29 / 100

第29話 それでも道は続く ❶

榊原はラインよりも便利か定かじゃないが、魔界へ行くよりは楽かな? と想い宝珠を掌に出すと念じた 『金運の上がりそうな家族は人の世に来なさい! 但し どんな話し合いになろうとも我が子に手を出せば……即座にその場で…凍らさて叩き砕きますから!』 そう送り、宝珠を体内に収めて、これで良いだろう!と深い溜め息を吐き出した すると直近の近さにいた赤いのが副社長室のドアをノックしてやって来て 「あんだよ!俺は社内にいたから内線で来れたんだよ!」とボヤいたが【赤いの】GET 暫くして黒龍も姿を現したから【黒いの】GET 黒龍より遅れて地龍も姿を現し【茶色いの】GET そして銀龍が天龍を引き連れてやって来て【銀色と天】GET 続々と副社長室に姿を現した金運の上がりそうなご家族をソファーに座らせた 赤いのが「何が始まるんだよ?」と問い掛けたが 「それは僕じゃ解りません!」とキッパリ言った すると呼び寄せたのは【蒼いの】じゃないんだと理解した するとラインが入り、榊原は通知を確認し開いた 『呼ぶにょ早すぎにゃのよ!父しゃん!』 と文句のラインだった 榊原は「文句言われちゃいました……」とラインを見せた 康太は腹を抱えて爆笑した 康太は烈にラインで「呼べと言ったのはお前やんか、しかももう来ちまったんだ仕方ねぇじゃねぇかよ!来ちまった以上は何とかしろ!」と送った 『にゃら食堂に移動しゅるにょよ!』と返って来て、榊原は御一行様を食堂へと案内した すると食堂には烈がヘルシー定食を食べていた その横にレイも凛も椋もいた 椋は御一行様を目にしてピキッと固まった 人とオーラが違うのだ 榊原とか一生は、体は人の体だから、そこまでのオーラは垂れ流してはいないが、魔界からお見栄の御一行様はオーラを垂れ流していて 「ほら、りょーが食べれにゃくなった!」と怒った 一生はその言葉を聞き、離れたテーブルを選んで座ると、御一行様もその前に座った 一生が凛に「迎えは来るのか?」と問い掛けた 竜胆が「これ食べ終わったら慎一君が来てくれる事になってるから食堂にいんだよ! この後修行だからな、菩提寺に行くからな」と答えた 「なら安心だな、凛は椋を気にしてやってくれ!」と言った 凛は頷いた 一生が御一行様の席に戻ると「食べ終わりゅまで待つにょよ!」と言い、烈はヘルシー定食を食べに行った 食堂のおばちゃんが定食を皆の席に運ぶと 「烈ちゃんから皆が来たら出してくれって頼まれてるからね!」と言い皆の前に定食を置いた 榊原は「まずは食え!と謂う事なんでしょ?」と言い食べろ!と言った 康太の前には紅茶、榊原と一生の前には珈琲を運び食事までは待てと言う事なんだと想った 食事を終えると烈は食器を返却口に置いて、おばちゃんと楽しそうに話をしていた 烈は兎に角掃除のおばちゃんや食堂のおばちゃんと話をする まるで康太の様に可愛がられて世間話をするのだ 烈は御一行様の席に行くと宗右衛門の声で 「儂はケントの車で逝くから、主等は赤いのと蒼いのの車に乗り菩提寺まで来るがよい!」と言い残してその場を去った レイは烈を見送り「れちゅ……」と名を呼んだ 何時もは連れて行って貰えるが、最近は烈は何かをせねばならぬ時は連れて行ってくれなくなった それはレイの為でも在り、烈の荷物を背負わせない為にそうしていた 烈は宗右衛門の部屋に戻ると、ケントに 「菩提寺に行くにょよ ボク殴られにゃい様に守ってね!」と言った  「それは当たり前の事だから!」と堅苦しいケントは返す 支度をして宗右衛門の部屋を出るとエレベーターに乗り地下駐車場へと降りた そしてケントに買い与えた車に乗り込み菩提寺を目指す その車は清隆が宗右衛門として仕事をする烈の為に、社用車としてケントが運転手として申請して経費から捻出した車だった 菩提寺の駐車場に車を停めると、本殿へ行く前に道場の建築状況を確かめに行った 今ある道場をこの菩提寺横にある敷地に建て替える事にしたのだった 広大な敷地を一階は檀家達の駐車場にして2階と3階を道場にして本格的にもっと規模を拡大させる為に移動させたのだった 元々はかなりデカい道場を飛鳥井は持っていた だが源右衛門が高齢になり手も目も回らなくなると衰退し弱体しかなり規模を狭めたのだった それを今度は拡大させ当時の規模まで持って行くつもりだった 駐車場は檀家や客の駐車場も兼用して停めれる様にする その為に今は仮説の駐車場に車を停めていた 飛鳥井の菩提寺周辺は総て飛鳥井が所有する土地だったが未開発で雑木林になって顕在していたのだった それを切り開き道場と保養施設をぶっ建てたのだ で、今はまだ道場は建築中だった 現場に遅れが出てて、烈は眉を顰めた 其処へ烈を探して康太が「おい、烈!」と呼びに来た 烈は道場の建設の工程を見せた それを見た康太も眉を顰めた 「ひでぇ遅れだな………これじゃあ予定日に上がらねぇな」とボヤいた が、気をとりなして「でも今は金運上がりそうなご家族の件だぜ!」と謂うと烈は気を取り直して菩提寺の中へ入って行った 城之内が「烈、建築状況の確認か?」と声を掛けた 「りゅーたろう、どう?」 「あぁ、アイツは良い奴だな! お前から預かった時は、本音を言えばあんな厳ついの断りたかったけどな いざ預かったら真摯に何でもやってくれて助かっているよ! で、今は師範代の陣内に稽古を着けて貰ってる最中だ!」と言った 烈は昔倉庫に使っていた場所に仮説の道場があるのを知っているから、道場の方へと歩いて行った 康太は「龍太郎って、ひょっとして……」と問い掛けたが、烈は何も言わなかった 道場へ行くと師範代の陣内の怒声が飛んだ 「そうじゃない!お前は自己満足な技しか取れないから投げ飛ばされるんだ!」 と陣内が怒る だが次の瞬間、何故そうなったのか?解説を始める そして説明を受けた男は納得して師範代に 「ありがとうございました!」と礼を言う 生き生きしたその姿に………金運の上がりそうなご家族の御一行様は啞然としていた 陣内は烈の姿を見つけると駆け寄って来た 「烈、金田は筋が良いな! ちゃんと注意した所を飲み込み改善出来る!」と褒めていた 康太は何か目眩を覚えた 「金田………龍太郎……」 ボヤくと榊原が「本当にネーミングセンスないですね!」とボヤいた 龍太郎は御一行様を目で確認するが話し掛けもしなかった 只管 練習 練習 また練習と、教えを受けている間は目もくれず食らいついて教えを請うた その真摯な姿に御一行様は言葉もなかった 鍛錬の時間が終わると「なら烈また会社でな!」と言い陣内は還って行った その後、龍太郎は道場の掃除を始めた 雑巾がけして道場を清めるみたいに一心不乱に掃除をする 城之内が来て「保養施設の方に夕飯を用意しておいた!皆で食べられると言い! 龍太郎もそれて良いな?」と問うと龍太郎は 「はい!お世話を掛けます!」と礼儀正しく返答をした 掃除を終えると雑巾を洗い、元の位置に掛けて掃除は終わる すると綺麗に手を洗い、嗽をして、顔を洗った 康太は教えたの烈だな………と察した レイが走って来て「おわったにょ?きんちゃん」と聞いて来る すると龍太郎は「終わったぞ!」と笑顔でレイを抱き上げた 皆で保養施設の方へと向かい、一番大きな部屋へと向かう そこには食事が用意されていた 龍太郎は御一行様に深々と頭を下げた そして「我はまだ帰りはせぬ!まだまだ修行をせねばならぬ故、師範代に教えを請い赤帯にならねば帰らぬよ!」と告げた 烈は山盛りのサラダを食べていた レイも手伝い食べて行く 話し合いにはノータッチなのが伺えられた 黒龍は烈に「何の目的が有って此処で修行をさせておいでなのか?」と尋ねた 烈はレタスを咥えたまま動きを止めた 榊原は「あ~もぉ!食べて良いですから!今は食べなさい!」と言うとモヨモヨとレタスを食べ始めた 榊原は「食事中に謂わないで下さい!我が家は食事中は静かに食べるをモットーにしてますから!」と言うと黒龍は「済まなかった!」と謝罪した 烈は山盛りのサラダを食べ、食事を取る すると榊原が熱々のお茶を淹れて置いた 皆が食事を終えると、烈は食器を洗いに向かった レイはその横で同じ様に食器を洗って拭いて食器棚に烈に戻して貰った この施設では自分で使った食器は、自分で洗って拭いて食器棚に戻さねばならないがルールだったからだ 榊原も康太も各々食器を洗い拭いて食器棚に戻した 一生も慣れたモノで食器を洗っていた 龍太郎も自分が食べたモノは洗って食器棚に戻していた 黒龍と地龍も見様見真似で食器を洗い、拭いて食器棚に戻した 銀龍も慣れたモノで食器を洗い食器棚に戻した 天龍は少し躊躇しつつも、皆と同じ様に食器を洗い拭いて食器棚に戻した それで全員が食事を終えた事になる 黒龍が口を開く前に宗右衛門が 「何故、此処で修行を受けているか?見ていてわからぬか?黒龍よ?」と問い掛けた 「それも総て魔界の為ですか?」 「そうじゃよ、あの日金龍を此処へ連れて来て下働きをさせ修行をさせ、師範代に悪い箇所を教えさせる為に稽古を付けさせている 金龍は文句一つ謂わず儂が言った事に従っておる 日中はこの寺の為に働き、夕刻から師範代に鍛錬され技を教えられ力任せじゃない闘い方を教わっておるのじゃ!力では制せない領域がある! 何でもかんでもゴリゴリに力押しすれば行けぬ事はないが、軋轢を生むと謂う事を体で持って教える!それしか聞く耳を持たぬ者には教えられぬからな!」 宗右衛門の言葉を聞き黒龍は 「貴方を殺そうとしたんですよ?親父殿は! そんな男にも貴方は情を掛けてやると申すのですか?」 と難癖に近い事を言った 八つ当たりに近い言葉だった 「情け?なれば主も金龍が還るまで共に鍛錬を受けてみるがいい! これが情だと二度と口には出来ぬじゃろう! 金田龍太郎、赤帯に2ヶ月 金田黒之助 黒帯に2ヶ月 その間は地龍、頑張って龍族を纏めて行くのじゃぞ!主は我関せずを遣り過ぎたのじゃから、此処でツケを徴収したとしても文句など申せぬであろうて! 主は黒いのが帰還したら補佐となりもっと龍族に目を向けて行け! これからはもっと役割は増えて主が背負う荷物も重くなると想うがよい!」と言い捨てた 地龍は「はい、承知しております!父が貴方を殺しかけた時に……自分はどれだけ我関せずを貫いて来たんだろう……と後悔しました なので当たり前の事です!」と言った 「赤いの、気にかけてやってくれ! 飛鳥井の家も絶賛乱世に突入して目まぐるしい忙しさじゃが、それに負けず龍族の方にも目を向けろ!それが主も無関心で来たツケじゃからな!」 「解ってるよ!宗右衛門! 俺だって悔いていたんだ! 一人に背負わして来た事態が露見するまで無関心だったと後悔したんだ! 留守は俺と茶色いので守るとする! 蒼いのも気にかけてくれ!頼む!」 榊原は頷いた   これで話が付いたと想われたが、宗右衛門は 「さてと天龍、主が一番元凶じゃろ!」と言った さっと顔色を変える天龍を宗右衛門は見ていた すると天龍は黒い涙を流し始めた 康太は「闇に囚われていたのか?」と叫んだ するとニブルヘイムが「闇は何処にも潜んでますから!心に翳りが堕ちたら、そこから闇は広がり影を深くしてして逝くんです! ほら黒龍の体にも闇が溶け込んで闇に巣食われる気でしたか?お二人さん?」と嫌味を言った 黒龍も黒い涙を流していた 最近のイライラや焦燥はこれが原因だったのか?と想いたくなる気分だった ニブルヘイムは「飛鳥井の家の食べ物は私が創世記の泉の水に変えて浄化してますから、黒い涙を流したりなんてありませんがね、不安や疑念を抱いた心には翳りが出来る その翳りを突いて闇を深くして行くのです この菩提寺に来た日にきんちゃんは黒い涙を流しました!」と伝えた 龍太郎は「我は常に焦りや苛立ちを抱いていた 龍族の明日を考えて、まだ足らぬと確かなモノに変えていかねば!と焦っておったのじゃよ レイが闇に囚われた者は人も魔族も犬も魔獣も大差はなく、正常な思考回路を失うと教えてくれた 我は焦って本来の自分を見失っておった それに気付かせてくれたのは烈じゃ! 我は烈を殺そうとしたのに……烈は指導たる者のなんたるを教えてくれたのじゃ! その教訓や教えは必ずや魔界にも通じる!と言ってくれた 師範代に教えを請い日々過ごすうちに、まさにそうじゃと痛感した 誰かに教えるというのは難しい………今までのままじゃと我は愛する妻も失うと知らされた 妻を愛している 無くせば狂う  ………じゃが銀龍は子を亡くせば我など愛してはくれなく成るだろう……… その現実に慄いて………愚かな自分を見つめ直す為に日夜、烈と記憶の邂逅を行った 愛した想いは出逢った時と変わらぬ 愛は募り日々妻の愛は深くなる そんな想いを一つずつ邂逅して思い知る作業を行った そして何処で道を踏み違えたか?を探った 自分を見つめ直す作業は辛くて泣いてしまった が、宗右衛門が根気強く付き合ってくれ、今こうして穏やかな想いでいられるのじゃ! 本当に感謝しても足りはせぬ!」と思いの丈を語った 御一行様は黙ってその話を聞いていた 天龍は透明の涙を流し始めた頃、黒龍も透明の涙を流し始めた 宗右衛門は「天龍、主の心に巣食っておった闇は消えた! 心に闇を抱く前に兄でも母にでも話すべきじゃったな! 沈黙は美徳ではないぞ! 辛い日々を堪えて、その先に褒美はあるのか? 何もないのに直走ろと言っても馬だとて人参がなくば走れぬよ! 主は誰も信じず、憎しみを只管憎しみの花を心の中で育てておった! そうなる前に何故話せなんだ?」と問い掛けた 天龍は「僕が訴えて誰が聞いてくれた? 兄達だって厳しい修行を着けられて来たんだ耐えろ!としか謂わないじゃないか! 母は何時だって親父の顔色を見て……嫌だと訴えても、父さんはお前の為に………そればかり 何が僕の為なのさ?教えてよ母さん、兄さん!」 と言われて如何に自分達が弟を人身御供に出していたんだと痛感した 宗右衛門は大きな声で「天龍!」と名を呼んだ 天龍は想わず「はい!」と返事した すると蔦みたいなモノが天龍を絡める様に巻き付いた 康太はまさか……それ使えるの?と言う顔をした そして蔦を引っ張ると天龍の体は宗右衛門の方へと飛んで来た 「主は誰かに救いを求める癖に、諦めてばかりじゃな、それじゃあ主の言葉なんて伝わらぬ! 伝わらぬから誰にも耳を貸して貰えぬのじゃ! 心に闇の花を咲かせる程に憎いのじゃろ? 暴君な父も、父の顔色ばかり見ている母も、無関心な兄達も、主は憎くて仕方ないのじゃろ?  暴君な父親に怯える日は嫌だろ? そんな父親なんか要らぬと想っただろ? 主の声を聞かぬ母など要らぬだろ? 主の訴えを流して聞かぬ兄達など要らぬだろ? ならば消してしまえば良い、一言消えろと言えば良い!それだけじゃ?簡単じゃろ? 主が言えぬならば儂が言ってやろうか? 【き・え・ろ・】と、な。」 すると天龍の眼の前から父も母も兄達も消えた 「これで主は誰にも囚われず過ごせるな!」 宗右衛門が謂う だが天龍は信じられない想いで周りを見た 嘘…………嘘! 本心なんかじゃなかった! そんな事……望んでなんかいなかった! 嫌だ、いなくならないで! 何もかも奪わないで!! 天龍はどれだけ見渡しても両親や兄達がいなくて、本当に消えたんだと想い………泣きながら  「返せよ!今直ぐに元に戻せよ!」と訴えた 「要らぬのだろ? だったら消しても良いではないか?」と言った 「要るよ!要るに決まってるじゃないか!」 「何故じゃ?主は願っていたのじゃろ? 心の中で何時だって消えろ!と想っておったのじゃろ? 主が要らないと心の中で願ったから消えたのじゃ!」 の宗右衛門が吐き捨てると、天龍は大声を上げて泣いた 「かぁしゃ~ん とぉ〜しゃ〜ん に~しゃ〜ん」 泣き叫んでいた 「泣くな!泣いて何かが変わるのか? 泣くならば何故訴えなんだ  諦めて見切りを付けたのは主ではないか!」 と厳しい声で叱責した 「甘えてました……諦めた方が楽だから……言っても変わらないから……諦めた だけど本心からじゃない 本心から消えろと想った事ない! 本当に消えろなんて願ってない…… 甘えてました………だけど僕はまだ未熟な子供です 許してくれませんか?」 「儂も子供じゃよ! 金龍に振り下ろされた手に足が竦み動けなかった子供じゃよ?対して変わりはなかろうて!」 天龍は烈を見る 下手したら天龍より子供に見える姿に……… 天龍は「………君があの日……変わりに父に殴られて……僕は自分じゃなくて良かったと想った でも僕より小さな君が死にそうだと聞いて………僕は自分の愚かさに反吐が出たんだ 諦める前に言えば良かった………僕は怖かったんだ……言えば見向きもされなくなると怖かったんだ……」と心の内を総て吐露した すると宗右衛門は天龍を絡め取る様に巻き付いた蔦のようなモノを天龍から離した 少しずつ少しずつ蔦のようなモノが天龍から離れ そして全てが消えた……… 蔦が総て消えた時、目の前には皆がいた 天龍は「え?…………」と信じられずまた泣いた 「幻術じゃよ!我が父の力を借りて迷いの森から蔦を借りたのじゃよ! 素直じゃない子は本音を引き出さねば話にはならぬからな!」 そう言い宗右衛門はガハハハハハッと笑い飛ばした 天龍は唇を尖らせ「ズルい」と言った レイが天龍に飛び蹴りかまして 「はやきゅ、いうにょ!」と怒った 天龍は両親や兄達に「ゴメンナサイ、これからは本音をバンバン言います!」と伝えた すると康太から強烈なパンチを背中に御見舞された 「痛いっ!」 「修行が足らん!と宗右衛門なら試練の間に放り込まれるぞ!」と文句を言った 「その試練の間とは?」 天龍が恐る恐る聞く すると烈が「レイたん!」と言うと、レイが「れちゅ!」と嬉しそうに返した すると天龍を両端からガシッとホールドして 「楽しい試練の間にゃのよ!」と言い 「へんにゃのでりゅ ちれんのまにゃの!」と言いスキップして連れて行った 榊原は「あ~連れて行かれてしまいましたね」とボヤいた 一生は「おい、康太、烈が楽しい試練の間なのよって連れて行ったぜ!」とボヤいた 黒龍は「変なの出る試練の間なの!って言ってたのに連れて行ったじゃんか!」と訴えた 榊原は何も言わなかった 康太は「仕方ねぇから今夜は泊まって行けよ! 金龍はさ夫婦で話し合い愛の再確認でもすると良いわ! あ、でも此処は寺の敷地内だから不埒な行為は避けてくれよ! この奥の部屋を使い話し合えよ 黒龍と地龍は金田龍太郎の部屋に行き過ごせよ!」と言い榊原とさっさと還って行った 仕方なく一生が「部屋に案内するわ!一応寺だから飲酒は御法度だからな!」と注意して二人を部屋に連れて行った 一生は寺の坊主の宿泊施設へと連れて行った 扉の前に【金田】と書かれた名前は確かに金龍の字だった 部屋の中に入り簡素な何もない部屋を見渡す テレビは着いていたが、何もない部屋だった 黒龍は「金田龍太郎って烈が着けたのかよ?」と問い掛けた 一生は「だろ?朱雀から聞いたけどデッかいイチゴに似たフルーツの名前をデカチゴって着けたんだろ?  朱雀が康太同様ネーミングセンスがねぇわ!と嘆いていたからな!」と笑って言った 黒龍は「康太の子じゃ仕方ないか」と笑った そして真顔になり 「親父………別人の様………嫌 昔に戻ったみたいに穏やかなになってて驚いた」と感想を言った 黒龍はもっと構えていたが、あまりの変わりように拍子抜けしたと言った 一生は「俺はあまり魔界へ行く機会なかったけど、噂は聞いていたよ 朱雀が教えてくれていたからな でも人の世にいる俺に出来ることなんてねぇ!と自分に言い聞かせて過ごしていた ズルいよな俺は………今回ズバッと謂われて思い知ったよ」と本音で兄に話した 黒龍は「烈、嫌 宗右衛門は情け容赦ない方なんだな………あんなに人懐っこのに………次の瞬間視せられる眼にドキッと心臓を鷲掴みにされる 今回も情け容赦ないから………消されてるかもと心配していたら、こんな場所で修行させられていたからビックリした」と謂う 「まぁ宗右衛門だからな、俺も呪文唱えたら瞬殺だと聞いたし、生きてないかも………なんて思ったよ、だが違うんだな 宗右衛門は魔界の礎を確り視ていて、必要な場所に配置した それは絶対な果ての魔界の為になると踏んで動いたんだろうな! 実際、金龍の体を見て解らなかったか?」 「え?何が?」 「無駄な筋肉を削ぎ落とし、実践で使える体にしてあった! 前よりも金龍は動けるし、技を活かした動きが出来る様になる   それを魔界で教える為には必要だから修行僧バリの生活させ、鍛錬させているんだろうな」 黒龍は考えていた 謂われてみれば、金龍の体は引き締まり、無駄な筋肉は削ぎ落とされ鍛え上げられていた 「なら俺、それをやり2ヶ月で黒帯取らなきゃ帰れないって事?」 と今更ながらに問い掛けた 一生は「だな、一度言ったら覆りはしない宗右衛門だからな、黒帯取るまで還さねぇぞ! その分地龍や俺等が仕事覚えられて龍族の責務を勉強出来て良かったじゃんか!位にしか想ってねぇからな!やらされるぞ!」と言った 黒龍は「天龍……どうしたかな?」と呟いた 菩提寺には凛も椋もいたから皆で試練の間に入ったんだろうと想像がつく 「多分だけどな、食堂にレイ位のちっこいのいたやんか!覚えるか?」 一生が言うと黒龍と地龍は思い浮かべていた 「いたな……」 「いたね……」 「あれはな転生者でな幾度となく試練の間に入って試練を受けている強者なんだよ だから………一緒に入ってくれてるとは想うが、相当……泣かされて出て来るだろうな でも烈の剣は草薙剣だし、最強だからな大丈夫だろ?」 と、簡単に言った 黒龍は「そんな簡単で良いのかよ?」と問い質した 「気にしても覆らねぇのが宗右衛門なんだよ 一族は宗右衛門が言えば絶対に聞かねばならぬ! そんな飛鳥井の敷地内に俺等はいるんだぜ?」 「………あ、なら覆らないって事か まぁ俺は明日から修行に入るから地龍後は頼むな!」 「了解した!精一杯頑張るよ! 明日の朝を食べたら僕は帰るね!」 黒龍は「俺の部屋は用意して貰えねぇのかよ? 親父殿と同じ部屋はキツいからな……」 巨体の男とワンルームで同室なんて地獄だった 一生は「此処の寮はワンルームだから個室貰えると想うぜ!明日の朝城之内に頼んでやるさ!」 と言い一生は還って行った ワンルームに布団を敷いて黒龍と地龍は眠った その頃 金龍は久しぶりに銀龍と同じ部屋にいて緊張していた 銀龍が「貴方……死んでなくて本当に良かったです」と言葉にした 「我は殺されているかも………と想ったのか?」 「仕方ないではないですか………烈は人の世では炎帝と青龍の子で、魔界なれば素戔嗚尊の孫ですから…………相手が悪すぎるのです 我等がどれだけ言い訳をしたとしても………素戔嗚殿を敵に回しては住む事さえ許されはしません」 「……………それは言えるな、だが烈は我を殺しはせなんだ! 呪文を唱えれば瞬殺だと申された……我は嘘かと想ったが、さっきの呪文を唱えずとも何かの蔦を生やせられる姿を目にしたら、本当なのだと思った 烈は次代の天龍、金龍の前だったから殺さずにいた、と言った……… もし呪文を唱えられていたならば、我は既にいなかった事となる………」 銀龍はそっと夫に触れた 金龍はそんな妻を優しく抱き締めた 「我は教えると謂う事と叱り飛ばして謂う事を聞かせる事を同列に捉えて教えておった その違いを烈はこの寺で修行する事によって教えてくれたのじゃ! そしてその闘い方は魔界の役に立ち、何も持たぬ存在達にも護身術位は教えられる  武道場を建てた後、そこの責任者になり教えて逝けと言ってくれた そして各々の役割を持たせて、一人で前に出て躍起にならずともよい!と教えてくれた 我はそれで気が楽になった 次代は育てねばならぬ だが魔界の皆も育てねばならぬのじゃよ だから我はまだまだくたばるのは早い!とレイに蹴り飛ばされたわ 我は此処で赤帯を取ったら、護身術の師範代に弟子入して身を守る方法、武器を備えた闘い方を教えてもらい、魔界へ還る 暫し………主には家を護って貰わねばならぬが…… まだ我の事を見捨てておらぬならば………待っていてくれぬか?」 「あなた…………」 銀龍は涙を流して夫を見た 「愛しておる銀龍 やはり我には銀龍、お主だけだと痛感した もし天龍を殺めたとしたら………お前は我を見なくなるだろう そんな事を考えて死んだ方がマシだと何度想った事か………我はそんな道を辿るしかなかった 辿っておったら我は永久にお前を失っていた 失いたくないのじゃ銀龍…………」 「あなた………私も失いたくはないのです! 愛しているのです!あなたを!」 金龍は銀龍を強く強く抱き締めた 銀龍も金龍の背を強く強く掻き抱いた 朝まで抱き合い不埒な事はせず、互いの温もりを感じで愛を募らせていた 翌朝 龍太郎として朝のお勤めをする為に早起きして出て行った 龍太郎「朝餉まで休むがよい!」と言いお努めへと向かう 銀龍は少しだけ横になり瞳を閉じた 朝早く日がまだ上る前に起こされ黒龍は連れ出された 龍太郎は「朝を保養施設まで持って行くから、そしたら帰るがいい!留守の間は頼むな地龍!」と言った 地龍は「はい!父さん確りと守り通します!」と返事した 龍太郎は黒龍を連れて本殿横の城之内が控えている所へ行き「倅の黒之助と申す!黒帯取る日までご厄介になれと烈殿に謂われておる故宜しく頼みます!」と言った 城之内は「聞いてるよ、黒帯……簡単には取らせてはくれないよ! 道場の最高位の師範代が判定される事となったからな!」と告げた 龍太郎は「師範代は陣内殿だけなのでは?」と尋ねた 「いやいや、今まで道場は別の場所にあったんだけどね、近い内にこの横に来る事になるんだよ その時紹介されるかもだけど、道場の師範代は全部で四人!最高位が飛鳥井康太、そして順に飛鳥井瑛太、飛鳥井清隆、そして陣内博司、の4名だ!ジュニア部門の黒帯保持者の中には飛鳥井の子供は全員黒帯保持者だ!」 黒之助は「なら俺康太相手に黒帯取らなきゃいけないの?」とボヤいた 「最高位の師範代は判定者として判定を下すだけだ、安心しろ!」 「だけど、どの道……楽な道じゃない!」 「だな、日々鍛錬しかないわな! 黒之助の部屋は龍太郎の隣だ、ホレ鍵!」 と言い鍵を渡した 黒之助はトホホな気分だった だが乗り越えねばならぬ試練なれば乗り越えてやる! そう想い闘志を燃やしていた その日の昼過ぎ、試練の間が開いた 何時もの余裕はなく出て来る凛 非常事態だと慌てた顔して出て来る椋 ガシガシ足蹴りして出て来るレイ そして天龍を引き摺り出て来た烈 天龍は泣いていた 怖くて何も出来なくて泣いていた 「主も帰らず修行じゃな! 城之内、黒之助の隣の部屋にぶち込め! そして竜胆に鍛錬を着けて貰う 東矢に精神的鍛錬を着けて貰う そしたら少しは使えるヤツになるだろう!」 烈は腕を怪我して今も血を流していた 城之内は烈を抱き上げると「竜之介!!烈が怪我してる!」と駆けて行った 烈は天龍を庇って怪我をした 金龍に稽古は付けられていたが、実践では木偶の坊ばりに役に立たないわ、足を引っ張るわ 最悪な試練を幾つか熟して烈が天龍を庇って怪我をしてストップが入った そして出て来たのだった 烈は「行けりゅと想ったんらけど………」とボヤいた 竜胆は「此奴、俺が扱いて良いか?本当に使えねぇし動かねぇし、何やって来たのよ?お前! 烈に庇われなきゃ、お前死んでたんだぞ! 試練の間に入るのは何時も俺等は命懸けなんた!」と怒りを爆発させていた 東矢も「式神飛ばしたけど、君が足を引っ張ったから逆効果になっちゃってる!  君さ、この先、次代の天龍を継ぐなら木偶の坊じゃ、名が泣くよ!」とキツい一撃をかまされた やはりレイは天龍に飛び蹴りをしていた 竜之介は救急箱を手に走って来て、血を流している烈の手当をした が、あまりにも傷が深いから「これは久遠先生だね!」と言った 竜之介は応急処置だけして、烈を連れて飛鳥井記念病院へと急いだ 城之内は「三通夜も無傷な烈が何故に傷したんだ?」と問い掛けた 天龍は泣いていた 竜胆は「木偶の坊が足を引っ張ったんだよ!」と吐き捨てた 城之内は「君は偉大な存在の名を継ぐんだよね? 昨日還る時に康太が話してくれたからな ならば人より鍛錬して鍛え上げないとダメだね そん風に泣いていても、何も変わらない 立ち上がる者は泣かない!悔しくて悔し涙を浮かべたとしても、そんな風には泣かない!」と言った 天龍は涙を拭うと両手を握り締めて踏ん張り立った! 「君の名前は?」 城之内が聞くとレイが「てんのすけ!」と答えた 「天の助君、さぁ、これから寺の掃除だよ! それを終えたら今日は法要が入ってるから、社務所で名簿やテーブルを出したり忙しいからね! さぁそれも修行の一環だから! 凛、椋、レイ、君達は幼稚舎に行くんだ!」 栗栖がお迎えに来て三人は幼稚舎へと連れられて行った   途中 飛鳥井で着替えをして幼稚舎に行く レイは烈が心配だった だが烈からラインしてくれると信じて幼稚舎に向かった 竜之介は烈を飛鳥井記念病院へと連れて行った 受付で保険証とかは後で持って来させるから診てくれ!と謂う だが病院の受付は「予約はありますか?」と問い掛けて来て予約はしてない緊急だから!と伝えた だが受付は「お帰り下さい!」とにべもなかった 烈は受付の前で久遠に電話を入れた 「せんせー怪我しちゃった!」 そう謂うと久遠は『直ぐに来い!』と言った 「今ね受付に要るにょよ! でもね予約にゃいと駄目だから還れ言われたにょよ!」と伝えた 目の前で繰り広げられている会話に受付は顔色を変えていた 直ぐに久遠がやって来て「烈!」と慌てて駆け寄って来た 「血が酷いな!直ぐに縫って処置をする!」 そう言いスタッフを呼んで烈を連れて行かせた 久遠は足を止め受付を見て 「お前、あんなに血を流している患者を追い払おうとしたのか?  うちの病院には向いてないから転職しろ! 直ぐに帰宅して構わない、明日から来るな!」と吐き捨てスタスタと処置をしに行った 烈が怪我したと竜之介は康太に連絡を入れた 「すみません、烈を怪我させてしまいました!」 謝罪を受け康太は「竜之介の所為じゃない! どうせ天龍が動けず庇って怪我したんだろ?」と言った 「もう連絡受けてましたか?」 『嫌、連絡貰わなくても烈が怪我したならば、それしかねぇからな! 保険証を持って行くから待っててくれ!」』 「解りました!」 竜之介は電話を切って康太を待っていた だが病院にやって来たのは烈の専属秘書の翼だった 翼は竜之介を見付けると深々と頭を下げた 「康太と伊織は今 会社で抜けられない対策を打ち出しているので、変わりに僕が来ました! 烈には僕が付き添います、なので竜之介さんは菩提寺に帰られて宜しいかと!」 と謂われて竜之介は菩提寺に帰った 翼は保険証を渡して来ました、と受付に渡した まだ烈を追い払おうとした受付はいて、腹癒せに保険証をベシと折りフンッとそっぽを向いて還って行った 入れ替わりで来た受付の子がそれを目撃して、只管謝罪しまっくった 翼は康太に「保険証ベシ折られたのですが、これって何処で直して貰えますか?」と聞いた 康太は『え?ベシ折られた?嘘……保険証だぜ?』と信じられないと呟いた 翼は飛鳥井記念病院の受付が烈の保険証をベシ折って還って行ったと伝えた 康太は「なんだよ?その受付は!」と怒っていた 康太の話を聞いていた榊原は秘書課へ向かい 「保険証がベシ折られた場合どうしたら良いですか?」と問い掛けた 秘書は全員、え?保険証がベシ折られた……と唖然として呟いた 榮倉は気を取り直してPCで調べてくれた 「副社長、破損した保険証を添えて事業主の証明を貰い申請すると再発行されるそうです!」 と伝えた 「飛鳥井記念病院の職員の質も落ちて来たみたいですね、患者の保険証をベシ折って還って行ったと言ってました」と伝えると、西村は「落ちすぎだ!患者を何だと思ってるんだ!」と怒り狂っていた 榊原は康太の所へ戻り翼に電話して説明をした 翼は破損した保険証で手続きして、持ち帰ると約束して電話を切った 康太は「飛鳥井記念病院の理事オレだけどさ、社員増やす時の面接もオレがしてたんだけど、何時変な受付雇ったのよ?」と考え込んでいた その時ラインの通知があり、康太は開いて見てみた 烈からだった 「母しゃん大変にゃのよ、久遠せんせーんとこ血を流してても予約なしじゃ診れませんって断ったにょよ!」と怒ってラインして来ていた それを目にして康太は「何故に問題がまた増える?」とラインを見せてボヤいた 康太は「傷はどうだった?」と返信すると 「久遠せんせーん不機嫌で痛く縫ったにょよ!」 と書いて涙を流してるスタンプも送られて来ていた 榊原は「一度内情視察に行かねばなりませんね!」と問題山積だけど見逃せないと判断したみたいだった この日、烈は久遠に「今日は動くなよ!家に還って寝てろ!明日、消毒で酷くなっていたら入院させるからな!」と脅したから、烈は家に還って寝る事にした 翼は烈を飛鳥井の家に連れ帰り、寝させてから会社に戻りヘシ折られた保険証を渡した 榊原はそれを受け取り書類にテープで貼って再発行の書類の準備をしていた 康太は「烈、怪我はどんなだった?」と問い掛けた 「久遠先生が謂うには鋭利な先の尖った何かが烈の手に突き刺さり切り裂かれた様な傷だったそうです!その鋭利な何かは骨に当たって止まった でなければ腕は真っ二つになっていた……そうです」 「烈は入院したのか?」 「いえ、家に帰り安静にしてろ!と謂れ帰ってます!」 「解った……済まなかったな翼」 「いいえ、僕は烈の専属秘書なのですから構いません!失礼します!」と言い翼は副社長室を出て行った 翼が出て行って榊原は怒りに満ちていた 「今夜は菩提寺に行って殴り飛ばします!」と言った 「天龍をか?」 「当たり前です!そして金色のも殴り飛ばしたい!僕の息子に怪我させて!」 「金色のはショックだろうな、あんなに仕込んだのに木偶の坊じゃな…………何をやって来たんだろ?と想うだろうな」 「それは育てるとは言いません! それを育てるとは言わせません!」 父となり我が子と接して榊原も父として日々成長しているのだ 子も成長するならば、親もそれ以上に成長せねばならぬだ! 康太は「兄として殴るなら良いぞ!烈の父として殴るなら範囲内だ!」と許可した 「なれば今夜行き殴り飛ばしてやります!」 榊原はそう言い山積みの仕事を黙々と片付け始めた 「病院、行かねぇとな」 康太が呟くと榊原は「それも一度見に行かねばなりません!明日の烈の消毒は我等夫婦で逝くしかないでしょう!」と断言した 本当に腹立たしい! どいつもこいつも! 怒りまくる榊原に康太は「おめぇは誰よりも我が子の父ちゃんだよ!」と言った 榊原は笑って「愛してますからね、君も我が子も、飛鳥井で生活している子等も、ちっこいのも!」と言った 皆平等に変わりなく愛を注ぐ どの子にもその時出来る精一杯で愛を注ぐ 「やっぱお前は最高のオレの夫だよ!」 榊原は嬉しそうに笑って倍速で仕事を上げていった その夜、約束通り榊原は菩提寺に行って天龍を殴り飛ばした 天龍は突然殴り飛ばされ唖然としていた 「君は日頃嫌嫌鍛錬していたから、いざと謂う時動けない、木偶の坊だと謂われても仕方ない動きしか取れないんですよ!」 圧倒的なオーラを持つ青龍の怒りに天龍はグッと奥歯を噛み締めて耐えていた 竜胆が「ソイツは俺が預かった、一発殴るのは良いが、余計な口出しはするな!」と吐き捨てた 榊原は「竜胆が面倒を見るのですか?」と尋ねた 「あぁ、資質は悪くはない、だが凝り固まった動きしか出来ねぇから一瞬の判断力が乏しくて出来てねぇんだよ! だから突然襲われたら頭を抱えて丸くなるんだ 宗右衛門がそれを庇って怪我をした 一番悔しいのは宗右衛門だ! だってそうだろ? 怪我をしたから悔しいんじゃねぇ こんな事で菩提寺の腐った面を見せられたんだならな堪らねぇだろ? 今回も試練の間に予想以上の魔獣放たれて、宗右衛門は怪我したけど草薙剣で薙ぎ倒した! あんなのは儀式の間にしか出ねぇのにな何故試練の間でそれが出るのか?一度見直してみてねぇと、この寺腐ってるかも知れねぇぞ! 建築が遅れてるのにしても、関係あるのかもな だから龍太郎とか黒之助とか入られて煙たがっているのかもな」 竜胆は真髄を突いた 康太は「ならば烈の怪我が少し安定したら菩提寺の下働きの者も業者も全員並べて精査する!」と言った 榊原は天龍に「君が出来る事は一日でも早く己の力と判断力で闘える存在になる、それだけです!」と言い還って行った 天龍はその言葉を胸に刻み、今回の様な丸くなるしか出来なかった己を恥じ、立ち上がると決めた 誰かに護られるんじゃない 誰かを護る、そんな自分になりたかったんじゃないのか? その日から天龍は下働きも必死に熟し、鍛錬も人一倍頑張った 龍太郎と黒之助はそんな天の助の頑張りに、自分も負けてられない!と頑張っていた 翌朝 烈は消毒の為に飛鳥井記念病院へと出向いた 朝から患者が詰め掛け、物凄い事になっていた 康太は「完全予約制じゃねぇのかよ?この病院………」と唖然となる程だった だから早い時間に予約していても診て貰えるのが昼過ぎになってしまう これでは正常な診断なんか無理だろ? こんな馬鹿げた状況にする為に病院を作った訳じゃねぇ!と康太は怒り狂っていた 康太は院長室に向かおうとすると警備員に止められた 警備員の腕章を見れば、この前まで入っていた警備員ではなかった 「何処へ行くの?勝手な事しちゃ駄目だよ!」と警備員はヘラヘラ笑って謂う 康太は「お前、誰にもモノを言っているんだ? オレはこの病院の理事でありオーナーでもある!」と吐き捨てた オーナーの顔さえ知らない警備員は 「はいはい!そんな戯言言いたいなら違う病院へ行った方が良いよ!」とホザいて康太の手を掴んだ 其処へ榊原が烈と共にやって来て 「手を離しなさい!」と怒鳴った 警備員はビクッとして手を離した 康太は久遠に電話を掛け「今直ぐに来い院長室の近くだ!」と謂うと久遠が慌てて飛んで来た 警備員は青褪めて……立ち去った 「久遠、今直ぐ病院を臨時休診にしろ!」と吐き捨てた 久遠は「あぁ、そうする」と返した 「何でこんな事態になったんだ?」 康太が聞くと久遠は康太と榊原と烈を院長室に招き入れた 久遠は「事の始まりは臨時総会だ!」と言った 康太は「そんなの聞いてもいねぇぞ!」とボヤいた 「俺はお前が知ってるのだと想った 臨時総会で警備会社も変えて、受付も委託業務の会社に委託する事となった それが臨時総会で半数占める株主の意向だと伝えられた 俺は変わって行く院内に嫌気が差していた そしてトドメだ、親父はもう出るな!と謂われた あまりにも狂ってるから辞めようかと想っていた所だ!」 康太は天宮と神威に連絡を取り、至急来るように言った そしてやって来た二人に飛鳥井記念病院の株主はどうなってるのか?問い掛けた 二人は来るなり仕事を割り振り得意な方を片付け始めた 神威は「俺は姉から義泰が切られたと聞き密かに調べていたんだよ! もう少し揃ったら飛鳥井に行こうと想っていた!」と言い資料をバサッと置いた 見てみると詳しく詳細が書かれていた 誰の差し金で動いているのか? 金を渡して動かしている奴を何人も辿って行く作業は大変だったろう だが資料にはちゃんと黒幕の名が書かれていた 康太は「増渕?あんで………」と呟いた 黒幕は政治屋の増渕側からだった これは唯かの嫌がらせの範疇を超えている 菩提寺と病院に人を入れ中からぶち壊そうと画策しているのが見て取れた 「弔い合戦のつもりかよ……」とボヤいた 榊原は「病院が不正に乗っ取られようとしてるので、正常に機能するまでは業務停止とします!」 と言い榊原は飛鳥井記念病院から少し距離はあるが、総合病院の方へ院内の停電を理由に臨時で診察を頼めないか?打診した すると総合病院の方は診察は可能だと連絡をくれた それからの行動は早かった 榊原は通院側の電気のブレーカーを落とし非常電源に切り替えて院内放送を自ら入れた 【院内に診察の患者様へ 只今電気トラブルにより総ての業務が停止しました この放送も非常電源に切り替えてしております! 何時その電源も落ちるのか解りません 復旧までに時間を要すので緊急性ある方は総合病院へお移り下さい! 誠に申し訳御座いませんが、復旧までクーラーも検査器具も一切が使用できません!  なので今直ぐ院内から出て下さい 一日も早い復旧を目指しますので、再度来られる方は病院の、ホームページを確認の後御来院下さい! 体調の悪い方は総合病院の方へと直ちに移動お願いします】 と院内放送を流した 康太は一生、慎一、聡一郎、隼人を招集して、それらの手伝いをさせた 榊原は即座に事務側の人間を正面限界入り口へ移動させ、PCをシフトダウンさせた 素早い行動に院内の職員は唖然として指示される通りに動くしかなかった 神威は「経理に長けてる人間寄越せ!」と言った こう謂う場合不正はワンセットと見越して謂う 康太は「ITに長けてる、翼呼んでみるか!」と即座に翼を招集した 電子頭脳ならば経理の不正見抜けないかな?と謂う算段だった 翼は来るなり「経費とか洗って不正ないか調べてくれねぇか?」と謂う すると翼は「了解しました!」とPCを立ち上げて調べ始めた 康太は診察受付の機械の前に職員を並べ、全員揃うとまずは警備員に 「本来そちらの警備会社とは契約などしておりません!なので近々訴えますのでお帰り下さい!」と言った そして受付を見て「うちの病院には受付業務サービスから依頼などしていなかった なのに勝手に虚偽の契約で来られて保険証をペシ折る器物破損をやらかしたので即座に訴えさせて貰います! そして無論契約違反で訴えさせて貰います!」 と謂うと受付は「それは会社にどうぞ!私は関係ないから!」と言い帰ろうとした 其処へ警官がやって来て、受付の人間に器物破損した社員は何処の誰だ?と謂い調書を取るから、と警察に連れて行かれた 康太は残っている警察に「大規模な詐欺が行われた」と訴えた そこへ堂嶋正義が検察庁の方の人間を引き連れてやって来た 康太は増渕からの嫌がらせと聞き堂嶋に即座に連絡を入れたのだ

ともだちにシェアしよう!