
「ならば皆に聞かせるにょよ!」
「あの黒龍さんって何時も気にかけて声を掛けてくれるんだ
素戔嗚殿の縁側に座ってると、色んな人が声をかけて励ましてくれるんだ
こんな世界は俺は知らなかった………」
宗右衛門は「魔界は炎帝が血反吐を吐いて、怪我をして死にかけて、やっと正され幾度も篩にかけられ今があるのじゃよ
獣は乱獲されて食べ物は底をつき、人の世まで行き食べ物の強奪をしに行かねばならぬ程底をつき、暴動一歩手前まで行っていた時もあった
じゃから炎帝が魔界から人の世には出られぬ様に結界を強化して、出られなくした
そして物凄い速度で育つ野菜や果物のなる木を育てさせたりして、工夫して今を築いたのじゃよ
それまでになるまでは内乱内乱で無法地帯と言っても過言でない状態じゃった
我が祖父 素戔嗚尊も魔界の為に立ち上がり正している最中じゃからな、今も予断は出来ぬ故、フラフラ歩くでないぞ竜馬!
外に出るならば誰かを必ず着けるのじゃよ!」と説教に近い説明をした
「大歳神って神威だよな?
烈の父親になる人なのか?」
「神と謂う存在は血肉を分けて出来はせぬのじゃよ、我等は魂を受け継いでこの世に役割を持ち生み出される、それが神と謂う存在じゃ
じゃからな人の世の儂は榊原真矢と榊清四郎との間に出来た子供で、飛鳥井康太と榊原伊織との子供ではあるのじゃ!
じゃが儂は大歳神を父に持つ聖神として役割を持つ神じゃからな、魂を受け継いだ存在は我が父大歳神なのじゃよ!
大歳神の父は素戔嗚尊、儂は直径の孫に当たる
まぁ人の世の生を終えれば儂は魔界へと還る
今、説明されてもピンとは来ぬであろう……がまぁ我等は似た者親子じゃからな見てれば解るじゃろ!
因みに、炎帝の母上は素戔嗚尊とは兄弟であらせられる!」
竜馬は言葉もなかった
「儂が【R&R】のメンバーの前で話した話を覚えておるか?」
問い掛けられ竜馬は宗右衛門が語った妻と子をの下りを思い出して頷いた
「あれはな、総てこの魔界で暮らしていた頃の話じゃよ…聖神は素戔嗚尊の直径の孫ではあるが、その頃は素戔嗚尊の一族は、一族の者を蹴落とし如何に自分が素戔嗚尊の名声を自分のモノに出来るか?欲をかく者ばかりじゃった
そんな中に直径の孫が来たとしたら邪魔なだけだったのじゃよ!
儂は一族の者に蹴落とされ踏み躙られ蹂躙され嫌がらせを毎日受けておった
そんな絶望しかなかった日々に、儂を励まし続けてくれたのは冥府の地下深くに存在するニブルヘイムだけじゃった
この樹の下でニブルヘイムとは良く話をした
泣き続ける儂を見守り泣き止んだ時には優しい言葉をくれた
じゃから儂は地獄の様な日々を堪えられた
そんな時儂に愛する者が出来た
ニブルヘイムは喜んでくれた
自分の事の様に喜んでくれた
幸せな時間は確かに在った
じゃが儂を邪魔に思う者に妻と子を略奪された
家柄と金を使って妻の実家を脅し妻を差し出させた……儂の目の前で妻はいたぶられ犯された
我が子は犬の様に鎖に繋がれ食事もろくに与えられずに痩せ細り……妻も犯されるだけですまず殴る蹴るの暴行を受けてボロボロじゃった
それを儂の目の前で……アイツ等は繰り広げた
儂は復讐してやると誓いニブルヘイムには逢いに行かなくなった
そんな醜い姿でニブルヘイムになんか逢えないと想ったからじゃ……
じゃからな儂にとっての魔界は地獄じゃった
大嫌いじゃった、憎かった……」
「なら何故!宗右衛門は魔界に俺を連れて来たんだよ!」
そんな辛い想いをしたと謂うのに………何で?何でなんだよ!宗右衛門!
竜馬は泣いていた
「儂が憧れて止まなかったのは我が祖父 素戔嗚尊じゃよ!
儂は祖父の傍へ行きたかった
傍で祖父の姿を眺めていたかった
今はそれが出来ておるからな、儂は歩みだすと決めたのじゃ!
過去に遡るのではなく、美化された想いでの中にいるのではなく
憎しみの中に留まるでもなく
己の足で歩みだすと決めたのじゃ!
今の時を刻む、それはな過去に想いを留めている者には刻めはしないのじゃよ
四半世紀生きて来てやっとそれに気付くとはな
儂もまだまだなのじゃよ!竜馬
じゃからな時を刻もう
そして思い出を沢山重ねて行こう!
主にとっての音楽は何だったのか?
【R&R】のメンバーをどう思っているのか?
今一度考える時間を与えたかったから魔界に連れて来たのじゃよ」
「宗右衛門………」
「何もない世界で紡いだ音こそ、今後の主の指針となる、その音を我等に聞かせてくれ竜馬」
「うん!頑張るよ!
頑張って俺の音を皆に聞かせるよ!」
レイは竜馬を抱き締めた
その温もりに何だか安心する
烈も竜馬を抱き締めた
その優しい温もりは生涯忘れないだろう………
3人は互いを抱き締め合って眠りに落ちた
黒龍と赤龍と青龍は一人でフラフラ歩く竜馬の後を着いて来て……出られなくて隠れて話を聞いていた
黒龍は「エグいな、聖神の目の前で妻を犯していたのかよ………」と呟いた
赤龍も「子供に食事もさせずに鎖で繋いでいたって………俺もそれやられれば、ぶっ殺したくなるな」と復讐の鬼に身を落とした聖神を想う
青龍は既に知っていたのか?何も言わなかった
黒龍は「こんな所に置いとけないから連れてくぜ!
俺が竜馬担ぐから、お前らはちっこいの連れて行くとするぜ!」と言った
青龍と赤龍はうんうん!と頷いた
黒龍は竜馬をヒョイッと担ぎ上げると愛馬に跨り素戔嗚宅を目指した
赤龍はレイ、青龍は烈を抱き上げて素戔嗚宅を目指した
素戔嗚宅に到着すると大歳神ガ出迎えてくれた
「聖神の部屋まで連れて来てくれ!」と言い聖神と書いたドアを開けて、階段を上って行く
するとそこには既に朱雀が寝ていた
その横に布団が3つ敷いてあった
そこへ寝させる
黒龍は「朱雀、自分ちに帰らず居座ってるやんか!」とボヤいた
赤龍は「この横の建設中の建物って朱雀んちなんだってな、聞いて驚いたぜ!」とやはりボヤく
青龍は何も言わない
黒龍は「やっぱ朱雀も淋しいんだよ」と言い部屋を出て行った
一階の客間に戻ると、酔っぱらいが出来上がっていた
黒龍と青龍と赤龍は客間に行きソファーに座った
黒龍が「レイって朱雀と何か関係ある子か?」と問い掛けた
赤龍と青龍はピキッと固まった
大歳神が「あぁ、人の世の兵藤貴史の子供だ!」と意図も簡単に答えた
「まぁ認知はしてねぇから戸籍上は他人だな!
だがDNAは受け継がれてしまっていた、って訳だ!」
黒龍は「詳しいんだな?」と問い掛けた
「その手続をしたのは儂だからな!」と大歳神はサラッと謂う
青龍は「大歳神は人の世では飛鳥井に転生して烈の顧問弁護士をしていてます!」と言った
大歳神は「儂はな青龍、魔界に還ったら弁護士を教育するつもりじゃ!
今は黒龍の学校で素質のある者を選出し別のプログラムで勉強させておる! 青龍殿が還れば法は確実に制定される
ならばそこに弁護士がおらねば、それは誰の為の裁判だと意義を申し立てせねばならぬからな!
儂は素戔嗚尊の息子である!
我が父が正義と秩序を掲げるならば、儂はそれを受け継がねばならぬ!」と申し出た
青龍は瞳を輝かせ「法を確立させるならば宗右衛門は常に弁護する存在も必要になると言っていた
まさにそれが実現すると謂うのですか?」と夢みたいだと言葉にした
「人の世の真似をする気はねぇけどな
秩序は守られ正されねばならぬ!
それを正すは法皇唯一人!
じゃがその構図が出来ると、黒くても白だと謂えば白になる論理になってしまうからな
それに異議を唱える者の必要性も不可欠だと謂う事じゃよ!」
「大歳神!切磋琢磨して行きましょうね!」
「あぁそれこそが正されて曲がらぬ魔界の道標となる!と我が倅が常に言ってるからな!
マサカリ担いで法廷に出てやるぜ!俺は!」
いやいや……法廷に出るのにマサカリ必要ある?
ガハハハハハッと嗤う大歳神には何も言えない
まぁ良いか……此処は魔界なのだから、それも許されそうだ
青龍は笑っていた
とても楽しそうに笑っていた
黒龍は魔界では見た事もない笑顔だな……
青龍は丸くなった
そして他の声を聞く様になった
正しき道を常に模索して、誰かの意見をちゃんと聞く
いまなら法の番人に相応しい存在だと実感する
大歳神は何やら飲み物を持って来て皆の前に置いた
黒龍が「これは?」と問い掛けた
「倅が祖父の為に作った果実酒じゃよ!
儂が親父だけなんてズルいって言ったら儂の分も作ってくれたからな!」
と楽しそうに謂う
一口飲むと果実の味が口で溶けて、めちゃくそ美味しかった
黒龍は「大歳神、これは売り出す気のないヤツなのか?」と問い掛けた
「どうじゃろ?ちっこいのは活動範囲が広すぎて掴めぬからな、それは儂の預かり知らぬ話じゃよ!」
「んとにな、クロウを着けてても勝手に何処かに行っちゃうんです!って泣かせてるからな
ちっこいの大人しくしてくれねぇかな?
レイなんか海の水を引いちまうし、あの区画は立入禁止にして閻魔庁の方で管理させたんだよ
閻魔庁の方も結構手を焼いている
それにちっこいのは利益を取らねぇから開発費に上乗せしてるんだけど、それより上を行くからな結構大変なんだぜ!俺等も!」
黒龍がボヤくと青龍は榊原伊織の顔をして
「烈は人の世でも利益は総て会社に還元していますからね
役員報酬も給料も貯まったら次に何かを始めるのに総て注ぎ込んでいます
そしてそれがどれも当たっているので、星詠みしているんでしょうね」と話した
黒龍は「人の世でも聖神は利益還元やっちまうのか?聖神、いや烈は閻魔に利益は総て魔界に還元するけど、祖父がちゃんと食べて行ける様に給料は多めに出してね!と言ってるからな、出してるが、素戔嗚殿も利益は魔界に!の考えの人だからな我等は困ってるんだよ」とボヤく
「それが素戔嗚の家系なんですかね
質素倹約してますからね、素戔嗚殿は!」
「そうなんだよ!何も受け取らないから、強引に新居を建てて与えるしかない、と建御雷神が発起人となり素戔嗚殿の為に家を建てたんだからな!
まあ風呂がなかったのは、本当に知らなかったんだよ………風呂の存在忘れて完成祝で飲みまくっていた
今思うとずっと川で体洗ってたんだろ?素戔嗚殿
もっと早く言えば良いのに……と想ったぜ……」
青龍は笑っていた
烈のかわよ?には爆笑させられた
大歳神は「親父殿は今も時々川で体を洗っているぜ!レイが世界樹から直接綺麗な湧き水を流してくれてるからな、身が引き締まる!と川で体洗ってる、でもそれ見て烈がレイにかわよ、かわはボクはむりにゃのよ!と嘆いていたな」と笑った
それには黒龍も青龍も笑っていた
青龍は「僕達は今夜で一旦帰ります!烈とレイと竜馬を頼みますね!」と言った
大歳神は「儂も一旦帰る故、黒龍に頼むが良い!」と言った
黒龍はヤケクソで「解ってるよ!ちびっこいのの世話は慣れてるから大丈夫だ!」と言った
「竜馬が音を奏でる日、来ます
そして一緒に還るつもりです!
烈は仕事が溜まってますからね!」
「おー!待ってるよ!
それより飛来クラゲ食いまくってるお前の妻、かなり酔っぱらいだぜ大丈夫なのかよ?」
「まぁ虹色の吐いたとしても仕方ありません!
我等は一旦還らねばならないので…」
と言い青龍は炎帝に「帰りますよ!」と言った
「おー!還るとするか!
ならな伯父貴、父者、兄者、母者!
また近いうちに来るからからな!
後は頼むぜ黒龍!」
と言い飲んでる赤龍の首根っこを掴み、さっさと素戔嗚尊の屋敷を出て行った
炎帝は「赤いの龍になり飛鳥井まで乗せて行け!」と謂うと赤龍は龍に姿を変えて炎帝と青龍を乗せて上昇して気流に乗った
翌朝 竜馬は弦をギターに似たのに通して本格的に音の調整に入った
大鯰のヒゲにヤスリを掛けて均等な細さにして蜜蝋を作りそれに塗る
それで更にギターに近い音が出せる様になった
烈がクロウに作らせたピックを手渡して来るから、それで試し引きした
烈は「いい感じね!」と嬉しそうに言った
竜馬は嬉しそうに笑った
此処まで来るのに結構大変だったからだ
弦一本作るのにこんなに苦労するとは想わなかった
欲しければ楽器屋に行き買えるし、今じゃ通販も出来るのだ
欲しい時に欲しいだけ手に入っていたから、弦が切れても何も思わず次を使っていた
今思うとその弦も作っている人がいるからこそ使えていたのだと想う
ギターの器を作る人と弦を作る人がいて奏でられる音だったんだ
当たり前じゃない事を知る
この世に当たり前の事なんて何一つない事を知る
それだけでも魔界に来た意味があったと竜馬は想う
宗右衛門は常に言ってた昭和の高度成長期の話
まぁ竜馬には聞いても解らない事だらけだったが………
今ならばその時代の人が凄い苦労して今を築いたのだと少しだけ解る
竜馬は弦を引いて装着し、音を出して削ってを繰り返していた
何だって大鯰のヒゲなのだ、あまり削ったら折れちゃわないか不安だった
大鯰のヒゲって謂うだけあって片方でゆうに2メートルはある品物だった
宗右衛門は「大鯰のヒゲは絶対に折れはせぬから気合い入れて削っても大丈夫じゃよ!」と言った
「え〜、それ本当なの?
なら早く言ってよ!」とボヤいた
折れないならば、と竜馬は気合を入れて削る
削って削って削りまくって、やっとこさ弦と同じ細さにする
その工程をギターとして使うならば6本要るから、と同じ長さに揃えて削り始めた
その顔付きはもう前の腑抜けた顔じゃなかった
烈とレイは毎日畑へ日参して酒蔵を視察して調整をする
ワイン工房の方も視察に行き、出来を確認
味噌工場や醤油工場へも視察に行き、工程を確かめ味を確かめる
魔界に工場区域と謂うのが出来、そこへ働く者は閻魔庁の方で管理してくれている
新しく海水を得た事で塩なるモノも作る工場が建てられた
魔界が食から改善され、働く先も増えて人の世で言う専業主婦的な存在も工場で働く事が出来るようになり、経済は活性化して来ていた
経済が活性化するならば、それに似合う法も必要となり、青龍はその為に何度も何度も魔界に来て最低賃金とか打ち出していた
魔界に秩序が芽生え生活をする日々を送る
そんな日常が魔族を穏やかにしていた
竜馬のギターが完成間近となった頃
畑のスイカほどのイチゴみたいな果物が実を着けた
赤く色付き始めると甘い香りがあたりを包んだ
烈はその実をアルくんの背に括り付けて、持ち帰った
閻魔の邸宅まで行き食堂へと向かう
食堂のテーブルで甘い匂いの花粉で受粉した実と、苦い花粉で受粉した実を1つずつ乗せてクロスと共に味見をする為に黒龍に包丁で切って貰おうとしていた
黒龍は「どっちから切るのよ?」と問い掛けた
烈は「なら苦い方で!」と答えると黒龍は苦い方に包丁を入れてスパーンと半分に切った
そして幾つかに切り分けてお皿に乗せる
「なら甘い匂いの方も切っちまうから少し待て!」
と言い甘い花粉で受粉した方もスパーンと半分に切り、小さく切り分けた
黒龍は「覚悟は良いか?ちっこいの!」と問い掛けた
クロスと烈はうんうん!と頷いた
烈は「にゃらまずは苦い方!」と言い苦い花粉で受粉した実を食べる
すると甘い果汁がお口いっぱいに広がり、烈は飛び上がって喜んだ
「やったあー!黒龍、クロス!甘いにょよ!」と謂うと二人もパクっと食べた
黒龍は「うん!甘いな!」とこれは美味い!と喜んだ
そして次は甘い花粉で受粉した方だった
烈は一口パクっと食べると???となった
「にゃに!これ!お口蕩けるにょよ!」
烈が言うと二人もパクっと食べた
黒龍は「めちゃくそ美味えな!」と喜んだ
烈は「クロス!成功ね!」とハイタッチして涙を流して喜んだ
そこへ甘い匂いに誘われて朱雀がレイを連れてやって来た
「れちゅ!」レイは走って烈に近付く
朱雀は「すけぇ甘い匂いだけど、旅に出てねぇのかよ?このフルーツは?」と問い掛けた
黒龍が「大成功だぜ!食ってみろよ!」と言った
朱雀は切り分けたフルーツをパクっとお口に放り込んだ
すると蕩ける様に甘くて「大成功だな!」と喜んだ
そこへ天照大御神もやって来て切り分けたフルーツをパクっと食べた
「ん!これは美味いではないか!」と言い烈とクロスの頭を撫でた
そしてレイの頭を撫でた
甘い匂いに誘われて建御雷神や素戔嗚尊もやって来た
閻魔もやって来て美味しい!美味しい!と絶賛してくれた
烈は「えんま、これは切り売りにしたら?」と問い掛けた
「切り売りですか?でも虫わきませんか?」
「だから4人集まったら、その場で切るのよ
それか予約制にして順番に切り分けて売りゅのよ!」と提案する
「それは良いですね!
ならクロウ達に言って売らせます!」
「後ね、黒龍、ジャムにしても保存食として食べられりゅにょよ!」と言う
「ジャム?それは?」
「じぃさんに作らせるにょよ!
それで明日は試食会やりゅのよ!」
「それは良いですね!」
「クロウに言って畑から持って越させにゃいと!」
と良い烈は走って外に出る
黒龍はそれを見送り「忙しい奴だな!」と言った
レイとクロスはお口を甘く染めてフルーツを食べていた
ニコニコの笑顔で食べてるから、注意は……出来なかった
かなり食べごたえのあるフルーツは、かなりの魔族を夢中にさせた
朱雀はそんなレイのお口を拭いてやり、クロスもキュッキュッと拭いやり世話を焼く
黒龍は朱雀に「この二人、素戔嗚殿の家に連れて行ってくれ!」と頼んだ
「了解!あ、そうだ!明後日期限の2週間だから集会所に人を集めてくれねぇか?」
閻魔は「解りました!楽しみですね!」と言い放送鳥を飛ばして魔界全体に放送を流すと約束してくれた
建御雷神は疲れ切って甘いフルーツを食べていた
朱雀は「何か疲れてません?」と問い掛けた
「朝から烈に電気取られてクタクタだわ!」とボヤいた
朱雀は「電気?」と問い掛けた
すると閻魔が説明した
「魔界全体に放送を流せる様になったのですが、放送鳥で流すので、定期的に電磁エネルギーなるものを必要とし注がねばならないのです!
無論私もフラフラです!」
朱雀は「あ、雷帝でしたね」と今更ながらに言う
閻魔は笑って「でもこのフルーツで疲れは取れました!本当に聖神は新種改良しまくりで、この魔界に美味なるモノを届けてくれますね!
また研究費と開発費を上乗せして計上せねば!」と言った
市場はパート帰りの主婦で賑わい活気付いていた
流通貨幣 魔界銭じゃ足らなくて紙幣も出す予定だった
閻魔は「近いうちに魔界に紙幣が登場します
紙を生産するライン工場を作りました
それに伴い閻魔庁の地下に紙幣を印刷するラインを作りました!
それに伴いを結界を幾重に掛け鍵も付けました
それに伴い地龍と雅龍に管理者になり管理させるつもりです!
本当は金龍になって欲しかったのですが、金龍は辞退しましたからね!」と少しだけ恨み言を言った
黒龍は「親父は今次代の金龍と天龍を育てるのに心血を注いでいるからな………少しやり過ぎな気もするが………誰も止められねぇからな」と苦しい胸の内を吐露した
閻魔は眉を顰めて「やはりあの噂は本当なのですね………金龍が常軌を逸脱した教育している……って噂になる程ですよ?
何故誰も止めないのですか?」と問い掛けた
「親父は炎帝が描く果てが狂わないか?
そればかりに囚われすぎているだよ
だから次代を育たねば!と必死になってる!
炎帝は金龍を視ていたのに何も言わない………
本当に誰か何か親父の目を覚まさせてくれねぇかな?と何時も想うんだけどな………」
「ならば暫く様子を見をしましょう」
「え?……」
「今魔界には聖神がいます
彼が動かないのなら炎帝が動くでしょ?
炎帝が動かなかった、それは聖神が何かするとでも思っているんじゃないんですか?」
「そうなのかな?
それよりも閻魔は………お前は……聖神が復讐を決意するまでの想いを知っていたのか?」
「……………ええ、本人が炎帝に話していた時に横にいましたから………」
「そうか、俺は何故素戔嗚の一族を終わらせたのか?不思議だった………あんなに腐っていたら終わらせるしかなかったんだな……」
「あの一族は破竹の勢いで魔界を牛耳っていましたからね
閻魔庁の方でもあの一族か必ずや重要な役職には居座っていましたからね
無能なのに文句は一人前、そんな奴等だった
黒龍もよーく知ってるじゃないですか!」
「あぁ、本当に偉そうだったな
あの一族が魔界の主要な役職から追われて、仕事がサクサク捗って、どんだけ邪魔してたのよ?って思ったからな……」
「まぁ聖神は死刑だった所、炎帝が人の世に堕としました
人の世で彼は何千年と生きている内に、もっと強かな存在となり己を鍛え上げた
今思うと炎帝の采配は間違ってなかったと言えます………ですがあの時、私も人の世に墜とすなんて甘いとは想いましたがね………」
炎帝を人の世に墜とした存在が何言ってるのよ?と黒龍は想った
まぁ何にしても……今を変えるとしたら、それは飛鳥井烈と謂う存在だけだろう
炎帝と青龍が絶大な信頼を置く存在
それが彼なのだから!
「なら閻魔、俺はちびっこいの探しに行く
怪我でもさせたら炎帝に顔向け出来ねぇからな!」
「承知した!ちびっこいのは目を離すと結構危険に出会してるからな、気を付けてやってくれ!」
黒龍はレイを朱雀に託すと、厩舎へと向かい馬に飛び乗った
「素戔嗚殿の家だよな?」と素戔嗚の屋敷まで飛んで行く
だが烈はいなかった
素戔嗚尊もいなかった
縁側にはさっきのフルーツが置いてあった
素戔嗚殿を探しに行ったか?
と思案して黒龍は烈を探しに向かった
烈は畑まで出向いて、甘い花粉で受粉したのと苦い花粉で受粉したのを籠に入れてアルくんの背中に鞍みたいに乗せて走り出した
荷物を乗せて素戔嗚尊の屋敷に走って行く
屋敷に馬を止め庭を覗き込むが祖父はいなかった
烈は縁側に籠に入ったフルーツを下ろすと、祖父を探して馬を走らせた
祖父を探して走っていると、子龍が金龍に訓練を受けている光景を目にして、烈はアルくんから下りてその光景を見ていた
金龍が怒声に罵声で鼓舞して、力で支配して訓練と謂う名の折檻をしていた
力任せに怒鳴り投げ飛ばし行き過ぎた体罰をする金龍の姿に、それでは萎縮して何も身につかない、と想った
2頭の子龍が耐えきれなくなり泣き出して、金龍は「少し休憩を取る!」と言った
そして子龍に背を向けると烈の存在が目に入った
金龍は烈の眼に、一瞬だけ息を飲んだ
「れ………」
金龍は烈の名を呼ぼうとして宗右衛門にそれを遮られた
宗右衛門は「その訓練に主はその子らが力を着けて育つと想っておるのか?」と真髄を突いて問い掛ける
金龍は言葉もなかった
「主のそれは虐待と何ら変わりはない!」
「違う!部外者は黙っておれ!」と金龍は叫んだ
「当たっているから図星を刺されて逆上か?」
「龍族には龍族の教育の仕方がある!」
「古いな金龍、それで育つ事も学ぶ事も皆無じゃよ!」
「お前に何が解る!」
「ならば主に何が解っておるのじゃ?」
逆に問い掛けられて、金龍はグッと詰まる
だが気を取りなして金龍は
「我は龍族の長である!
その長直々に教えておるのだ!
光栄なことであろうで!」と疑う事なくそんな台詞を吐く
「龍族はこんな虐待行為を光栄だと想わねばならぬか?」
哀れだな、宗右衛門が謂うから金龍は逆上して、歯止めが効かなかった
「黙れ!小童が!」
「こんな愚策で育つ次代ならば炎帝の目指す果てになど到底到達など出来はせぬよ!」
「お前に何が解る!
関係ない者が口を出すな!」
金龍は怒り狂って理性さえ吹き飛ばしたみたいに怒り狂っていた
煩い!煩い!煩い!
それもこれも総て龍族の未来の為にやっているのに!
もう黙ってくれ!
何も謂うな!
金龍は烈がそれ以上何か謂うのを止めようと……力任せに烈を殴り飛ばしていた
少し黙らせようとしただけなのに……金龍の目の前で………
烈の小さな体が吹き飛ぶ……
黒龍は烈を追い掛けて来て、その光景を目にして慌てて吹き飛び意識をなくして地面に倒れた烈に駆け寄った
「親父!何やってるんだよ!
この子は素戔嗚尊の孫だぜ!
今世は炎帝の息子として生きている!
もし何かあったら……俺等はもう魔界では暮らせなくなるんぞ……」
黒龍の哀しげな声に金龍はハッと冷静になった
力任せに殴られた烈の頭は陥没していた
黒龍は烈の凹んだ様になった頭を目にして
「親父、烈が死んだら……龍族は終わるぜ!」
そう言い烈を抱き上げて愛馬に跨り素戔嗚尊の屋敷に飛んで行った
残された金龍は呆然として………立ち竦んていた
龍族の未来の為にやっていたのに?
龍族の未来が消し飛ぶやも知れぬ事態を己が引き起こしたと謂うのか?
金龍は力なく崩れ落ち、頭を抱えた
次代を育てるのが使命だと想っておった
その為に日々次代を育てていた
それなのに……我は何をした?
我はあんなちびっこいのに腹を立て殴り飛ばしたと謂うのか?
何であんな事をした?
黒龍は素戔嗚尊の屋敷の前に行くと朱雀がレイを帰って来た所でバッタリ合った
朱雀はグダっーとして黒龍に抱えられている烈を目にして「何があった!」と顔色を変えて問い詰めた
黒龍は金龍が烈を殴ったと伝えた
朱雀は金龍に強烈なパンチを御見舞され凹んだ側頭部を目にすると「黒龍、お前烈とレイを抱っこして俺の背に乗れ!」と言った
朱雀は鳥に姿を変えると、黒龍が烈を抱き締めたままレイと共に乗り込んだ
朱雀は天高く飛び上がると、気流に乗り人の世を目指して飛び立った
朱雀は飛鳥井記念病院の屋上目指して只管飛んでいた
そしてやっと飛鳥井記念病院の屋上へ下りると、兵藤は黒龍の腕から烈を奪うと抱き上げて走った
屋上は鍵がかけられてなくて、直ぐにエレベーターに乗りマンションの正面玄関を抜けて、病院の中へ入って行く
兵藤は受付に飛鳥井烈が意識不明だと院長に伝えろ!と謂うと即座に久遠が飛んで来て烈をストレッチに乗せて行った
レイはニブルヘイムの声で黒龍に
「黒龍、貴方は今直ぐ魔界へと還り竜馬の世話をお願いします!
竜馬が皆に音楽を聞かせる日の変更はない!
なので貴方が竜馬を支えてその日を迎えさせなさい!」と命令した
黒龍は「了解した!閻魔は既に魔界中に告知しただろう、ならば変更はないと謂う事だ
俺は直ちに魔界に行き閻魔に親父がしでかした事を伝えねばならない!
そして竜馬を烈の変わりに支えて成功させるとする!」と言い病院を早足で駆けて行った
兵藤はレイを抱き上げると、携帯を取り出し康太に連絡を入れた
ワンコールで電話に出る康太に兵藤は
「すまねぇ、烈が金龍に殴られて側頭部陥没して、意識不明で病院に連れて来て久遠に預けた」と伝えた
康太は言葉もなかった
そして息を飲むように自分を落ち着かせ
「病院へ行くわ!」とやっとの想いで返事をした
康太は電話を切ると榊原に
「烈が金龍に殴られたらしい……」と言った
榊原は信じられないと言った顔をして
「え?我が父があんなに小さい子供を殴ったと謂うのですか?」と唖然として言った
「何が起きてるんだよ?」
康太は果てが詠めなくて解らない事ばかりだ…………と嘆く
榊原も「僕にも解りません………金龍は子供を殴るような龍ではなかった筈ですが……」と言った
だが現実は烈は金龍に殴られ久遠の病院に運び込まれたと謂うのだ
それが現実だった
榊原は即座に慎一に電話した
暫く鳴らされやっと出た慎一は「遅くなってすみません、貴史から烈の入院道具を頼まれて用意してました!」と伝えた
既に兵藤が慎一に伝えていたのだと知ると
「頼めますか?慎一
我等もこれから病院へ向かいます!」と告げた
榊原は慎一との電話を切ると「社長室に行ってきます!」と告げ副社長室を後にした
社長室をノックすると瑛太の声で「どうぞ!」と謂れ榊原は社長室のドアを開けた
瑛太は「どうしました?」と問い掛けた
少し青色が悪い榊原を見れば何かあったのだろう、と伺えられた
「烈が頭を陥没させ病院へ運ばれた様なので…」
榊原が伝えると瑛太は顔色を変えて
「ならば直ぐに行ってあげなさい!
私達は還りに病院へ顔を出します!
女手が必要ならば母さんでも京香でも呼びなさい!」
「解りました!」
榊原は社長室を後にすると副社長室のドアを開けて「康太、行きますよ!」と言った
「あぁ、今夜魔界へ行かねぇとならねぇな」
「それは烈の意識が戻ってからでも大丈夫でしょ?
悪いですが、僕は烈を傷付けた金龍には暫く逢いたくないです!
ぶち殺したら大変なので、止めときましょう!」
「………でもさ、そこまで金龍は追い込まれていた
って事だろ?それに誰も気付いていなかったのか?ってオレは想うぜ!
オレだってこの先、宗右衛門を欠いて1000年続く果てなんて夢のまた夢になるしかねぇからな!
烈に何かあったら、ぶち殺したくなるけど、それは聖神の望む果てか?」
「烈は、嫌 聖神は炎帝に報いる為だけに魔界の礎になる、と素戔嗚殿に話されたそうです
儂を生かしたは炎帝で、炎帝は約束を守ってくれた、ならば儂は炎帝に報いる為に魔界を変える礎になるつもりだ!と言っていたと話してくれました………」
「報いなくて良い
自分の好きに生きろって言ったのにな
アイツはクソ真面目な素戔嗚尊の直径だよ!」
本当に嫌という程に良く似てる
康太と榊原は地下駐車場まで向かい、車に乗り込み飛鳥井記念病院を目指した
飛鳥井記念病院の待合室には兵藤とレイは座っていた
慎一は康太を見付けると飛んて来て
「個室を抑えておきました!
そちらへ移りませんか?」と声を掛けてきた
康太は「貴史、個室へ行くぜ!」と言った
すると兵藤は立ち上がりレイを抱き上げると歩き出した
無言で個室まで向かい、個室に入るとソファーに座り
「何があったのよ?説明してくれ!」と言った
兵藤は「俺は見てた訳じゃねぇから詳しくは話せねぇんだわ!
レイと素戔嗚殿の屋敷に還って来たらぐたーっとしてる烈を抱き上げてる黒龍を見たから朱雀になって飛んて来た
その時に金龍が烈を全力で殴り飛ばしたと聞いただけだ!」と知ってる事を全部話した
榊原は「我が父が子供に暴力を奮うとは考えたくないです…………」と謂うと
兵藤は「でも最近は次代の金龍と天龍相手に日々折檻ばりの訓練してたって聞くからな、ちびっこいのに暴力奮うボーダーラインが下がったのか?と俺は想ったけどな…………」と正直な話を言う
「烈の処置が終わったら一度父に逢って来ます!
そして烈が味わった分の痛みは返さねばなりません!」と言った
だがそれを対して兵藤は「止めとけ、青龍!烈の意識が戻って烈がどうしたいのか?聞いてからにしとけ!」と言った
榊原は「溜飲は下がりません!烈は今は我が息子!飛鳥井宗右衛門として1000年続く果てへと繋いでいる最中なんです!
なので命でも落とそうものならば、命で持って償うしかない!」と吐き捨てた
それでも兵藤は「烈は死なねぇよ!レイが烈を死なせるかよ!」と言った
榊原はレイを見た
レイは冷たい感情のない眼で榊原を見ていた
烈の処置は日付が変わっても続けられていた
飛鳥井記念病院へ運び込んだのが午後2時近くだった
飛鳥井の家族も個室に来たが、烈が個室に戻らないから、ICUに入るにしても、手当が終わったらラインすると約束して家へ帰した
午前1時を少し回った時、個室に久遠が姿を現した
「頭蓋骨を陥没させ内出血で脳の中が破裂寸前だった
何をしたらそんな状態になるんだ?
内出血が凄くて血を抜くのに時間が掛かった
破裂した部位の血管の修復して、取り敢えず出来る処置は全て済ませた
後遺症はどう出るかは?解らない
後少し力を加えていたら頭蓋骨を突き破り脳の半分が損傷していた
ギリギリセーフだったとは言え、脳のダメージが大き過ぎて、意識も戻るか?保証は今の所ない
あれだけ脳が損傷受けたら起きる事なく植物人間になる可能性も捨てきれねぇからな!
これは脅しじゃねぇ!俺はそんな患者を見てきたからこそ言える事だって言ってるんだ!
まるで時速100キロのトラックと正面衝突した位のダメージを脳は負っていた!
んで、烈はICUだ、外からなら見せるが中へ入れさせられねぇ!」
と説明をして個室を出て行った
兵藤は説明を受けて
「そりゃあそうだろうよ!
あんなにちっこいのが金龍のフルのパンチを喰らえば本体もない烈ならばそうなる!」と言った
榊原はぷるぷると震えていた
何でこんな愚かしい事をしたんだ?親父殿よ!
理解し難くて、まるで見知らぬ誰かの話を聞いている様だった
だか現実として烈は意識不明の重体だ
これは現実なのだと榊原は己を理解させる
榊原は「やはり一度魔界へ行きます、何故こんな愚かしい事をしたのか?聞かねばなりません!」と言う
兵藤は「止めとけ!今はもう素戔嗚殿の耳にも入って建御雷神の耳にも入ってるだろう
当然閻魔の耳にも入ってるとしたら、此処からは俺等の出る幕はねぇ!」と吐き捨てた
「朱雀…………」
「今 一番悔いているのは金龍だろう!
自慢の息子の青龍の子を傷付けた現実に一番苦しんでるのは金龍だろ?
だからお前は行くな!
親として烈の意識が戻るまで傍にいろ!」
榊原は項垂れて苦渋の決断を迫られていた
「あの場には誰もいなかったのか?
誰か見てる奴いなかったのか?」
と康太が冷静に問う
兵藤は「俺も見てないから知らないわ!
何せ目の前でぐだ〜っとしてる烈を目にしたから、何とかしなきゃ!と朱雀になり久遠の病院目指して飛んで来たからな!」と言った
康太は一生に電話を入れ「飛鳥井記念病院の個室に来てくれ!」と告げた
一生は『怪我したのか?康太!』と慌てた
康太は「烈が意識不明の重体だ!」と告げると
『直ぐに向かうわ!』と告げた
牧場が今、追い込みの調整に入ってて大変だったから、出産ラッシュに続いて今もあまり飛鳥井ひいる頻度は下がっていた
一生は慌てて車を飛ばして来たのか?汗だくで個室まで来ていた
「烈は?」
「意識はないし、このまま戻らないかも知れないと久遠に謂われた」
「何があったんだよ?話してくれよ!」と謂う
康太は兵藤を見ると、兵藤が全部話した
すると一生も「嘘…親父があんなちっこいのに暴力奮ったって謂うのか?」と信じられない想いを口にした
そして「どんな理由があろうとも許せねぇよ!
況してや烈は今、魔界でも人の世でも変革期を迎えて大変な想いしてるのに………
烈が俺の星の周期を詠んでくれて、名馬となるべき子馬が生まれる事を教えてくれたんだよ!
で、俺は烈が示してくれた果てへと逝く為に必死になって育ててた
烈には恩もあるし、許されて来た今がある!
そんな烈を暴力で支配しようなんてした親父はやはり許せねぇな!
で、俺を呼んだのは魔界に行き事情を聞いて来いってって事だろ?
俺も真実を聞かねぇと烈に報いる事も出来ねぇからな、聞いてくるわ!」と言い病室を出て行った
ニブルヘイムが「伊織と康太は会社へ行き、烈の分も頑張って会社の見回りをお願いします
勿論施工会社の方も毎日巡回して社員に目を光らせて下さいね!
それか宗右衛門の不在を担う事となりま!
なので貴方達は還り眠り朝になったら宗右衛門の分も仕事をして下さい!
烈が戻った時に果てが狂わぬ様に頼みますね!」と言った
榊原は「宗右衛門の不在ですから荷が重いですが、確りと留守は守り通します!」と約束を口にした
康太も「烈の果てを狂わすのは何人たりともしてはならぬ!例えオレでもな!
だから留守は守り通すからニブルヘイムは烈を死なない様に導いてやってくれ!」と謂う
ニブルヘイムは「私は死を司る神ではありませんが………耳元で恨み言を言いまくり、死なせない様にします!」と言った
恨み言を言って繋ぎとるんかい………康太は言葉もなかったが、今はそれでも信じるしかなかった
康太と榊原は病室を後にした
「ひょーろーきゅん ようじありゅ?」
「明日 誰かにお前を託したらやる事あるから還るさ!」
レイはコクッと頷いた
ソファーの上で目を瞑り眠る兵藤はレイを抱き締めて眠りに落ちた
翌朝 京香に兵藤は起こされた
玲香がレイを迎えに来て幼稚舎へ連れて行く
兵藤は京香に頼んで病室を後にした
そしてその足でビルの屋上に出て朱雀に姿を変えると、魔界へ飛んで行った
康太と榊原は会社に顔を出して、ニブルヘイムとの約束通り社内を見回った
建築と施工を烈の変わりに巡回してから榊原は副社長室へ、康太は真贋の部屋に行き仕事をする
何時もと変わらない光景だった
だがそこに烈の姿だけがなかった……
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