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第25話 音を紡ぐ 人を繋ぐ
竜馬は寝る間も惜しんで音作りに勤しんだ
そしてそれが出来上がった日
竜馬は烈を探した
だが烈は何処にもいなかった
黒龍に烈は何処にいるのか?聞いたが答えてはくれなかった
不安になる竜馬に朱雀がやって来て
「烈は今闘ってる!
だからお前はお前のやる事を完遂しろ!
それがお前を此処へ連れてきた烈に報いる事となるのだからな!」と言った
その言葉で竜馬は烈に何かあったのだと理解した
だが魔界へ来る竜馬ならば即座に烈の所へ行こうとするだろうが、今の竜馬は違った
音のない世界で一から音を奏でる
と謂う約束をしたのだ
それを完遂せねば帰れなかった
だから何時もは優しい雰囲気の素戔嗚尊がピリピリとしているのだと理解した
竜馬に対しては何時も通り接してくれているが、何処かピリピリした雰囲気を感じ取っていた
そして黒龍は竜馬の顔をまともに見なくなった
魔界広間で竜馬が音を奏でる日
康太と榊原が約束通り魔界へやっ来てた
二人はレイを連れてやって来ていた
レイは竜馬の姿を見ると「りゅーみゃ!」と声を掛けて走って抱き着いた
竜馬はレイを抱き締めて、絶対に烈の側を離れないレイが来てくれた事が嬉しくて堪らなかった
康太は「今宵が魔界のラストだ!良く頑張ったな竜馬!」と声を掛けた
榊原も「今宵……皆に音を奏でたら人の世に還ります!なので悔いのない演奏を!
そして君が何かを掴んで答えへ導かれて行ける様に我等は見届けさせて戴きます!」と言った
康太と榊原はスーツを着ていた
炎帝と青龍の服ではなく、スーツを着ていた
それを見るだけでも、烈の変わりに見届けると謂う意志を感じていた
竜馬は烈に思いを馳せる
烈、どうしちまったんだよ?
烈………俺はお前がくれた世界で音を奏でるから………
レイは竜馬を見ていた
竜馬はその瞳に烈の気配を感じていた
烈 見てくれているんだろ?
ならば俺が答えを出す瞬間を見ていてくれ!
レイはずっとギターに似た楽器を調整して弾いている竜馬の横に何も謂わず座っていた
一生も康太達同様にスーツを着ていた
康太と榊原は一生を素戔嗚の屋敷に置いて何処かへと康太と榊原行った
竜馬は一生に何も聞かなかった
烈のいない事情を聞きたいであろうに、何も聞く事はしなかった
康太と榊原は天馬と風馬に乗り込み、閻魔の邸宅まで向かった
その日は兵藤もスーツを着て、康太達を待っていた
榊原は怒りに満ちた蒼いオーラを顕にして、康太と共に兵藤に近付いた
兵藤は「素戔嗚尊が待ってる!」と謂うと康太と榊原は閻魔の邸宅の奥へと早足で歩いて行った
閻魔の邸宅の奥は、そんなに簡単には立ち入れない様になっていた
だがズンズンと歩いて奥へと向かう
執務室のドアの前に立つと、ノックをしてドアを開けて、中へと入った
執務室の中には金龍がソファーに座っていた
その周りに閻魔や建御雷神、素戔嗚尊、転輪聖王、黒龍が座っていた
黒龍は「烈は?どうなった?」と尋ねた
それに答えたのは兵藤だった
「あんなちっこいのが本気のパンチ受けたら頭部が陥没するって解らなかったのか?
次代の金龍や天龍相手ならば、殴り付けても重傷は負わないだろうが、今世の烈は一度魂が消滅しかけたのと、母体からの栄養不足で軟に出来ている…………そうやって聞かなかったのか?」
と怒気を含み言い放った
金龍は何も謂う事はなかった
黒龍は「次代の金龍と天龍だって怪我しまくりだったさ!
誰があそこまでやれって言ったんだよ!
俺は何度も止めたよな?
夏海は毎日毎日怪我して還って来る我が子を目にして泣いていたと雅龍が常に訴えていた
なのにあんたは次代を育てるは当主の務め!と人の話を聞かなかったんだよな?
挙げ句に烈に図星を突かれて逆上とか、我が父ながら情けない………」と言い捨て顔を押さえて泣いていた
素戔嗚尊は何も言わなかった
康太と榊原も何も言わなかった
黒龍は青龍に「謂う事は何もねぇのかよ?」と問い掛けた
すると榊原の憎悪に染まった冷たい瞳で金龍を見て黒龍を見た
その瞳の冷たさに、黒龍は想わず息を飲んだ
「今日は僕らは飛鳥井康太と榊原伊織として来ているので、今話しをする気は皆無です
まぁ烈が息を止めたならば即座に………貴方の息の根も止めますよ?
そんな話が聞きたいのですか?」
ピキッピキッと周りを凍て付かせる程の冷たい瞳に黒龍は何も謂う事は出来なかった
閻魔が「ならば話は烈の意識が戻ってからと謂う事ですね………本当に魔界としては烈の不在がどれだけの痛手になるか……
烈が魔界にどれだけ貢献しているか、知らぬ訳はない筈なのに………
ジャムにすると謂うフルーツも今は売りに出す事もストップした状態です
クロスは花粉を集めておくから、今は新しいのは作れないと言ってます
聖神は本体はないですし、今はあれだけちっこいので………神としての転生も危うくなる
何もかもが魔界にとっての大ダメージとなっているのが現状です!」と吐き捨てた
金龍は「すまなかった……烈が死んだら儂も消滅させてくれて構わない……」と吐き出す様に言った
黒龍は想わず金龍を殴り飛ばした
「あんたの命なんか代価にもなんかならねぇんだよ!
あんたは魔界の為に何をした?
次代に行き過ぎた教育して………周りを心配させていただけじゃねぇかよ!」
興奮する黒龍を康太が止めた
「黒龍、止めろ!
オレの眼は今 烈の眼と同化させてある
レイとオレとで竜馬を見届ける為に烈の眼と同化させて来たんだよ
烈は諍いを好まねぇ、人が人を傷付け合うのを極端に嫌うんだよ
自分はあんなに踏み躙られて傷付けられたのに、復讐に身を窶した時だってアイツは誰も殺める事はしなかった
周りを巻き込んで素戔嗚尊の一族が滅べと願ったが、アイツは誰一人殺めちゃいねぇんだ
アイツは諍いを嫌う、そして一方的に痛め付ける姿を嫌う
だからこそ金龍に解からせる為に真髄を突いた
アイツならば此処で金龍の軌道修正をやっとかねば、取り返しがつかない事態になると踏んだのかも知れねぇな!
アイツは誰かが傷付くならば、己が傷付いた方がまだましだと想っている節があるからな
金龍、教育と暴力は違う!それを履き違えるな!
お前は教えていると想っていても、受け取る方が萎縮したらその教えはそこで終わるんだ!
烈の記憶を垣間見た時に、烈はそれに心を痛めていた
一方的な暴力は虐待にしかならない!
お前は次代を鍛えると謂う名目で暴力を振るっていたんだよ!
そりゃお前が幾ら教えても身になんか付かねぇよ!己を鑑みて答えを導き出せ!
烈はその答えしか必要とはしない!」
康太は言い捨てた
榊原は「と謂う事で話し合いは我が息子がカタを付けに来る日まで保留になさい!
我が息子は素戔嗚尊の魂を受け継ぎ、炎帝の魂も受け継いています!
ちっこいくてもその身に闘士を宿し正義と規律と秩序を重んじる存在です!
カタは烈が自ら着けに来ます!
なのでその時を待ちなさい!」と言い捨てて、康太と共に出て行ってしまった
兵藤はそれを見送り「って事で話し合いはお開きで良いか?」と閻魔に問い掛けた
閻魔は「それしかありませんね!と謂う事で解散します!」と言った
だが誰一人動く事を忘れたかの様に……時が止まった様にそのままだった
閻魔は兵藤に「烈の意識は戻りませんか?」と問い掛けた
「あぁ、久遠も今回ばかりはどう後遺症が出るか?意識が戻るのか?定かじゃねぇと言っていた
下手したら植物人間となるやも知れぬ……とまで言っていた
植物人間って謂うのは、体中に器械で繋がれ意識はないのに生きながらえさせる事を謂う事を指す
それになるかも知れないと久遠は言っていた
そこまでの脳のダメージがあった
内出血が凄くて破裂した箇所は閉じたが今も縫わずに開いたままで脳のダメージの軽減措置を受けている!
そんな烈の気がかりは魔界に置いて来た竜馬だからな、康太とレイが烈の眼と同化させて見届ける為に来てるんだよ!
魔界で初めて音楽と謂う音が流れ音を紡ぐ
それを烈がどれだけ楽しみにしていたか………
だからな康太とレイは今は他事は考えたくねぇんだよ!
烈は絶対に死なねぇ!
って事で俺も今は兵藤貴史として来てますので、それでは!」
と言い兵藤は執務室を出て行った
素戔嗚尊は何も謂わずに執務室を出て行った
建御雷神もその後に続いて出て行った
黒龍はそこには置いて置けないから、金龍を連れて執務室を後にした
閻魔の邸宅を出て金龍の自宅まで逝く
金龍は力なく黒龍の馬に乗せられて連れて行かれていた
我が父がこんなにも力が抜けて気落ちし生きる気力すらなくしている姿を目にしようとは……
黒龍はそんな事は一度も考えた事すらなかった
何時も陽気な愛妻家で自信に満ちて豪快な性格の親父が………今は放っておいたら死んじゃうんじゃないか?って程に弱く見えた
金龍の家に連れ帰ると一生が来ていた
スーツを着て緑川一生として来ていた
一生は金龍を支える様に応接間へと連れて行った
黒龍は「何の用だ?緑川一生?」と人の名で呼んだ
一生は不敵に嗤うと「そんなに警戒するなよ!」と言った
ソファーに座ると一生は黒龍と金龍、銀龍を見て
「俺の話を聞いてくれねぇか?」と言った
黒龍は無言で頷いた
「俺は飛鳥井の家で生活している
俺は烈の眼が怖くて………烈を蔑ろにしてしまった事があった
烈はそんな俺の気配を詠んで距離を取っていた
言われてみないと解らなかったが、烈の方から俺に話し掛けて来る事は滅多となかった
俺は他の兄弟の謂う事には耳を傾けても、烈は無視した
それはアイツの眼で見られたら俺の心の中なんて見透かされそうで……怖かったんだよ
丁度 レイが飛鳥井に来た頃だった
烈と貴史が狙われて怪我して病院送りになった
そんな時、俺は烈の心配よりも、貴史の心配をしていた
貴史が烈のがいたから巻き込まれた
あんなのといたから巻き込まれたんだ!と言ってしまった
康太や伊織からはもう烈には関わるな!と言われたよ
怪我した貴史からもお前は烈を嫌ってるもんな!とズバッと謂われて、自分の愚かさを突きつけられたみたいで…俺は自己嫌悪に陥った
俺は自分がなんて愚かな事をしてしまったのか?………と悔いた
康太の眼とは違う………その眼には俺はどんな風に映っていたんだろう?
そう想い俺は自分を責めて四面楚歌になっていた時があった
入院してた烈の面倒を見ていたけど、それさえも面倒く臭いな………なんて考えていた自分が何て滑稽で愚かなんだよ! と想わない日はなかった
烈は許してくれたよ
だけど心からは許されたかは解らねぇ……
烈は………あそこまで蔑ろにした俺に対してどうでも良い……って言ったんだよ
期待するだけ無駄だから、努力したくないからどうでも良いと言ったんだよ
俺はその言葉に復讐を心に決めた聖神の姿を思い浮かべた
アイツはどんな想いを抱いて復讐を誓ったんだろう……と想った
今回思い掛けずに当時の事を聞く機会があり、改めて聞いてもエグくて俺ならばその場で殺していたと思った程だった 黒龍も聞いたよな?」
「あぁ………本当に酷い扱いされて来たのだと今更ながらに想ったよ」
「俺はあんなに烈の事を蔑ろにしたのに、烈は許してくれたよ
許してくれ果てへと道を繋いでくれた
そんな烈に俺は報いる事も、してねぇんだよ
星詠み ホロスコープ 占術 占いは今や烈の右に出る者はいないと謂われる腕前でな、俺は烈に自分の牧場から名馬と呼ばれる馬を育てられるかな?と呟いた事があるんだよ
すると烈は寝る間も惜しんで計算して詠んでくれたんだ!
春先に産まれる馬をメニュー通りに育てたら名馬になるかも知れない、と謂われて烈に計算した紙を見せてもらった
俺は見ても解らなかったが、烈が言うとおりに育てていたら間違いはなかったって手応えがあったんだよ!
そんな烈だからな魔界の噂を耳にして、今 此処で 金龍の軌道修正をせねば、果てへと繋がらないと踏んだと想う
実際夏海に逢って来た、雅龍にも逢って話を聞いた
夏海は毎日毎日怪我をして帰ってくる我が子の姿に泣いて暮らしていたと聞く
で、俺も親父はやり過ぎだと感じていた
だが誰も止めなかった
嫌 止めても聞く耳を持たなかった
次代を育てるのは必要だが、修行と鍛錬と暴力と暴行は違う!
今 飛鳥井には3人の子供がいる
ちびっこいのが3人いて、そいつ等は日々鍛錬して修行している
翔と謂う次代の真贋も結構キツい修行をしているが、烈は紫雲龍騎自ら修行をしているだけあって一番キツい修行をしている
だけどなアイツ等は己の死命をちゃんと理解しているから、自分からやっているんだ
次代の金龍や天龍はどうだ?
親父に萎縮してそれが怖くて謂う事を聞いているだけだ
それでは駄目だと解らなかったのか?親父!」
一生は金龍に問い質した
金龍は「儂は炎帝に繋げてもらった龍族を繋げて行く事しか考えてはいなかった
次代の金龍や天龍が一人前になるまでにはまだ軽く1000年は必要とする
それまでに儂に何かあったら?
この先、龍族はどうなる?
そう考えたら今ここで次代を育て上げねば!と躍起になっておった
今想えばやり過ぎだった
情け容赦のない言葉を投げ掛け、罵倒して殴り飛ばすのは教育でも鍛錬でも修行でもなかったと……
今ならば解る…………」と悔いた言葉を紡いで話す
一生は「何であんなちっこいのを殴った?
頭が陥没して意識不明になる程本気で殴った?」と単刀直入に問い質した
「儂は焦っておったのじゃ……何とも言えない焦燥感に囚われて、炎帝が繋げてくれた龍族の果へ行かねばならないと躍起になっていた
素戔嗚殿もやり過ぎは駄目だと言葉をくれた
建御雷神も最近のお前はやり過ぎだ!と言ってくれていたのに………儂は誰の言葉も聞かず、自分で自分を追い詰めておった
そんな時に図星を突かれて、儂はもう絶えられなくなった………
己の間違いを指摘され、それ以上は謂うな!と想ってしまった
…だから想わず烈を殴り飛ばしてしまった………
黒龍に謂われて正気になって、自分はどれだけ愚かな事をしたんだよ、と悔いた
素戔嗚殿は何も言わなかった
愛して止まない孫を傷つけたのに…あの方は何も言わなかった
儂は心の何処かで素戔嗚尊と大歳神と聖神の魔界での話題に龍族を忘れ去られてしまったら?と謂う恐怖を覚えていた……
そんな事はないと今ならば理解できているが、忘れ去られ置いてきぼりにされる恐怖に日々何とかせねばと躍起になっていた
手を取り互いを協力し合える存在だと認めたのに………何をやっているのだ?儂は………
己の愚かさに……この命で持って償わねばと覚悟を決めたのだ!」
一生は「俺も親父の顔を見たら烈と同じ痛みを与えてやろうと想っていたさ!
だけど今俺は緑川一生故に、それは出来ない非力な人間故………無理だから、金龍の裁きは烈が下すのを待つとする!
俺はな、己の悔いた日々を想い、愚かな親子だなって想っただけだ!
俺は烈を蔑ろにした、親父は烈を殴り飛ばし殺しかけている
本当に…………愚か過ぎる龍族なんて滅んでしまえば良いとさえ想うぜ!俺は!」と吐き捨てて家を出て言った
黒龍は弟の思いが痛くて追い掛けられなかった
夜になり竜馬の演奏が始まる事を告げた
建御雷神が金龍の家を尋ね
「今宵は竜馬の音楽を死んでも聞く様にと閻魔に謂われておる故、出掛けるとするぞ!」と言った
建御雷神は金龍の腕を掴むと、金龍と共に外に出た
黒龍はその後を追い掛けた
世界樹がある広間には伝言鳥からの放送を聞いた魔族達が集まっていた
竜馬は少し高い位置に作られた即席のステージの上にいた
人の世のギターみたいな楽器を手にして、その時を待っていた
康太が「時間だ竜馬!」と合図を送ると竜馬はギターを弾き始めた
最初は生まれて始めて弾いた曲を弾いた
好きな曲を弾いて、【R&R】が初めてCMに起用された曲を弾いた
魔族は生まれて始めて聞く【音】に夢中になり聴き入っていた
静かな曲からロック調の曲まで竜馬は夢中になひ弾いていた
想いは巡る
烈に初めて逢った日
出逢って3秒で飛び蹴りされて説教された日の想い
【R&R】のメンバーと初めて逢った日の想い
【R&R】として活動して来た日々の想い
そしてこれからも【R&R】のメンバーと生きて行きたいと願う想い
何曲か弾いて最後は烈が好きな曲を弾いた
そしてラストを飾るのは康太が隼人と音弥の為に作った曲だった
竜馬は音に合わせて歌っていた
船上イベントでも皆で歌ったこの曲を、烈………お前に贈るよ
俺はお前の示す先へ行きたい
そして時間が許す限り【R&R】のメンバーと共に活動して行きたい
康太が隼人と音弥に贈った歌の様に、竜馬の宝物は【R&R】とメンバー達だと想った
竜馬は泣きながら歌を歌っていた
魔族はその音楽に涙して、思いを馳せていた
演奏が終わると魔族は歓声を上げて【ありがとう】感謝の言葉を言った
ありがとうの言葉が幾重にも重なり、竜馬に贈られる
金龍も泣いていた
我も意地も総て流れ落ちて…………後悔だけが残った
演奏が終わると竜馬はギターの様な楽器を素戔嗚尊に託して康太と榊原と共にその場を離れてレイと共に人の世に還った
榊原は青龍に姿を変えると康太と竜馬とレイを背に乗せて天高く飛んで行き気流に乗った
大分飛んだ辺りで康太は竜馬に
「烈は今意識不明の重体だ!」と伝えた
そして何故そんな事態になったのか?を話した
すると竜馬は「素戔嗚殿の縁側に座ってると色んな人が素戔嗚殿に逢いに来て話をして逝くんだ
その中で毎日のように聞かされたのが金龍の行き過ぎた次代の教育の話だった
素戔嗚殿は心痛めて『金龍には何度も言ったが聞く耳も持たぬのじゃ』と話していた
当然烈もその話は聞いていたからな、烈が金龍に殴られたと謂うならば、烈は金龍の言い逃れの出来ない部分を突っ突いたんだよ!」と言った
康太は「あぁ伯父貴の所には色んな魔族が逢いに来て話をしているんだよな
ならば烈は金龍の話しは知っていたって事か……
成る程だな、烈が無作為で動く事はねぇからな
あぁしなきゃ次代が死んでたかも知れねぇと謂う訳か、そりゃ龍族の果ても狂うわな!」と納得して言った
だが青龍は「ですが無謀過ぎなのでお尻ぺんぺんしたいです!
まぁあぁなった金龍は誰にも止められませんからね………今度からは誰かの忠告は必ず聞け!と言っておかねばなりませんね!」と言った
「んなに意固地になっていた……と謂うのか………」
康太が呟くとニブルヘイムは
「ドサクサに紛れて槍でも降らせてやろうかと想いましたが……赤い鳥が煩くて出来ませんでした
まぁそれは冗談ですが、毎日毎日素戔嗚殿の縁側にいると耳にしました
誰でも良いから金龍を止めてくれって!
素戔嗚殿が竜馬の演奏が終わったら殴ってでも何とかするって建御雷神と転輪聖王と話していたから遅かれ早かれ、事態は悪化していたとの事ですそれを烈が大分巻いて金龍を正気にさせたんですよ
まぁ………烈に何かあったら……生かしてはおきません!
私の大切な存在を奪っておきながら無傷だなんて想っていませんよね?」
と釘を刺す様に言った
青龍は「ええ、無傷で終えたら烈があまりにも報われません!
助かったにしても殴り飛ばしてやるつもりです
烈が味わされた痛みは与えねば不公平ですからね!」と言った
康太も「んなの当たり前じゃねぇかよ!
オレは息子を傷付けられ殺されかけたんだぜ!
閻魔にしたら烈を亡くせば、この先の魔界の発展は終わったも同然だからな
主軸となる烈を亡くして敢行出来る発展じゃねぇからな!
工場区域には烈の努力の結集がカタチとなりかけているんだ!
我が兄の想いを考えたら、魔界の天秤の重石を失うも同然となるんだ!
殴り飛ばして青龍には悪いけど、死んだ方がマシだと想う位の痛みは負って貰わねぇとな!」
と吐き捨てた
康太も怒り狂っていた
怒っているのはニブルヘイムだけじゃなかった
竜馬は「なら俺も殴らさせろ!」と一言だけ言った
後は誰も何も話さず、青龍は人の世の気流に乗り目的地へ向かう
飛鳥井記念病院の上のマンションの方の屋上に下りると、兵藤と一生は既に着いていた
康太が「早いな!」と問い掛けると一生が
「朱雀で全速力で飛んで来たんだよ!」と言った
榊原は「それだと僕よりも早くて当たり前ですか
僕は妻と竜馬とレイを乗せて来ましたからね」と飛ばせない事情を話した
康太達はエレベーターで1階まで下りて、病院に入り直した
そして個室用の通路に入り個室用のエレベーターに乗り込む
そして烈の個室に向かう
個室のドアを開けると、慎一が部屋にいた
康太は「烈は?」と問い掛けた
「まだ意識は戻りませんからICUにいます」と答えた
康太と榊原は竜馬を個室に残して、会社へと向かった
烈と約束したから建設と施工の見回りをしてから仕事をせねば!と考えていた
宗右衛門が護るべき会社を守ると決めていた
竜馬は慎一に「俺は一旦イギリスに行きメンバーと逢って来るつもりだ
だから烈の意識が戻ったら連絡して下さい!」と言った
慎一は「必ず直ぐに連絡を入れるよ」と約束してくれたから、竜馬はメンバーの元へと向かった
兵藤は竜馬が烈の傍を離れる事が不思議で堪らなかった
レイはベッドにもそもそと上がり込むと、寝る事にした
この小さい体に魔界の時空差は結構辛かったりするのだ
兵藤はそんなレイが眠るのを確かめて、個室を出て行った
一生も「俺は牧場に行って烈の組んでくれたメニュー通りに馬の調教してくるわ!」と言った
皆がバラバラに出て行って、慎一も烈の留守中に成らねばならぬ事をしよう!と心に決めた
夕方に隼人が交代してくれベッドに寝てるレイを抱き上げて慎一は連れて還った
レイも明日の為にやらねばならぬ事があるからだ!
烈の意識は一ヶ月経っても戻る事はなかった
ICUから機械を個室に移して、個室で器械に繋いで寝かせていた
開きっぱなしの頭部は縫われ処置された
暴行を受けた脳は膨張を繰り返す為、縫わずに処置を続けていたのだった
もう膨張はないと症状が落ち着くと久遠は烈の開きっぱなしの頭部を縫った
烈の頭部の髪はオペで傷の周りの髪を切り剃ってしまって変になってしまっていたから、髪は短く切り揃えられていた
隼人が烈が可哀想だから、と美容師を連れて来てカットしてくれ!と頼んだから奇麗にカットして剥げた部分が解らない様に切った
家族は一日に一度烈に逢いに病室にやって来る
レイは病室から幼稚舎へ行き、また病室に還って来るを繰り返していた
そして夜に上のマンションに行き、志津子と一緒にお風呂に入り、志津子に世話を焼かれて過ごす
そして眠るまで烈に話し掛ける
それを日替わりで烈の病室に泊まりに来る一生達がその光景を目にして、涙を誘った
竜馬もイギリスからメンバーを連れて帰国していた
あれから竜馬はイギリスに向かい、クリストファーからプレゼントされたマンションへ向かいメンバーと連絡を取った
メンバー 一人一人と逢って竜馬は思いの丈を話して、共に活動して行こう!と絆は強く結ばれて同じ方向を向いて活動して行くと約束し合った
メンバーも一人になって思い巡らした
自分達にとって【R&R】は何だろう
【R&R】のメンバーは自分達にとってどんな存在なんだろ?
一人の時間にそんな事ばかり考えていた
メンバーはどうしているかな?と思いを巡らせらせてばかりだった
そして皆が【答え】を探し出す
もううんざりする位考えて
うんざりする位、思い巡らした
そしてやはり【R&R】のメンバーでいたいと想った
【R&R】でまだまだやりたい仕事は沢山ある
創りたい世界は沢山ある
それは【R&R】じゃなきゃ創れない世界だった
そして何よりリーダーがいなきゃ!
リーダーの存在に救われ一緒にいられる意味を痛感していた
【答え】を皆が探して戻って来て、また共に活動する日を夢見て倭の国に戻って来たのだった
だが【R&R】のメンバーは倭の国へ還って来て、リーダーが重体で意識が戻らなきゃ植物人間になるしかないと聞かされ………失意のどん底に叩きつけられた
だがメンバーはリーダーが起きた時に、これやろう!と謂わせるイベントを考えていた
リーダーはこんな所でくたばったりしない!
絶対に還って来てくれる!
そう信じて日々、メンバーは話し合い、どんなイベントをしようか?と夢と希望を抱いて話し合った
その夜、康太と榊原が烈の病室に泊まる事となる当番の夜だった
レイは烈にベッタリ離れなかった
烈は眠ったままだった
深夜を少し回った頃、空気がピキッと張り巡らされ、目を凝らしてみると烈のベッドを取り囲む様にして見知った顔触れが姿を現した
その中にいてはならぬ存在に………康太は息を飲んだ
烈のベッドを取り囲む様にして立っていたのは、素戔嗚尊、大歳神、建御雷神……転輪聖王、そして皇帝閻魔だった
康太は「親父殿………どうして?」と声を掛けた
皇帝閻魔は康太を見て笑った
そして人差し指を唇にあて、しーっと牽制すると、レイを抱き上げて優しい笑みを浮かべていた
皇帝閻魔は「ニブルヘイム、久し振りだね!
今世の君はこんなにも小さいとは想わなかったが、何処から視ても君はニブルヘイムそのものですね」と言った
ニブルヘイムは「皇帝閻魔………5億年振りですか?どうなさったのですか?」と寝ぼけた顔で問い掛けた
皇帝閻魔は「君の大切な烈を視に来ました!
創造神から『烈の魂がどうなっているのか?視に行ってはくれぬか?』と頼まれたので来ました!」と伝えた
ニブルヘイムは不機嫌な面持ちで
「還りなさい!貴方が視て治るのですか?」と吐き捨てた
拗ねさせてしまった子を皇帝閻魔は優しく抱き締めた
「ほらほら、そんなに拗ねないの!
それでは導いて下さいニブルヘイム!」と謂うと皇帝閻魔は烈の額に手を翳した
その手にニブルヘイムも手を重ねた
烈の魂の居場所を探る
その体の中の烈の存在を探った
だが烈の魂はその体の中には見つけ出せずにいた
皇帝閻魔は「え?何処へ行ったのですか?
これじゃあ何時になっても目なんて醒めたりはしません!」と呟いた
ニブルヘイムも「私も毎晩烈の魂を探っているのですが………何処にも見つからないのです」と言った
皇帝閻魔は「え?殴られた時に魂が霧散したなんて事はありませんよね?」と信じられないと口にした
そしてその体を焔で包み「ならば私も本気を出さねばなりませんね!」と言った
レイを烈の横に寝させると「君が導きなさい!」と言った
レイは頷いた
皇帝閻魔は「ではお願いします!」と謂うと烈のベッドを囲み素戔嗚尊、建御雷神、大歳神、転輪聖王とで結界を張った
皇帝閻魔は「皇帝炎帝、伴侶殿はこの病室に結界を張りなさい!」と言った
皇帝閻魔の長い髪が風に揺れる
レイは烈の額に手を置きシンクロした
皇帝閻魔は烈の奥深くに在る深層世界へと下りるつもりだった
皇帝閻魔は呪文を唱えると、倒れ込み、その体を榊原が支えて椅子に座らせた
皇帝閻魔は烈の深層世界の奥深くに烈の魂を探して潜った
奥へ
奥へ
と潜って行く
その世界は真っ暗で何もない世界だった
だが必死になり烈の魂を探る
「これだけ深い闇は冥府の闇ですか?」と皇帝閻魔が独り言ちる
するとニブルヘイムが声が響いた
「宗右衛門の魂は一度冥府の闇に落とされましたから…………元々が何も持たぬ神でした
何も求めぬ神でした………だから今も彼の中は冥府の闇に染まっているのです」
と信じられない事を言った
康太と榊原は驚愕の瞳で互いを見た
そこまで絶望して何も求めなかったのか?と哀しくなる
そんな暗闇に突如透明な球体が姿を現した
その球体は皇帝閻魔の姿を確かめると、姿を現した
皇帝閻魔は「ヘルメース殿…」と信じられない想いでその名を呼んだ
ヘルメースは「僕は彼で在って、彼は僕で在る
我等は1つに融合し、互いを護る存在となった
烈の魂は金龍に殴られた事により霧散した
慌てて僕が烈の魂を包み込み闇に溶け込み護った
だがこれ以上は彼の体は持たない
だから創造神に言って貴方を呼んだのです
此処は冥府と同等の闇を孕む世界
貴方でなくば此処までは辿り着けはしなかった」と言った
「ヘルメース殿はニブルヘイムに呼ばれて烈と同化したのですか?」
「まさか、僕が誰かの謂う事を聞くとお想いか?
僕は此処で消滅させたくない魂を見つけた
だけどもう僕には最盛期の力は残ってはいなかった………だから彼と同化して彼の中で生きて行くと決めたんだ!
僕は彼で在り、彼は僕でも在る
僕は彼の中で世界を視る
だから此処で死なせたくなかったから、僕の闇で包み込み、魂が消滅しない様にした
さぁニブルヘイム、皇帝閻魔、彼を導いてあげて
そしたら彼は目を醒ますから!」
ヘルメースはそう言い烈の中へと溶け込んだ
皇帝閻魔は烈の魂を受け取り、闇の中から抜け出して、ニブルヘイムの手に渡した
ニブルヘイムは烈の魂を愛しげに抱き締めて………
烈の中へと戻した
皇帝閻魔が意識を戻すと、素戔嗚尊、建御雷神、大歳神、転輪聖王は結界を弾き飛ばした
康太と榊原も病室に張った結界を弾き飛ばした
烈は目を醒ますと「おにゃかへったにょよ」と呟いた
目覚めた第一声がそれで素戔嗚尊は安堵して烈を抱き締めた
「じぃさん……とうしゃん……ごめんね……」と謝った
素戔嗚尊は「主が生きていてくれるならば………それで良い」と言い泣いていた
大歳神も「こんなに心配させて!伊織殿がお尻ぺんぺんだと申しておったぞ!」と言った
「いたいにょよ………ぺんぺんは……」
「倅よ、何度父の寿命を縮めさせるのじゃ!」
「とうしゃん……ごめん
そして皇帝閻魔殿………ありがとうにゃの」
皇帝閻魔は「私の事、ご存知であったか?」と驚いた顔をした
「母しゃんの大切にゃひとらもん
知ってるにょよ……ありがとう」
皇帝閻魔は烈の頭を撫でて
「あまり心配させるんじゃありませんよ」と言った
烈は頷いた
レイは「れちゅ れちゅ 」と泣いていた
烈はレイを抱き締めて「レイたん ごめんね」と謝った
ひっくひっくとレイは泣いて、そのまま眠りに落ちた
素戔嗚尊がレイを烈の横に寝させると
「もう大丈夫か?」と問い掛けた
烈は頷いた
大歳神は「ならば倅よ、主の手でカタを着けに来られよ!主の手でしか裁けぬ事だと解っておるな!」と言った
「解ってるにょよ
れも………もう殴られるにょは嫌らな」とボヤいた
皇帝閻魔は炎帝を抱き締めて「ならば我は逝くが、もう大丈夫か?」と問い掛けた
「あぁ親父殿、助かった」
「それは創造神が役務を言い付けただけなので、大丈夫です!」と笑って姿を消した
素戔嗚尊は「烈………儂は死んだ方が楽な想いは二度としとうない!」と涙ながらに訴えられ
「ごめん……じぃさん」と謝った
「主には四鬼の下働きしておる屈強な鬼を仕えさせると閻魔が燃えておった
じゃからもう一人でウロウロするてないぞ!
儂を長生きさせたいのならば、側仕えの者と共にゆけ!」と一歩も引かぬ姿勢で謂われて烈は折れるしかなかった
「解ったにょよ…ゴツいのと共に逝くにょよ!」
「うしうし!ならば己の手でカタを着けられよ!
それには一日も早く元気になるのじゃぞ!」
烈は頷いた
素戔嗚尊は建御雷神と共に魔界へと還って行った
神威は弥勒に「乗せてくか?」と問い掛けた
「ならば道場で飲み明かそうぜ!」と言い病室を後にした
榊原は烈に「少し寝なさい!僕達は明日の朝にまた来ます!」と言い康太と共に還って行った
烈とレイは抱き合い眠りに落ちた
翌朝 様子を見に来た久遠に「せんせーおはよー」と声を掛けた
久遠は驚いて「目が醒めたのか?」と安堵の声を上げた
烈は頷いた
「一ヶ月も寝てたから体力も落ちてるからな、これから機能回復訓練に入る!
食べ物も一ヶ月も寝てたからな、おもゆからだな!」
「お腹減ったにょに………おもゆ……」
ショックを受けて謂う姿に久遠は心底安堵していた
今回ばかりは駄目かと想った
一ヶ月経ったのに目が醒める気配すらなかったから、このままだと植物人間になるしかない……と想っていた
久遠は「トラックにでも跳ねられたのか?」と怪我の状態を慮り問い掛けた
烈は久遠は魔界に行った事があり、金龍を知っていたから敢えて「金龍に殴られたにょよ!」と言った
久遠は金龍を思い浮かべる
あの屈強な体をした龍ならば、トラック位の威力はあるわな、と想った
「康太に殴り返して貰え!」
「ボクは暴力嫌いにゃのよ
だからね暴力で返す気はにゃいのよ」と言った
久遠は「なら殴られねぇ努力位しやがれ!」と言った
「それ、一番難しいにょよ」
「それでも、だ!」
「解ったにょよ!せんせー」
「ならこれから検査して、終わったらおもゆだ!」
「おにゃかへったにょよ」
「でも食べたら胃が激痛だからな様子を見て少しずつだ!」
「解ったにょよせんせー!」
久遠はスタッフを呼び烈を検査に連れて行った
飛鳥井の家では言葉少なに朝食を取っていた
そんな時康太が「あ、烈、目が醒めたわ!」と伝えた
玲香はそれを聞き涙して喜んだ
清隆も瑛太も京香も喜んでいた
で、康太は「目醒めの第一声が『おにゃかへったにょよ』だった!
だけど多分一ヶ月も寝てたからな、おもゆしか飲めねぇからな
慎一、久遠に聞いてプリンの差し入れ頼むな!」と言った
玲香は「ならば我がプリンを買って逝くとする!」と言った
京香も「我も烈の好きな杏仁豆腐を沢山作って差し入れするとする!」と言った
兄達や凛と椋も烈の無事を聞いて安堵した
宗右衛門を欠いてこの先やれる気がしないからだ!
まだまだ宗右衛門に修行を着けてもらわねばならぬのだ
康太は「後で榊原の家にも連絡入れとかねぇとな!」と謂うと清隆が「ならば私が連絡を入れておきましょう!」と言った
「頼めるか?父ちゃん」
「ええ、任せておいて下さい!」
榊原の家族には連絡を入れようかどうか?悩んだ
また烈の入院、そして今度は意識が戻らないかも知れない現実を伝えて良いのか?と悩んだ
だが清隆が「隠されるならば全てを聞きたい筈です!」と謂われて話した
魔界の下りは省いて、事故として伝えた
トラックに跳ねられて脳が損傷したと話した
真矢と清四郎は病院に駆けつけてICUに入っている烈の姿を見て泣いていた
そして毎日、隙を見つけてはICUまで烈を見舞いに来てくれていたのだった
清隆は連絡を入れればきっと安堵してくれるだろうと想っていた
自分達も烈が意識が戻った事にこんなにも安堵しているのだから……………
清隆は朝食を終え自室に戻ると、清四郎に電話した
少し鳴らし続けてやっと電話に出た
『もしもし清隆か?何かあったのか?』
不安げに問い掛ける清四郎に清隆は
「烈の意識が戻りました!」と伝えた
『本当に?………今回ばかりは久遠先生も駄目かもと謂われて……私はお前からの電話を取るのが怖かったんだよ』
だからあんなに鳴らしても出なかったのか?と想った
「起きた第一声『おにゃかへったにょよ』だったそうです」
『烈らしいですね
真矢に知らせて病院へ向かいます!』
そう言い電話が切れた
清隆は秘書に電話を入れた
「会社へ行くのは少し遅れます
病院へ行ってからになりますので!」
と伝えると『了解しました!烈、目が醒めたのでますか?』と問い掛けた
秘書課の佐伯だったら家で如何に真矢と清四郎が泣き暮らしているか?知っているからこちらの事情も解っているのだろう
会社には烈が入院している事は伏せてある
烈はイギリスへ行っている、と伝えてあるからだ
清隆は「佐伯、他言無用ですよ!」と言った
『承知しておりますが、貴方が遅刻するのは家族以外では考えられないので、我が家で泣き暮らしている義両親達と同じ理由かと思いました!』
「そうです、同じ理由での遅刻です」
『承知しました!ゆっくりで良いですから!
他の者には伝えておきます』
と言い電話を切った
清隆は玲香ろ部屋をノックすると、玲香は両手に沢山の紙袋を持っていて
「烈の所へ行くのであろう?
これは烈の着替えと、長瀬から謂われておる宿題じゃ!」と言い半分清隆雅持つと病院へ向かった
瑛太も会社に「遅刻します!」と電話を入れた
電話を取ったのは西村だった
『会長と同じ理由ですね!
処置しました!』
とすんなり許可された
瑛太も京香と共に病院へ向かう
榊原は子供達には「学校から還ったら烈の所へ行っても良いです!」と伝えた
遅刻して行きたかった兄弟はえぇぇぇぇぇ!とブーイングしたが、父には勝てず学校へ行った
烈の個室へ向かうと、検査から還って来ていた烈がスプーンでおもゆを飲んでいた
「あ、ばあしゃん じぃしゃん!」と喜び笑顔を向ける
玲香は「烈、大丈夫なのかえ?」と傍に行きそっと頬に手を触れた
清隆も「烈、心配させて!」と泣いて烈を抱き締めた
そこへ瑛太と京香もやって来て京香は起きてる烈の姿に号泣していた
瑛太も「良かったです」と烈を抱き締めた
烈は「お腹減ったにょに…おもゆにゃのよ!」と悲しげに訴えた
烈らしくて皆が安堵して笑った
玲香はナースセンターに向かい体を拭くからとホカホカのお手拭きを貰って来て、烈の顔を拭いてやった
京香は食べ終わった食器を外の配膳台に置きに行き、烈のパジャマを出した
そして着替えを袋に入れた
烈は玲香に奇麗に体を拭いて貰い、真新しいパジャマに着替えて嬉しそうに笑っていた
京香は隣で寝ているレイを起こすと、洗面所に連れて行き歯を磨かせ顔を洗った
そして幼稚舎へ行く準備をした
「れちゅ いきゅね」と言い離れ難いレイを京香は「ならば烈、レイを幼稚舎へ連れて行くわいな!」と言い個室を出て行った
瑛太は情け容赦ない妻を見て、レイ耐えるのですよ!と心の中でエールを送った
玲香は「担任の長瀬から宿題を預かっておる故、やるのだぞ!」と言い椅子の上に大量の宿題を出し筆記用具も烈の部屋から持ってきたのか?
可愛い流行りのキャラの筆箱を添えて置いてあるのを見て、清隆も烈……堪えて宿題を片付けるのですのよ!と心の中でエールを送った
そして冷蔵庫にはプリンと京香が作った杏仁豆腐を入れて
「宿題を終えたら一個食べるのだぞ!」と言い烈の頭を撫でた
清隆と瑛太は烈を抱き締めて、本当に良かった!と安堵した
今 宗右衛門を欠いたら確実に宗右衛門が打ち出して来た事が数々の事案が頓挫してしまうのだ
そして何より宗右衛門も大切だが、やはり孫と甥の存在はなくてはならないのだ
清隆と玲香 瑛太は一頻り烈を可愛がり、会社へと出勤して行った
烈は清隆達が還って暫くして機能回復訓練へと向かった
烈の要望で機能回復訓練は午前と午後入れられ、かなりキツい訓練を烈は歯を食い縛って堪えながらやっていた
【R&R】のメンバーはその光景を外から見守るように見ていた
烈に面会として逢いには行ってはいないが、竜馬が烈は何時だって大人でも逃げ出したくなる訓練を堪えて完治するまで頑張るんだ!
と謂れ機能回復訓練を外から眺めて、歯を食い縛って訓練を受けている烈の姿に衝撃を受けた
以来 機能回復訓練をしている烈を外から眺めて、日々堪えて訓練を受けている烈の姿を見守ってきたのだった
訓練用のバーから烈が崩れ落ち、地面にへばり付いて立てずにいる烈に駆け寄ろうとするメンバーを竜馬が何時も止めていた
「駄目だ!行ってどうするんだ?
変わってやれるのか?お前が?」
と謂う竜馬を殴り倒し、駆け付けたい想いを飲み込み見守る
見守ると謂うのがこんなにも辛い事だとメンバーは初めて知った
ヘンリーは父親にその辛さを愚痴ったから、クリストファー・オブライエンが来日して来てしまった
竜馬はクリストファーに対してもメンバー同様に、倒れて血を流している烈に近づくなと言った
クリストファーは「何故だ?竜馬……烈はあんなに血を流しているのに………」と言い涙した
「烈は今 闘っているんだ!
その闘いは何もかもなくした自分との闘いなんだ!
明日を掴む為に烈は今血反吐を吐こうとも頑張っているだ!
烈の訓練の邪魔は絶対にさせない!
それが【R&R】としての俺の矜持だから!」
とまで竜馬は言った
クリストファーはそこまで謂われたら、謂う事を聞くしかなかった
クリストファーは日々傷付き血を流し、それでも何度でも何度でも立ち上がり訓練を受け続けている烈の姿を目にして涙が止まらなかった
そして自分はそこまでの直向きに何かを成し遂げようとしただろうか?と考えた
自分は生まれつき財と名声が備わって、そのレールの上に乗り好きになった妻を娶り生きて来た
烈…………君の姿に私は………己の甘さ知ったよ
息子達はそんな君だからこそ共に行こうと決めたのだね
君を誇りに感じて良かったよ
だけど……烈………私は涙が止まらないよ
泣き続ける父親にヘンリーとオリヴァーは困惑してどうする?と想う
だがどうする事も出来なくて、ハンカチを差し出すしか出来なかった
クリストファーはイギリスには還らず、烈の機能回復訓練の光景を見守るように見続けていた
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